265 / 296
はぐれ闇オルト編
輸血
しおりを挟む
「輸血とは、他人の血を入れる事ですわ」
シアが簡潔に話し出す。
「今のように大量に血を流された時などに用いられる技ですわ。とても難しいので巫女の中でも一部の者しか出来ません。私はもちろん出来ますけれど」
無い胸を張る。
「人が血を流しすぎると死ぬことはご存じですよね? ですからそれを他人の血で補うのですわ」
「あたしの! あたしの血を取って!」
「お待ち下さい」
前のめりになるメリンダを制する。
「血には型があることが分かっております。下手に他人の血を入れてもそれが原因で死んでしまうことがあるのです。ですからまずは血を調べさせて下さいませ」
「分かったわ。早くして」
早く調べろとメリンダが急かす。
「分かりましたわ。では指を出して下さいませ」
メリンダが右手を上にして差し出した。シアが水で針を作り、メリンダの人差し指をちくりと刺す。すぐにぷくりと赤い血が沸き出してきた。それをシアはペロリと舐めた。
ちょっとビクリとなったメリンダだったが、動かずに大人しくしている。
「次は念の為テルディアス様もよろしいですか?」
ちょっと渋々という感じではあったが、テルディアスも大人しく手を出した。同じようにしてシアが血を舐める。
「次はキーナさんを」
キーナの側に移動し、また血を舐める。
「ダンも見て来ますわ」
そう言ってダンの元へ走って行き、すぐに帰って来た。
再びサーガの側に座り込む。
「分かりましたわ。私とテルディアス様が同じ1型。メリンダさんが2型。キーナさんとダンが0型。そして、サーガさんが複合型となります」
「つまり、サーガと同じ型の人はいないってこと?」
メリンダの顔色がますます悪くなる。
「はい。同じ型の人はいらっしゃいませんが、幸運なことに複合型の方はこの場にいる全員から輸血することも可能です」
「そうなの?」
「はい。サーガさんの血液の型は少し特殊なのです。ですから、メリンダさんからも輸血することができ…」
「早くやって!」
メリンダが両手をシアに向かって突き出してきた。その迫力に少し仰け反るシア。
「わ、分かりましたわ…。ではそこに横になって下さいませ。血を抜くと貧血状態になりますので、起きたままですと危ないので…」
言っている途中ですでに横になるメリンダ。
「いいわよ!」
準備は万端である。
「わ、分かりましたわ…」
シアが水を操作し始めた。
テルディアスも見たことがない魔法なので、食い入るようにその動きを見つめている。
「楽にしていて下さいませ。動くと危ないですから」
「分かったわ」
メリンダが目を閉じた。
シアが立ち上がり、メリンダの側へと寄ると腕を確かめ始めた。
「ここがよろしそうですね。少し痛いと思いますがしばらく我慢して下さいませ」
「分かったわ」
メリンダが答えるが早いか、水の針がメリンダの腕に突き刺さった。
針の中心に赤い線が走る。針の尻の部分が徐々に膨らんでいき、赤い液体がその中に溜まっていく。
不思議な光景にテルディアスも目を離せない。
「これくらいかしら? メリンダさん、気分はどうです?」
「…大丈夫よ」
「無理はなさらないで下さいませ。貴女が倒れても誰も輸血出来ませんですのよ」
メリンダが黙り込んだ。
「このくらいでよろしいですわね」
そうシアが言うと、水の張りがメリンダの腕から抜けた。すぐにシアが回復魔法を掛ける。
「ここからは繊細な作業になりますから。静かにしていて下さいまし」
シアがサーガの側へと移動する。メリンダが起き上がろうとするが、やはり血を抜かれたせいか頭がふらついている。珍しくテルディアスがその体を支えてやった。
「悪いわね…」
「いや…」
テルディアスも気遣いというものを覚えたのだろうか。それともサーガに対する贖罪の気持ちだろうか。
メリンダとテルディアスが見つめる中、シアが集中し始める。そして、宙に浮かんだ血液を内包した水の球から、細く管のような水が伸びていく。それが傷口を覆っていた水と結合。そしてその水の管の中を、血液がするすると流れ始めた。
ゆっくりとゆっくりと、血液が流れていく。
唾を飲みこむのも躊躇われるようなその雰囲気に、知らず知らず2人も息を潜める。
