キーナの魔法

小笠原慎二

文字の大きさ
上 下
236 / 296
黒い穴編

ラブコメのお約束

しおりを挟む
キーナが眠ってしまったので、一行は村から少し離れた所で今日は休むことになった。
キーナがどれくらいで起きるかはテルディアスにも分からない。ただ、大きな力を使うほどに長く眠ることは分かっていた。今回は下手すると明日の朝くらいまで目覚めないかもしれない。
夜中にキーナが目覚めても良いように、念の為テルディアスが寝ずの番を務めた。
え?サーガも協力しろ?
そこはほら、キーナの事を慮ってメリンダが気を使った結果なのだ。
しかしキーナは目覚める事なく、翌日の昼過ぎまで眠り続けていた。

「おふぁよ~…メリンダさん」
「おはようキーナちゃん」

隣のベッドに腰掛け、キーナをみていたメリンダ。キーナが起きたのを見てほっとする。

「キーナちゃん、お腹空いたでしょ」
「そういえば…」

キーナのお腹がぐうと鳴った。素直なお腹である。
地下から出ると、ダンが食事の準備をしてくれていた。起きたことを察知したサーガがダンに伝えたのだ。

「起きたか、キーナ」
「おう、キーナ、おそよう」

ダンはキーナを見て軽く頭を下げた。

「おはよう…。て、今何時?」

なんだか陽が高い気がする。

「丸一日寝ていたぞ」
「え?! 丸一日?!」

ぐう

お腹から抗議の声が上がる。
とにかくお腹の声を鎮める為に、キーナはダンが作ってくれたお昼を頂いたのだった。

「力使った後って凄く疲れるのよね」

お腹は満足したらしく、大人しくなった。というか、食べ過ぎてちょっと苦しいくらいだ。
お腹をさすりながら、キーナは穴を見上げた。
光の檻に囲まれた穴はもう大きくはなってはいない。一応侵蝕は止められた。今はこれ以上は何もできない。

「結局、あれはなんなんだ? 闇とは違うのか?」

サーガが聞いて来た。

「う~ん、僕も詳しくは分からないけど、僕の知識であれを現わす言葉となると…、「虚無」が一番適当な言葉かな?」
「虚無?」
「うん。一切の無。何もないこと」
「何もない? 何もないって闇じゃないの?」

メリンダが聞いて来た。

「う~ん、闇って結局、そこに闇があるってことでしょ? あれはそれもないの。な~んにもない。そこに有るものは存在しない、空っぽ」

皆首を傾げている。キーナもどう説明すれば良いのか首を傾げる。

「え~と、この世界って光と闇が作ったものなんでしょ? たしかそれを四大精霊が回してるんだよね? つまり、光と闇があるから世界があるんだよね?」

頷く。

「つまり、光と闇は「在る」もの。ただ、お互いがお互いに確認し合わないとその存在を確認できないけど。まあだからこそそこに「在る」とわかり合える」

頷くような頭を傾げるような…。

「え~と、影があるからこそ、そこに光があって闇があるって分かるよね? 光しかなければそこに影は存在しないし、闇しかなければやっぱり影は見られない。お互いがあるからこそお互いを確認できるよね」

頷いた。
人が己というものを認識するのは、他人という存在があるからだ、という話を聞いた事がある。「他者」を認識することによって「自分」を認識できるのだ。

「だから、闇は「ある」ってことなのさ。光と闇は存在するもの。そして「有」の裏には「無」がある」

む?
首を傾げる。

「「有る」空間と「無い」空間…、無い空間ていうのも変だけど…。物事には表と裏みたいなことが必ずあって、例えるならこの掌の方が今僕達がいる、有る世界。そして裏が何も無い世界、みたいな?」

キーナが片手を表にしたりひっくり返してみる。
分かったような分からんような…。

「で、有るほうの世界が今、バランスが崩れて来てるの。そうするとこの2つの世界は表と裏で均衡が取れてたはずなのに、表の方が均衡が崩れてきてるから、こうなってきてる」

