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黒猫と共に迷い込む
ココアドコ? ワガシハダレ?
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「クロ…、ここどこだろう…」
腕の中に我が家の可愛いアイドル、黒猫のクロを抱きしめたまま、私はその場にフリーズしていた。
三種混合ワクチンを打つために、動物病院へ行った帰り道。
つい数分前まで私は普通の住宅街を歩いていたはずだった。
なんだかフラリと目眩を覚え、立ち止まる事数秒。
目眩が収まり顔を上げてみれば、つい今し方まで左右に立ち並んでいた住宅の影も形もなく、右手には広がる草原、左には鬱蒼とした深い森。
森と草原の狭間に敷かれた、心許ない道?
草が生えていないだけでとりあえずそこそこの頻度で人などが通っているのだろうなと思わせる道の真ん中に、私は立っていた。
「ふむ、どうやら空間の亀裂にでも巻き込まれたようだの」
誰もいないはずなのに、腕の中から聞こえる声。
「え?」
「ふむ、やはり驚いておるか。それも仕方ないかの。
八重子、驚くのはいいが、我が輩を落としてはくれるなよ」
腕の中で、我が家の可愛いアイドル黒猫のクロの口がパクパクと動き、言葉を発している。
落としそうになった。
「ふむ、落とさなかったのは褒めてやろう。
いくら猫が高い所から落ちても平気とは言っても、落ちるのが好きという訳ではないからの」
「え? え? え? クロさん…?」
「八重子、落ち着けと言っても無理なのは分かるがとりあえず落ち着け。
まずは状況を把握する事から始めんといかんぞ。いつまでも呆けていても状況は改善せんでの」
「…もう頭がいっぱいです」
「であろうの」
突然訳の分からない場所に来て、腕の中の可愛い黒猫が喋り初めて、混乱しない人間はいないと思う。
「まあ、まず我が輩の事から知るが良い。
時に、八重子、お主我が輩が人の数え年で何歳になったかは知っているな?」
「10歳…」
「そう、10歳であるの。
昔から人が言うように、猫は産まれて10年経つと、妖へと変ずる事がある。
この話くらいは知っておるの?」
「猫好きですから」
「まあつまり、我が輩も10年経って、妖へと変じたと言う訳だ。理解したかの?」
「…尻尾は?」
「は?」
「尻尾が二つになっていません」
「出そうと思えば出るが、一つで困りはしないからの」
「出して下さい」
「は?」
「出して下さい」
「いや、八重子…」
「出して下さい」
「・・・・・・」
ちょっと嫌そうな顔になると、クロのお尻からもう一本の尻尾がにゅるりと生えた。
「これでいいかの?」
「はああああ~ん! 可愛い尻尾があああぁぁぁ~!」
「まて! 八重子! 落ち着けぇぇ!」
可愛い尻尾が二つになって、モフモフしない謂われはありません!
「お、落ち着いたかの…」
「もう十分に!」
腕の中で少しぐったりとなったクロ。尻尾はすでに一本に戻っている。
常時出していてもいいのになとも思うが、周りの人間にばれたらまずいとの事。
それもそうだね。
「ま、まずは状況確認…。荷物の中身は分かっているか?」
「いつも持ってる物しか入ってないよ」
病院へ行くのにお金は必要。両手でクロを保持出来るように、いつもの黒いリュックに入れてある。
ちなみにクロにはリード付けてますよ。突然飛び出しても大丈夫なようにね。
あとはタオルと、折り畳み傘と、スマホと、女の子の必需品が少々と、手鏡、リップ、ティッシュ、500㎖のペットボトル(中には普通のお水が半分ほど)が入っている。
あ、あと、病院で貰ってきた試供品が3袋。
「我が輩まだ腎臓は悪くないのだが」
「味見用です」
猫は腎臓が悪くなりやすいのだが、その病院食が、猫によって好き嫌いがあるので、お試し用とばかりに大概の動物病院には置いてある。
「肥満気味でもないし、妊娠もしてないのだが」
「…味見用です」
肥満、はこれからあるかもしれないし、年取って食欲が落ちてきたら、子猫用とか妊娠中の子が食べる用とかあげてもいいと聞いた事があるし!(こじつけ)
腕の中でクロが小さく溜息吐いた気がしたけど、気にしないでおこう。
「さて、あとは今現在のこの場所についてだの」
「ワガシハダレ、ココアドコ」
「ふざけとる場合ではないぞ」
「いやだって、住宅街からいきなりこんな何もない所にって…、え、空間の亀裂とか言ってた?」
「今更かい。お主の好きな異世界と言う奴では無いかの?」
「え? 異世界転移って、だって、最初に神様が出て来てチート能力を頂いてって」
「異世界転移というか、神隠しに近いのでは無いかの?」
「ある日突然人が行方不明になるという…」
「それだの」
がっくり膝をついてしまった。
「八重子。まだ我が輩がおるでの。我が輩がお主を守ってやるでの」
「く、クロ…、クロさん…。お家には…、もう…」
クロは少し残念そうな顔をして、首を横に振った。
「余程の幸運がなければ、また空間の亀裂に巻き込まれたとしても、同じ場所に帰れるとは限らん。
下手をすれば空間の狭間で永久に漂う事になるの」
OH…、ワタシカエレマセーン。
「少し、落ちこんでいっすか?」
「落ち込むのは良いが、陽がある内に人のいる場所まで辿り着かんと、野宿になる可能性もあるが、良いのかの?」
良くありません!
