127 / 296
光の宮再び
夜の勤め
しおりを挟む
神殿の床に伏したまま、キーナは身じろぎもしない。
窓から射す陽光は、赤みを帯びている。
じきに暗くなるであろう。
神殿の扉が、ゆっくりと開かれた。
一人の女神官が顔を出し、キーナの様子を確かめ、少し考えるそぶりを見せる。
そして、遠慮がちにキーナへと声をかけた。
「御子様…、お食事の時間でございます…」
「いらない」
「はあ…」
女神官の言葉は冷たく遮られ、為す術もないまま、女神官はしずしずと神殿の扉を閉めた。
キーナは軽く空腹は感じてはいたが、食欲を感じてはいなかった。
今は食べる事さえ罪に感じてしまう。
大勢の人達を消しておいて、普通に食べたり飲んだりなど、到底できやしない。
頭の中で自問自答が繰り返されている。
僕なんて…
僕なんて…
溢れ出てくる言葉は、自身を傷つけるものしか出て来ない。
前など見れない。
人並みなど考えられない。
普通でなどいられない。
今までの平穏さえも自分への罪に感じてしまう。
顔を上げられぬまま、神殿に暗さが増していった。
「キーナ…」
キーナの事を思い、その名が思わず口から零れる。
同乗者の耳には、有り難い事に届かなかったようだ。
左手に沈む夕日を見ながら飛び続ける風の結界。
後ろの二人は気付いていなかったが、前に座る操縦者のサーガの顔には、数刻前より脂汗が浮かんでいた。
ギリ…と歯を食いしばる。
「わり…。やっぱまだ…、回復しきれてねーわ…」
力のこもらぬ声でそう告げると、視線を下に落とす。
丁度良い具合に少し開けた森の一部が見えた。
そこに結界を移動させる。
地面に付くか付かないかの所で、
パアン!
結界が弾け飛んで消えた。
そのままドサリと倒れ込むサーガ。
「サーガ?!」
慌ててサーガに駆け寄るメリンダ。
「くそ…、あの光に…やられてなきゃ…」
悔しそうに呟くサーガ。
疲れすぎてもう指の一本も動かせそうになかった。
それを心配そうに抱きかかえるメリンダ。
テルディアスはただ、見下ろしているだけだった。
ともかくそこで野営をすることになる。
メリンダが火をおこし、サーガをなるたけ楽な姿勢で寝かせる。
テルディアスは薪になりそうな小枝を拾いながら、辺りを警戒する。
少し離れた所で、風の流れを感じ、テルディアスが呟いた。
「おい、こんなことに力を使うな。早く回復して俺達を運べ」
風の流れが弱まり、消えた。
「へ…、バレてたか…」
「何? サーガ?」
サーガがなにか呟いたようだが、メリンダの耳にはハッキリとは聞こえなかった。
「いや…、しばらく…、任せた…」
「?」
それだけ言うと、サーガが深い溜息を吐き、眠りについたようだった。
相変わらず汗だくの顔を、メリンダが少量の水を布に含ませ、拭ってやった。
「フン」
離れた場所でテルディアスを鼻を鳴らす。
(気付かれていないと思っていたのか?俺達がキーナを看ている時も、風の結界を張り続けていた事を…)
洞に入らず、表で寝ているだけのように見せて、何かの時にはすぐに動けるように、風の力を使い続けていたのだ。
「アホが…。んなことせずに、きちんと休んでおけば…」
夜中飛び続けることもできたかもしれない。
思わず力が入り、手にしていた小枝をバキリと折ってしまう。
(もう…、夜になる…)
光の宮にて、自分の側仕えをしていた女、アイの言葉を思い出す。
(「毎夜違う神官が、御子様の部屋を訪れるでしょう」)
アイは拒む事ができなかったと言っていた。
しかし御子ならば…、テルディアスのように御子の権限などを使って拒絶する事も可能かもしれない。
しかし、あのキーナでは、そんなことを考えつくかどうか…。
ギリ…と拳を握り締める。
例えどうであれ、今の自分には何もできはしない。
暗くなってきた空を見上げれば、細い月が鈍い光を放ち始めていた。
(キーナ…!)