キーナがゆっくりと指を丸め始める。全て閉じるではなく、途中で止まる。

「このまま行くと、この世界はいずれこうなる。そして、最終的には何かも消える」

キーナが指を丸めて拳を作った。そしてぱっと弾けるように手を開く。

「「「・・・・・・」」」

誰も何も言わなかった。
というか、話が大きくなりすぎて、頭が付いていけなかったのである。
突然、

「明日世界は滅びます」

などと言われてそれを信じられる者などいないだろう。

「う~ん、分かんないかなぁ…?」

キーナもどうしたら上手く説明できるのか分からない。

「いや、分かったというか、分からんというか…」
「まあ、なんとなくは…」

サーガとメリンダが視線を合わせる。なんとなく分かったけれど、なんとなく分からない。

「つまり、あれは、その「虚無」とかいうものなのか?」

テルディアスが穴を指さした。

「うん。その一角。ここは歪みが酷くてこれだけ大きくなっちゃったみたいだけど」
「歪み?」
「うん。だから、この世界の均衡が崩れて来てるんだってば。今世界中でこれと同じ物が出来始めてるはずだよ」
「これと、同じ物?」
「うん。まだ小さくて発見されてないか、人里離れたところに出来てるのかは知らないけど、あちこちに」

その話は皆理解出来たようで、一様に青ざめた。

「僕もさっき思い出したっていうか、記憶が蘇ったって言うか、あれをやった時に分かったの。光と闇の御子は、あれを塞ぐのが仕事なの。どちらかが欠けてても、あの穴は塞げないの」
「つまり、闇の御子が見つからなければ…」
「世界は消滅の道を歩むってこと」

キーナの答えに、一同青ざめたまま固まった。
世界の存亡など、話が大き過ぎて精神が付いていけない。
キーナも皆の顔を見回して、それをなんとなく理解したようで、

「ちょっと腹ごなしに散歩してくるね」

そう言って立ち上がった。
ブラブラと村の方へ歩いて行く。
村ならば穴も進行が止まっているし、それほど危険は無いだろう。

「! キーナ…」

過保護極まれりのテルディアスはそれでも心配だったようで、衝撃が去った途端にキーナの後を追い始めた。あまり纏わり付き過ぎると嫌われるよ?

「話が大きくなったなぁ…」
「そうねぇ…」

まだ若干遠くを見つめたままのサーガとメリンダ。世界規模の話になってしまい、まだ追いつけていないようだ。
ダンは…無表情だった。何を考えているのか分からないが、微妙に視線が遠い気がする。此奴もまだ戻って来ていないようである。

「世界が消滅ねぇ…。姐さん信じられる?」
「キーナちゃんが言ったことだし、目の前にあれもあることだし、信じないわけにもいかないでしょう」
「そうだよなぁ」

信じたくはないが、信じないわけにはいかない。
奇跡の存在と呼ばれている光の御子本人が語ったことなのだ。そして目の前にある、光の檻に捕らわれている、穴。
信じる信じないの話ではないことくらいは分かるが、気持ちとしては信じたくない。

「俺、なんでここにいんだろ」
「キーナちゃんと出会ったからよ」
「そうね」

全てはキーナと出会ったことから始まったのだ。
















ブラブラと村の中を歩き、穴の近くまでやってくる。

「近づき過ぎると危ないんじゃないのか?」
「テル」

振り向けばそこにテルがいた。立派なストーカーになれそうだ。

「一応ね。仕上げを確かめに」

穴を覆う光の檻を見上げる。綺麗に張り巡らされていて、こんな状況でなければ綺麗だなと見とれていたくなる。
穴の進行はしっかり止まっていてぴくりともしていない。これならば大丈夫だろう。
だがしかし、きっと世界中にこんな穴が出来始めている。

(僕がトロトロしてたから…)

もっと必死になって闇の御子を探さなければならなかったのだろうか。しかしどこにいるとも分からないのに、どうやって探せば良いのか。
出会うことが出来ればすぐに分かる。それだけしか分からない。なんの手掛かりもない。

