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受難
ほとんどサーガの受難
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(木のツタか…。分かりにくい…)
どうにかこうにか足に絡まっていたものを切って外し、地面に降り立つ。
見ればそれは人が編んで作った縄ではなく、そこら辺の木などにあるツタだった。
気を取り直して森の中を進んで行く。
用心に用心を重ねてさらに用心して…。
「でえっ!」
どんがらどんがら
大きな音を立てながら、一抱えはあろう木の枝が頭上より複数降ってきた。
なんとか跳んで躱す。
ザシュッ
「ひおっ!」
踏み出しかけた足を戻した途端、下から柵が突き上がって来た。
バタン!
「ぬぎぃ…」
突如足元から板がせり上がって来て、左右から挟まれそうになる。
両手でなんとか押さえて潰されることは回避したものの、脱出に少し手間取った。
ズボッ
「うおっ?!」
足元の地面が崩れ、突如穴の中へ。
飛んで回避。穴の中には何も仕掛けられていなかったのは親切心か?
ザザザザザ!
「どあっ!」
メリンダと同じ罠にかかる。
樹上まで吊り上げられたものの、なんとか切って脱出。
ぜいこら、ぜいこら…
数々の罠に、肩で息をつくサーガ。ご苦労である。
(どの罠からもキーナの匂いがしやがる…。まさか、これ、キーナが?)
サーガ達は気付いていなかった。コレ全てキーナが仕掛けたものだと言うことに。
(だがしかし…)
サーガが記憶を辿る。
それはとある街道で、メリンダがお花摘みにちょっといなくなった時。
「ん?」
道の端で、キーナが座り込んでなにやらゴソゴソとやっていた。
「キーナ、何してんだ?」
「お、丁度良い」
何をやっているのだろうと近づいたサーガ。
「丁度良い?」
キーナの言葉に疑問を感じつつも普通に近づいていったらば、突如何かに足を取られた。
ビターン!
見事に地面に激突した。
「お~、本当に引っかかるんだな~」
目をキラキラさせて転がるサーガを見るキーナ。酷い奴だ。
「き、キーナ…」
「漫画で見たこの罠本当に引っかかるか試してみたかったんだ」
とルンルンで言い放つキーナ。本当に酷い奴だ。
キーナの作った罠は、草を結んだだけのもの。そこに足を引っかけるとすっころんでしまうという簡単な罠である。良い子は道端に作ってはいけません。
「キーナ…」
キーナの後ろに、怖い顔のテルディアスが立った。
ビクリとなるキーナ。一応いけないことをしたという自覚はあったらしい。
「お前はまたー!」
「ふにゃ~い」
テルディアスのお説教が始まりました。
(また…?)
痛む顔を自分で治しつつ、サーガはテルディアスの言葉の意味を考えていた。
「ありうる…。絶対にありうる…」
そんなことを思い出し、あの言葉の意味を理解するサーガ。
つまり、以前にもキーナは何かしら罠を仕掛け、それにテルディアスが引っかかったのであろうと。
そしてキーナは懲りずにまた何かしらの罠を仕掛け、しかも自分達をその犠牲、被験者にするつもりだったのだろうと。
サーガが風を操り、キーナの気配を探し始める。木々の間を走り抜けていく。
見つけた。
(森が少し切れた所にキーナとテルディアスの気配…。やっぱりか! しかもテルディアスの野郎、高みの見物決め込んでんな?!)
座り込み、楽しそうに談笑する2人の気配。さすがにイラッとしてしまう。
サーガが思い切り息を吸い込み、腹の底から声を張り上げた。
「キーナァ!! これ仕掛けたの全部お前だろぉ――!!」
その声は森に響き渡り、樹上で揺れていたメリンダにも届いた。
「え? キーナちゃんが?!」
そしてキーナ達の元へも届いた。
「え?! 気付いてなかったの?」
テルディアスのように分かっているものだと思っていたキーナ。
いえ、普通は気付きません。
テルディアスは白い目でキーナを見ている。
「そこで待ってろ!! そこに行ったらお尻ペンペン100回して、その後お尻ナデナデ100回してやるからな――!!」
森中に響き渡った。
「え?」
「させん」
顔を青くして身を震わせたキーナの肩に、ぽんと手を乗せ、アホなことは俺がさせんとテルディアスが首を振った。
サーガが風を纏い、地を蹴る。
このまま飛んで森を抜けてしまえば良いと思って。
(あいつ…、ついでに胸も揉んじゃろうか)
女性ファンがいなくなるよ。え?いない?
ところが、少し上がった所で、何かが体中に引っかかる感じがして止まる。
「ん?」
耳を澄ませば、何かピンピンと何かが切れる音がする。
よくよく見れば、よっく見ないと気付かない程度の細い糸。
「何だ? このい…とべ?!」
ベチン!!
狙い澄ましたかのように、サーガの顔面に勢いよくしなった木の枝がぶつかってきた。
「な…?」
何事かと周りを確認しようとしたらば、
ベチコン! ベチコン! ベチコン!
「いだだだだだ!」
あちらこちらからしなってきた木の枝に叩かれる。
「ひいいっ」
思わず地面へと逃げる。結構地味に痛かった。
「くそぅ…。上空も対策は万全かよ…」
地面に降り立ち、項垂れるサーガ。
となると道は一つしかないわけで。
「こーなりゃ正面突破だ!」
それしかないよね。
「行くぜぇ!!」
サーガが走り出した。
「おお! 頑張れサーガ!!」
その様子を伺っていたキーナが、サーガに(聞こえてないけど)声援を送る。
(お前が言うな)
冷めた目でテルディアスがキーナを見つめていた。
太陽の位置が少し地面に近くなった頃。
ガサリ
キーナの目の前の低木の葉が揺れた。
ガサ…
疲れ切った様子のサーガが姿を現した。
「サーガ! おかえり! ご苦労様!」
キーナが駆け寄る。
本当にご苦労様である。
「キーナ…、そこになおれ…。お尻、ナデナデ…しちゃ…る…」
サーガが崩れ落ちる。
「サーガ! サーガ! 大丈夫?!」
慌ててサーガを介抱しようとするキーナ。ところが、
「まあまて」
何故かテルディアスが止める。
そしてサーガの全身をちらりと眺め回すと、
「大した怪我はしてなさそうだ。疲れただけだろう。お前はメリンダを迎えに行ってやれ」
「え? う、うん…」
確かに、あちこち汚れてはいるが、特に血が出ている様子もないし、一応サーガであるし、殺傷力のある罠はなかったはずだしと、納得してキーナはサーガを放置することに。酷い。
「ごめんね。サーガ」
何に対してのごめんねなのか、一言だけ言うと、キーナは森の中に入っていった。
キーナは残った罠を解除しつつ、メリンダを救出に向かう。
サーガの側に腰を下ろし、テルディアスはキーナの帰りを待つ。
「テルディアス」
サーガが俯せのまま声を出した。
「何故キーナを止めなかった?」
サーガの問いに、テルディアスは一度大きく深呼吸をして、目を細めた。
「キーナが言ったんだ。テル用の罠にサーガが入った。テルには簡単だが、サーガには難しいから罠を外すと」
「・・・・・・」
黙り込んだサーガを横目に、もう一度大きく深呼吸をしたテルディアスは、サーガに問いかける。
「止めて欲しかったか?」
「・・・・・・」
風が流れた。
木の葉がザワザワとざわめき、木漏れ日がユラユラと揺れる。
「ちきしょう…」
サーガの小さな呟きを、風が攫って行った。
どうにかこうにか足に絡まっていたものを切って外し、地面に降り立つ。
見ればそれは人が編んで作った縄ではなく、そこら辺の木などにあるツタだった。
気を取り直して森の中を進んで行く。
用心に用心を重ねてさらに用心して…。
「でえっ!」
どんがらどんがら
大きな音を立てながら、一抱えはあろう木の枝が頭上より複数降ってきた。
なんとか跳んで躱す。
ザシュッ
「ひおっ!」
踏み出しかけた足を戻した途端、下から柵が突き上がって来た。
バタン!
「ぬぎぃ…」
突如足元から板がせり上がって来て、左右から挟まれそうになる。
両手でなんとか押さえて潰されることは回避したものの、脱出に少し手間取った。
ズボッ
「うおっ?!」
足元の地面が崩れ、突如穴の中へ。
飛んで回避。穴の中には何も仕掛けられていなかったのは親切心か?
ザザザザザ!
「どあっ!」
メリンダと同じ罠にかかる。
樹上まで吊り上げられたものの、なんとか切って脱出。
ぜいこら、ぜいこら…
数々の罠に、肩で息をつくサーガ。ご苦労である。
(どの罠からもキーナの匂いがしやがる…。まさか、これ、キーナが?)
サーガ達は気付いていなかった。コレ全てキーナが仕掛けたものだと言うことに。
(だがしかし…)
サーガが記憶を辿る。
それはとある街道で、メリンダがお花摘みにちょっといなくなった時。
「ん?」
道の端で、キーナが座り込んでなにやらゴソゴソとやっていた。
「キーナ、何してんだ?」
「お、丁度良い」
何をやっているのだろうと近づいたサーガ。
「丁度良い?」
キーナの言葉に疑問を感じつつも普通に近づいていったらば、突如何かに足を取られた。
ビターン!
見事に地面に激突した。
「お~、本当に引っかかるんだな~」
目をキラキラさせて転がるサーガを見るキーナ。酷い奴だ。
「き、キーナ…」
「漫画で見たこの罠本当に引っかかるか試してみたかったんだ」
とルンルンで言い放つキーナ。本当に酷い奴だ。
キーナの作った罠は、草を結んだだけのもの。そこに足を引っかけるとすっころんでしまうという簡単な罠である。良い子は道端に作ってはいけません。
「キーナ…」
キーナの後ろに、怖い顔のテルディアスが立った。
ビクリとなるキーナ。一応いけないことをしたという自覚はあったらしい。
「お前はまたー!」
「ふにゃ~い」
テルディアスのお説教が始まりました。
(また…?)
痛む顔を自分で治しつつ、サーガはテルディアスの言葉の意味を考えていた。
「ありうる…。絶対にありうる…」
そんなことを思い出し、あの言葉の意味を理解するサーガ。
つまり、以前にもキーナは何かしら罠を仕掛け、それにテルディアスが引っかかったのであろうと。
そしてキーナは懲りずにまた何かしらの罠を仕掛け、しかも自分達をその犠牲、被験者にするつもりだったのだろうと。
サーガが風を操り、キーナの気配を探し始める。木々の間を走り抜けていく。
見つけた。
(森が少し切れた所にキーナとテルディアスの気配…。やっぱりか! しかもテルディアスの野郎、高みの見物決め込んでんな?!)
座り込み、楽しそうに談笑する2人の気配。さすがにイラッとしてしまう。
サーガが思い切り息を吸い込み、腹の底から声を張り上げた。
「キーナァ!! これ仕掛けたの全部お前だろぉ――!!」
その声は森に響き渡り、樹上で揺れていたメリンダにも届いた。
「え? キーナちゃんが?!」
そしてキーナ達の元へも届いた。
「え?! 気付いてなかったの?」
テルディアスのように分かっているものだと思っていたキーナ。
いえ、普通は気付きません。
テルディアスは白い目でキーナを見ている。
「そこで待ってろ!! そこに行ったらお尻ペンペン100回して、その後お尻ナデナデ100回してやるからな――!!」
森中に響き渡った。
「え?」
「させん」
顔を青くして身を震わせたキーナの肩に、ぽんと手を乗せ、アホなことは俺がさせんとテルディアスが首を振った。
サーガが風を纏い、地を蹴る。
このまま飛んで森を抜けてしまえば良いと思って。
(あいつ…、ついでに胸も揉んじゃろうか)
女性ファンがいなくなるよ。え?いない?
ところが、少し上がった所で、何かが体中に引っかかる感じがして止まる。
「ん?」
耳を澄ませば、何かピンピンと何かが切れる音がする。
よくよく見れば、よっく見ないと気付かない程度の細い糸。
「何だ? このい…とべ?!」
ベチン!!
狙い澄ましたかのように、サーガの顔面に勢いよくしなった木の枝がぶつかってきた。
「な…?」
何事かと周りを確認しようとしたらば、
ベチコン! ベチコン! ベチコン!
「いだだだだだ!」
あちらこちらからしなってきた木の枝に叩かれる。
「ひいいっ」
思わず地面へと逃げる。結構地味に痛かった。
「くそぅ…。上空も対策は万全かよ…」
地面に降り立ち、項垂れるサーガ。
となると道は一つしかないわけで。
「こーなりゃ正面突破だ!」
それしかないよね。
「行くぜぇ!!」
サーガが走り出した。
「おお! 頑張れサーガ!!」
その様子を伺っていたキーナが、サーガに(聞こえてないけど)声援を送る。
(お前が言うな)
冷めた目でテルディアスがキーナを見つめていた。
太陽の位置が少し地面に近くなった頃。
ガサリ
キーナの目の前の低木の葉が揺れた。
ガサ…
疲れ切った様子のサーガが姿を現した。
「サーガ! おかえり! ご苦労様!」
キーナが駆け寄る。
本当にご苦労様である。
「キーナ…、そこになおれ…。お尻、ナデナデ…しちゃ…る…」
サーガが崩れ落ちる。
「サーガ! サーガ! 大丈夫?!」
慌ててサーガを介抱しようとするキーナ。ところが、
「まあまて」
何故かテルディアスが止める。
そしてサーガの全身をちらりと眺め回すと、
「大した怪我はしてなさそうだ。疲れただけだろう。お前はメリンダを迎えに行ってやれ」
「え? う、うん…」
確かに、あちこち汚れてはいるが、特に血が出ている様子もないし、一応サーガであるし、殺傷力のある罠はなかったはずだしと、納得してキーナはサーガを放置することに。酷い。
「ごめんね。サーガ」
何に対してのごめんねなのか、一言だけ言うと、キーナは森の中に入っていった。
キーナは残った罠を解除しつつ、メリンダを救出に向かう。
サーガの側に腰を下ろし、テルディアスはキーナの帰りを待つ。
「テルディアス」
サーガが俯せのまま声を出した。
「何故キーナを止めなかった?」
サーガの問いに、テルディアスは一度大きく深呼吸をして、目を細めた。
「キーナが言ったんだ。テル用の罠にサーガが入った。テルには簡単だが、サーガには難しいから罠を外すと」
「・・・・・・」
黙り込んだサーガを横目に、もう一度大きく深呼吸をしたテルディアスは、サーガに問いかける。
「止めて欲しかったか?」
「・・・・・・」
風が流れた。
木の葉がザワザワとざわめき、木漏れ日がユラユラと揺れる。
「ちきしょう…」
サーガの小さな呟きを、風が攫って行った。
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