異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

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黒猫と共に迷い込む

依頼人に会いに

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まだお昼前だし、早速その商人さんを訪ねてみることにした。
エリーさんに聞いた店に行くと、丁度そのDランクのパーティの面々も揃っていた。
打ち合わせをしていたらしい。
ギルドで紹介された旨を話、中に入れてもらう。
ちなみに、シロガネはまだ人の姿のままである。ハヤテは大きさ的に入れるのでそのまま入ってもらった。馬はでかすぎるので…。
シロガネとハヤテを紹介すると驚かれた。特にシロガネに。

「高位の魔獣が人の姿を取るとは聞いたことはあったが…」
「こ、この人がペガサス…」

冒険者と思われる2人の女性が、なんとなく落胆している。うん、なんかゴメン。

「いやあ、まさか、今話題の貴女にお越し頂けるとは。光栄ですな」
「人数的にどうかと思っていたので、これで大丈夫でしょう」
「ペガサスに護衛されたと話題になりますな」

3人の商人さんがホクホク顔で笑っている。
商人さんは、ハッサム、オッサム、ポッサムさんと言って、3兄弟らしい。
この街を拠点にして、商売しているとか。
今回はソラマメの街まで、荷物を届けに行かなければならないので、その道中の護衛を依頼したのだそうだ。

Dランクのパーティは[月夜の風]という5人パーティ。
リーダーで剣士のクィドさん、戦士のガルズさん、弓士のアントさんが男で、僧侶のユリエールさんと魔術師のメイサさんが女だ。
なかなかバランスの取れたパーティだと思う。
やはり女性の方が魔法の適性が高いとかあるのかな?

ならばなんで私は皆無なのだ?!

出発は荷物の手配などもあり、5日後。朝の鐘が鳴る頃に、北の門の辺りで待ち合わせるということになった。
朝の鐘?やべ、聞いたことないよ。
馬車が3台、一番前と後ろに月夜の風のメンバーが付き、私は真ん中の馬車担当になった。
経験の差からそうなった。当然だ。
ソラマメの街まではおよそ10日程の道程。
それまでの物資も各々で揃えなければならない。ということで、解散となった。
あとは5日後、北の門で落ち合うことに。
何か変更などがあれば、ギルドから通達されると言われた。特になければそのままだ。
商人さん達に挨拶し、店を出ると、

「ねえねえ、分からない事があったら聞いて良いからね」

魔術師のメイサさんが声を掛けてきた。赤い髪に茶色い瞳の快活そうな人だ。

「護衛初めてなんだって? 必要な物とか分かる?」
「ああ、えと、分かりません」
「なら案内したげよっか? 女の子に必要な店もあるしね」

それは必要だ。

「是非に!」

メイサさんが男達に食料などの買い出しを頼むと、メイサさんとユリエールさんと共に、女の子のお店に行きました。
シロガネとハヤテは店の外で待っててもらいました。さすがにね。

「あとはテントとか、食器とか、寝袋とか、持ってる?」
「ないですね」
「あらま。お金ある? ちょっと揃えるとなると、かかるかも」
「主、テントとは、あの雨風を避ける物であるな?」
「そうだよ」

シロガネが声を掛けてきた。

「ならば、我が魔法で雨風を避けよう。それぐらいなら朝飯前である。寝床についても、柔らかい草などを積めばそれなりになるであろう。いかがであるかな?」
「おお、余計な荷物が減るのは有り難いな」

テントに寝袋背負ったら、山登りみたいになるよね。

「うわあ、羨ましい。あたしらも魔法でどうにかならない? ユリ―」
「私は魔法をそんなに便利に使えません」

普通はそうですよね。
ううむ、シロガネが便利になっていく。
その後も食器を買いに行ったり、私の食料を買いに行ったり、気がつけば結構時間が経っていた。

「あたしらギルドの裏手のジャンクって名前の宿に泊まってるから、何かあったら気軽に聞いてきて良いからね」

ジャンク?不良品?
そう言って、お互いに手を振りながらお互いの宿へと帰って行った。

「親切な人達だったね~」
「八重子に親切にして、あわよくば仲間にしようと考えているぞ」
「OH…、裏がありましたか」

仲間になる気はないな~。お気軽に世界を見て回りたいし、迷い人とバレたくないしね。











宿に帰ると、夕飯の前の少し静かな時間帯だった。

「お帰りなさい、ヤエコさん」
「ただいま~ウララちゃん。ウララちゃん、今少し暇?」
「ええ、少しなら」
「よし、なら、ハヤテをナデナデしてみない?」
「! したいです!」

ウララちゃんの顔が輝いた。良い顔している。
一緒に厩舎の方へ。
シロガネはペガサスの姿に戻って中に入ってます。ハヤテもいつもの所に入って休んでいる様子。今日はよく歩いたものね~。

「ハヤテ」

呼ぶと、顔を上げてこちらを見た。

「クア!」

嬉しそうに立ち上がる。
うんうん、最初の頃と比べたら全然いいわ!

「ハヤテ、ウララちゃんがちょとだけハヤテをナデナデしたいんだって。いい?」
「クウ…?」
「大丈夫。怖くないよ」
「え、えと、本当に、いいのですか? えと、噛みついたり、しないですよね?」

ウララちゃんが怖いのか。さすがに猛禽類は怖いのかな?

「大丈夫(だと思う)。ほら、こうやって」

そっと手を伸ばし、頭に触れる。そのままナデナデすると、ハヤテが気持ちよさそうな顔をする。あああ、いいっすねその顔!!最高に可愛いっす!!

「だと思うって小さく聞こえたんですけど…。まあ、大丈夫ですよね」
「あ、手はなるべく下から、そっとね。上からはまだちょっと怖いみたい」

私の忠告に従って、ウララちゃんが低めにそっと手を伸ばす。
お互いに恐る恐るという感じで、ウララちゃんがハヤテの後頭部辺りから触り始める。

「! この、感触…!」

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ…

ウララちゃんのナデナデが止まらなくなってます。
ハヤテもどうやら大丈夫らしいと分かったのか、大人しく撫でられるがままに。

「うう…、ヤエコさん…」
「どうしたのウララちゃん」
「ど、どうしてくれるんですか…。止まりません! この感触!!」
「でしょう!」
「このままベッドに連れ込みたい!!!」
「話が分かるねウララちゃん! でもそれはダメ! まだ私もやってない!」
「うううううううううう!!!!」

止まりません。

その後、夕飯の時間が迫っていると言うことで、根性でナデナデを止めたウララちゃん。
頑張ったね。

「あ、そーそー。私今度王都に行くことになったから」
「ええ?! なんですって?!」

驚かれた。
そして引き留められ、ちょっと怒られ、泣かれた。

「ううう、もうこのモフモフを体感出来ないなんて…」

私よりモフモフかい。
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