(ううん。手掛かりなら…)

闇の魔女。もしかしたら彼女が何か手掛かりなのかもしれない。

(でも違うかもしれない…)

せめてヒントが欲しい。男なのか女なのか。せめてどこに、どの辺りにいるのか…。

(ああ、一つ手掛かりはあるか…)

闇に愛された者、つまり黒髪に黒い瞳。それだけは分かる。思い出してみれば魔女も黒髪に黒い瞳だった。

(やっぱりそうなのかな…)

彼女を見ても何も感じなかった。しかしここまで来たら彼女しか思い当たる者はない。

「キーナ?」

キーナの顔がどんどん暗くなっていくのを心配して、テルディアスがキーナの肩に手を置いた。

「テル…」

テルディアスを見上げると、心配そうに覗き込んでくる黒い瞳。

(そういえば、テルも瞳は黒いんだっけ…)

元の姿は見たことはないが、確か黒い髪だと言っていた気がする。

(テルだったら良かったのに…)

そうしたら、一緒にいる理由も出来る。それに、テルディアスだったらやっぱり嬉しい。全く知らない人よりも、一緒にいて安心できるテルディアスだったらどんなに良かったことか。

(でも…。違うんだよな…)

何かが違う。何か足りない。だからテルディアスではない。
黒髪黒眼はこの世界では珍しいが、いないわけではない。皆が皆闇の加護を得ているわけではなく、普通に市井で暮らしている人も見てきた。しかしその中にもいなかった。
ついつい大きな溜息を吐いてしまう。

「キーナ? まだ本調子じゃないか?」
「ううん。違うの」

慌てて首を振る。

「テル…」

なんとなく言い出しにくくて、言葉が続かない。

「どうした?」
「あのね…」

一呼吸おいて、キーナは話し出した。

「あの、闇の魔女が、闇の御子かもしれないって…」
「ああ?」

あ、やっぱりテルディアスの顔が歪んだ。大っ嫌いだもんね。

「ででででも、いろいろ考えると、その可能性がなくもないというか、どちらかというとちょっとお高めというか…」
「あんな奴が?」

うん、テルディアス的には認めたくないよねー。でもキーナもできれば違って欲しいと思ってるんだよねー。

「でもほら、闇の御子は女だって話だし、闇の人達にもあのお方なんて呼ばれてるみたいだし…」
「・・・・・・」

これにはテルディアスも反論出来ないようだ。

「だから、その…」
「お前は? どうなんだ?」
「へ?」
「出会えれば分かるんだろ?」
「え、あ、はい」
「で? あいつから何か感じたのか?」
「んにゃ、何も」
「じゃあ違うんじゃないか?」
「え? うん。そうなのか」
「そうだろう」

なんだかあっさり片が付いた気がする。あんなに悩んでいたのに…。

「お前が違うと感じるなら違うんだろう」

そんなきっぱり言われても…。

「まあ、うん…。そうなんだけどね…」
「難しく考えすぎるな。お前は直感で生きてるんだから。直感を大事にしてればいい」
「うん。僕は直感で…。なんか引っ掛かるものを感じる…」
「だから考えるな」

頭にポンと手を置かれる。
なんだかちょっぴり引っ掛かる。見上げたテルディアスの顔は、いつもの優しげな顔。微妙な消化不良を残しつつも、

(まあいっか)

キーナは肩を落とした。ウジウジ考えていても分からないものは分からないのだ。

「うん。考えるのや~めた」
「ああ」

頭をポンポンされた。
何故かテルディアスにそうされるのは嬉しい。もっとやってもらいたい。
キーナはテルディアスに寄りかかった。テルディアスはキーナの肩を抱き止めた。
どっからどう見ても恋人にしか見えないのだが。
悩み事を吹っ切った嬉しさと、そんな感情が高まってつい口から出て来た。

