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黒猫と共に迷い込む
光の御子でしょう?
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「私、光の御子にちょっと伝手があるのよ。だから、貴女方を無事に向こうに帰してあげる事が出来るのだけど」
「帰すことが出来る? つまり、光の御子は帰る方法を知っているのだな?」
「ええ。というか、無事に帰る唯一の方法じゃないかしら?」
美少女が自信満々に答える。
「というか、お主が光の御子であろう? ここまで来て何故隠す?」
クロの言葉に、美少女が慌て出す。あれ? 光の御子って、なんだか宮殿の奥にいて、滅多に人と会わないんじゃなかったっけ?
「ひ、光の御子なわけないでしょう! 光の御子がそんな、フラフラと市井をうろついているわけないじゃない! 私は御子直轄の偵察部隊みたいなものよ!」
声が裏返っとるがね。
「ここまで来て隠す意図も分からぬが、お主、最初からあそこの宮の中にはおらなかったろう」
「むぐ?!」
クロさん、やはり何気に探ってたのね。
「はっきり言って、お主は他の人間とは色々気配が違う。分かる者にはすぐに分かると思うがの」
「その分かる人なんて滅多にいないんだけど…」
がっくりと肩を落とす美少女。
「分かった。もう隠しても無駄ね。そうよ、私は今代の光の御子、イレーナ。で、貴方も色々気配が違うようだけど? 普通の人間じゃないわね」
キッとクロを睨み付けるイレーナ。
「そうだの。我が輩はそこにおる八重子の飼い猫のクロだの」
「ええと、飼い主の八重子です」
イレーナが目をぱちくりさせた。
「は? 飼い猫? いや、人間じゃない? そういうプレイなの?」
プレイなんて…。いやらしい…。
「八重子」
クロにジト目で睨まれた。
「確かに、あの人と似た気配がするから、何か異質な感じはするけど…。猫?」
「我が輩は、あちらの世界で言う猫又という妖怪なのだの。と言っても分からぬとは思うが」
「あちらの世界…、妖怪…、猫又…」
なにやらブツブツ呟いている。
「つまり、尻尾が2本あるっていう奴ね?」
「知ってるの?」
あれ? この世界、猫又っていないんじゃ?
「あ~、その、まあ、ちょっとだけね。え~と、人の姿をとって、人を食べるっていう? え? 食べるの…?」
私を見て、顔を青くする。
「食べるわけがなかろう! あれは食の乏しい時代の事だの。飽食の時代に生まれたのに、何故わざわざ食事を持って来てくれる人間を食い殺さねばならぬのだ」
チュ○ルの魔力かもしれない。
そうよね、今の時代は人に可愛がられれば、勝手に人が食事を用意してくれるものね。時に美味しいおやつまでも。
わざわざそんな食事を持って来てくれる人を食い殺したりしたら、後々食事を運んで来てくれる人がいなくなってしまう。つまり、食い殺す方がデメリット。
良かった。飽食の時代に生まれてきていて。
「あ、そ、そーなの。へぇ~」
何を感心しているのだ。
「それで、お主、元の世界に帰る方法とやらは、どんな方法なのだの?」
クロの方から聞きに行ったよ。
「ああ、そうよ、本題はそっちよ。もちろん、私が責任持って帰してあげるわ。方法は、まあ、私達の力で、としか言いようがないわね」
「私達?」
クロがイレーナを睨み付ける。
「私は光の御子。もう1人、まあちょっと特殊な人がいるんだけど、2人で力を合わせれば、元の世界の元の時間に戻すことが可能なの。もちろん、こちらで過ごした分の肉体の年齢も戻すことが出来るわ。悪い話ではないでしょう?」
「ごめんなさい。私、戻れません」
頭を下げる。
「え?」
戻れない。皆をあんな状態で、戻れるわけがない。
「ええと、大人しく帰るというのなら、その、この世界で過ごした記憶を持って帰る事などを許可することも出来るんだけど…」
「ごめんなさい。今はまだ帰れないの」
「今は?」
「大切な仲間達が、悪い人の所に掴まってるんです。皆を助け出すまで、私、何が何でも帰りません」
「う~ん…」
イレーナが頭を抱えた。
「それが終われば、大人しく帰る、ということね?」
「ええ。皆が無事に解放されたら、大人しく帰るわ」
「分かった。それくらいなら許容範囲ね」
許容範囲?
「ということは、帰る事を拒否した者は、どうなるのだの?」
「もちろん、記憶も何も全て奪って強制送還よ。はっきり言って、あちらの世界の人間にあまりうろつかれると、この世界にあまり良くないからね」
「それならば、あの次元の裂け目をどうにかしろだの」
「それは、今頑張ってくれてるわよ…」
「お主は出来ぬのか」
「管轄が違うのよ」
話がみえないんだが。
「で? その仲間達って、何がどうなってるわけ?」
イレーナに、これまでのことを説明した。
イレーナが考え込んでいる。
「我が輩の推察なのだが、我が輩が術に掛けられようとした時…、ふむ、例えて言うならば、奴の魔力が夥しい数のコンセントのようになって、差し込む穴を探しに来た、という所かの。しかし、我が輩には差し込み口がなかったようで、1つも接続しなかったのだの。クレナイ殿達には、その差し込み口が無数にあったのだと思われる。そして、その差し込み口というのが、クレナイ殿達にあって我が輩達にないもの、魔力なのではないかと考えておった」
「確かに、例え迷い人でも、魔力を持っている人もいる。ところが、失礼かもしれないけど、八重子さんには魔力がほぼ感じられない…。いえ、極少量はある、と思うわ…」
目を逸らさないで頂きたい。
「八重子に掛けた時も、もしかしたら1本くらいは引っかかっていたのかもしれぬが、あまりにも微量過ぎて効果がなかったと考えられるの。良かったの、魔力がほぼなくて」
「あまり嬉しくないのだけど…」
褒められている気がしない。
「じゃあ、その、魔力で魔力を縛っているってこと? てことは、意識は?」
「意識は、我が輩が探知した限りでは、薄くはなっていたが自我は残っておった。気持ち悪かろうな。自分の体を自分の思うように動かせぬばかりか、勝手に動かされておるのだからの。今彼奴らは、所謂操り人形の状態になっておるようなものだからの」
操り人形…。これほどにぴったりくる言葉もないものだ。
顔から血の気がひいた気がした。そんな状況になってしまって、絶対皆苦しんでる。
「従魔紋は、例えて言うならば、首に縄を付けられただけの状態。まだ体と心の自由はあった。しかし、あの状態では、全く自由はない。しかも意識もほぼ封じられている状態だの。あの屋敷にいた人間達は半分狂っておるような感じだったの」
「え…? お屋敷にいた人達、全員?」
「全員ではない。だが、操られておる者達はあの男の側に仕えている者が多かったの。もしかしたら、だが、あの男に人質にとられて屋敷で働いている者もおるかもしれぬの」
背筋が寒くなる。
大事な人をあんな状態にされて、返して欲しければ言うことを聞けとか…?
「最低…!」
そんな、そんな人がいるんだ。しかも、悔しくて悲しい事に、同郷の人間だ。
「絶対、絶対に助けないと…!」
有り難い事に、私にはあいつの切り札の術が効かない。この状況を上手く利用できないものか…。
「私がどうにかしようかと思ったけど、私だとちょっと不味いかもしれないわね…」
イレーナが呟いた。
「お主は格好の餌食だろうの。それだけの魔力保有者となれば、あの男は多分気付く。気付けば即座に術を掛けるだろうの」
「でしょうね…」
がっくり項垂れるイレーナ。
「魔力って、隠すとか出来ないの?」
「魔力だけ隠してもの。これだけ異質な気配を纏っていては、多分気付かれるだろうの」
「そんなに異質なの?」
「まあ、人の器によう入っていられるものだというところかの」
「人の器?」
「此奴の中に入っているのは、所謂神と呼ばれる者の力の一部だの」
「かみ?」
「髪でも紙でもないぞ」
「かみって、あの、付喪神とか…」
「そういう低級な神ではない。創造神に近いものだの」
「・・・・・・」
イレーナをじっと見る。
美少女だ。スタイルも良い。はっきり言って誰もが振り向く美少女だ。それが、神?