空はどんどん暗さを増していく。
どういう仕掛けかは分からないが、暗くなると、神殿のあちこちに、自動的に火が点った。
キーナは突っ伏したままだ。
どれくらい時間が経ったのか、神殿の扉が再び開かれた。
そしてしずしずと、三人の神官達が入って来て、頭を下げた。
「御子様。夜のお勤めの時間でございます」
キーナがゆっくりと目を開ける。
よろよろと上体を起こし、面倒くさそうに後ろを振り向く。
「夜の、勤め?」
「はい。より優秀なお子をを授かる為、我ら三人が選ばれました」
そう言いながら三人が進み出てきて、中程で再び頭を下げた。
(は?)
キーナには言っている意味が理解できなかった。
「三人とも相手にするも良し、この中から一人お選び下さっても構いません。いかがいたしますか?」
(はい?!)
やっぱり言っている意味が分からなかった。
「えと…、その…、つまり…」
体をキチンと起こし、階段の一番下の段に座り直す。
「え~と…、何をするんですか?」
あまりハッキリとも聞きたくない気もしたが。
「夜のお勤め、まあ、平たく言いますと、子作り、でございます」
(子作り?!)
キーナの頭の中を、ハテナマークが飛び交う。
(子作りと言うと、その…、男の人と女の人が、どーにかこーにか、口に出せないようなことをして…、その…、精子と卵子が出会ってうんちゃらかんちゃらするとできるという…)
具体的にどういった事をするのかはよく分かっていなかった。
学校で習う知識などこんなものだ。
「御子様、いかがいたしますか?」
「はうお?!」
なんだか変な返事をしてしまう。
どーにかこーにか口に出せないようなことが、とてつもなく恥ずかしい事だという事は、おぼろげながらキーナでも分かっている。
そして、それはやはり、好きな人だからできる、とてつもないことなのだという事も。
(そんな、少年誌では書けないような裸祭なんて、僕まだ18歳未満だし、無理です)
この小説が18禁になってしまいますものね。そうでなくて?
「いや、あの、僕まだ14歳ですし、そーゆーのは、早いかな~なんて…」
「月のものがございますれば、十分可能でございます」
「ぎゃふん!」
確かに、14歳の母なんて、ドラマがやってたような…。
だがしかし、冗談じゃない。
「いや…、あの…、でも…、そーゆーのって、何か違う気が…」
そーゆー行為ってのは、子を作る為だけにするんじゃなくて、気持ちが備わってないとなんとも…とも思うのだけれども。
じりじりと、なんとなく体を引いてしまう。
「まだ経験が無いようでありますれば、我ら三人でお教え致しますが…」
そう言って、両端の二人が広い袖口から、なにやら香のような物を取り出し、火を点けた。
煙がゆらりと立ち上がる。
「いえ! 結構です! いりません! 僕にはまだ早いです!!」
両手をブンブン振り回し、否定の意を露わにするが、男達は下がるどころか立ち上がり、キーナに近づいてきた。
「いえいえ、早い事はございません。最初は少々お辛いかもしれませんが、慣れてしまえば、これ以上のものはございません」
香を側に置き、キーナに近づき、一人がキーナの手を取った。
「いや、あの、だから…」
手の甲にキスをされる。
鳥肌が立った。
一人がキーナの後ろに回り、その剥き出しの肩に触れる。
「い、いらないって…」
「さ、御子様」
肩をサワサワと撫でられる。
背筋がゾッとなる。
「ウニャーーー!!」
思わず手が出た。
バコオ!