「テルが闇の御子だったらいいのにね」





テルディアスが固まった。
ただ一緒にいれたらという思いで口にしただけだったのだが、それはつまり、

「テルディアスが運命の恋人だったらいいのにね」

と言っているようにも取れる。

(いやいや違う。こいつは何も考えていない…)

テルディアスは昂ぶる感情をなんとか落ち着かせた。





(本当に、テルだったら良かったのに…)

一緒にいてこんなに落ち着けて、頼りがいがあって強くて格好良くて…。物語の常套としては理想の相手ではないかと思う。一番最初に出会って助けてもらって、ほぼずっと一緒に旅をしてきた。

(どうしてテルじゃないんだろう…)

テルディアスを見上げてみた。黒い瞳がこちらを見返してくる。その瞳には、今、キーナの姿しか映っていない。
えも言われぬ歓びがキーナの背筋を走り抜けた。
テルディアスにもたれかかり、肩を抱かれているのでいつもより顔が近い。そして、テルディアスの瞳には今この時だけは、キーナしか映ってはいない。
体の奥から何かが湧き上がってくる。キーナはまだそれの名を自覚していない。
キーナはそうすることが当然のように、顔を上げたまま瞳を閉じた。




キーナが見上げて来た。テルディアスも見つめ返す。
キーナの瞳にはテルディアスしか映っていない。
今この時だけは、キーナを独り占めしている。
なんとも言えぬ高揚感。そして充足感。
もたれかかる体温を感じ、その肩の細さに頼りなさを感じる。

(守りたい…)

切実にそう思う。
この細い肩にどれほどのものがのしかかっているのか。
キーナが瞳を閉じた。まるでそうすることが決まっていたかのように。
テルディアスも何も疑問に思うことなく、いつもより近くなっている顔に、己の顔を近づけて行く。そうすることで、キーナの重荷を取ってやれるように思えた。
知らず肩を抱いている手に力が入る。
唇の位置を確認しつつ、ゆっくりと、ゆっくりと顔を近づける。
鼻息を僅かに感じた。
そして唇と唇が…

パキ・・・

遠ざかった。








小枝が踏まれたような音。その音に我に返ったキーナとテルディアス。お互いに見つめ合って固まったまま、一瞬にしてゆでだこ状態になる。
そして勢いよろしく音の発生源へと2人揃って顔を向けた。

「あ…」
「姐さ~ん…」

メリンダとサーガが、すぐそこにある建物の影からこちらを見ていた。

「き、貴様ら…」
「違うのよ! あたしたちもたまたま散歩に来てて、その、なんとなく通りかかって、その、なんとなく…ね」
「姐さん。苦しいぜ」

たまたま、なんとなく、言い訳に多用される都合の良い言葉ですね。

「メリンダまでも覗き見か。良い趣味をしてるじゃないか…」

テルディアスがスラリと剣を抜き、2人に近づいていく。

「ごめんテルディアス! 悪気があったわけじゃなくて!」
「姐さん! 言い訳無用!」

サーガがメリンダを抱えて走り出した。

「待たんか!!」

テルディアスが2人を追いかけ始めた。
その様子を顔を赤くしたまま見ていたキーナ。さすがに今回はテルディアスを止める気はないようである。

(な、なんだったんだろ、今の…)

両手を頬に当て、今起こったことを思い返してみる。

(なんか、光の宮でも、同じようなことあったよね…)

港街でショックを受けたキーナが口八丁で光の宮に連れて行かれ、やっぱり違うと宮から逃げだそうとした時に現われたテルディアス。見つかりそうになって物置らしき所に逃げ込んだ時に、やっぱりよく分からない引力に引かれて、顔と顔が…。
キーナの顔が余計に赤くなる。

(あ、あのまま行ってたら…)

接吻、キス、チュー、などということになっていただろう。
頭から湯気が出て来そうである。

(な、何かの力が働いていたとしか思えない!)