「だからこそ、私は光の御使いとか、光の御子とかって呼ばれてるのよ」
イレーナが苦笑いする。
スケールが大きすぎて、私の頭では理解出来ません。
「まあ、あの男も操るに限度があるようではあったがの。所詮人の身。上限はある」
「う~ん、でもそれを考慮して、いつも余力を残してるってことも考えられるわね」
「そうだの。まだ余力はありそうだったの。それとも、クレナイ殿達を手に入れる為に、いくらか手放した可能性もあるの」
2人でこんこんと話し合っている。いや、私もこの場にいるんだけど、私の頭ではちょっと理解が追いつかない。
「となると、やっぱり私が近づくのは不味いから、貴女達にどうにかして貰わなければならないわね」
そういう結論に至った。
「まあ、そうだろうの。いっそ命を狩ってしまって良いのなら、我が輩がひと思いに行って来るのだが…」
「・・・・・・」
「八重子が嫌そうだの」
嫌な人だった。でも、なんというか、殺すという程ではなかったというか…。
あの人も、この世界に来て人生を狂わされなければ、もっと普通の人だったんじゃないかとも思う。あの人の話を聞いてしまったからだろうか。
「できれば、私も生きて帰したいの。下手に向こうの人の歴史がこちらに持ち込まれるのも色々大変で…。向こうでも人がいなくなったって大騒ぎになってるんじゃない?」
かもしれない。
「行方不明にならないはずの人が行方不明になると、色々上の方で困るらしいから、あまり人の定められた運命は変えたくないのよね。だから、強制送還でいいから、その人も元の世界に帰してしまいたいわ」
「運命…、なんてあるんですか?」
「私よりももっと上の方の人の話よ。私にも測りかねるわ。私はただこの世界の安定のためにいるのだから…。じゃなくて、今はそんな話じゃなくて、殺さずに無力化して、取り押さえたところで、私達がその人を強制送還する。で、どう? 唯一近づけるのは貴女達しか今の所いないし。無力化するのを頼んでもよくて?」
「もちろん! やりますよ!」
「八重子、我が輩だけで十分なのだが…」
「クロが1人で出かけたら、追いかけるから」
「・・・・・・」
うん、私が有言実行者だと、分かっているようだね。
皆がそんなことになってるんだもの。主として、助けてあげないと。今まで皆に頼ってばかりで、あまり役に立たない主だったし。
「分かったの。但し、1つだけ約束するのだの」
「何?」
「一切の怪我をするな」
「いや、それ、無理じゃね?」
「我が輩も頑張る。だがの、もしだぞ? もしクレナイ殿達が八重子を爪の先だけでも傷つける様なことがあったら、考えてもみろ。正気に戻った時に苦しむぞ? 大好きな主を傷つけてしまったとな」
「・・・・・・」
確かに。
クレナイは涙を流して悔やんで、死んでお詫びをなんて言い出すかも知れない。
シロガネも白い顔をますます白くして、やはり死んでお詫びをなんて言い出すだろう。
ハヤテも泣いて泣いて泣いて、二度と笑ってくれないかもしれない。
リンちゃんも、きっと二度と心からの笑顔を見せてくれることはなくなるだろう。
「あれ? 重くない?」
「それほどの物を背負っているのだと自覚しろだの」
うぶほお…
死なない覚悟はありますか?は聞いたことあるけど、『一切の怪我も駄目』なんて、どんなムリゲーですか。
「帰すことが出来る? つまり、光の御子は帰る方法を知っているのだな?」
「ええ。というか、無事に帰る唯一の方法じゃないかしら?」
美少女が自信満々に答える。
「というか、お主が光の御子であろう? ここまで来て何故隠す?」
クロの言葉に、美少女が慌て出す。あれ? 光の御子って、なんだか宮殿の奥にいて、滅多に人と会わないんじゃなかったっけ?
「ひ、光の御子なわけないでしょう! 光の御子がそんな、フラフラと市井をうろついているわけないじゃない! 私は御子直轄の偵察部隊みたいなものよ!」
声が裏返っとるがね。
「ここまで来て隠す意図も分からぬが、お主、最初からあそこの宮の中にはおらなかったろう」
「むぐ?!」
クロさん、やはり何気に探ってたのね。
「はっきり言って、お主は他の人間とは色々気配が違う。分かる者にはすぐに分かると思うがの」
「その分かる人なんて滅多にいないんだけど…」
がっくりと肩を落とす美少女。
「分かった。もう隠しても無駄ね。そうよ、私は今代の光の御子、イレーナ。で、貴方も色々気配が違うようだけど? 普通の人間じゃないわね」
キッとクロを睨み付けるイレーナ。
「そうだの。我が輩はそこにおる八重子の飼い猫のクロだの」
「ええと、飼い主の八重子です」
イレーナが目をぱちくりさせた。
「は? 飼い猫? いや、人間じゃない? そういうプレイなの?」
プレイなんて…。いやらしい…。
「八重子」
クロにジト目で睨まれた。
「確かに、あの人と似た気配がするから、何か異質な感じはするけど…。猫?」
「我が輩は、あちらの世界で言う猫又という妖怪なのだの。と言っても分からぬとは思うが」
「あちらの世界…、妖怪…、猫又…」
なにやらブツブツ呟いている。
「つまり、尻尾が2本あるっていう奴ね?」
「知ってるの?」
あれ? この世界、猫又っていないんじゃ?
「あ~、その、まあ、ちょっとだけね。え~と、人の姿をとって、人を食べるっていう? え? 食べるの…?」
私を見て、顔を青くする。
「食べるわけがなかろう! あれは食の乏しい時代の事だの。飽食の時代に生まれたのに、何故わざわざ食事を持って来てくれる人間を食い殺さねばならぬのだ」
チュ○ルの魔力かもしれない。
そうよね、今の時代は人に可愛がられれば、勝手に人が食事を用意してくれるものね。時に美味しいおやつまでも。
わざわざそんな食事を持って来てくれる人を食い殺したりしたら、後々食事を運んで来てくれる人がいなくなってしまう。つまり、食い殺す方がデメリット。
良かった。飽食の時代に生まれてきていて。
「あ、そ、そーなの。へぇ~」
何を感心しているのだ。
「それで、お主、元の世界に帰る方法とやらは、どんな方法なのだの?」
クロの方から聞きに行ったよ。
「ああ、そうよ、本題はそっちよ。もちろん、私が責任持って帰してあげるわ。方法は、まあ、私達の力で、としか言いようがないわね」
「私達?」
クロがイレーナを睨み付ける。
「私は光の御子。もう1人、まあちょっと特殊な人がいるんだけど、2人で力を合わせれば、元の世界の元の時間に戻すことが可能なの。もちろん、こちらで過ごした分の肉体の年齢も戻すことが出来るわ。悪い話ではないでしょう?」
「ごめんなさい。私、戻れません」
頭を下げる。
「え?」
戻れない。皆をあんな状態で、戻れるわけがない。
「ええと、大人しく帰るというのなら、その、この世界で過ごした記憶を持って帰る事などを許可することも出来るんだけど…」
「ごめんなさい。今はまだ帰れないの」
「今は?」
「大切な仲間達が、悪い人の所に掴まってるんです。皆を助け出すまで、私、何が何でも帰りません」
「う~ん…」
イレーナが頭を抱えた。
「それが終われば、大人しく帰る、ということね?」
「ええ。皆が無事に解放されたら、大人しく帰るわ」
「分かった。それくらいなら許容範囲ね」
許容範囲?
「ということは、帰る事を拒否した者は、どうなるのだの?」
「もちろん、記憶も何も全て奪って強制送還よ。はっきり言って、あちらの世界の人間にあまりうろつかれると、この世界にあまり良くないからね」
「それならば、あの次元の裂け目をどうにかしろだの」
「それは、今頑張ってくれてるわよ…」
「お主は出来ぬのか」
「管轄が違うのよ」
話がみえないんだが。
「で? その仲間達って、何がどうなってるわけ?」
イレーナに、これまでのことを説明した。
イレーナが考え込んでいる。
「我が輩の推察なのだが、我が輩が術に掛けられようとした時…、ふむ、例えて言うならば、奴の魔力が夥しい数のコンセントのようになって、差し込む穴を探しに来た、という所かの。しかし、我が輩には差し込み口がなかったようで、1つも接続しなかったのだの。クレナイ殿達には、その差し込み口が無数にあったのだと思われる。そして、その差し込み口というのが、クレナイ殿達にあって我が輩達にないもの、魔力なのではないかと考えておった」
「確かに、例え迷い人でも、魔力を持っている人もいる。ところが、失礼かもしれないけど、八重子さんには魔力がほぼ感じられない…。いえ、極少量はある、と思うわ…」
目を逸らさないで頂きたい。
「八重子に掛けた時も、もしかしたら1本くらいは引っかかっていたのかもしれぬが、あまりにも微量過ぎて効果がなかったと考えられるの。良かったの、魔力がほぼなくて」
「あまり嬉しくないのだけど…」
褒められている気がしない。
「じゃあ、その、魔力で魔力を縛っているってこと? てことは、意識は?」
「意識は、我が輩が探知した限りでは、薄くはなっていたが自我は残っておった。気持ち悪かろうな。自分の体を自分の思うように動かせぬばかりか、勝手に動かされておるのだからの。今彼奴らは、所謂操り人形の状態になっておるようなものだからの」
操り人形…。これほどにぴったりくる言葉もないものだ。
顔から血の気がひいた気がした。そんな状況になってしまって、絶対皆苦しんでる。
「従魔紋は、例えて言うならば、首に縄を付けられただけの状態。まだ体と心の自由はあった。しかし、あの状態では、全く自由はない。しかも意識もほぼ封じられている状態だの。あの屋敷にいた人間達は半分狂っておるような感じだったの」
「え…? お屋敷にいた人達、全員?」
「全員ではない。だが、操られておる者達はあの男の側に仕えている者が多かったの。もしかしたら、だが、あの男に人質にとられて屋敷で働いている者もおるかもしれぬの」
背筋が寒くなる。
大事な人をあんな状態にされて、返して欲しければ言うことを聞けとか…?
「最低…!」
そんな、そんな人がいるんだ。しかも、悔しくて悲しい事に、同郷の人間だ。
「絶対、絶対に助けないと…!」
有り難い事に、私にはあいつの切り札の術が効かない。この状況を上手く利用できないものか…。
「私がどうにかしようかと思ったけど、私だとちょっと不味いかもしれないわね…」
イレーナが呟いた。
「お主は格好の餌食だろうの。それだけの魔力保有者となれば、あの男は多分気付く。気付けば即座に術を掛けるだろうの」
「でしょうね…」
がっくり項垂れるイレーナ。
「魔力って、隠すとか出来ないの?」
「魔力だけ隠してもの。これだけ異質な気配を纏っていては、多分気付かれるだろうの」
「そんなに異質なの?」
「まあ、人の器によう入っていられるものだというところかの」
「人の器?」
「此奴の中に入っているのは、所謂神と呼ばれる者の力の一部だの」
「かみ?」
「髪でも紙でもないぞ」
「かみって、あの、付喪神とか…」
「そういう低級な神ではない。創造神に近いものだの」
「・・・・・・」
イレーナをじっと見る。
美少女だ。スタイルも良い。はっきり言って誰もが振り向く美少女だ。それが、神?
「だからこそ、私は光の御使いとか、光の御子とかって呼ばれてるのよ」
イレーナが苦笑いする。
スケールが大きすぎて、私の頭では理解出来ません。
「まあ、あの男も操るに限度があるようではあったがの。所詮人の身。上限はある」
「う~ん、でもそれを考慮して、いつも余力を残してるってことも考えられるわね」
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2人でこんこんと話し合っている。いや、私もこの場にいるんだけど、私の頭ではちょっと理解が追いつかない。
「となると、やっぱり私が近づくのは不味いから、貴女達にどうにかして貰わなければならないわね」
そういう結論に至った。
「まあ、そうだろうの。いっそ命を狩ってしまって良いのなら、我が輩がひと思いに行って来るのだが…」
「・・・・・・」
「八重子が嫌そうだの」
嫌な人だった。でも、なんというか、殺すという程ではなかったというか…。
あの人も、この世界に来て人生を狂わされなければ、もっと普通の人だったんじゃないかとも思う。あの人の話を聞いてしまったからだろうか。
「できれば、私も生きて帰したいの。下手に向こうの人の歴史がこちらに持ち込まれるのも色々大変で…。向こうでも人がいなくなったって大騒ぎになってるんじゃない?」
かもしれない。
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「私よりももっと上の方の人の話よ。私にも測りかねるわ。私はただこの世界の安定のためにいるのだから…。じゃなくて、今はそんな話じゃなくて、殺さずに無力化して、取り押さえたところで、私達がその人を強制送還する。で、どう? 唯一近づけるのは貴女達しか今の所いないし。無力化するのを頼んでもよくて?」
「もちろん! やりますよ!」
「八重子、我が輩だけで十分なのだが…」
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「・・・・・・」
うん、私が有言実行者だと、分かっているようだね。
皆がそんなことになってるんだもの。主として、助けてあげないと。今まで皆に頼ってばかりで、あまり役に立たない主だったし。
「分かったの。但し、1つだけ約束するのだの」
「何?」
「一切の怪我をするな」
「いや、それ、無理じゃね?」
「我が輩も頑張る。だがの、もしだぞ? もしクレナイ殿達が八重子を爪の先だけでも傷つける様なことがあったら、考えてもみろ。正気に戻った時に苦しむぞ? 大好きな主を傷つけてしまったとな」
「・・・・・・」
確かに。
クレナイは涙を流して悔やんで、死んでお詫びをなんて言い出すかも知れない。
シロガネも白い顔をますます白くして、やはり死んでお詫びをなんて言い出すだろう。
ハヤテも泣いて泣いて泣いて、二度と笑ってくれないかもしれない。
リンちゃんも、きっと二度と心からの笑顔を見せてくれることはなくなるだろう。
「あれ? 重くない?」
「それほどの物を背負っているのだと自覚しろだの」
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