小気味よい音がして、後ろの男の顎に、キーナの拳がヒットした。
「み、御子様…?」
男達が一瞬たじろぐ。
キーナは駆け出し、階段を上り、祭壇に背を預け、男達に威嚇する。
猫か。
「仕方ありませんね…」
男達の目が据わった。
「手荒にするなと言われていたのですが…」
男達の空気が変わった事を肌で感じたキーナが、逃げだそうとするが、それより前に、男の一人がキーナのマントを踏みつける。
「あう!」
突如マントを引っ張られた事により、キーナが倒れ伏す。
即座に他の二人がキーナの腕を取り、押さえつけた。
「やああ!!」
振りほどこうにも女の細腕ではそれも叶わない。
じたばた暴れるが、長い御子の服が邪魔をする。
「暴れられては困りますし」
マントを押さえつけた男が、着ていた物を脱ぎ始めた。
「や! 放して!」
「何より、御子様のお体に良くないので、このまま押さえつけさせていただきます」
「いや! やだ!」
「御子様の最初のお相手になれるとは、光栄でございます」
そう言って男がキーナの服に手を伸ばしてきた。
「いや! いやあ!! テル―――!!!」
窓から射す陽光は、赤みを帯びている。
じきに暗くなるであろう。
神殿の扉が、ゆっくりと開かれた。
一人の女神官が顔を出し、キーナの様子を確かめ、少し考えるそぶりを見せる。
そして、遠慮がちにキーナへと声をかけた。
「御子様…、お食事の時間でございます…」
「いらない」
「はあ…」
女神官の言葉は冷たく遮られ、為す術もないまま、女神官はしずしずと神殿の扉を閉めた。
キーナは軽く空腹は感じてはいたが、食欲を感じてはいなかった。
今は食べる事さえ罪に感じてしまう。
大勢の人達を消しておいて、普通に食べたり飲んだりなど、到底できやしない。
頭の中で自問自答が繰り返されている。
僕なんて…
僕なんて…
溢れ出てくる言葉は、自身を傷つけるものしか出て来ない。
前など見れない。
人並みなど考えられない。
普通でなどいられない。
今までの平穏さえも自分への罪に感じてしまう。
顔を上げられぬまま、神殿に暗さが増していった。
「キーナ…」
キーナの事を思い、その名が思わず口から零れる。
同乗者の耳には、有り難い事に届かなかったようだ。
左手に沈む夕日を見ながら飛び続ける風の結界。
後ろの二人は気付いていなかったが、前に座る操縦者のサーガの顔には、数刻前より脂汗が浮かんでいた。
ギリ…と歯を食いしばる。
「わり…。やっぱまだ…、回復しきれてねーわ…」
力のこもらぬ声でそう告げると、視線を下に落とす。
丁度良い具合に少し開けた森の一部が見えた。
そこに結界を移動させる。
地面に付くか付かないかの所で、
パアン!
結界が弾け飛んで消えた。
そのままドサリと倒れ込むサーガ。
「サーガ?!」
慌ててサーガに駆け寄るメリンダ。
「くそ…、あの光に…やられてなきゃ…」
悔しそうに呟くサーガ。
疲れすぎてもう指の一本も動かせそうになかった。
それを心配そうに抱きかかえるメリンダ。
テルディアスはただ、見下ろしているだけだった。
ともかくそこで野営をすることになる。
メリンダが火をおこし、サーガをなるたけ楽な姿勢で寝かせる。
テルディアスは薪になりそうな小枝を拾いながら、辺りを警戒する。
少し離れた所で、風の流れを感じ、テルディアスが呟いた。
「おい、こんなことに力を使うな。早く回復して俺達を運べ」
風の流れが弱まり、消えた。
「へ…、バレてたか…」
「何? サーガ?」
サーガがなにか呟いたようだが、メリンダの耳にはハッキリとは聞こえなかった。
「いや…、しばらく…、任せた…」
「?」
それだけ言うと、サーガが深い溜息を吐き、眠りについたようだった。
相変わらず汗だくの顔を、メリンダが少量の水を布に含ませ、拭ってやった。
「フン」
離れた場所でテルディアスを鼻を鳴らす。
(気付かれていないと思っていたのか?俺達がキーナを看ている時も、風の結界を張り続けていた事を…)
洞に入らず、表で寝ているだけのように見せて、何かの時にはすぐに動けるように、風の力を使い続けていたのだ。
「アホが…。んなことせずに、きちんと休んでおけば…」
夜中飛び続けることもできたかもしれない。
思わず力が入り、手にしていた小枝をバキリと折ってしまう。
(もう…、夜になる…)
光の宮にて、自分の側仕えをしていた女、アイの言葉を思い出す。
(「毎夜違う神官が、御子様の部屋を訪れるでしょう」)
アイは拒む事ができなかったと言っていた。
しかし御子ならば…、テルディアスのように御子の権限などを使って拒絶する事も可能かもしれない。
しかし、あのキーナでは、そんなことを考えつくかどうか…。
ギリ…と拳を握り締める。
例えどうであれ、今の自分には何もできはしない。
暗くなってきた空を見上げれば、細い月が鈍い光を放ち始めていた。
(キーナ…!)
