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黒猫と共に迷い込む
小話、盗賊達の末路
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八重子達がなにやら準備している間に、時間を少し遡ってみよう。
八重子達が盗賊を捕まえ、それらを縛り付けてえっちらおっちら街に向かっている頃。
「大変だ! 皆捕まった!」
残党の1人が、盗賊達の塒にしていた洞窟に飛び込んできた。
「なんだって?!」
「ど、どうすんだよこれから…」
残ったものは5名。
頭を始め、腕の立つ者は皆捕まってしまった。
ここに残った者は腕に然程自信のない者か、雑用係しかいない。
元々頭も然程良くはない連中である。
どうするどうすると揉め合って、とりあえず頭となる者を決め、今後の事を話し合う事に。
「おおお、俺が、頭だ…」
5人の中で一番腕っぷしがあるというだけで決まってしまった頭。頭の中身は他の者と然程変わりなく、突然降ってきた大役に少しビビっている。
しかし、余程の事がなければなれない地位である。さすがに少し嬉しいらしい。
「んで、これからどうするよ?」
「今まで通りに小隊を襲えば良いんじゃねぇのか?」
「この人数でどうすんだよ」
腕っぷしもなし、頭もなし。となると、襲える者など限られてくる。
このまま諦めて普通の農民に戻るとか、大人しく出頭するとか、他の盗賊に入れてもらうとか、彼らにも頭を捻ればそれなりに普通の人生?を歩めたかもしれなかったが、今まで出来たことなのだからこれからもできるだろうと、変革を嫌う人の性が彼らをその場に留まらせた。
そして、それは夜にやって来たのである。
「ここであるの」
黒い男はそう呟くと、見張りも立てずに奥でささやかな酒宴を開いていた盗賊の塒に入って行った。
黒い男がその場に入って来ても、盗賊達は気付かなかった。男の足音がほとんどしなかったせいもあるかもしれない。
「お主ら」
「うぇ~い? おめぇも飲め飲め。新しい頭の祝宴だ」
「いや、我が輩はいらぬ。それよりもお主ら、素直に投降する気はないか?」
「はあ? 何ぬかして…、って、おめえ誰だ!!」
ようやく気付いた1人が上げた声に、他の4人も初めて黒い男に気付く。
「何だ?!」
「誰だてめえ!」
近くにあった物を手に構えるが、いかんせんそれが魚を焼いた後の串とか、酒瓶とか、微妙なものばかり。大分酔っているらしい。
なにせ今までの頭は雑用や力の無い者にはあまり酒など飲ませてくれなかったということもあり、どうせだからたらふく飲んでやろうと、いつも以上に皆酔っ払っていたのである。
全く不用心だ。
「ふむ。まずは名乗っておこうかの。我が輩はクロと申す。お主らの頭共を捕まえた冒険者の仲間である。ここにお宝を隠してあると教えてもらっての。どうせだからと頂きに来たのだ」
「な、なんだと?!」
「頭が、ここを教えたのか…?!」
仲間が捕まった以上、そういうことを想定し、彼らはさっさとそこを離れるべきであったのだが、まあ考えつかなかったのだ。
ついでに、1人に教えたとしても、その者が1人で来るなどと不自然すぎるということに気付くべきであった。そこまで考えつかなかったのだ。
酒に酔って余計に思考能力が低下し、さらには酒により気持ちが大きくなっていた5人は、1人ならば5人でかかればどうってことないと考え、それを実行しようとした。
相手がたった1人で、見たところ武器の所持も見られなかったための判断だった。
本当に、お酒はほどほどにしましょうね。
「ふむ。まあ、盗賊なんぞやっているからには、そうくるであろうの」
クロがそう呟き、男達が一斉に飛びかかろうとしたその時。
クロの金の瞳が一瞬煌めいたと思った瞬間には、男達は全員、闇に捕らわれていた。
果てなき闇にたった1人。他の仲間がすぐ側にいたはずなのに、手を伸ばしても誰もいない。
大声で呼んでも答える声もなく、仕方なく歩き始めるがどこまで行っても何もない。
そうこうしているうちに、なんだか後ろから何かが近づいて来るような嫌な感じがして…。
走っても走っても逃れられず、転んで起き上がって、助けを呼んで、叫んで。
精神を刈られた男達がぬぼーっと突っ立ている中、クロは洞窟の中を調べ回り、金になりそうな物全てを奪っていった。
クロが洞窟を出て行くと、男達もヨロヨロとその後に続き、自ら進んで街の衛兵所に出頭しに行った。
衛兵所で同じように目が覚めた男達は、泣きながらもうしませんと謝り続けたそうな。
そしてやはりこう言った。
あそこよりはまし!と。
