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黒猫と共に迷い込む
獣人の国に入ろう
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「貴女が本当にドラゴンならば、どうかリザードマンの集落に行ってやって下さい」
「なんじゃ? 妾を疑うのか?」
「め、滅相もない! 只人の姿をしておりますので、我らにはちと受け入れがたいというか…」
「あ、そうか。クレナイ、部分変化したら? 翼だけ出すの」
「なるほどのう。こうか?」
バサアア
ライオンさん再びお口あんぐり。
「シロガネとハヤテもそうしたら良いんじゃない? シロガネはついでに耳も」
「み、耳?」
「クア~」
シロガネが翼を出して、耳を出そうと四苦八苦。ハヤテも人型になって翼をバサリ。
ハアハア、天使…。
「ご主人様は?」
コハクが心配そうに見上げてきた。
「そうね。肝心の私はどうしよう…」
「帽子でも被っておくかの? 主殿」
予備のコハクの帽子を出そうとする。
「いや、子供用だから入らないと思う」
頭がでかいわけじゃなくてね!
「ちょっと待って」
ライオンさんがゴソゴソと、腰に付けていたバッグを漁る。
「通行許可証だ。これを首に掛けて行け。これを付けているということは、俺が許したという証だからな。危害を加えられることはない」
おお、なんと良い物が。さっそく受け取って首に掛ける。
「これを受け取らずに国に入ったらどうなるの?」
「聞きたいか?」
暗い目でこちらを見下ろしてくる。
「いえ、いいです」
「懸命だな」
うん、これ聞かない方が良い系の事だわ。
ライオンさんに挨拶をして、長く続くトンネルの中へと入って行く。
「これ、壁が光ってるの?」
「ヒカリゴケじゃな。此奴は暗い所で光る性質を持つらしい」
さすがクレナイ。博識。
壁全体ではなく、等間隔を開けて設置されている。普通のトンネルのようだ。
が、壁は土なので、ちょっと怖い。
「これ、崩れたりしないのかな…?」
「一応魔法で補強はしてあるようじゃ」
そうなのか。魔法万歳。
途中でふと気づき、シロガネに元の姿に戻って貰ってトンネルの中を駆けて行ってもらった。楽ちん楽ちん。
ハヤテ、壁を走ったり宙返りするとお姉ちゃん落ちるから、気をつけてね。
長いトンネルを抜けると、小高い場所に出た。街が一望出来る。
「思ったよりも大きい」
空から見た感じよりも広い。これなら十分暮らして行けるか。
「許可証を拝見してもよいだろうか」
おっと、トンネルの出口にも人がいたらしい。こちらは狼とみられる獣人さん。
おっふうう…、尻尾がふわっふわ…。
シロガネとハヤテが人型に戻ると、こちらも大きなお口を目一杯広げていた。
犬系のお口も大きいですね。
許可証を見せ、皆が翼を出すと、呆然。これ、あまりやらない方が良いかしら?
正気に返った狼さんに、行って良しとの許可を受け、さっそく眼下に見える街へと向かう。
しまった。まだ距離があるからシロガネに人型になってもらうんじゃなかった。
シロガネの背に乗り、街の近くまで。
いつものように街の近くで降りて、歩いて行く。
街の門の所には、多分、また狼かな?ライオンさんとトンネルの狼さんは獣型だったのに、こちらは人型、コハクと同じ耳と尻尾が生えている。
「満月で変身するのかしら…」
「八重子、アホな発想を呟くな」
酷いわクロさん!
許可証を見せ、連れについても説明。
「鳥人の仲間ではなく?」
「ペガサス、グリフォン、ドラゴンです」
門番さんが言葉を失っていた。
許可証があるならばと、門を通過出来た。
街並みは人の街よりは質素な感じだが、賑わいは人の街とほぼ変わらない。
ケモミミに尻尾を揺らしながら、たくさんの人が歩いている。
Oh、ここは天国か…。
コハクも耳と尻尾を隠さずに歩けて、どことなく嬉しそうだ。うん、来て良かったかも。
早速どこかで何かを食べようと、クレナイレーダーで近くの美味しそうなお店へ。
「いらっしゃい!」
狸っぽい女将さんが迎えてくれる。
いや、体型じゃないよ。耳と尻尾がだよ。確かにちょっと狸っぽい体格はしてるけど…。
女将さんは私を見て、怪訝な顔になるが、胸の許可証を見て、ほっとした顔になった。
「ええと、奥の方が空いてるよ。好きな所に座っておくれ」
言われた通りに奥の方の空いている席に腰掛けた。
なんかちょっと、視線が集まっているような…。まあ、いつものことだな。
シロガネとクレナイがお互いの翼がちょっと邪魔そうだった。隣のハヤテの翼もちょっとちくちくする。でもないと困るしなぁ。
しまってとも言えず、そのままお食事へ。クレナイはいつも通りお肉たっぷり3人前。シロガネはサラダオンリー。コハクとハヤテも肉多め。私はその中間辺りのものを注文。
さすがはクレナイレーダー。美味しい。
食べ終えて、精算しようとしてはたと気付く。そういえば、普通に人里のお金使えるのかしら…。
「あの、このお金使えますか…?」
恐る恐る金貨を出すと、
「ん? ああ、只人の金貨ね。まあ、大丈夫だよ」
ありがたや。
支払いを終えて、両替なんかは出来るかと聞くと、
「仕事斡旋所の所へ行ってごらん。そこなら両替してくれるはずだよ」
親切に教えてもらった。
お店を出て、仕事斡旋所とやらへ向かう。
着いてみると、なんだか冒険者ギルドに作りが似ていた。
中も入ってみると、まんま冒険者ギルドだ。もしかしたら昔はギルドの支部があったのかもしれない。
「こんにちは~。すいません、両替お願いしたんですけど」
窓口の所にいた、黄色い三角耳の美人さんに声を掛けた。多分、狐だろう。
「はい。いらっしゃいませ。えと…、まずは許可証をお見せ頂けますか?」
「はい」
許可証を見せると、やっぱりほっとした顔になった。ちょっと水戸黄門を思い出したのは私だけだろうか。
下ろせる街で少し多めに下ろしておいたのでお金には困らないが、どれくらい使うかは分からないので、半分ほど両替してもらった。
ついでにお勧めの宿屋がないかも聞いてみる。
「ええと、只人を受け入れてくれる宿屋は…、街外れの一軒のみになってしまうのですが」
これは警戒されているからなのだろうか?
説明を受けた宿屋へと足を進める。ついでに街もキョロキョロ見て歩く。
「明日一日観光して、その後コハクが住んでたかもしれない所を見に行ってみようか」
「よろしいのですか? ご主人様」
「私が見たいだけだから、いいのよ」
コハクが下を向いてしまった。これは嬉しさからか?それともなんてアホな主人かと呆れているのか?
「いやだったら言ってね? その、変な記憶はほじくり起こしたくないし…」
「大丈夫です、ご主人様。私、今幸せですから」
顔を上げてにっこり微笑むコハク。くう、天使…。
「後で抱きしめ頬ずりの刑にしよう…」
「何か言いましたか?」
「何も」
クロの溜息を無視して、お上りさん状態の私達は街を見ながら指定された方へと進んで行った。
そのうち街が途切れ、のどかな田舎道のような道になる。
「街外れとは聞いてたけど、街外れ過ぎじゃない?」
後ろに小さくなっていく街を振り返り、来た道を見る。緩いカーブを描いた緩い坂道が延々と続いている。
前を見るが、未だになんの建物も見えず。
「これ、道合ってるよね?」
「合っておるぞ。もう20分くらい歩けば着くと思うの」
「何故クロさん知っている」
「いつものことだの」
「クロさんチュー!」
「歩かなくていいのかの!」
クロをチューの刑に処して、再び歩き始める。
クロの言った通り、20分ほど歩くと建物が見えて来た。
森を背にして立つ、ちょっと山小屋風の建物。
「宿屋…。かな?」
「そうみたいじゃな」
兎にも角にも、泊まれるかどうか聞く為に、山小屋の中へと入って行った。
「なんだてめえら」
そこにいらっしゃったのは、でかい図体、頭に茶色い丸い耳。髭面の、まさに熊さんと呼びたくなるような人が。いや、熊なのだろうな。
「すいません、ここなら泊まれると聞いて来たんですけど」
熊さんがじろじろと私を見る。
「許可証持っててここまで無事に来れたって事は、門番達に認められたって事だな」
なんか変な言葉が聞こえた気がする。
「あれ? これ持ってるならOKって聞きましたけど?」
「それ持ってるだけじゃ簡単にはあのトンネルは通れねえぜ。なにせ、あちこちに隠し部屋なんかがあってな。最初のライオンがいたろ、あいつから不当に許可証を奪った奴は、トンネルの中で始末されるのさ。それ持って五体満足でここまで来たって事は、一応俺達には無害な只人だろうって事だ。まあ、警戒はするがな」
そんな仕掛けがございましたか。
「まあ、何人かの気配はしておったが、ともすればその時には妾が始末してやろうとは思っておったのじゃ」
何もなくて良かったーーーー!
「で、何しに来た?」
「観光に」
「はあ?」
何故驚かれるのでしょう。
「只人が、観光? なんの冗談だ?」
「来てないんすね。誰も」
「只人がここに来るのは、余程変な行商人か、人攫いの連中だけだ。そもそも、只人にとって俺達は穢れた存在なんだろう?」
ああ、そんなこと言ってたっけ。
「私は気にしませんが。というか、モフモフ天国でうっきうきなんですけど」
「はあ? モフモフ天国?」
おっと、本音が…。
「妾達の主殿は、小さな違いなど気にせんということじゃ。それほど心の広いお方なのじゃよ」
いや、狭いっすよ?私そんな大層な人間じゃないからね?過大評価が過ぎるって。
「ふうん。あんたらは、鳥人のお仲間かい?」
3度目の説明。
口と目を見開く熊さん。
「な、な、な、が、が、が…」
何を言いたいのかさっぱり分からん。
再びこれまでの経緯を話し、納得してもらう。なかなか面倒くさいぞ。
「なるほどなぁ。いまいち信じきれねえけど、まあそう言うなら信じてやるさ」
熊さん、存外良い人?
宿も空いているから大丈夫との事で、案内してもらう。
あらまあ、2段ベッドになってる。
部屋は狭い。真ん中になんとか2人立てる幅があるくらい。まあ布団があるだけましか。
そして問題が。2段ベッドということは、4人しか寝られないわけで…。
一方の上にはハヤテ、その下に私。もう一方の上にはコハク。下にクレナイ。
「あの、我は…」
シロガネが余っちゃいました。
「なんじゃ? 妾を疑うのか?」
「め、滅相もない! 只人の姿をしておりますので、我らにはちと受け入れがたいというか…」
「あ、そうか。クレナイ、部分変化したら? 翼だけ出すの」
「なるほどのう。こうか?」
バサアア
ライオンさん再びお口あんぐり。
「シロガネとハヤテもそうしたら良いんじゃない? シロガネはついでに耳も」
「み、耳?」
「クア~」
シロガネが翼を出して、耳を出そうと四苦八苦。ハヤテも人型になって翼をバサリ。
ハアハア、天使…。
「ご主人様は?」
コハクが心配そうに見上げてきた。
「そうね。肝心の私はどうしよう…」
「帽子でも被っておくかの? 主殿」
予備のコハクの帽子を出そうとする。
「いや、子供用だから入らないと思う」
頭がでかいわけじゃなくてね!
「ちょっと待って」
ライオンさんがゴソゴソと、腰に付けていたバッグを漁る。
「通行許可証だ。これを首に掛けて行け。これを付けているということは、俺が許したという証だからな。危害を加えられることはない」
おお、なんと良い物が。さっそく受け取って首に掛ける。
「これを受け取らずに国に入ったらどうなるの?」
「聞きたいか?」
暗い目でこちらを見下ろしてくる。
「いえ、いいです」
「懸命だな」
うん、これ聞かない方が良い系の事だわ。
ライオンさんに挨拶をして、長く続くトンネルの中へと入って行く。
「これ、壁が光ってるの?」
「ヒカリゴケじゃな。此奴は暗い所で光る性質を持つらしい」
さすがクレナイ。博識。
壁全体ではなく、等間隔を開けて設置されている。普通のトンネルのようだ。
が、壁は土なので、ちょっと怖い。
「これ、崩れたりしないのかな…?」
「一応魔法で補強はしてあるようじゃ」
そうなのか。魔法万歳。
途中でふと気づき、シロガネに元の姿に戻って貰ってトンネルの中を駆けて行ってもらった。楽ちん楽ちん。
ハヤテ、壁を走ったり宙返りするとお姉ちゃん落ちるから、気をつけてね。
長いトンネルを抜けると、小高い場所に出た。街が一望出来る。
「思ったよりも大きい」
空から見た感じよりも広い。これなら十分暮らして行けるか。
「許可証を拝見してもよいだろうか」
おっと、トンネルの出口にも人がいたらしい。こちらは狼とみられる獣人さん。
おっふうう…、尻尾がふわっふわ…。
シロガネとハヤテが人型に戻ると、こちらも大きなお口を目一杯広げていた。
犬系のお口も大きいですね。
許可証を見せ、皆が翼を出すと、呆然。これ、あまりやらない方が良いかしら?
正気に返った狼さんに、行って良しとの許可を受け、さっそく眼下に見える街へと向かう。
しまった。まだ距離があるからシロガネに人型になってもらうんじゃなかった。
シロガネの背に乗り、街の近くまで。
いつものように街の近くで降りて、歩いて行く。
街の門の所には、多分、また狼かな?ライオンさんとトンネルの狼さんは獣型だったのに、こちらは人型、コハクと同じ耳と尻尾が生えている。
「満月で変身するのかしら…」
「八重子、アホな発想を呟くな」
酷いわクロさん!
許可証を見せ、連れについても説明。
「鳥人の仲間ではなく?」
「ペガサス、グリフォン、ドラゴンです」
門番さんが言葉を失っていた。
許可証があるならばと、門を通過出来た。
街並みは人の街よりは質素な感じだが、賑わいは人の街とほぼ変わらない。
ケモミミに尻尾を揺らしながら、たくさんの人が歩いている。
Oh、ここは天国か…。
コハクも耳と尻尾を隠さずに歩けて、どことなく嬉しそうだ。うん、来て良かったかも。
早速どこかで何かを食べようと、クレナイレーダーで近くの美味しそうなお店へ。
「いらっしゃい!」
狸っぽい女将さんが迎えてくれる。
いや、体型じゃないよ。耳と尻尾がだよ。確かにちょっと狸っぽい体格はしてるけど…。
女将さんは私を見て、怪訝な顔になるが、胸の許可証を見て、ほっとした顔になった。
「ええと、奥の方が空いてるよ。好きな所に座っておくれ」
言われた通りに奥の方の空いている席に腰掛けた。
なんかちょっと、視線が集まっているような…。まあ、いつものことだな。
シロガネとクレナイがお互いの翼がちょっと邪魔そうだった。隣のハヤテの翼もちょっとちくちくする。でもないと困るしなぁ。
しまってとも言えず、そのままお食事へ。クレナイはいつも通りお肉たっぷり3人前。シロガネはサラダオンリー。コハクとハヤテも肉多め。私はその中間辺りのものを注文。
さすがはクレナイレーダー。美味しい。
食べ終えて、精算しようとしてはたと気付く。そういえば、普通に人里のお金使えるのかしら…。
「あの、このお金使えますか…?」
恐る恐る金貨を出すと、
「ん? ああ、只人の金貨ね。まあ、大丈夫だよ」
ありがたや。
支払いを終えて、両替なんかは出来るかと聞くと、
「仕事斡旋所の所へ行ってごらん。そこなら両替してくれるはずだよ」
親切に教えてもらった。
お店を出て、仕事斡旋所とやらへ向かう。
着いてみると、なんだか冒険者ギルドに作りが似ていた。
中も入ってみると、まんま冒険者ギルドだ。もしかしたら昔はギルドの支部があったのかもしれない。
「こんにちは~。すいません、両替お願いしたんですけど」
窓口の所にいた、黄色い三角耳の美人さんに声を掛けた。多分、狐だろう。
「はい。いらっしゃいませ。えと…、まずは許可証をお見せ頂けますか?」
「はい」
許可証を見せると、やっぱりほっとした顔になった。ちょっと水戸黄門を思い出したのは私だけだろうか。
下ろせる街で少し多めに下ろしておいたのでお金には困らないが、どれくらい使うかは分からないので、半分ほど両替してもらった。
ついでにお勧めの宿屋がないかも聞いてみる。
「ええと、只人を受け入れてくれる宿屋は…、街外れの一軒のみになってしまうのですが」
これは警戒されているからなのだろうか?
説明を受けた宿屋へと足を進める。ついでに街もキョロキョロ見て歩く。
「明日一日観光して、その後コハクが住んでたかもしれない所を見に行ってみようか」
「よろしいのですか? ご主人様」
「私が見たいだけだから、いいのよ」
コハクが下を向いてしまった。これは嬉しさからか?それともなんてアホな主人かと呆れているのか?
「いやだったら言ってね? その、変な記憶はほじくり起こしたくないし…」
「大丈夫です、ご主人様。私、今幸せですから」
顔を上げてにっこり微笑むコハク。くう、天使…。
「後で抱きしめ頬ずりの刑にしよう…」
「何か言いましたか?」
「何も」
クロの溜息を無視して、お上りさん状態の私達は街を見ながら指定された方へと進んで行った。
そのうち街が途切れ、のどかな田舎道のような道になる。
「街外れとは聞いてたけど、街外れ過ぎじゃない?」
後ろに小さくなっていく街を振り返り、来た道を見る。緩いカーブを描いた緩い坂道が延々と続いている。
前を見るが、未だになんの建物も見えず。
「これ、道合ってるよね?」
「合っておるぞ。もう20分くらい歩けば着くと思うの」
「何故クロさん知っている」
「いつものことだの」
「クロさんチュー!」
「歩かなくていいのかの!」
クロをチューの刑に処して、再び歩き始める。
クロの言った通り、20分ほど歩くと建物が見えて来た。
森を背にして立つ、ちょっと山小屋風の建物。
「宿屋…。かな?」
「そうみたいじゃな」
兎にも角にも、泊まれるかどうか聞く為に、山小屋の中へと入って行った。
「なんだてめえら」
そこにいらっしゃったのは、でかい図体、頭に茶色い丸い耳。髭面の、まさに熊さんと呼びたくなるような人が。いや、熊なのだろうな。
「すいません、ここなら泊まれると聞いて来たんですけど」
熊さんがじろじろと私を見る。
「許可証持っててここまで無事に来れたって事は、門番達に認められたって事だな」
なんか変な言葉が聞こえた気がする。
「あれ? これ持ってるならOKって聞きましたけど?」
「それ持ってるだけじゃ簡単にはあのトンネルは通れねえぜ。なにせ、あちこちに隠し部屋なんかがあってな。最初のライオンがいたろ、あいつから不当に許可証を奪った奴は、トンネルの中で始末されるのさ。それ持って五体満足でここまで来たって事は、一応俺達には無害な只人だろうって事だ。まあ、警戒はするがな」
そんな仕掛けがございましたか。
「まあ、何人かの気配はしておったが、ともすればその時には妾が始末してやろうとは思っておったのじゃ」
何もなくて良かったーーーー!
「で、何しに来た?」
「観光に」
「はあ?」
何故驚かれるのでしょう。
「只人が、観光? なんの冗談だ?」
「来てないんすね。誰も」
「只人がここに来るのは、余程変な行商人か、人攫いの連中だけだ。そもそも、只人にとって俺達は穢れた存在なんだろう?」
ああ、そんなこと言ってたっけ。
「私は気にしませんが。というか、モフモフ天国でうっきうきなんですけど」
「はあ? モフモフ天国?」
おっと、本音が…。
「妾達の主殿は、小さな違いなど気にせんということじゃ。それほど心の広いお方なのじゃよ」
いや、狭いっすよ?私そんな大層な人間じゃないからね?過大評価が過ぎるって。
「ふうん。あんたらは、鳥人のお仲間かい?」
3度目の説明。
口と目を見開く熊さん。
「な、な、な、が、が、が…」
何を言いたいのかさっぱり分からん。
再びこれまでの経緯を話し、納得してもらう。なかなか面倒くさいぞ。
「なるほどなぁ。いまいち信じきれねえけど、まあそう言うなら信じてやるさ」
熊さん、存外良い人?
宿も空いているから大丈夫との事で、案内してもらう。
あらまあ、2段ベッドになってる。
部屋は狭い。真ん中になんとか2人立てる幅があるくらい。まあ布団があるだけましか。
そして問題が。2段ベッドということは、4人しか寝られないわけで…。
一方の上にはハヤテ、その下に私。もう一方の上にはコハク。下にクレナイ。
「あの、我は…」
シロガネが余っちゃいました。
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