空はどんどん暗さを増していく。
どういう仕掛けかは分からないが、暗くなると、神殿のあちこちに、自動的に火が点った。
キーナは突っ伏したままだ。
どれくらい時間が経ったのか、神殿の扉が再び開かれた。
そしてしずしずと、三人の神官達が入って来て、頭を下げた。
「御子様。夜のお勤めの時間でございます」
キーナがゆっくりと目を開ける。
よろよろと上体を起こし、面倒くさそうに後ろを振り向く。
「夜の、勤め?」
「はい。より優秀なお子をを授かる為、我ら三人が選ばれました」
そう言いながら三人が進み出てきて、中程で再び頭を下げた。
(は?)
キーナには言っている意味が理解できなかった。
「三人とも相手にするも良し、この中から一人お選び下さっても構いません。いかがいたしますか?」
(はい?!)
やっぱり言っている意味が分からなかった。
「えと…、その…、つまり…」
体をキチンと起こし、階段の一番下の段に座り直す。
「え~と…、何をするんですか?」
あまりハッキリとも聞きたくない気もしたが。
「夜のお勤め、まあ、平たく言いますと、子作り、でございます」
(子作り?!)
キーナの頭の中を、ハテナマークが飛び交う。
(子作りと言うと、その…、男の人と女の人が、どーにかこーにか、口に出せないようなことをして…、その…、精子と卵子が出会ってうんちゃらかんちゃらするとできるという…)
具体的にどういった事をするのかはよく分かっていなかった。
学校で習う知識などこんなものだ。
「御子様、いかがいたしますか?」
「はうお?!」
なんだか変な返事をしてしまう。
どーにかこーにか口に出せないようなことが、とてつもなく恥ずかしい事だという事は、おぼろげながらキーナでも分かっている。
そして、それはやはり、好きな人だからできる、とてつもないことなのだという事も。
(そんな、少年誌では書けないような裸祭なんて、僕まだ18歳未満だし、無理です)
この小説が18禁になってしまいますものね。そうでなくて?
「いや、あの、僕まだ14歳ですし、そーゆーのは、早いかな~なんて…」
「月のものがございますれば、十分可能でございます」
「ぎゃふん!」
確かに、14歳の母なんて、ドラマがやってたような…。
だがしかし、冗談じゃない。
「いや…、あの…、でも…、そーゆーのって、何か違う気が…」
そーゆー行為ってのは、子を作る為だけにするんじゃなくて、気持ちが備わってないとなんとも…とも思うのだけれども。
じりじりと、なんとなく体を引いてしまう。
「まだ経験が無いようでありますれば、我ら三人でお教え致しますが…」
そう言って、両端の二人が広い袖口から、なにやら香のような物を取り出し、火を点けた。
煙がゆらりと立ち上がる。
「いえ! 結構です! いりません! 僕にはまだ早いです!!」
両手をブンブン振り回し、否定の意を露わにするが、男達は下がるどころか立ち上がり、キーナに近づいてきた。
「いえいえ、早い事はございません。最初は少々お辛いかもしれませんが、慣れてしまえば、これ以上のものはございません」
香を側に置き、キーナに近づき、一人がキーナの手を取った。
「いや、あの、だから…」
手の甲にキスをされる。
鳥肌が立った。
一人がキーナの後ろに回り、その剥き出しの肩に触れる。
「い、いらないって…」
「さ、御子様」
肩をサワサワと撫でられる。
背筋がゾッとなる。
「ウニャーーー!!」
思わず手が出た。
バコオ!
小気味よい音がして、後ろの男の顎に、キーナの拳がヒットした。
「み、御子様…?」
男達が一瞬たじろぐ。
キーナは駆け出し、階段を上り、祭壇に背を預け、男達に威嚇する。
猫か。
「仕方ありませんね…」
男達の目が据わった。
「手荒にするなと言われていたのですが…」
男達の空気が変わった事を肌で感じたキーナが、逃げだそうとするが、それより前に、男の一人がキーナのマントを踏みつける。
「あう!」
突如マントを引っ張られた事により、キーナが倒れ伏す。
即座に他の二人がキーナの腕を取り、押さえつけた。
「やああ!!」
振りほどこうにも女の細腕ではそれも叶わない。
じたばた暴れるが、長い御子の服が邪魔をする。
「暴れられては困りますし」
マントを押さえつけた男が、着ていた物を脱ぎ始めた。
「や! 放して!」
「何より、御子様のお体に良くないので、このまま押さえつけさせていただきます」
「いや! やだ!」
「御子様の最初のお相手になれるとは、光栄でございます」
そう言って男がキーナの服に手を伸ばしてきた。
「いや! いやあ!! テル―――!!!」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる