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初ニャンジョンボス!
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俺の名前はケビン。探索者となってすでに5年。時にパーティーを組んだりした事もあったが、いろいろあって今は1人になって探索を続けている。
まあ、男女が絡むといろいろあるものだ。
ダンジョンで手に入るお宝は一攫千金を狙うものに取っては非常に有り難い。出てくる魔物を退治して拾える魔石にだってそれなりの価値がある。
この世界にはいろいろなダンジョンがある。俺は様々なダンジョンに潜ってきた。まあ、最奥に到達したものは両手で数える位しか無いが…。
そして今日、噂のニャンジョンがあるという街へやって来た。ここは今だに誰も攻略したことが無いという、絶対に死なないという超安全で超初心者向きのダンジョンなのに難易度Sという誠におかしな噂の流れているダンジョンだ。
まずは情報収集をするが、何故か極端に情報が少ない。ただ「絶対安全ではある」と皆太鼓判を押す。しかし中毒性があるから行かない方が良いとまで言う者もいる。中毒性ってなんだ?
どんな魔物が出るのかと聞くと、何故か皆顔を背ける。「絶対に信じないだろうから」と。
どんな魔物が出てくるのだろう? 情報は少ないが、一度潜ってみて様子を見ようと考えた。
なにせ1階層さえ攻略されていないというのだ。難しいのか簡単なのかよく分からない。
入場料を払い、中へと足を踏み入れる。レンガ造りで明かりもある。歩きやすいダンジョンだ。いや、ニャンジョンか。
「! 何かいる?」
気配に気付き、左手の通路を覗き込むと、
「えへへへ~。今日は煮干しだよ~。美味しい~?」
「うにゃうにゃ」
猫に餌付けしている女の子がいた。
何故こんなところで猫とよろしくやっているのだ?
そう思いながら別の道へと進んでいった。そして別の道でも、
「さあどうぞ! 最高級の削り節を取り寄せました!」
「いやいやこちらこそ! 最高級のマタタビでございます!」
数匹の猫に囲まれてにやけている探索者達がいた。
なんとなく別の道へ行く。
そんな光景をあちらこちらで見かける。そういえば魔物らしき魔物の姿が無い。そしてニャンジョンという名前…。
「ここは、猫しか出てこないダンジョンなのか…?」
確かに、どんな魔物が出てくるかと問われて「猫」と答えるのは心苦しいかも知れない。それにそれを聞いて信じたかどうか…。
いや、信じられないだろうな…。だから皆顔を背けるんだ…。
あちらこちら歩き回って、にやけた探索者達を何人も見て、
(帰ろう)
そう思った。
(そういえば、マッピングを忘れていたな…)
にやけた探索者達に呆気に取られ、基本的なことがおざなりになってしまっていた。しかしそんなに広いダンジョンでもない。食料も少し多めに持ってきている。
俺は落ち着いて通路を歩き出す。
「ん?」
十字路の右手に、いかにもな扉が見えた。
「まさか…、ボス部屋か?」
こんなダンジョンのボスとはどういうのもだろう? 気になる。しかし単独でなんの情報もなしに飛び込むのはさすがに危険だろう。
しかし、俺の足は右手に向いていた。好奇心が勝ってしまった。
ボス部屋の扉を開ける。
勝手に閉まって閉じ込められる系ではないらしい。途中撤退が出来るのはありがたい。
用心しつつ、愛用の剣を抜く。どこからボスが現われるのか、辺りに気を配る。
それは部屋の真ん中にいた。
「みう」
5匹ほど。
目が開いたばかりという感じの子猫が塊になっていた。
「みう」
母を求めるかのように鳴いている。
え? これがボス?
「みう」
頭が重いのかフラフラしている。あああ、そんなヨタヨタと…。
しかし母猫はどこへ行ったんだ? いないのか? どこかに出掛けているのか?
探索者達からご飯をもらっている猫達の中にいたのだろうか?
いやいや、ボスだとしたら、母猫などいるのか?
分からない。答えが見えない。
「みう」
これがボス? これを倒せと?
その気になれば一撃で皆倒せるだろう。倒せるだろうが…。
「で、出来ない…」
こんな、こんないたいけな子猫をーーーーーー!!
その日から、足繁くニャンジョンに通うケビンの姿が見られるようになった。
何故か山羊乳を持って行くことから皆に不思議がられたが、どこの部屋に通っているのかは誰にも喋らなかったそうだ。
まあ、男女が絡むといろいろあるものだ。
ダンジョンで手に入るお宝は一攫千金を狙うものに取っては非常に有り難い。出てくる魔物を退治して拾える魔石にだってそれなりの価値がある。
この世界にはいろいろなダンジョンがある。俺は様々なダンジョンに潜ってきた。まあ、最奥に到達したものは両手で数える位しか無いが…。
そして今日、噂のニャンジョンがあるという街へやって来た。ここは今だに誰も攻略したことが無いという、絶対に死なないという超安全で超初心者向きのダンジョンなのに難易度Sという誠におかしな噂の流れているダンジョンだ。
まずは情報収集をするが、何故か極端に情報が少ない。ただ「絶対安全ではある」と皆太鼓判を押す。しかし中毒性があるから行かない方が良いとまで言う者もいる。中毒性ってなんだ?
どんな魔物が出るのかと聞くと、何故か皆顔を背ける。「絶対に信じないだろうから」と。
どんな魔物が出てくるのだろう? 情報は少ないが、一度潜ってみて様子を見ようと考えた。
なにせ1階層さえ攻略されていないというのだ。難しいのか簡単なのかよく分からない。
入場料を払い、中へと足を踏み入れる。レンガ造りで明かりもある。歩きやすいダンジョンだ。いや、ニャンジョンか。
「! 何かいる?」
気配に気付き、左手の通路を覗き込むと、
「えへへへ~。今日は煮干しだよ~。美味しい~?」
「うにゃうにゃ」
猫に餌付けしている女の子がいた。
何故こんなところで猫とよろしくやっているのだ?
そう思いながら別の道へと進んでいった。そして別の道でも、
「さあどうぞ! 最高級の削り節を取り寄せました!」
「いやいやこちらこそ! 最高級のマタタビでございます!」
数匹の猫に囲まれてにやけている探索者達がいた。
なんとなく別の道へ行く。
そんな光景をあちらこちらで見かける。そういえば魔物らしき魔物の姿が無い。そしてニャンジョンという名前…。
「ここは、猫しか出てこないダンジョンなのか…?」
確かに、どんな魔物が出てくるかと問われて「猫」と答えるのは心苦しいかも知れない。それにそれを聞いて信じたかどうか…。
いや、信じられないだろうな…。だから皆顔を背けるんだ…。
あちらこちら歩き回って、にやけた探索者達を何人も見て、
(帰ろう)
そう思った。
(そういえば、マッピングを忘れていたな…)
にやけた探索者達に呆気に取られ、基本的なことがおざなりになってしまっていた。しかしそんなに広いダンジョンでもない。食料も少し多めに持ってきている。
俺は落ち着いて通路を歩き出す。
「ん?」
十字路の右手に、いかにもな扉が見えた。
「まさか…、ボス部屋か?」
こんなダンジョンのボスとはどういうのもだろう? 気になる。しかし単独でなんの情報もなしに飛び込むのはさすがに危険だろう。
しかし、俺の足は右手に向いていた。好奇心が勝ってしまった。
ボス部屋の扉を開ける。
勝手に閉まって閉じ込められる系ではないらしい。途中撤退が出来るのはありがたい。
用心しつつ、愛用の剣を抜く。どこからボスが現われるのか、辺りに気を配る。
それは部屋の真ん中にいた。
「みう」
5匹ほど。
目が開いたばかりという感じの子猫が塊になっていた。
「みう」
母を求めるかのように鳴いている。
え? これがボス?
「みう」
頭が重いのかフラフラしている。あああ、そんなヨタヨタと…。
しかし母猫はどこへ行ったんだ? いないのか? どこかに出掛けているのか?
探索者達からご飯をもらっている猫達の中にいたのだろうか?
いやいや、ボスだとしたら、母猫などいるのか?
分からない。答えが見えない。
「みう」
これがボス? これを倒せと?
その気になれば一撃で皆倒せるだろう。倒せるだろうが…。
「で、出来ない…」
こんな、こんないたいけな子猫をーーーーーー!!
その日から、足繁くニャンジョンに通うケビンの姿が見られるようになった。
何故か山羊乳を持って行くことから皆に不思議がられたが、どこの部屋に通っているのかは誰にも喋らなかったそうだ。
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