ジリジリと、本当に流れているのかと疑いたくなるような長い時間をかけ、少しずつ少しずつ血液の球は小さくなっていった。
そして球が萎み、最後の一滴を追うように水の管も短くなっていく。それが傷口を覆う水と結合すると、シアが思い切り息を吐いた。
「っはあああああああ! 疲れましたわ!!」
両手を地面に突き、肩で息をするシア。
「こ、これで、大丈夫、なの?」
「完全に傷が癒えたわけではありませんが、血液が補充されましたし、少しは保つと思いますわ。まだ予断は許しませんが、あとはダンが目覚めるのを待つだけですわ」
「ダンが…」
ダンの方へ頭を向け、メリンダがよろめく。
「メリンダさんも横になっていて下さいませ。しばらくは貧血状態が続きますから」
「そうなのね…。じゃあ、お言葉に甘えて横にならせて貰うわ…」
メリンダが素直に体を横たえた。固い地面の上だが贅沢は言っていられない。
「ダンを担いでくるか…」
ダンだけ離れた所で倒れているのもあまりよろしくない。テルディアスも多少体力が復活したので、巨体のダンを運んでこようと腰を上げた。
「よろしくお願いしますわ。私、まだしばらくサーガさんから離れられませんの」
今のサーガの状態を保つのに気が抜けないらしい。
シアの状態を少し心配に思いつつ、テルディアスはダンの元へと向かった。ふと思いついて闇の者のオルト達の方へ視線をやると、いつの間にかその姿は消え去っていた。どうやら多少戻った魔力か体力か、開けっぴろげのこの場から移動したらしい。すぐに危害を加えてくることもないだろう。テルディアスはダンの元へと行き、その大きな体を担ぎ上げた。
重かった。
日が暮れかけてきた頃、ダンが眼を覚ました。
「良かったですわ。早く、サーガさんを…」
言いかけてふらつくシア。ずっと集中を保っていたので疲れているのだろう。
ダンが慌ててシアを支え、すぐにサーガの治療に専念し始める。さすがは治療のエキスパート。みるみる傷口が塞がっていく。それを見てほっとした顔になったメリンダ。多少顔色は悪いものの、メリンダも大丈夫そうだ。
しかし、ダンはまだ回復しきっていなかったようで、治療が終わるとすぐにまた倒れ込んだ。
「荷物…、野営…」
「分かった。取ってくる」
念の為ダンが昨日野営した所の近くに荷物を隠してきたのだ。その詳細な場所を聞き、テルディアスが取りに行った。
さすがに皆まともに動けなかったのでそのまま携帯食料で腹を誤魔化す。眠っているサーガとキーナはそのままに、いや、サーガは俯せで苦しそうだったので、治療も終わったことだしと仰向けにしてやった。いずれ眼を覚ますだろう。
比較的元気?なテルディアスが見張りを一手に引き受け、皆を休ませた。メリンダは貧血、ダンとシアは魔力欠乏、サーガとキーナは眠ったまま。どう考えてもテルディアスしかいない。
簡単に薪を集め、乏しいながらも焚き火を焚いた。しかし場の異様な雰囲気を感じたのか、開けっ広げのその場所に妖魔はおろか、獣さえ姿を見せなかったのだった。
夜明け前、眼を覚ましたキーナ。
体を起こすとテルディアスだけが起きていた。
「起きたか?」
いつもの優しい瞳で心配そうにキーナを見て来た。
「テル…」
ぼんやりした頭でいろいろ考える。どうして自分は眠っていたのだろうと。そして思い起こされる記憶。
「…! サーガは?!」
「大丈夫だ」
テルディアスが顎で示した方を見ると、穏やかな顔をして眠るサーガいた。
ほっと胸をなで下ろすキーナ。他の面々も疲れたような顔をして眠っていた。起こさないようにそっとテルディアスの側ににじり寄る。
「テルも、大丈夫なの?」
「ああ。すまなかったな。俺が不甲斐ないばかりに」
「そんなことないよ。闇の者でしょ。いくらテルでも敵わないでしょう」
テルディアスの胸にグサリと見えない矢が突き刺さった。知らず人の気にしていることをぐりぐりと抉るキーナ。
「でも、皆無事で良かった…」
キーナが嬉しそうに皆の顔を見回す。
「そうだな…」
テルディアスもぽつりと呟いた。
それから、キーナがテルディアスが攫われた後から、自分が暴走するまでの経緯を語り、テルディアスがその後の経緯を語った。