「どんな猛獣がいるかも分からぬし、寝ている間虫の心配もしなければならないぞ」
どんな虫がいるかも分からないしね!
「歩く!」
「うむ。とりあえず進んだ方がいいだろうの」
クロを抱いたまま、私はとりあえず前に向かって歩き出した。
「・・・。こっちで良いのかな?」
「そこまでは分からぬの」
後ろだったらどうしよう…。
不安を抱きながらも、とにかく私は足を進めるのだった。
変わり映えしない景色に、心が挫けかけた時だった。
左手の森の中から何やらガサガサ音がして、
「何か来るの」
「何?! 何?!」
怯えて立ち止まった私の目の前に、茶色い丸い物が飛び出して来た。
「猪!」
テレビで見た事ある猪が、目の前でゴフーッゴフーッと鼻息を荒くしている。
ん? 後ろ足に矢のような物が刺さっているけれど。
「フゴ――――!」
「きゃああああ!!」
こちらに気付いた猪が突っ込んでくる。
もうダメだ!と思い目を瞑って体を固くしていたが、来るはずの衝撃がいつまで経っても来ない。
恐る恐る目を開けてみると、猪は頭に矢を生やし、倒れていた。
いや、矢を生やしている訳ではないね。
どこからか飛んで来た矢を受けたのだね。
と、またもや森の方からガサガサと、今度は先程より大きな音がして、
「大丈夫?」
茶色い髪の、緑の瞳の男の人が現われた。
「大丈夫かよ? 嬢ちゃん」
「ほお、一発でとは、腕を上げたんじゃないか、チャック」
その後ろから最初のチャックと呼ばれた男の人より、少しガタイのいい赤い髪に赤い目の無精髭のおじさんと、茶色い髪に茶色い瞳のちょっと目つきの悪いおじさんが現われた。
「なんか、動きが止まったように見えたんだよね。だから狙いやすかった」
「なんだ。まぐれか」
「その言い方はないんでない? グスコ―」
チャックと呼ばれた男の人が、目つきの悪いおじさんを睨む。
「怪我はないか? 嬢ちゃん」
赤い髪のガタイのいいおじさんがこちらに心配そうに近寄って来た。
「あ、はい。大丈夫です。危ない所をありがとうございます」
ペコリと頭を下げる。
「そんな格好でどこに行く気だったんだい? まさかトーフに向かってたんじゃないよな?」
豆腐?ではなさそうだな。地名っぽいんだけど、どこやねん。
ああ、本当に異世界に来ちゃったんだな、とちょっと落ち込みつつ、ここは無難な答え。
「ちょっと、道に迷ってしまいまして。あの、ここから近い街って、どこでしょうか?」
「このままこの道を行けば、ナットーだよ」
納豆?何故大豆製品?
「俺達はナットーを拠点にしてる冒険者なんだ。丁度いいから、一緒に行くか?」
「は、はい。是非」
見知らぬ男の人というのも怖いけど、このまま一人で歩き続けるのも怖いので、ご一緒させて貰う。
私達が話している間も、残りの二人は猪を素早く解体していた。
うわ、すご、血、肉、皮! 内蔵グロ!
いらない部分は森に捨て、必要な部位だけ持って歩き出す。
「俺はガタイ。一応剣士でこのパーティのリーダーやってる。
目つきの悪いのがグスコ―。盗賊だ。弓使いがチャック。まだまだ下手くそだ」
ガタイのいいおじさん、ガタイさんなのね。
「下手くそは余計だろ」
「一発で猪を倒せるようになったら認めてやるよ」
「ちぇ」
仲が良さそうないいパーティだ。
「お嬢ちゃんは、あんな所まで、何しに行ってたんだ?」
うおおっと、来たね。私への質問。
どう答えたら怪しまれずに済むんだろう。
「ええと…、私の名前は八重子っていうんですけど…」
しどろもどろ。
「もしかしてだけど、その珍しい格好、迷い人なんじゃないの?」
チャックさんが何やら助け船のような単語を。迷い人ってなんじゃ?
