異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

文字の大きさ
上 下
25 / 194
黒猫と共に迷い込む

ギルドマスターに呼ばれた

しおりを挟む
「ふん、まったく。ペガサスが珍しいのは分かるが、不用意に近づいて来るのはけしからんな」

人だかりから抜け出して、シロガネがプリプリしてる。

「いや~、ごめんごめん。シロガネが目立つこと忘れてたよ」

ハヤテはまだ背が低いから、シロガネほど視線を集めてない。

「ところで主、我の背はどうであった?」

おや、気になってたのか。

「う~ん、まあ、安全なのは分かったかな」
「の、乗り心地は…?」
「う~ん、微妙…」
「なんと…」

自信あったのかい。

「まあ、遠出する時なんかは乗せてもらうかもしれないけど、いつもは歩きでいいや」
「そ、そうであるか…」

あ、落ち込んだ。

「まあまあ、何かしらで活躍できる時もくるよ。(多分)」
「多分と聞こえたのであるが…」
「気のせいだよ」

お宿へ帰ってきました。
シロガネとハヤテは厩舎に入ってもらう。

「クル…」

お、ハヤテがやっとこちらの顔を見てくれるようになったようですよ。

「ハヤテ、今日は楽しかった? またお出掛けしようね」
「クエ」

きゃー!返事してくれました!やべ、嬉しい。

「シロガネも、お疲れさん」
「うむ。主よ、今日は久々に羽を伸ばせて楽しかったであるぞ」
「それは良きかな良きかな。じゃ、お休み~」
「クエ」
「お休みである」

2頭に手を振ってお部屋へと帰る。
荷物を置いて夕飯食べて、ウララちゃんにクロをモフらせてあげて、早々にベッドへ。
クロは定位置、リンちゃんはなんと私の頭の上に。
なんという進歩!でも潰しちゃいそうでちょっと怖い。

「リンちゃん、気をつけてね」

リィン

リンちゃんもその辺りは了承済みのようで。

「お休み~」

目を閉じて、今日一日の事を思い浮かべている間に、いつの間にか夢の世界へ。













「八重子」
「う…ん」
「八重子、朝だぞ」
「う~ん…」
「八重子、そろそろ起きろ」
「う~~~ん…」

なんだか胸が苦しい…。

「八重子」
「う~?」

目を開けて、視線を胸の方へとやると、そこには可愛い黒猫の顔。
うう、重苦幸せ…。
この下からのアングルがまた可愛いのですよ。

「う~ん、クロぉ…」

ナデナデナデ。

「意識が半分寝ていても我が輩を撫でるのだの…」

この手はモフる為にあり。

リィン…

頭の上から鈴の音。
と、目の前に緑色の淡い光。

「おはよう。リンちゃん」

リン

リンちゃんがちょこんとクロの頭の上に。

ふおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
かわゆすかわゆすかわゆすかわゆすかわゆすぅぅぅぅぅx!!
あああ、なんでこの世界には電気がないのだぁぁぁぁ!
携帯で撮りたい、カメラで撮りたいようぅぅぅぅぅ。
仕方ないので脳内記憶フォルダーに焼き付けんと、じっくり観賞。

「早よ起きぬか」

クロが手を伸ばして来る。
肉球あざっっす!!











朝から天国を味わった。
支度をして、今日は簡単そうな討伐依頼でも受けてみようかという話になった。
ハヤテ次第でもあるけれど。
ギルドに向かう前に厩舎に寄ってみる。今日はギルドに行ってから厩舎から出す。昨日の二の舞はしないぜ。

「おはよう」
「おはようであるぞ、主」
「クエ」

シロガネはいつも通り偉そうに、ハヤテも顔を見て返事してくれた。

くそ、可愛い…。

昨日のこともあるからギルドに行ってから迎えに来るからと声を掛け、ギルドへと向かった。
リンちゃんは頭の上である。

「おはようございます、エリーさん」
「おはようございます、ヤエコさん」

今日も巨乳美人だな。

「ヤエコさん、ギルドマスターから、来たら部屋へとお通しするように言われているので、あちらからカウンター内に来て頂けますか?」
「え? ギルドマスター?」
「はい。珍しい従魔を従えたようなので、一度会ってみたいと」
「あ、良かった。何かしたかと思った」
「・・・。まあ、いろいろしてますけどね」

私は何もしてないんだけどなぁ。
カウンター内に入って、エリーさんの後ろに付いて行く。
奥の少し立派な扉の前で止まり、エリーさんが扉をノックする。

「はい」
「ヤエコさんをお連れしました」
「ああ、いいよ。入ってもらってくれ」
「失礼致します」

扉を開けて、エリーさんが中に入っていく。
私もその後から続いた。
部屋の中、対面のソファーの向こうの執務机で、あの優しそうなおじさんが、書類になにやら書いていた。

「ああ、すまない。これだけ書かせてくれ。そこのソファーに座っていてくれ」

そう言われたので、素直にソファーに腰を下ろす。
エリーさんはさっさと部屋を出て行ってしまった。
む、ちょっと緊張。
クロをお膝に下ろして、その背中を撫でる。
クロも顔を洗い出す。
リンちゃんはどうしてるかしら?
頭の上にちょっと感触があるから、しがみついてるのかな?
書類を走るペンの音が止むと、そのおじさんが執務机から立って、こちらのソファーの方へとやって来た。
もちろんだが、私の隣ではなく、対面に座る。

「初めまして、と言った方がいいのかな? 顔は見たことがあるけど、話すのは初めてだよね?」
「そうですね。あの時も一言二言言葉を交わしたくらいですし」
「改めて初めまして。私はここのギルドマスターを務めている、コウジと申します」
「ヤエコです」
「え…と、それで…、なんと話したら良いのかな…?」

頭をポリポリかき始めた。

「え~と、その黒猫さんは?」
「はい?」
「え~と、猫又の黒猫で合ってる?」
「! 何故それを?!」
「君、正直だねぇ」

苦笑いされた。

「うむ。我が輩は猫又の黒猫。クロと申す」
「クロ?!」
「ちといろいろ調べる過程で、ちょっと顔見知りにの」
「いつの間に…」
「黒猫の姿では初めてだけどね。やっぱり尻尾は2本じゃないねぇ」
「だから何故そこにこだわる?」
「いつでも出せるようです。今は世を忍ぶ仮の姿なのです」
「そうなのか。ちょっと見てみたいねぇ」
「だから何故…」

私達の視線が、クロに集まる。
クロは渋々、尻尾を出した。
ああああ、可愛い尻尾が2本揺れてますよううう。
一応ギルマスの前なので、自重しました。

「本当なんだな…。これは凄いや。元の世界でもこんなの見れないだろ」
「元の世界? まさか…」
「ああ、そうなんだ。私も、迷い人なんだよ。本名は、内田浩二。13歳の時にこちらの世界に迷い込んできた」
「13歳…」
「もう30年程前の話になるね…」

ギルドマスターが訥々と語り始めた。
13歳の秋頃、学校の帰り道に頭がくらりとしたかと思うと、見たこともない森の中に立っていたという。
住宅地からいきなり森の中である。
そこがどこだかも分からず彷徨っていると、運良くお爺さんに助けられたそうな。
ところがやはり言葉が通じない。
森の中で1人で暮らしていたお爺さんに、いろいろ教わり、この世界に慣れ始めた頃、そのお爺さんが亡くなってしまう。
そのまま家に住み続けていても良かったが、やはり元の世界に戻る方法を探したいと、冒険者になったそうな。
冒険者として活動を始め、あちこちの地域を渡り、迷い人の情報を集め、検証して行ったが、とうとう元の世界に変える方法は見つからず、一緒に冒険していたパーティのメンバーと所帯を持ち、試験を受け、今はギルドマスターをやっているとのこと。
私もほんの数日ではあるが、これまでのことを話した。

「なんと、この猫又君が翻訳してくれているとは…」
「おかげで随分助かっています」
「だから日本語で話しかけても反応がなかったのか…」
「・・・、なんかごめんなさい」

クロが万能過ぎました。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...