シアが簡潔に話し出す。
「今のように大量に血を流された時などに用いられる技ですわ。とても難しいので巫女の中でも一部の者しか出来ません。私はもちろん出来ますけれど」
無い胸を張る。
「人が血を流しすぎると死ぬことはご存じですよね? ですからそれを他人の血で補うのですわ」
「あたしの! あたしの血を取って!」
「お待ち下さい」
前のめりになるメリンダを制する。
「血には型があることが分かっております。下手に他人の血を入れてもそれが原因で死んでしまうことがあるのです。ですからまずは血を調べさせて下さいませ」
「分かったわ。早くして」
早く調べろとメリンダが急かす。
「分かりましたわ。では指を出して下さいませ」
メリンダが右手を上にして差し出した。シアが水で針を作り、メリンダの人差し指をちくりと刺す。すぐにぷくりと赤い血が沸き出してきた。それをシアはペロリと舐めた。
ちょっとビクリとなったメリンダだったが、動かずに大人しくしている。
「次は念の為テルディアス様もよろしいですか?」
ちょっと渋々という感じではあったが、テルディアスも大人しく手を出した。同じようにしてシアが血を舐める。
「次はキーナさんを」
キーナの側に移動し、また血を舐める。
「ダンも見て来ますわ」
そう言ってダンの元へ走って行き、すぐに帰って来た。
再びサーガの側に座り込む。
「分かりましたわ。私とテルディアス様が同じ1型。メリンダさんが2型。キーナさんとダンが0型。そして、サーガさんが複合型となります」
「つまり、サーガと同じ型の人はいないってこと?」
メリンダの顔色がますます悪くなる。
「はい。同じ型の人はいらっしゃいませんが、幸運なことに複合型の方はこの場にいる全員から輸血することも可能です」
「そうなの?」
「はい。サーガさんの血液の型は少し特殊なのです。ですから、メリンダさんからも輸血することができ…」
「早くやって!」
メリンダが両手をシアに向かって突き出してきた。その迫力に少し仰け反るシア。
「わ、分かりましたわ…。ではそこに横になって下さいませ。血を抜くと貧血状態になりますので、起きたままですと危ないので…」
言っている途中ですでに横になるメリンダ。
「いいわよ!」
準備は万端である。
「わ、分かりましたわ…」
シアが水を操作し始めた。
テルディアスも見たことがない魔法なので、食い入るようにその動きを見つめている。
「楽にしていて下さいませ。動くと危ないですから」
「分かったわ」
メリンダが目を閉じた。
シアが立ち上がり、メリンダの側へと寄ると腕を確かめ始めた。
「ここがよろしそうですね。少し痛いと思いますがしばらく我慢して下さいませ」
「分かったわ」
メリンダが答えるが早いか、水の針がメリンダの腕に突き刺さった。
針の中心に赤い線が走る。針の尻の部分が徐々に膨らんでいき、赤い液体がその中に溜まっていく。
不思議な光景にテルディアスも目を離せない。
「これくらいかしら? メリンダさん、気分はどうです?」
「…大丈夫よ」
「無理はなさらないで下さいませ。貴女が倒れても誰も輸血出来ませんですのよ」
メリンダが黙り込んだ。
「このくらいでよろしいですわね」
そうシアが言うと、水の張りがメリンダの腕から抜けた。すぐにシアが回復魔法を掛ける。
「ここからは繊細な作業になりますから。静かにしていて下さいまし」
シアがサーガの側へと移動する。メリンダが起き上がろうとするが、やはり血を抜かれたせいか頭がふらついている。珍しくテルディアスがその体を支えてやった。
「悪いわね…」
「いや…」
テルディアスも気遣いというものを覚えたのだろうか。それともサーガに対する贖罪の気持ちだろうか。
メリンダとテルディアスが見つめる中、シアが集中し始める。そして、宙に浮かんだ血液を内包した水の球から、細く管のような水が伸びていく。それが傷口を覆っていた水と結合。そしてその水の管の中を、血液がするすると流れ始めた。
ゆっくりとゆっくりと、血液が流れていく。
唾を飲みこむのも躊躇われるようなその雰囲気に、知らず知らず2人も息を潜める。
ジリジリと、本当に流れているのかと疑いたくなるような長い時間をかけ、少しずつ少しずつ血液の球は小さくなっていった。
