異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

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黒猫と共に迷い込む

取ってこいだけど違う

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その後、ブラッシングもしてあげて、そこそこ仲良くなって来た所で、メイドさんがお昼を運んで来てくれました。
そういえば、お腹空いたや。
折角なので召し上がって行ってくれと言われたので、シアと共にサンドイッチを摘まむ。
どうやらお取り込み中らしいということで用意してくれたらしい。ありがたや。
ハヤテやクレナイも一緒に摘まんで、シロガネだけ、

「我はこの芝生でも…」

などとアホなことを言っていたので、肉類を取ってサンドイッチをあげました。
人の姿でも草を食べられるのだろうか。とりあえず今はやめて。
お食事後は取ってこいを教えてあげる。

「こうやって、木の棒なんかを投げてあげるのよ」

一度鼻先に持っていって臭いを嗅がせる。

「そ~れ、取ってこ~い」

とぶん投げたら、ハヤテが走って行った。
しまった…。
そういえばハヤテに取ってこいを教えていたんだっけ。

「あるじー!」

にっこにこで棒を拾って来たハヤテの頭をナデナデする。

「貴女…、子供になんてことさせてるのよ…」
「いや、これは、違うのよ…」

そもそもハヤテは人じゃなくてーと言いたいけど、言えない。

「あるじ、もっとー!」

ハヤテがもっと投げろと催促してくる。
仕方がないので、投げてあげた。それを楽しそうに走って取りにいく。
フリードには別の木の棒を用意して、シアに投げてもらって遊んでもらいました。
幼児と犬が木の棒を追って走る庭…。






そうやって色々遊んでいたら、いつの間にか陽も傾き、夕飯の時間に。
今日はシアはお稽古事がお休みだったそうです。遊べて良かったね。
大分シアとフリードも仲良くなって来ている。良い傾向だ。
フリードはタングスさんと一緒に小屋に戻るそうです。できれば一緒にいてあげて欲しいのだけど、シアのお母さんが苦手なので、家の中には上げられないとのこと。

できるだけ毎日フリードと遊んであげることを約束して、一緒に食堂へ。
夕飯に招待されてるのだよとシアに言うと、それじゃあ一緒に行きましょうと手を引いてくれた。

うん、大分ツンデレのデレになってきてる。

シアに手を引かれていると、後ろからハヤテの視線が…。
右手にシア、左手にクロだと、ハヤテと手が繋げないのよね。
今だけ、我慢してくれ。

食堂に着くと、よく映画とかで見るあの長い机が。
上には小さなシャンデリアのような物。
でも先に付いてるのは蝋燭ではない。光を発しているあの宝石みたいなのは、魔道具とかなんだろうか?
シアに案内されて席に座ると、すぐに領主様とその奥様らしき人も来て着席した。

特にマナーは気にしないで良いと朗らかに言われた。いい人だ。
出て来た料理は、うん、凄かった。
フランスのコース料理みたいで、綺麗で美味しかった。

ハヤテは普通に食べ、シロガネは肉類は残し、それをクレナイが頂き、クレナイは美味いけど足りないと、文句を言っていた。
追加で肉が用意されたらしく、クレナイ用に大きなステーキが出て来た。
それもペロリと平らげてしまう。

「ふむ。まあ、満足してやろう」

あれだけ食べてまだ入るのか。
奥さんがちょっと青い顔しているよ。
食事も落ち着いた所で、シアが今日は泊まって行けと言い始めた。
宿も取ってあるし、断ろうとしたんだけど、領主様夫妻からも熱望されて、泊まることになった。

なんか、懐かれたな。

風呂があると言うことで皆でお風呂に。
もちろん、シロガネだけは別です。泣いてもだめ。
さすが領主の館というか、広いお風呂でした。

ハヤテ、泳いではいけません。
リンちゃんもお湯にちょっと触ったりして遊んでいた。
クロは脱衣所で待機。いつも通り。

シアとクレナイと3人でガールズトーク。

「殿方に求めるのは強さじゃな。妾よりも強くなければ認めん」
「今の時代、腕力だけじゃだめよ。ちゃんと知力もないと」
「私は~、気が合う人ならいいかな~」

2人が男の人に何を求めるかで盛り上がっていた。
楽しそうだね~。







寝る時も、私達の客室に、シアが押しかけてきた。

「寝るまでお話ししましょ!」

と私のベッドに座り込む。
しばらく雑談して、そろそろ寝ようという頃になっても、シアは帰ろうとしない。
もじもじしながら、

「せ、折角だから、一緒に寝ない?」

とちょっと顔を赤くして言ってくる。
ちくしょう。その顔可愛いな!

もちろんだが、シアは美少女だ。
勝ち気そうなその瞳、少し丸いまだ子供っぽい顔。
奥さんも美人だったし、領主様もダンディーだったし、シアもきっと素敵な美女になるのだろう。
そんな可愛い子に、一緒に寝たいとせがまれたら?

「NO」とは言えないよね。

一応お家の人に了解は取ったのかと聞くと、大丈夫だとVサイン。
最初から寝るつもりだったね。
私のベッドに潜り込もうとするのを、ハヤテが割り込んできた。

「ハヤテもねうー!」

シアにばっかり構ってたせいか、ハヤテがヤキモチ。
しかし、このベッドもさすがにそんなに大きくないので、そしてハヤテは寝ると元の姿に戻ってしまうのもあって、ハヤテは別ベッド。
ぐずるハヤテを、また手を持ってやって、寝るまでいるからと安心させてやる。
うん。シアにはバレちゃうけど、この際仕方ない。

「シア。びっくりしないでね?」
「何が?」

ハヤテが寝息を立て始めて、そっと手を放すと、次の瞬間、ハヤテの姿がグリフォンに戻る。

「え?!」

やっぱりビックリしちゃったね。

「え~と、実を言うとね…」

ハヤテはグリフォン、シロガネはペガサス、クレナイはドラゴンだと説明していく。
多分すでにいろんな人にバレバレなんだろうけど、シアに、「2人だけの秘密ね」と口止め。
女の子ってそういうの好きだよね。
シアも「2人だけの秘密」というワードにぐっときたのか、「誰にも言わないわ!」と約束してくれた。

左側は先約があるからと、シアには右に寄ってもらい、クレナイとシロガネにもお休みと声を掛け布団に潜る。
その後も少しだけシアとお喋りをして、そのうちにいつの間にか、意識がなくなっていた。
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