なんの力だろうねー。

(な、なんであんな流れになっちゃったんだろう…)

自分でもよく分からない。なんとなく、としか言えない。これがいわゆる場の空気、というものなのだろうか。そしてあそこでメリンダが音を出さなければ…。
テルディアスの顔が近づいているのが分かった。テルディアスの長い前髪が顔にかかってくるのが分かった。肩を抱いている手に力が入り、より強く抱きしめられることに高揚した。

(・・・・・・!)

多分あと数ミリ。メリンダの邪魔が入らなければ、触れていただろう。

(・・・・・・!)

なんとなくちょっと惜しい気がして来た。邪魔が入らなければ今頃…。

(いやいやいや、何考えてんの!)

そんな、そんな恥ずかしいことを!
キーナが顔の前でパタパタと考えを打ち消すかのように手を振った。

(でも…)

なんとなく自分の唇に触れてみる。
柔らかい。

(テルの唇も、柔らかいのかしら?)

そんなことを考えて、また顔を赤くする。

(いやいやいや、考えても分からないことは考えない! うん! テルの言うとおりだね!)

そこはもうちょっといろいろ考えて自分の気持ちを自覚した方がいいと思うけど…。
テルディアスの言葉を都合良く置き換えて、キーナは考えないようにした。
それを知ったらあとでテルディアスが泣くかもしれない。まあいっか。
テルディアス達は追いかけっこに興じている。キーナはほっといてダンの元へと向かった。
ちなみにダンは、そんな騒ぎなどお構いなしに、お気に入りのお茶を啜ってのんびりしていたとさ。平和っていいね!














「は~、やっと解放された…」

テルディアスに追いかけられ、メリンダを抱えて走るサーガは結局追いつかれた。そこでいつもの剣戟が始まり、今回ばかりは止めることもできないメリンダは黙ってみているしかなかった。途中何故か降ってきた木の枝に思い切り頭をぶつけたサーガが気絶。そのままお説教タイムとなったのである。
普段口数が少ないくせに、何故お説教となるとああまで弁舌になるのか。

きっとキーナに鍛えられてるせいじゃないか?

しかし今回ばかりはメリンダも悪いと思っているので、甘んじてそれを受けた。もちろん何度も謝り倒した。
なんとか落ち着いたテルディアスに解放され、サーガ共々ダンとキーナがゆったりとお茶を飲んでいる所へと帰って来たのである。

「お帰り、テル」
「ああ」

先に辿り着いたテルディアスがキーナの隣に腰を下ろす。

「キーナちゃん、さっきはごめんね」

メリンダもその隣に腰を下ろそうとした。
ところが、キーナはちらりとメリンダを見ると、すぐにぷいっと顔を背けてしまった。
メリンダの精神に100のダメージ。
気にしていないように見えて、キーナも怒っていたのだ。

「き、キーナちゃん…」
「しばらくメリンダさんとサーガとは口をききたくありません」

メリンダの精神に10000のダメージ!

「あら~、珍しくお怒り?」

サーガの言葉にも何の反応も示さない。
サーガの精神に10のダメージ。サーガは日頃から塩対応されているので慣れている。
呆然と座り込んでしまうメリンダ。キーナ大好きメリンダにとって、キーナに嫌われる事ほど悲しい事はない。

「ごめんなさい…、本当にごめんなさい…キーナちゃん…」

しかしキーナは顔を背けたまま。
メリンダはショックのあまり真っ白になってしまった。

(あ~、こりゃ今は何を言っても無駄だな…)

サーガはキーナがとりあえず落ち着くのを待つことにする。お子ちゃまキーナのことだ。それほどかからずけろっとするだろう。
テルディアスは、

(俺が言うより効果覿面だな…)

メリンダの様子を見て、ちょっと胸がすっとしたテルディアスだった。




キーナの口きかない作戦は翌朝には解除された。メリンダのあまりの憔悴振りにキーナが心配したせいである。
サーガの謝罪もきちんと聞いて、2度とあんな覗くような真似はしないことを約束させたそうな。

…この先、あんな良い雰囲気になることが再びあるのだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

処理中です...