51 / 194
黒猫と共に迷い込む
リンちゃん苦戦
しおりを挟む
クレナイの最初の主は、ドラゴンが文字を覚えるのが面白かったらしく、なんでもかんでも教えてくれたらしい。
その為、書物などもいろいろ読んだらしい。
よし、これから書類関係はクレナイに聞こう。
その中で魔法のことや、人化の術のことなども知り、主の許可を得て実験していたとか。
まあ、研究者にとっては美味しい素材だったのだろうけど。
当然従魔紋についての書物もあるだけ読み漁ったらしい。その中にも解呪の方法などは記されていなかった。
従魔紋はほぼ永久紋で、死ぬまで取れることはないと知り、かなりがっかりしたとか。
がっかりだけなんだ。絶望とかじゃないんだ。
生まれてこの方、人の中で生きてきたので、主を持つことに抵抗はないらしい。
ただ、ボンクラ主の時は早く死んで新しい主にならないかと毎日呟いていたと。
呟くくらいなら従魔紋に反することにはならないらしいので。
愚痴は許容範囲なんだね。
「そうか~。これ、取れないのか~」
「主が死ぬと、新しい主を求めて彷徨う事になるらしいのじゃ。死ぬことが分かっていると、早めに相続させるのじゃ」
「なんだか、ちょっと悲しいね」
「まあ、妾は生まれてこの方、同胞に会ったこともないのでのう。今更ドラゴンの群れに入れと言われても、挨拶の仕方も分からぬ。このまま人の世で暮らしていくしかないとは思っておるぞ」
挨拶か。挨拶は大事だよね。
猫の鼻チョン挨拶とか、犬のお尻嗅ぎまくり挨拶とか。
種族によってそれぞれ違うものね。人間も所変われば挨拶の言葉、仕草、いろいろ変わるしね。
野生の動物が人に育てられると野生に帰れないのは、これも原因だと聞く。
群れのルールが分からないと、群れに入っていけないのだ。
単独で狩りをする肉食動物でさえ、他の肉食動物のマーキングなどを知らなければ、命を落とすこともある。難しいのだ。
「主殿。悲しい顔をせぬでおくれ。妾は主殿のような良い主に出会えることを楽しみにしておるのじゃ。人の世で生きていくのも、そう悪い話では無いのじゃ」
そう言って頭を撫でてくれる。これじゃ反対じゃないか。
「うん。できる限りのことをするね。クレナイが楽しく過ごせるように」
「誠、良い主に出会えたのじゃ」
もう一度優しく抱きしめられる。
良い匂いがするのは気のせいだろうか。
「本当に方法無いのかな? 探したら見つかったりしないかな?」
「それは分からぬのう。妾も全てを知っているわけではないからのう」
「八重子、ナットーの街に魔法の権威のじじいがおったろう」
そこはじじいじゃなくてお爺さんと呼んで上げて。
「そか。あの人に聞けば何か分かるかも?」
「ほう、そんな者がおるのか」
気難しい人だけど、一応私はそこそこ気に入られてるから大丈夫ではないかと思う。
「でも、戻るの?」
ここまで来て?王都へ行くと息巻いて出て来たのに?帰ったりしたらエリーさんが狂喜乱舞するかもしれないよ?
「それは八重子の自由だの」
そう言ってクロは膝の上で丸くなる。
いや、ずっと膝の上にはいたんだけどね。
あああ、可愛いよこの黒い物体。
ナデナデしながら考える。
このまま進むか、引き返すか。
「主殿の好きにするのじゃ。妾達は付いて行くだけじゃ」
どこからか取り出した扇で口元を隠しながら言うクレナイ。
どこでそんな素振りを覚えたんだろう?
「そうだね…。やっぱり…」
悩む程ではない。結論は既に出ている。
「まずは王都に行こう!」
フードシックも限界です!
クロが白い目をしている気がするけど、多分気のせいだと言うことにしてください。
八重子が布団を被って、すぐに寝息を立て始めると、いつものようにリンが人化の術の練習を始めた。
「ほう。リンも人化の術を習得しようとしておるのか?」
リンちゃんの気配に気付き、クレナイが起き上がった。
リィン・・・
少し寂しげにリンちゃんが音を出す。
やり方は教わって、魔力の循環も悪くないはずなのに、何故かまだ人化出来ない。
「面白いのう。妖精族が人化の術を会得しようとするとは」
少し目を細めリンちゃんをじっと見つめるクレナイ。
「ふむ。魔力の循環は悪く話さそうじゃな。そうじゃのう。きっかけさえ掴めればすぐにでも出来そうなのじゃが…。あとはイメージかのう」
イメージと聞いてリンが首を傾げる。
「自分が人になった姿を思い浮かべるのじゃ。妖精は人と外見はあまり変わらぬ姿じゃから、然程難しい事でもなかろう?」
そう言われ、リンちゃんは自分が人の姿になった所を思い浮かべようとするが、なんとなくイメージが湧かない。
人の姿?大きくなる?
「そうだの。鏡を見てみてはどうかの?」
クロがむくりと起き上がると、一瞬にして人の姿になる。
「ほおおおおお。それがクロ殿の人の姿か…」
そう呟き、見とれるクレナイ。
クロはちょっと警戒しつつ、八重子の鞄をゴソゴソと探っていると、
「手鏡ではあるが、リンならば申し分なかろう」
そう言って、掌サイズの手鏡を取り出した。
それをリンの前に掲げてやる。
リンちゃんがマジマジと手鏡を覗いた。
そこには、緑の髪、緑の瞳、背中に薄い羽を付けた自分の姿。
初めて見る自分の姿に、驚きを隠せない。
面白いのか、いろいろなポーズを取り出す。
にらめっこしたり、後ろを向いたり、笑ってみたり、手を上げてみたり。
はしゃぐリンをほのぼのと見つめる2人。小さなリンちゃん、癒やし系。
「リンよ。クロ殿が折角そうして持ってくれておるのじゃ。あまり待たせるなよ」
そう言われ、リンちゃんがはっとなって、真剣に鏡の中を覗き始めた。
魔力を循環させて、イメージを固めていく。
「時にクロ殿。昼間のあれは、クロ殿が?」
「ほう。さすがは竜の姫。気付いておったか」
「不思議な波動を感じたのでのう。クロ殿かと」
「まあのう。八重子に手を出そうとしたのだ。死ぬよりも恐ろしい目に遭ってもらわなければの」
「ほほほ。クロ殿が一番恐ろしいのではないか?」
「そうかもしれんの」
リンちゃんの体が光り始める。
「して、彼奴、どうなったのじゃ?」
「我が輩の中で、我が輩の糧になっておるよ」
「中で?」
「お主ら魔獣が魔力を糧にするように、我が輩もの、人の恐怖心を力の糧としておるのだ。彼奴は永遠に、我が輩の糧になってもらうだけよ」
「ほおおおぉぉぉ、そのようなことが…」
クレナイの目が危ない。
「クレナイ殿。我が輩は生殖器はないからの」
「く…。なんとも口惜しや…」
まだ狙ってたか。
リンちゃんの光が、どんどん強くなっていく。
「この女―――!! 死ねえええぇぇぇ!!!」
ドラゴンを奪った女を見つけ、物陰から襲いかかる。
女は一瞬驚いた顔をすると、すぐにこちらに背を向けた。
背を向ける瞬間、腕に抱いていた黒猫の瞳が光った気がした。
そして、気付くと暗闇の中にいた。
「あ…、ああ? 何処行った? あの女?」
目の前にいた女の姿は消え失せ、コロシアムにいたはずなのに、コロシアムの壁も何もかもが周りから消え去っていた。
手に持っていたナイフも消えている。
訳が分からなかったが、とにかく歩けば壁にぶつかるだろうと歩き出す。
ところが、行けども行けども何にも辿り着かない。
おかしい、コロシアムはそこまででかくなかったはずだ。
なんとなく不安を感じ始め、歩きが早歩きになり、いつしか小走りになっていた。
それでも何処にも辿り着かない。
目の前に壁があったはずなのに。真っ直ぐ進まなくとも、コロシアムの壁にぶち当たるはずなのに。
「おおい! 誰か! いないのか!!」
コロシアムにはまだ大勢の人がいたはずだ。
かなり進んだはずなのに人に出会うこともない。
引き返そうかとも考えるが、すでに自分がどの方向から来たのかよく分からなくなっている。真っ直ぐ来たはずだが、無意識に曲がってしまっているかもしれない。
というか、これだけ歩けば、街のどこかにぶち当たるはずなのに。
引き返すに引き返せず、ただ前に向かうしかなかった。
ひたすらに暗闇の中を進み続けていると、いつからそこにあったのか、2つの光が見えているではないか。
なんだ、人がいるんじゃないかと、その光に向かって進むが、どんなに進んでもその光に近づくことが出来ない。
走っても走っても、光は全く近づかなかった。
「おおい! 誰かいるんだろ! ここだ! 俺はここにいるぞ!」
向こうから気付いてくれないかと声を張り上げるが、返事もない。
他に行く当てもないので、とにかくその光を目指す。
そのうち、奇妙なことに気付く。
その2つの光は、やけに地面に近い所にあるのだ。
遠くにあるからそう見えていただけなのかと思ったが、実は思ったよりも近い所にあると、なんとなく分かって来た。
それに、時折光が途切れるので瞬いているのかと思ったが、それは目を閉じる瞬きなのではないかと。
そう思ったら、何故か急に恐ろしくなってきた。
自分は気付かずに、何か大変なものに近づいてしまったのではないかと。
足に力が入らなくなり、立ち止まってしまう。
その時。
「己が事しか考えられぬウツケ者め。二度とここから出られるとは思うな」
そう声が聞こえたかと思うと、2つの光もパッと消えてしまった。
「う…、うああああああああ!!!」
悲鳴を上げ、踵を返して逃げ始める。
しかし、行けども行けども暗闇しかあらず、何処へ辿り着くこともなく、誰かに会うこともない。
だがしかし、足を止めることは出来なかった。
その為、書物などもいろいろ読んだらしい。
よし、これから書類関係はクレナイに聞こう。
その中で魔法のことや、人化の術のことなども知り、主の許可を得て実験していたとか。
まあ、研究者にとっては美味しい素材だったのだろうけど。
当然従魔紋についての書物もあるだけ読み漁ったらしい。その中にも解呪の方法などは記されていなかった。
従魔紋はほぼ永久紋で、死ぬまで取れることはないと知り、かなりがっかりしたとか。
がっかりだけなんだ。絶望とかじゃないんだ。
生まれてこの方、人の中で生きてきたので、主を持つことに抵抗はないらしい。
ただ、ボンクラ主の時は早く死んで新しい主にならないかと毎日呟いていたと。
呟くくらいなら従魔紋に反することにはならないらしいので。
愚痴は許容範囲なんだね。
「そうか~。これ、取れないのか~」
「主が死ぬと、新しい主を求めて彷徨う事になるらしいのじゃ。死ぬことが分かっていると、早めに相続させるのじゃ」
「なんだか、ちょっと悲しいね」
「まあ、妾は生まれてこの方、同胞に会ったこともないのでのう。今更ドラゴンの群れに入れと言われても、挨拶の仕方も分からぬ。このまま人の世で暮らしていくしかないとは思っておるぞ」
挨拶か。挨拶は大事だよね。
猫の鼻チョン挨拶とか、犬のお尻嗅ぎまくり挨拶とか。
種族によってそれぞれ違うものね。人間も所変われば挨拶の言葉、仕草、いろいろ変わるしね。
野生の動物が人に育てられると野生に帰れないのは、これも原因だと聞く。
群れのルールが分からないと、群れに入っていけないのだ。
単独で狩りをする肉食動物でさえ、他の肉食動物のマーキングなどを知らなければ、命を落とすこともある。難しいのだ。
「主殿。悲しい顔をせぬでおくれ。妾は主殿のような良い主に出会えることを楽しみにしておるのじゃ。人の世で生きていくのも、そう悪い話では無いのじゃ」
そう言って頭を撫でてくれる。これじゃ反対じゃないか。
「うん。できる限りのことをするね。クレナイが楽しく過ごせるように」
「誠、良い主に出会えたのじゃ」
もう一度優しく抱きしめられる。
良い匂いがするのは気のせいだろうか。
「本当に方法無いのかな? 探したら見つかったりしないかな?」
「それは分からぬのう。妾も全てを知っているわけではないからのう」
「八重子、ナットーの街に魔法の権威のじじいがおったろう」
そこはじじいじゃなくてお爺さんと呼んで上げて。
「そか。あの人に聞けば何か分かるかも?」
「ほう、そんな者がおるのか」
気難しい人だけど、一応私はそこそこ気に入られてるから大丈夫ではないかと思う。
「でも、戻るの?」
ここまで来て?王都へ行くと息巻いて出て来たのに?帰ったりしたらエリーさんが狂喜乱舞するかもしれないよ?
「それは八重子の自由だの」
そう言ってクロは膝の上で丸くなる。
いや、ずっと膝の上にはいたんだけどね。
あああ、可愛いよこの黒い物体。
ナデナデしながら考える。
このまま進むか、引き返すか。
「主殿の好きにするのじゃ。妾達は付いて行くだけじゃ」
どこからか取り出した扇で口元を隠しながら言うクレナイ。
どこでそんな素振りを覚えたんだろう?
「そうだね…。やっぱり…」
悩む程ではない。結論は既に出ている。
「まずは王都に行こう!」
フードシックも限界です!
クロが白い目をしている気がするけど、多分気のせいだと言うことにしてください。
八重子が布団を被って、すぐに寝息を立て始めると、いつものようにリンが人化の術の練習を始めた。
「ほう。リンも人化の術を習得しようとしておるのか?」
リンちゃんの気配に気付き、クレナイが起き上がった。
リィン・・・
少し寂しげにリンちゃんが音を出す。
やり方は教わって、魔力の循環も悪くないはずなのに、何故かまだ人化出来ない。
「面白いのう。妖精族が人化の術を会得しようとするとは」
少し目を細めリンちゃんをじっと見つめるクレナイ。
「ふむ。魔力の循環は悪く話さそうじゃな。そうじゃのう。きっかけさえ掴めればすぐにでも出来そうなのじゃが…。あとはイメージかのう」
イメージと聞いてリンが首を傾げる。
「自分が人になった姿を思い浮かべるのじゃ。妖精は人と外見はあまり変わらぬ姿じゃから、然程難しい事でもなかろう?」
そう言われ、リンちゃんは自分が人の姿になった所を思い浮かべようとするが、なんとなくイメージが湧かない。
人の姿?大きくなる?
「そうだの。鏡を見てみてはどうかの?」
クロがむくりと起き上がると、一瞬にして人の姿になる。
「ほおおおおお。それがクロ殿の人の姿か…」
そう呟き、見とれるクレナイ。
クロはちょっと警戒しつつ、八重子の鞄をゴソゴソと探っていると、
「手鏡ではあるが、リンならば申し分なかろう」
そう言って、掌サイズの手鏡を取り出した。
それをリンの前に掲げてやる。
リンちゃんがマジマジと手鏡を覗いた。
そこには、緑の髪、緑の瞳、背中に薄い羽を付けた自分の姿。
初めて見る自分の姿に、驚きを隠せない。
面白いのか、いろいろなポーズを取り出す。
にらめっこしたり、後ろを向いたり、笑ってみたり、手を上げてみたり。
はしゃぐリンをほのぼのと見つめる2人。小さなリンちゃん、癒やし系。
「リンよ。クロ殿が折角そうして持ってくれておるのじゃ。あまり待たせるなよ」
そう言われ、リンちゃんがはっとなって、真剣に鏡の中を覗き始めた。
魔力を循環させて、イメージを固めていく。
「時にクロ殿。昼間のあれは、クロ殿が?」
「ほう。さすがは竜の姫。気付いておったか」
「不思議な波動を感じたのでのう。クロ殿かと」
「まあのう。八重子に手を出そうとしたのだ。死ぬよりも恐ろしい目に遭ってもらわなければの」
「ほほほ。クロ殿が一番恐ろしいのではないか?」
「そうかもしれんの」
リンちゃんの体が光り始める。
「して、彼奴、どうなったのじゃ?」
「我が輩の中で、我が輩の糧になっておるよ」
「中で?」
「お主ら魔獣が魔力を糧にするように、我が輩もの、人の恐怖心を力の糧としておるのだ。彼奴は永遠に、我が輩の糧になってもらうだけよ」
「ほおおおぉぉぉ、そのようなことが…」
クレナイの目が危ない。
「クレナイ殿。我が輩は生殖器はないからの」
「く…。なんとも口惜しや…」
まだ狙ってたか。
リンちゃんの光が、どんどん強くなっていく。
「この女―――!! 死ねえええぇぇぇ!!!」
ドラゴンを奪った女を見つけ、物陰から襲いかかる。
女は一瞬驚いた顔をすると、すぐにこちらに背を向けた。
背を向ける瞬間、腕に抱いていた黒猫の瞳が光った気がした。
そして、気付くと暗闇の中にいた。
「あ…、ああ? 何処行った? あの女?」
目の前にいた女の姿は消え失せ、コロシアムにいたはずなのに、コロシアムの壁も何もかもが周りから消え去っていた。
手に持っていたナイフも消えている。
訳が分からなかったが、とにかく歩けば壁にぶつかるだろうと歩き出す。
ところが、行けども行けども何にも辿り着かない。
おかしい、コロシアムはそこまででかくなかったはずだ。
なんとなく不安を感じ始め、歩きが早歩きになり、いつしか小走りになっていた。
それでも何処にも辿り着かない。
目の前に壁があったはずなのに。真っ直ぐ進まなくとも、コロシアムの壁にぶち当たるはずなのに。
「おおい! 誰か! いないのか!!」
コロシアムにはまだ大勢の人がいたはずだ。
かなり進んだはずなのに人に出会うこともない。
引き返そうかとも考えるが、すでに自分がどの方向から来たのかよく分からなくなっている。真っ直ぐ来たはずだが、無意識に曲がってしまっているかもしれない。
というか、これだけ歩けば、街のどこかにぶち当たるはずなのに。
引き返すに引き返せず、ただ前に向かうしかなかった。
ひたすらに暗闇の中を進み続けていると、いつからそこにあったのか、2つの光が見えているではないか。
なんだ、人がいるんじゃないかと、その光に向かって進むが、どんなに進んでもその光に近づくことが出来ない。
走っても走っても、光は全く近づかなかった。
「おおい! 誰かいるんだろ! ここだ! 俺はここにいるぞ!」
向こうから気付いてくれないかと声を張り上げるが、返事もない。
他に行く当てもないので、とにかくその光を目指す。
そのうち、奇妙なことに気付く。
その2つの光は、やけに地面に近い所にあるのだ。
遠くにあるからそう見えていただけなのかと思ったが、実は思ったよりも近い所にあると、なんとなく分かって来た。
それに、時折光が途切れるので瞬いているのかと思ったが、それは目を閉じる瞬きなのではないかと。
そう思ったら、何故か急に恐ろしくなってきた。
自分は気付かずに、何か大変なものに近づいてしまったのではないかと。
足に力が入らなくなり、立ち止まってしまう。
その時。
「己が事しか考えられぬウツケ者め。二度とここから出られるとは思うな」
そう声が聞こえたかと思うと、2つの光もパッと消えてしまった。
「う…、うああああああああ!!!」
悲鳴を上げ、踵を返して逃げ始める。
しかし、行けども行けども暗闇しかあらず、何処へ辿り着くこともなく、誰かに会うこともない。
だがしかし、足を止めることは出来なかった。
0
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!!
僕は異世界転生してしまう
大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった
仕事とゲームで過労になってしまったようだ
とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた
転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった
住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる
◇
HOTランキング一位獲得!
皆さま本当にありがとうございます!
無事に書籍化となり絶賛発売中です
よかったら手に取っていただけると嬉しいです
これからも日々勉強していきたいと思います
◇
僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました
毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる