異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

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黒猫と共に迷い込む

マンイーター

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「おはようなのじゃ主殿」
「おはようである、主」
「おはよーあるじ」
「おはようございます。ご主人様」

四者四様、挨拶が飛ぶ。
リンちゃんもフワリと飛んでいる。

「おはよう、皆」

返事を返す。
だがしかし、何故皆私より早いのだろう?

「八重子の寝坊助は今に始まったことではなかろうが」

後ろからボソリと声が。
私が起きた後の温もりに、クロがぽすりと嵌まっていた。
なんで猫って人が起きた後の布団が好きなのかしら?

「クロ~、おはよう~」
「おはようだの…」

襲いかかった。

「ギニャー!」
「朝から熱いのう」

クレナイが手をハタハタさせていた。にゃぜ?











存分にモフモフして、コハクが持って来たタライの水で顔を洗って、今日の予定を皆に聞く。

「今日はどうする? 昨日頑張ったから休む?」
「いや、なかなか切羽詰まった内容じゃったから、早めにこなしてやった方が良かろう」
「やるー!」

やる気満々ですね。

「我も異存ないである」

リン

草食系も大丈夫そうです。

「んじゃあ、ギルドに聞きに行こうか」

そう決まった。

「八重子」
「何? クロ?」
「ナットーの街のことを忘れてないか?」
「納豆の街? ええと…」
「やはり。従魔紋の解き方を、あの草むしりの爺さんの所に聞きに行くのだろうが」
「おお! そういえばそんなことが!」

クロが頭を抱えている。
大丈夫!今思い出したから!














一先ず王都の依頼をこなしてからと方針を決めて、皆でギルドへ。

「おはようございま~す」

と受付のお姉さんの所へ行ったら、顔パスで奥に通されました。
何故だ。
少し待っていたらギルドマスターのオンユさんがやって来た。

「昨日の今日で、まさかまた依頼を受けにでも来たのかい?」
「そうですけど」
「・・・・・・」

何故黙るのでしょう。

「ええと、回収部隊は今日にでも編成して、明日にでも出発しようと思ってる。まだしばらく待っていてくれるかな?」
「はい。いいですよ」
「妾がひとっ走り飛んで行ってこようか?」
「「やめてください」」

オンユさんと声が被った。

「ええと、それで、依頼を受けてくれるんだっけ?」
「はい。皆やる気満々でして」
「それは、こちらとしては有り難いね」

ちょっと待っててくれと言い置いて、オンユさんが部屋を出て行った。
すぐに戻ってくると、手には数枚の書類。

「昨日のマンイーターとやらの依頼を受けてやろうと思っておるのじゃが」

クレナイからご指名です。

「おお、マンイーターか。それは有り難い」

書類をパラパラ見て、一枚を取り出した。

「これだ。確認してくれ」
「ふむ。良かろう」

書類に目を通し、クレナイが頷く。
あれ?クレナイが決めちゃったよ。
まあいいか。

「それと、皆のランクアップがあったんだっけ。全員の冒険者証を預かって良いかな?」
「おお、お願いします」

皆が冒険者証を差し出す。リンちゃんのは私の鞄にあったので取り出す。

「貴女のもね」
「え? 私もですか?」

私の分も出せと?私何もしてないのだが。
言われるままに出す。
しばらく待っていてくれと言われ、またオンユさんが部屋を出て行く。

少しして、受付のお姉さんの1人が、お茶とお菓子を持ってきてくれた。
それらを摘まみながら、依頼内容をクレナイに説明して貰う。

「北の森にマンイーターが出たらしいのじゃ。近場に小さいが村もあるし、早う退治して欲しいとあるのう。ほう、冒険者も幾人かやられておるようじゃ」
「マンイーターって、あれだよね? 人食い植物」
「うむ。しかも此奴は植物のくせに移動する事が出来る。この近場の村とやら、まだ生き残っておるかのう?」

嫌な想像させないで。

「まあ、植物であるから、火には弱いじゃろうし、妾達にとっては朝飯前じゃな」
「なんで人気なかったんだろ?」

つまり魔術師がいればできる依頼なのでは?

「剥ぎ取れる素材がほぼないらしいのじゃ」

またかい。
場所は王都から歩いて半日かかるかかからないか程度。これから行けないわけでもないね。
ここが終わったら早速向かおうと話していると、オンユさんが戻ってきた。

「はい。手続き諸々は終わったので、冒険者証を返します。一応確認してね」

それぞれに手渡される。

「お、妾、Cになっておるぞ」
「我もである」
「ハヤテのは?」

読めないハヤテが聞いてくる。

「ハヤテは、お、Cになってるよ」
「ハヤテもしー!」

嬉しそうに冒険者証を掲げる。可愛い。

「リンちゃんは、お、リンちゃんもCだね」

リンちゃんが嬉しそうに羽を羽ばたかせた。

「私は~、お、Eになってる」

うん、何もしてないしね!

「私も、Eになっています」

コハクも冒険者証を見せてきた。

「いきなりAまで飛ぶのは難しくてね。せめてものと言うところで、Cに上げさせてもらった。これからまた高ランクの依頼をこなしてくれれば、またすぐにランクアップするよ」
「ありがとうございます」
「いや、さすがに君達のような猛者を、低ランクに置いておくわけにもいかないしね」

そうっすね。

「依頼を片付けてくれれば言うことなしだよ」

上げる代わりに依頼をこなせと?

「そこは、この子達の気分次第となりますので、確約は出来ません」
「そ、そうだね…」

見るからにしょんぼりなさった。素直すぎでない?












ギルドを出て、北の門から出て、少し行った所で、シロガネの出番です。
コハクはハヤテに跨がって、出発。

「ん~、飛ぶのも慣れてきたな~」

顔を撫でていく風が気持ち良い。

「主殿、今度はっちゃける場を設けてはくれぬか?」
「どしたの? クレナイ?」
「偶には元の姿に戻らぬと、なんというか、こう、溜まってくるというか…」
「分かった。どこかで作ろう」

クレナイだけ常時人型だものね。
どこか良い場所が合ったら、クレナイに自由時間を上げましょう。
オンユさんの説明通りに向かうと、小さな村が見えてきた。

「あれの、西の方…」

村から西に向かってちょっと飛んで貰う。

「クロ、クレナイ、どお?」
「ふむ、妾の探知では、難しいのう」
「見つけたぞ」

さすがクロ様。
適当な所で森の中に降り、シロガネとハヤテが人の姿になる。
そのままクロの言う方へのこのこ歩いて行くと、

「あ、あれ…」

緑の何かがうにょうにょ動いているのが見えた。
近くの木に身を隠す。

「あれっぽい?」
「そうじゃのう」
「であるな」
「やるー?」
「待ってハヤテ」
「ハヤテ、ご主人様の命もなしに動いてはいけませんよ」
「あい」

ん?なんかハヤテとコハクの関係が、面白いことに…。じゃなくて。

「八重子」
「クロに見えるってことは、錯覚ではない?」
「うむ。あれ、人間が捕まっておるぞ」

ですよねー!
なんか、触手?の1本に、人が絡まってるのが見えるんですけどー!
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