異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

文字の大きさ
上 下
26 / 194
黒猫と共に迷い込む

そうだ、王都に行こう!(ラーメンの為に)

しおりを挟む
それから元の世界の事を話していると、不思議なことが分かった。
元の世界の時系列的には、ギルドマスターのコウジさんが消えた頃と、私が消えた頃では、半年ほどの差しかなかったことである。

「ふむ、向こうの世界の時の流れとこちらの世界の時の流れ方が違うのか、空間を跨ぐ時に時も拗くれてしまったのか。我が輩でも分からんの」

クロ様にも分からない事があるらしい。
あとはこの世界での注意事項とか、いろいろ聞いて、最も重要な情報も聞いた。

「王都にはラーメン屋があるよ」
「なんですと?!」
「この世界に迷い込んでくる人は日本人が多いみたいでね。王都に行くほど日本的な物が増えていくよ」
「ラ、ラーメン…」
「私も時々用事を見つけては食べに行くんだ」

よし、王都に行こう。

「八重子、第一目標が変わっておるぞ」
「ホームシックならぬ、フードシックなので」
「ははは、その気持ち分かるよ。私も醤油や味噌、ラーメンを見つけた時は歓喜したからね」

日本の味ですね。
この街にも醤油や味噌などはあった。調味料に使われていることが何となく分かったのは日本人だからか?まあ味噌汁的なものもあったしね。
しかし、この街にもラーメンはなかったのである。食べたい!ラーメン!

「この街にも支店を出してくれないかと再三勧誘してみてはいるんだけど…」

いろいろ事情があるようです。
あとは従魔達のことをちょっと話して、魔法のことも聞いてみた。

「魔法はね、発動するまでが大変かな。コツさえ分かれば、迷い人でもある程度使えるみたいだよ」

魔法チートひゃっはーは出来ないらしい。こればかりは本人の才能などが関係するようで。

「どこかで教えて貰えるとかあります?」
「私が教えて上げられれば良かったんだがね。私も魔法の才能はあまりなかったようで」

簡単な魔法は使えるらしい。おお、凄い。

「魔法の権威の人はいるんだけど、ちょっとその人は気むずかしい人なんだよな」
「気に入られれば教えて貰えるかもと?」
「余程のことがないと難しいかな。元冒険者で、魔法の研究が認められて、王都で魔法省に勤めていた人で、そこそれなりの地位を築いたんだけど、なんだか派閥争いだかなんだかが嫌になって、この街に来て引きこもって研究しているんだよ。時折雑用の依頼をしてくるけど、それもかなりケチな金額でねぇ。毎度担当者と金額について
「それってまさか、草むしりの依頼とか…」
「そういえば、この前受けたのは君だったっけ?」

そうですね。

「そうかそうか。だったらどうにかなるかな? 一度行ってみるかい? 念の為私からも紹介状を書いておこうか」

有り難く頂くことに。








大分話し込んでいたようで、部屋を出た時にはすでに昼近くになっていた。

「困ったことがあったら言ってくれ。同じ迷い人のよしみだ。できる限りのことはするよ」

ギルドマスターコウジさん、いい人だった。

「さ、早速行ってみる?」

魔法だよ魔法。ソワソワしちゃうよ。

「まあ落ち着け八重子。シロガネやハヤテを待たせているだろう」
「う、確かに」

ちょっとギルドに行ってくるよが、何時間になっていることやら。
このまま向かったらシロガネとハヤテが心配するかもしれない。

「まずは期限に余裕のある討伐依頼があるか確認して、あればそれを受けて来い。それからハヤテ達の所へ戻り、話をすれば良かろう。今日はもう遠出する時間もないし、その魔法の権威の元へ訪ねてみてもよかろう」
「よし、そうしよう」

まずはエリーさんの所へ。
もちろんカウンターの向こうからです。

「あら、お話し終わったんですか。結構長かったですね」
「ええ、ちょっといろいろご教授頂きまして」
「そうですか。それで、これからお仕事ですか?」
「ええと、従魔も出来たし、何か簡単な討伐依頼を受けてみようかなと」
「!! そ、そうなんですね! 分かりました! 良さそうな物をお探ししますね!」

なんで嬉しそうなんだろう。

「これなどいかがでしょう? ここから1日ほど離れた村に、ゴブリンが出たと言うことなのですけど」

おおお、出ましたよ、ファンタジー定番初期モンスター。いや、初期はスライムか?

「ゴブリンの調査と、出来たら退治、退散させて欲しいと。もし巣など見つけましたら、調査だけで帰って来ても大丈夫です。巣の規模によっては、それなりの人数を投入しなければなりませんから」
「なるほど。良さそうですね。報酬は?」
「調査のみですと、銀貨16枚。その他、ゴブリンの討伐証明部位の左耳をお持ち頂ければ、追加報酬が発生致します」
「ふ~ん。分かりました。それやります」
「はい。承ります。ゴブリンといえど油断すると危ないので、気をつけて下さいね」
「は~い。気をつけます」

エリーさんの顔が、こいつ大丈夫か?みたいな顔になった気がする。多分気のせいだと思う。
書類を受け取り、終わったら村長さんのサインをもらってこいとのこと。アイアイマム。
そして宿屋へ取って返し、2頭に今後の予定を話す。

「てなわけで、出かけるのが明日以降となってしまうのだけど、大丈夫?」
「我は問題ないぞ。ハヤテはどうだ?」
「クエ」

何て言い子達なんでしょう。

「でもなぁ、こんな狭い所にいるのもなんだし、あそこのお家庭広かったし…」
「我が輩は知らんぞ?」
「注目浴びるけど、一緒に行く?」

2頭共頭を縦に振りました。










再びやって来ました、端の端の端にあるそのお家。
草はまだ茂っていない。というか綺麗なままだ。
お馴染み古臭い感じの玄関に立ち、ドアノッカーを叩く。
しばらく待って。

「誰じゃ?」

玄関が開かれました。

「こんにちは。この前の草むしりの依頼を受けた八重子と申しますが」
「何じゃ、お前さんか。何の用だ? 特に依頼は出していなかったはずだが」
「え~と、魔法を習いたいんですけど、こちらなら教えて頂けるのではないかと、ギルドマスターからも紹介状を受け取ってるのですが」
「魔法を習う? それはまた…」

お爺さんが私のことを上から下まで眺め回して、

「遅いのではないか?」

何がですか?

「魔力が発現したとか?」
「特にありません」
「幼い頃に基礎でも習ったとか?」
「特にありません」
「何故その年になって?」
「ええと、いろいろありまして」
「ふむ…、難しいのではないかのう?」

そんなにダメですか?!異世界チートとかないのかな?!

「ふむ…、まあお前さんには世話になったし、少しくらいならみてみても良いじゃろう。一先ず中へ入りなさい」
「ありがとうございます。あ、ペガサスとグリフォン、お庭で少し遊ばせてあげてもいいですか?」
「ペガサスとグリフォンじゃと?!」

お爺さんが扉を全開にして飛び出して来た。

「ペ…、ペガサスに、グリフォンじゃ…」

固まっちゃったよ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

安全第一異世界生活

笑田
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 異世界で出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて 婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の冒険生活目指します!!

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

処理中です...