数日後、盗賊達の話により、盗賊の塒を調べに行った衛兵達は、金目の物がほとんどなくなっていた洞窟を調べ、別の盗賊がかっさらって行ったのかと首を捻ったのだった。
八重子達が盗賊を捕まえ、それらを縛り付けてえっちらおっちら街に向かっている頃。
「大変だ! 皆捕まった!」
残党の1人が、盗賊達の塒にしていた洞窟に飛び込んできた。
「なんだって?!」
「ど、どうすんだよこれから…」
残ったものは5名。
頭を始め、腕の立つ者は皆捕まってしまった。
ここに残った者は腕に然程自信のない者か、雑用係しかいない。
元々頭も然程良くはない連中である。
どうするどうすると揉め合って、とりあえず頭となる者を決め、今後の事を話し合う事に。
「おおお、俺が、頭だ…」
5人の中で一番腕っぷしがあるというだけで決まってしまった頭。頭の中身は他の者と然程変わりなく、突然降ってきた大役に少しビビっている。
しかし、余程の事がなければなれない地位である。さすがに少し嬉しいらしい。
「んで、これからどうするよ?」
「今まで通りに小隊を襲えば良いんじゃねぇのか?」
「この人数でどうすんだよ」
腕っぷしもなし、頭もなし。となると、襲える者など限られてくる。
このまま諦めて普通の農民に戻るとか、大人しく出頭するとか、他の盗賊に入れてもらうとか、彼らにも頭を捻ればそれなりに普通の人生?を歩めたかもしれなかったが、今まで出来たことなのだからこれからもできるだろうと、変革を嫌う人の性が彼らをその場に留まらせた。
そして、それは夜にやって来たのである。
「ここであるの」
黒い男はそう呟くと、見張りも立てずに奥でささやかな酒宴を開いていた盗賊の塒に入って行った。
黒い男がその場に入って来ても、盗賊達は気付かなかった。男の足音がほとんどしなかったせいもあるかもしれない。
「お主ら」
「うぇ~い? おめぇも飲め飲め。新しい頭の祝宴だ」
「いや、我が輩はいらぬ。それよりもお主ら、素直に投降する気はないか?」
「はあ? 何ぬかして…、って、おめえ誰だ!!」
ようやく気付いた1人が上げた声に、他の4人も初めて黒い男に気付く。
「何だ?!」
「誰だてめえ!」
近くにあった物を手に構えるが、いかんせんそれが魚を焼いた後の串とか、酒瓶とか、微妙なものばかり。大分酔っているらしい。
なにせ今までの頭は雑用や力の無い者にはあまり酒など飲ませてくれなかったということもあり、どうせだからたらふく飲んでやろうと、いつも以上に皆酔っ払っていたのである。
全く不用心だ。
「ふむ。まずは名乗っておこうかの。我が輩はクロと申す。お主らの頭共を捕まえた冒険者の仲間である。ここにお宝を隠してあると教えてもらっての。どうせだからと頂きに来たのだ」
「な、なんだと?!」
「頭が、ここを教えたのか…?!」
仲間が捕まった以上、そういうことを想定し、彼らはさっさとそこを離れるべきであったのだが、まあ考えつかなかったのだ。
ついでに、1人に教えたとしても、その者が1人で来るなどと不自然すぎるということに気付くべきであった。そこまで考えつかなかったのだ。
酒に酔って余計に思考能力が低下し、さらには酒により気持ちが大きくなっていた5人は、1人ならば5人でかかればどうってことないと考え、それを実行しようとした。
相手がたった1人で、見たところ武器の所持も見られなかったための判断だった。
本当に、お酒はほどほどにしましょうね。
「ふむ。まあ、盗賊なんぞやっているからには、そうくるであろうの」
クロがそう呟き、男達が一斉に飛びかかろうとしたその時。
クロの金の瞳が一瞬煌めいたと思った瞬間には、男達は全員、闇に捕らわれていた。
果てなき闇にたった1人。他の仲間がすぐ側にいたはずなのに、手を伸ばしても誰もいない。
大声で呼んでも答える声もなく、仕方なく歩き始めるがどこまで行っても何もない。
そうこうしているうちに、なんだか後ろから何かが近づいて来るような嫌な感じがして…。
走っても走っても逃れられず、転んで起き上がって、助けを呼んで、叫んで。
精神を刈られた男達がぬぼーっと突っ立ている中、クロは洞窟の中を調べ回り、金になりそうな物全てを奪っていった。
クロが洞窟を出て行くと、男達もヨロヨロとその後に続き、自ら進んで街の衛兵所に出頭しに行った。
衛兵所で同じように目が覚めた男達は、泣きながらもうしませんと謝り続けたそうな。
そしてやはりこう言った。
あそこよりはまし!と。
数日後、盗賊達の話により、盗賊の塒を調べに行った衛兵達は、金目の物がほとんどなくなっていた洞窟を調べ、別の盗賊がかっさらって行ったのかと首を捻ったのだった。
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