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16 目障りよ! ※デルフィーナ

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 ――これは謀反よ。

 わたくしは、大臣たちの動きを監視していた。
 途中で使者を殺すより、ザカリア様の城に入るのを見届けてから、ルドヴィク様に報告するほうがいいと判断した。
 案の定、使者はザカリア様の城へ入った。

「ザカリア様をルドヴィク様やロゼッテの代わりに、王位につけようと、大臣たちが謀反をたくらんでいますわ」

 わたくしの報告に、ルドヴィク様が不快な顔をした。
 国王陛下に不満があるから、謀反が起きる。
 つまり、ルドヴィク様のせいだというのに、怖い顔で睨み付けた。
 まるで、わたくしのせいだというように!

「そんなもの起きるわけがない」

 ルドヴィク様は、自分の統治能力に自信を持っている。
 けれど、評判がよかったのは過去のこと。
 今のルドヴィク様は、まったく民から支持されていない――ロゼッテもそう。
 だから、今のうちに邪魔なザカリア様を片付けておかねばならない。
 
「大臣がザカリア様に使者を送った理由が気になりますわ」

 それとなく、不信感を煽ってみる。
 けれど――

「ご機嫌伺いだろう」

 のんきなルドヴィク様の言葉に、我慢できなくなり、声を張り上げてしまった。
 
「そんなわけなくてよっ! 大臣の一人が捕らえられ、一族を奴隷にされたのよ!? 大臣たちの報復に決まってるわ!」
「報復?」

 ルドヴィク様は大臣たちが裏切ると思っていないようだった。
 何度でも言わないと、ルドヴィク様には伝わらないらしい。

「ザカリア様を王にしようと目論んでいますのよ!」
「ザカリアを?」
「ロゼッテが女王になるのが決定いしているのに、これは謀反ではなくて!?」 
「わたし、女王様になれないの~?」

 ロゼッテ不満そうに口をとがらせた。

「ルドヴィク様。ザカリア様は領地を広げたいと考えているかもしれませんわ。いつ、裏切るかわからない野心家な男だと、噂でお聞きしました(そんな噂はないけれど)」

 さすがのルドヴィク様も、これだけ言われるとその気になったのか、兵士を呼ぶ。

「調べてこい」
「調べて終わりなんて、甘いですわ」
「しかし……」

 ルドヴィク様はいつもこう。
 セレーネの時もそうだった。
 最後まで追わず、死を見届けることもなく、逃がした。
 
 ――今回ばかりは、そうはさせない。

 ロゼッテの王位がかかっているのだ。

「謀反の疑いがあるようなら、ザカリア王弟殿下を捕らえなさい!」

 再度、兵士に命じた。

「疑いで捕らえるのか? もし、勘違いだったら、ザカリアになんと言い訳するつもりだ」

 ルドヴィク様は嫌そうな顔をしたけど、相手はザカリア様。
 ここまでやらなければ、安心できない。

「なんとでも言えるでしょ。間違いでしたとでも、言っておけばいいのよ」

 ルドヴィク様はため息をつき、面倒そうな顔をして、わたくしとロゼッテから離れていった。
 最近、ずっとこんな調子だった。

「ねえ、ロゼッテ。お父様がなんて思っていたかわかるかしら?」
「ううん。わかんな~い」

 ロゼッテの力は不安定で、心を読める時と読めない時がある。
 ルドヴィク様の本心が知りたいのに、なんて役に立たないのかしら。

「ロゼッテ。お父様の心をちゃんと読むのよ! 特にセレーネの名前が出たら、すぐに教えなさい」
「う~ん……わかったぁ」
「ロゼッテのために、お母様は頑張っているんだから、ロゼッテも協力するのよ?」

 わかっているのか、わかっていないのか、ロゼッテは首を縦に振った。

 ――ザカリア王弟殿下。七年前も、わたくしを邪魔した目障りな男。
 
 七年前、セレーネが行方不明になった時も王宮にいた。
 逃がしたのは、あの男に決まってる。
 
「ふん。でも、ここで終わりよ。謀反の罪を着せて、領地を没収してやるわ」

 ザカリア様の領地は魅力的だった。
 わたくしに貢がせていた貴族たちも、最近では財産を隠すようになり、国王陛下に呼ばれない限り、王宮に寄り付かなくなった。 
 あの豊かな領地の収入も欲しい――

「ロゼッテ。ザカリア様を捕らえ、ここに連れて来られたら、あなたを殺そうとしていると言うのよ?」
「どうして?」
「ザカリア様は、あなたを女王にさせたくないと思ってる悪い人間だからよ」
「えー。こわーい」
「そう、とっても怖い人」

 ロゼッテは怯えていたけど、これくらい言っておかないと、ザカリア様に勝てない。

「セレーネの居場所も知っているかもしれないし、ちょうどいいわ」

 領地を奪い、セレーネの居場所を吐かせて、奴隷になるか、死ぬか、選ばせてあげるわ。
 これで、わたくしに逆らえる者はいなくなる。
 自分の勝利を確信していた。
  
 ――七年ぶりの再会が近づいていた。
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