異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

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黒猫と共に迷い込む

初討伐依頼へ出発!

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クロの助言も手伝って、必要かと思われる物を用意。
ゴブリンの討伐証明部位を入れる袋、マント、携帯食料等々。
なんでマントが必要かって?
クロに聞いたらば、万が一野宿になった時のためと。マントは防寒具だけでなく、寝る時に布団代わりになると。
ならばテントを買った方が?と言ったが、野宿になるかどうかも分からないので、荷物になるのでまた必要になった時にでもと。

ああ、無限収納魔法が何故ないのか。

厩舎に戻ってシロガネ達を出して街の外へ。
本日は西の門から出たので、初めて見る門番の衛兵さん達の視線が痛かった。いつもは南門使ってます。
地図を確認し(日本ほど精密ではない)、おおよその方向を確認し、いざ出発!
シロガネの背に乗せてもらって空から参ります。
やはり空を飛ぶと歩くより早いよね。
シロガネも早速出番が来たと、張り切ってました。

道沿いに飛んで行って、およそ1時間程で到着。いやあ早い早い。
村の手前で降りて、後は歩いて行く。もちろん、驚かさないためです。
まあでも、村の中入ったら、村中の視線が痛かったですけどね。
村長さんに依頼を確認。森のどの辺りでゴブリンを見たか聞く。
村から然程遠くない辺りで見たらしい。それだといつゴブリン達が襲来するか分からなくて怖いよね。

休む間もなく森へと向かった。まあ、まだ昼には早い時間だったし、ちょっくら覗いて見ようかと思って。
夜は村長さんのお宅に止めて貰えることになった。よし、野宿回避。
村長さんに話を聞いている間にも人だかりが…。特に子供達の目がキラッキラ。触ると危ないよと言ってるのに触ろうとするガキが…いえ可愛いお子様がいて、大変でしたよ。

森の中はよく葉が生い茂っているせいか、下草はそれほど伸びてはおらず、そこそこ歩きやすい。
色鮮やかな、花と言えればまだ情緒があるのかもしれないが、キノコ達がそこら中に生えていて、なかなかカラフル。口には入れたくないですね。

「そういえばクロ」
「なんだの?」
「思い出したけど、ギルドマスターコウジさんの、「黒猫の姿では初めてだけど」って、あれどういう意味?」
「む、ちゃんと聞いておったか」

もちろん、人の話はちゃんと聞きますよ。それが頭に留まってるかどうかはその時次第ですが。

「八重子も知っているとは思うが、妖は変化も得意であろう。ギルマスに会いに行った時は、人の姿に化けておったのだ」
「おお、クロの人化! 見てみたい!」
「そのうちの」
「ぬ、黒猫は人化の術が使えるのか」

シロガネが話しかけて来た。

「人化の術? 人に化けるだけ?」
「我のように高位の魔獣は人化の術で人の姿をとることも出来る」
「我が輩のは変化の術で、人以外の者にも化けることが出来るの」
「なぬ? 人以外の者だと?」
「ふふん、お主らよりは高位の術のようだの」
「うぎぎ…」

なんか張り合ってます。

「へ~、人の姿になれるなら、ちょっと見てみたいなぁ」
「主ならば、我の人の姿を見せてもまあ良かろう」

そう言うと、シロガネの体が光り始めた。さっそくかい。
光が収まると、そこには長い白髪を後ろに優雅に伸ばした、これまた美形のお兄さんが立っていた。来ている服が白いのは、体毛のせいなのだろうか。

「どうであろうか主。こちらの姿の方が良ければ、このままで過ごしても良いが?」

そう言って優雅にお辞儀する。

「う~ん、街に入ったり出たりする時は、この姿の方が、まあ馬の時よりは注目されないかもしれないから便利かもね。厩舎に入る時は戻ってね」
「え、あ、ああ…」

なんかがっかりしたような顔してるけど、何かあった?

「まあ、基本過ごしやすい姿でいれくれていいよ。人の姿が楽ならそれでもいいし」
「え、あ、ああ…」

だからなんでがっかりしてるの?

「クロは? クロは? 変身しないの?」
「仕方がないのう」

ひらりと私の腕の中から飛び出ると、クルリと一回転。
次の瞬間には、黒髪に黒い服の、これまた美形のお兄さん。
シロガネが優雅な美形なら、クロはワイルドな美形。
う~む、逆ハーレムと来たか。

「ていうか、クロのその顔…」
「む、気付いたか? 八重子がよく読んでいた雑誌に載っていた男共の顔をモデルにしておる」

通りで、なんか見たことある顔だと思ったよ!

「八重子が好きそうな男共の良いと思える所を選んで作った顔だ。悪くはないだろう?」

それってつまり、私の男の趣味を広告して歩いているという…。

「わー! なんか恥ずかしいから止めて! 元の猫の姿に戻って!」
「そういうとは思ったの」

また一回転すると、そこには可愛い黒猫が。良かった。クロはこの姿のままでいい。
猫のままの方が、抱き心地もいいしね!
クロを再び腕の中に収容し、森の中を歩き出す。シロガネも馬の姿に戻った。
うん、美形よりも、動物でいるほうが精神的に安定するわ。私にハーレムは向かないみたい。

「クル…」

ハヤテが何かに反応した。足を止める。

「ハヤテ、何か臭うかの」
「クア」

どうやらハヤテが何かの臭いを嗅ぎつけたらしい。ゴブリンか?
そっと藪を掻き分けていく。ここで気付いた。馬にそんな隠密な行動が取れるはずはない。

「シロガネ、人の姿になった方が良くない?」
「そうみたいであるな」

再び人化。シロ美形再び。
できうる限り静かに藪の中を進んで行くと、その先に緑色の小さい体の人影。

ゴブリンだ!

見える限りで3体。

「い、いた…」
「ふむ、2体はここで片付けて、1体は残して巣への案内役にしよう」
「名案ですが、どうやって2体片付けるの?」
「我が輩とハヤテがいるであろうの」

それはそうなんですけどね。どうやって?

「ハヤテ、多対一の練習だ。1匹は殺さずに逃がして巣を探るのだ。やってみろ」
「クア!」

ハヤテが翼を広げると、あっという間に飛び出して行っちゃいました。
まあ、グリフォンだから大丈夫なんでしょうけど…。
大丈夫とは思うけど…。
大丈夫でしょうけど…

「グア!」

ほ~らやっぱり、心配いらなかったよ。瞬殺でしたよ。
2匹をあっちゅーまに血祭りにご覧になられまして(平和な日本に住む平和ボケした日本人には)、ちょっとグロい光景。残った1匹はスタコラ逃げ去った。

「ハヤテ、追え! 奴らの巣を見つけ出すのだ!」
「クエ!」

クロ隊長の言葉により、ハヤテは1匹の後を追いかけ始めた。

「追跡はハヤテに任せて、八重子は今のうちに討伐証明部位を切り取っておけ」

クロの言葉にハッとなる。そうそう、討伐証明部位を持っていけば、お金になるんだ。
ゴブリンの頭の方へと近づく。
有り難いことに、2匹とも左耳上にして倒れてくれてます。
ナイフを耳元に当てて、そぎ落とす。

「うげぇ、変な感触…」
「慣れろ。コレは慣れるしかないぞ八重子」

クロからエールが!これで100人力!になるはずなどなく、普通に耳をそぎ落とした。

「うああ、感触が…、感触が…」

血もポタポタ垂れてるし、気持ち悪いことこの上ない。
用意してきた袋に入れる。これ、普通に布の袋だから、血、染みてくるよね。ほら、赤くなってきた。

「コレを持って歩くのか…」
「我慢するしかないの」

クロを抱っこして行くわけにも行かなくなり、クロも歩いてもらうことに。
リンちゃんは頭の位置固定です。

リィン…

お、リンちゃんが何か?

「ほう、傷口を止血して血を止めてくれると。それは便利だの」
「え?! そんなこと出来るのリンちゃん! 是非!」

リィン!

リンちゃんが頭の上から降りてきて、袋に手を当てる。
リンちゃんの体が仄かに光を増す。
お、血の染みの広がりが収まった。

「うわ~、これは有り難いね。ありがとリンちゃん」

リン!

おお、笑顔のリンちゃん見れました。
リンちゃんも明るくなってきたようで、良いことだ。

「クア!」

ハヤテが戻ってきた。
どうやらゴブリン達の巣を見つけたようです。

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