そして球が萎み、最後の一滴を追うように水の管も短くなっていく。それが傷口を覆う水と結合すると、シアが思い切り息を吐いた。
「っはあああああああ! 疲れましたわ!!」
両手を地面に突き、肩で息をするシア。
「こ、これで、大丈夫、なの?」
「完全に傷が癒えたわけではありませんが、血液が補充されましたし、少しは保つと思いますわ。まだ予断は許しませんが、あとはダンが目覚めるのを待つだけですわ」
「ダンが…」
ダンの方へ頭を向け、メリンダがよろめく。
「メリンダさんも横になっていて下さいませ。しばらくは貧血状態が続きますから」
「そうなのね…。じゃあ、お言葉に甘えて横にならせて貰うわ…」
メリンダが素直に体を横たえた。固い地面の上だが贅沢は言っていられない。
「ダンを担いでくるか…」
ダンだけ離れた所で倒れているのもあまりよろしくない。テルディアスも多少体力が復活したので、巨体のダンを運んでこようと腰を上げた。
「よろしくお願いしますわ。私、まだしばらくサーガさんから離れられませんの」
今のサーガの状態を保つのに気が抜けないらしい。
シアの状態を少し心配に思いつつ、テルディアスはダンの元へと向かった。ふと思いついて闇の者のオルト達の方へ視線をやると、いつの間にかその姿は消え去っていた。どうやら多少戻った魔力か体力か、開けっぴろげのこの場から移動したらしい。すぐに危害を加えてくることもないだろう。テルディアスはダンの元へと行き、その大きな体を担ぎ上げた。
重かった。
日が暮れかけてきた頃、ダンが眼を覚ました。
「良かったですわ。早く、サーガさんを…」
言いかけてふらつくシア。ずっと集中を保っていたので疲れているのだろう。
ダンが慌ててシアを支え、すぐにサーガの治療に専念し始める。さすがは治療のエキスパート。みるみる傷口が塞がっていく。それを見てほっとした顔になったメリンダ。多少顔色は悪いものの、メリンダも大丈夫そうだ。
しかし、ダンはまだ回復しきっていなかったようで、治療が終わるとすぐにまた倒れ込んだ。
「荷物…、野営…」
「分かった。取ってくる」
念の為ダンが昨日野営した所の近くに荷物を隠してきたのだ。その詳細な場所を聞き、テルディアスが取りに行った。
さすがに皆まともに動けなかったのでそのまま携帯食料で腹を誤魔化す。眠っているサーガとキーナはそのままに、いや、サーガは俯せで苦しそうだったので、治療も終わったことだしと仰向けにしてやった。いずれ眼を覚ますだろう。
比較的元気?なテルディアスが見張りを一手に引き受け、皆を休ませた。メリンダは貧血、ダンとシアは魔力欠乏、サーガとキーナは眠ったまま。どう考えてもテルディアスしかいない。
簡単に薪を集め、乏しいながらも焚き火を焚いた。しかし場の異様な雰囲気を感じたのか、開けっ広げのその場所に妖魔はおろか、獣さえ姿を見せなかったのだった。
夜明け前、眼を覚ましたキーナ。
体を起こすとテルディアスだけが起きていた。
「起きたか?」
いつもの優しい瞳で心配そうにキーナを見て来た。
「テル…」
ぼんやりした頭でいろいろ考える。どうして自分は眠っていたのだろうと。そして思い起こされる記憶。
「…! サーガは?!」
「大丈夫だ」
テルディアスが顎で示した方を見ると、穏やかな顔をして眠るサーガいた。
ほっと胸をなで下ろすキーナ。他の面々も疲れたような顔をして眠っていた。起こさないようにそっとテルディアスの側ににじり寄る。
「テルも、大丈夫なの?」
「ああ。すまなかったな。俺が不甲斐ないばかりに」
「そんなことないよ。闇の者でしょ。いくらテルでも敵わないでしょう」
テルディアスの胸にグサリと見えない矢が突き刺さった。知らず人の気にしていることをぐりぐりと抉るキーナ。
「でも、皆無事で良かった…」
キーナが嬉しそうに皆の顔を見回す。
「そうだな…」
テルディアスもぽつりと呟いた。
それから、キーナがテルディアスが攫われた後から、自分が暴走するまでの経緯を語り、テルディアスがその後の経緯を語った。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる