異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

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黒猫と共に迷い込む

クレナイという名前になりました

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「この姿ならば、人の宿に泊まることも問題ないであろう?」

そう言いながら、檻の中から出て来た。
確かに問題はないと思う。けれども。

「途中で戻ったりしない?」
「妾はそんなに未熟ではないぞ?」
「クウ…」

あ、ハヤテが気にしてる。
ハヤテもだんだん変身できる時間が長くなってきてるものね。

「その前に、1つ聞いておかねばならぬのだが…」
「何?」

ドラゴン女性がちょっと顔を赤らめる。

「その、妾の、あのような所に、あのような物を、その、入れたのは、誰じゃ?」

ちょっと恥ずかしそうにモジモジしながら聞いてきた。
クロに視線が集まる。
クロの顔が引き攣る。
まあね。ドラゴンといえど、メスですからね。
気まずいものもあるでしょう。

「ほお、この黒猫かえ?」

ドラゴン女性もクロを見つめる。

「ドラゴン殿。申し訳ないとは思うが、あの場合は仕方なかったのだの」

クロ、弁明。
きっと漫画だったら、顔中に冷や汗が流れているのだろうなと勝手に想像。

「妾の視線から外れ、気配も消し、いつの間にか後ろに回り込み、気付かぬうちにあのようなことを…」

クロを見つめている。
え、食べたりしないよね?
ドラゴンの口だったらクロなんて一飲みですよね?
いや、それは阻止させてもらいます!
そこは命令権を発動させて…。

「気に入ったのじゃ! 妾の婿になっておくれなのじゃ!」

滑った。

危うくクロを落とす所だった。
リンちゃんも落ちそうになってた。メンゴ。

「今まで感じたことのない気配、只者ではないのであろう? 妾の意識下から外れる腕も見事! 婿として最高得点なのじゃ!」

ただ単に小さすぎて見えなかっただけなんじゃ…。

「そちらのペガサス殿。シロガネと名乗っておったかの? そなたもあの雷魔法は見事であった! クロ殿ほどではないが、お主も婿候補じゃ! ああ、なんという良き日か。婿候補殿が2体も見つかるとは!」

体をくゆらせていますが、お姉さん、それは無理な話なんじゃないのかい?
私達が話しについていけず、あんぐりと口を開けていると、

「そう言えば、その名は主殿から頂いたと申しておったな。主殿、妾にも素敵な名を頂けないか?」
「え? 名前?」
「そうじゃ! 妾も其方達のような個体名が欲しいぞ。ずっとドラゴンと呼ばれておったからの。それは種族名じゃ」

私がニンゲンと呼ばれているようなものですね。

「それに名を頂ければ、パワーアップも出来るであろうしの」
「え…」

それはネームドモンスターというやつでしょうか…。
やっぱ名前付けたらまずかった?

「さあさあさあ!」

肩を掴んで揺さぶってくる。リンちゃんも頭の上に避難した。

「わ、分かったから…。落ち着いて…」

揺さぶるのを止めてもらう。

「ふむ。こうして見ると、主殿も可愛らしいの。食べてしまいたくなる♡」

それは言葉通りの意味じゃないよね?例えだよね?
背中に冷や汗が流れた。

「えっとね…、「紅」、なんてどうかな? 赤を表す言葉なんだけど」
「ほう、クレナイ、のう」
「確か、昔、最上位の赤を示す言葉だったって聞いたことがあるんだけど…」

江戸時代辺りに、紅、いわゆる口紅は高級化粧品で、滅多に手にできなかったと聞いたことがある。紅を塗るのは女性達の憧れだったとか。
勘違い知識だったらごめんなさい。

「クレナイ…。最上位の赤…。気に入った! 妾は今この時よりクレナイと名乗る!」

気に入ってくれたようだ。

「主殿、よろしゅう!」

ぎゅうっと抱きしめられた。
胸で顔が埋まる…。
巨乳が武器とは、知らなかった…。

「主殿?!」

窒息しかけた。









「クロ殿。祝言はいつ挙げようか?」
「待て待てドラゴン、じゃなくてクレナイ殿。我が輩はお主の婿になる気はない。というか、我が輩にはその資格はない」

出口へと向かいながら、クレナイがクロに迫る。
実際迫られているのは、クロを抱えている私なのだが。

「大丈夫じゃ。其方も人に化けられるのであろう? であれば問題は解決じゃ!」

なんの問題が解決するんだろう。

「いやいや、我が輩には子を成す能力がないのでの。無理であるの」
「は? 子を成せないと? 何故じゃ?」

ああ、それがあったっけ。私の世界では一般的なのだけど。

「我が輩は去勢手術を受けておる。つまり、子を成す能力は失っておるのだ」
「はい? 去勢?」

そうです。してます。これは常識です。
犬猫を飼うのであれば、これはしなければいけない処置です。
ブリーダーとか、体に問題がなければ、去勢避妊手術はきちんと受けさせましょうね。
特に、男性が男の象徴を取ることに何故か同情したりするけど、あれなんなんだ?猫だよ。猫だからね。

猫の雄の場合、去勢しないとどこかに旅に出てしまうこともあります。というか十中八九そうなります。しかもスプレーします。臭いです。片付けとか大変だし、部屋の中がおしっこ臭くなります。大変です。
猫のおしっこってかなり臭いですからね。臭いなかなか取れませんからね。
そして、外に出ないとしても、鳴きます。あれかなりうるさいです。近所から苦情来てもおかしくないです。響きます。
しかもその声、すごい苦しそうです。発情期って可哀相に思います。だって人間みたいに自分で処理とか出来ないんだもの。ちなみに、女の子も発情期に鳴きます。

雌の場合、遠くに行っちゃうことは少ないですが、発情期に外に出したら、十中八九孕んで帰って来ます。猫はちゃんと子供を残せるように、1匹だけではなく、複数の雄と交尾します。子猫の毛の模様がいろいろあるのはこのせいでもあります。
たまに決めた伴侶だけなんていう子もいますが、滅多にありません。
そして孕むと、2~6匹くらいの子供を産みます。

大変です。

世話もですが、一番は金銭的に。
6匹なんて産まれたら、1匹の時の6倍のお金がかかります。これが一番大変。
覚悟があっても金銭的に厳しいと猫共々共倒れになります。それじゃあ意味がない。
子猫のもらい手探すのも大変です。

なので、きちんと去勢避妊はしてあげましょう。
去勢避妊すると、猫は穏やかになりますよ。一部そうでない子もいるけど。それはきっと持って生まれた性格のせいもあると思う。
ちなみに、去勢の手術は1~2万、避妊は2~3万くらいかかります。病院によって値段が違いますので、その辺りはご確認を。
手術前に血液検査などもして、麻酔などができるかどうかの検査なんかもあり、そちらでもお金かかりますよ。
猫の病院は万単位ですからね。懐が痛いぜ。

「そうなんだよね。クロはたまたま・・・・取っちゃってるんだよね」

残ってる小さいたまたま・・・・、ボンボンみたいで可愛いんだけどね。時々触ってたりする。
だって可愛いんだもん!!

「な、な、な…」
「玉が、ない…」

クレナイが言葉を失くし、シロガネも顔を青ざめさせてる。
いや、飼い猫には必要不可欠なことですからね。

「な、なんと! たまがないと!」

あまり大声で言わないでください。なんか顔が赤くなっちゃうよ。

「そ、それでは、子が作れぬではないですか!」
「だからそうだと言っておるがの」

クレナイ、縋り付いてくると重い。

「だから、我が輩ではなくシロガネ殿を…」
「わ、我が?! いや、無理無理無理無理」

シロガネ、頭が高速で横に動いてます。すごい必死。

「いや、シロガネ殿にも子種は頂くが…」

多夫1妻?!

「クロ殿の子種が欲しいのじゃ! 優秀な子を残すは雌の悲願であろう!」

いやいや、その前に、哺乳類と爬虫類で、子供なんて出来るのか?遺伝子的に無理でないかい?

「クレナイ、種族が違いすぎない? 交尾しても子供なんて出来るの?」

疑問を口にするが、

「そこは、『 愛《・》 』でどうにかなるのじゃ!」

だめだこりゃ。
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