キーナの魔法

小笠原慎二

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地底宮の冒険

団体さんのお着き

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「そりは…、ご苦労さんだったねぃ、サーガ」
「ええ、本当。まったく」

サーガの後ろでメリンダがいじけていた。
いくら注意力が散漫だとしても、立て続けに罠を発動させてしまうなんて、一種の才能ではないかと思ってしまう。

「んで? やっぱだめか?」

サーガ達の話を聞きながらも、どうにか扉を開けられないかと探っていたテルディアスに尋ねる。

「ああ。押そうが引こうがビクともしない」

(ん?)

その言葉を聞いて、キーナ考える。
先程同じような言葉を自分も言っていたような。

「中をどうにか調べられんか」
「難しいなぁ~」

何か手はないかと男達が話し合っている所へ、

「あの~、テル?」
「どうした? キーナ」
「一つ…、試してみて欲しいことが…」

その方法を聞いて、早速男二人が取っ手を掴み、力強く左右に引いた。

ズズズ・・・

「開いた…」
「絶対ここ作った人根性ひん曲がってる!」

しかも鍵さえ掛かってなかった…。
色々ツッコミたいところではあったが、

ズ…ン ズ…ン

と遠くから地響きが聞こえて来た。

「ム? もう来たか。とにかく入れ」

キーナの背を押し、扉の中に入るように促す。

「何か来るのか?」
「ああ、土人形だ」
「土人形?!」

サーガの顔が曇った。

「それは、相手したくねーな」
「手強いの?」

戦い好きのサーガが珍しいとメリンダが問いかける。

「俺は特に相性が悪い」
「ああ…」

答えを聞いて納得。
風属性のサーガは地属性のものは全般苦手なのだ。
こればかりはしょうがない。
中に入り、男達が扉をきっちり閉める。

「ほう…」

キーナが部屋を眺め回し、目の前の祭壇のような所に目を向け、歩き出す。

「最初の部屋と似てんな」

部屋を見たサーガが呟く。
最初に入った四角い部屋と、大きさと祭壇のようなものがあるだけで、ほとんど変わらない。
祭壇のようなものの向こうには、やはり四角い人が座っているような絵が描かれていた。

「サーガ」

メリンダ、サーガの側に寄る。

「罠ない? 罠ない?」
「今のところ大丈夫そーよ」

軽くトラウマになっているのかもしれない。
祭壇の前まで近づいたキーナが、その上にある奇妙なパズルのようなものと、壁に書かれた文字を見比べている。

「キーナ。何かあったか?」

テルディアスが側に寄り、その文字に気付く。

「テル、これ読める?」
「ん?」

しばし解読しているのか、テルディアスが壁の文字を見つめていた。

「…、我、目覚める時、災いをもたらすだろう…」
「あ~、やっぱり」

キーナの想像した通りだった。

「つまり…」
「そ。お宝出したら、罠が発動するっての」

やっぱり罠か。

「最後の試練てか?」

側に寄ってきたサーガ達もそれらを眺める。

「あ、格好良く言うとそんな感じ」

よくあることですね。
お宝の前には最後の門番的なものがあるという。

「だが、やらねば宝玉は手に入らないのだろう?」
「うん」
「なら、やるしかないだろう」
「うん! やろう」
「頼んだぞキーナ」
「任せてチョンマゲ」

チョンマゲとは何ぞや?とは誰も聞かなかった。
男達が周りの警戒にあたる。
メリンダはキーナの横でそれを眺める。
キーナは、祭壇の上にある、そのパズルのようなものを眺めた。
てか、これどう見ても、絵合わせパズルにしか見えない。

(これって、絵合わせパズルだよね…?)

この世界の人には馴染みはないかもしれないが、キーナの世界ではかなりマイナーなパズルだ。
作者も得意である。
9マスに分かれ、バラバラに配置されたパズルを、綺麗に一枚絵に戻すという奴だ。
しかも9マスだ。
簡単だ。

(ここにこれを置いて…)
右下の1マスを、横の窪みにはめ込む。
マスを上下左右に動かし、絵を完成させていく。
最後の一列はちょっとしたコツがあるが、それさえ分かれば後は簡単。
綺麗にマスが整う。
あとは最後に右下の窪みに避難させていた最後の一枚を戻せば…。

カチ

戻したと同時に、何かが作動する音。

ゴゴン!

部屋が揺れた。
すると、

ガラガラガラガラ

両壁が崩れ、そこから土人形が6体現われた。
ゴーレムの団体さんの登場だ。

「テルディアス! こいつらの倒し方知ってっか?!」
「知らん」

知ってたら先程の奴も倒していた。
というか、先程の奴でもう少し戦い方の研究をしておくべきだったと思うが、もう遅い。

「宝玉は?」

もし出ているならばそれを奪って逃走もできるが、

「倒さないとダメっぽいです」

祭壇は何も変わらなかった。
これはもう、この土人形達を倒さないと、最後のお宝は拝めないという感じです。
小さく舌打ちし、土人形達に向き直る。
ゆっくりと壁から出て来た土人形達が、こちらを向いた。

「こいつら、切っても突いてもダメなんだろ?」
「粉々にしてもダメだったぞ」

魔法で頭を吹き飛ばしても再生された。

「唯一の戦力も封じられてるし…」

サーガがチラリとメリンダを見る。
地には火。
メリンダが力を存分に使えれば、こんな土人形の団体も、数秒でカタがついたのだけれど。

「動きを止めるくらいならできるかもだけど…」

自信なさげにメリンダ呟く。

「戦いながら探せ!」
「俺は地は苦手なんだっつーに!」

テルディアスとサーガが左右に散った。
1人3体ずつ。
動きがそこまで早くないので、なんとか相手に出来るわけだが…。














サーガに向かって1体が手を伸ばしてくる。
それを難なく避け、その腕を駆け上る。
肩まで登り、その頭をコンコンと軽く手で叩いた。
硬い。

「剣が痛みそうだな」

サーガの攻撃手段から、剣を使った攻撃が除外される。
硬くて剣が刺さるかも分からないし。
その頭目がけ、土人形が手を振り下ろしてくる。

ボゴン!

手が頭を砕いた。
素早く飛び降りていたサーガ。

「当たらなきゃ怖くねーもん」

と土人形にあっかんべーをくれてやるが、土人形の砕けた頭の部分がモコモコと動き出し、頭が再生されていく。

「あ~、するよね。再生…」

せっかく自爆を狙ったのに、意味なかった。
次々と襲い来る土人形の手を、華麗に躱しながら、時にクルリと踊りながら、時にステップを踏みながら、器用に躱し続けるサーガ。
遊んでない?

「逃げてるだけじゃいつまでも終わらないんだよな~」

その通り。
倒さなければ、体力が尽きたらそこで終わりだ。

「てなわけだから、テルディアスー、早く倒し方見つけろー」

土人形の頭の上で器用にポーズを取りながら、サーガが叫ぶ。

「貴様も真面目に探せ!」

風だからやりにくいのは分かるけれども、人に投げすぎだ。




襲い来る手を躱しながら、テルディアスも考える。

(頭を破壊しても倒れないとなると、狙うは、胴体)

何処かしらに何かしらの弱点があるはずだと、テルディアスは考えていた。
魔法で作られているものは、ともすれば脆弱だ。
魔力の供給が行われなくなれば、それはすぐに崩れ去る。
土人形もどうやって魔力を供給されているのかは分からないが、それさえ見つけられれば倒せるとは踏んでいた。
ただ、それが分からないわけで。
とにかくあちこちを破壊して、様子を見なければならないだろう。

地爆ウルテガ、あと3、4回が限度か…)

自分の魔力量、この場の魔法封じの力。
それだけで倒せるか?
だがやるしかない。
1体に目をつけ、手をかいくぐり、足を伝って腹の辺りに駆け上がる。
魔力を練り上げ、臍の辺りに手を当て、

地爆ウルテガ!」

ドゴオ!

(小さい! くそ!)

平時の4分の1くらいか、下半身を吹き飛ばすくらいの威力を込めたはずだが、臍の穴が広がったくらいの大きさの穴が開いただけだった。
それもすぐにモコモコと土が盛り上がって来て、修復されてしまう。

(魔力が封じられていなければ…!)
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