「そうだよな。その珍しいリュック。材質は何なんだ?」
私のリュックを見て、グスコーさんも声を上げた。
多分化学繊維の何かです。
「迷い人ってなんですか?」
その言葉の意味を知れば、この窮地もどうにかなるかもしれない。
「迷い人ってのは、時折現われるイセカイからの来訪者って奴らしい。
時にはその珍しい知識で、街や国を発展させると言われてる。
現われたら丁重にもてなせって言われてるがな」
てことは、この世界には他にも私のような人がいるということか。
「そ、そうなんです! 私その迷い人ってやつで!」
「ほお、そうか。それはいい。初めて見るが、結構普通…なんだな」
ガタイさんが僅かに目を逸らす。
その小さな間はなんだ。ひ弱そうに見えるのか。
まあ、私の世界で18歳で、鍛えているような女の子も珍しいと思うが。
「角ウサギにもやられそうだよな」
「あいつら結構素早いし、難しいよ」
「チャックは技術の問題だろ」
「グスコー、背後に気をつけた方が良いよ」
仲が、良いんだよね?
それから道々、この世界について教えてもらった。
お金については、
白貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨とあるらしい。
順に、1円、10円、100円、1000円、1万円、10万円の単位っぽいので覚えやすい。
白貨ってなんの金属なんだろう?
魔法も存在しているらしく、私もどうにか使えないかと心の中で考える。
異世界転移の常識だよね!
チート魔力量とか!
そんな話をしている間に、街が見え始めてくる。
高い外壁に囲まれた、そこそこ大きな街らしい。
美味しい物もいっぱいとか。おお、それは楽しみ。
だけど、どうしよう。お金ないよ。
冒険者登録とかして、稼ぐしかないよね。
などと悩んでいると、突然クロが喋りだした。
「この辺で良かろう」
「え?」
「は?」
「な?」
「お?」
「「「猫が喋ったぁ!!」」」
そうですよね。驚きますよね。
「なんだ?! 魔獣の類いか?!」
「猫のフリして騙してたんですね!」
「こいつ! ヤエコちゃんから離れろ!」
剣を抜き放ち、弓を構え、ナイフを構える3人。
「く、クロ?!」
「お主ら、八重子に良からぬことを考えておっただろう。我が輩が見逃すと思ったか」
と、なんだか分からない間に、3人の目がトロンとしてきて、
「うむ。これでよい」
「何が良いのさ。クロ」
「此奴ら、お主を迷い人として領主に差し出しに行くつもりだったのだ。
それでいかほどかの金銭を貰おうとしていたのだの」
「へ? そうなの?」
「迷い人を発見した者にはいかほどかの賞金が貰えるらしいの。
ついでに、迷い人は捕まってしまえば多分自由はないじゃろうの」
「あ~、知識だけ吐き出せと…」
「それなりに良い生活はさせて貰えるかもしれんが?」
「籠の鳥生活は嫌です」
「だろうと思ったの」
催眠術で3人の記憶を消し、適当な記憶を詰め込んだらしい。
少しトロンとした顔のままの3人の案内を受け、無事に街の中に入り、冒険者ギルドまで案内して貰った。
ついでに少々の金銭を頂いたのは、やり過ぎではないかとちょっと思ったが、先立つものがなければ身動きできないのでまあいいかと忘れる事にする。
そこで3人と別れ、人の良さそうなお姉さんのいる窓口に向かう。
「いらっしゃいませ。初めて見るお顔ですね。登録ですか?」
このお姉さん、ギルドに来る冒険者の顔全員覚えているのだろうか?
「はい。登録したいのですけど」
「では、こちらの用紙に記入をお願いします。登録料として銀貨3枚頂きますが、よろしいですか?」
おっと、お金貰っといて良かったよ。
「はい」
言われてポケットの中にあった銀貨を3枚取り出す。
お姉さんの手に銀貨を渡し、記入しようとしてはたと気付く。
この世界の文字…?
ちらりと壁に張り出してある依頼票を見ると、見た事のない文字が羅列している。
うおい、やべいよ。字が書けないよ。
そんな私の空気を察したのか、
「代筆も承っておりますが?」
「お願いします」
即答。
識字率高くないのかもしれない。助かった。
適当に答えて書いて貰って、魔道具らしき水晶に手を翳して、登録は終わった。
カードを貰って、これで登録は終了。
「簡単ですが、単語帳なども貸し出しいたしておりますが」
「借ります!」
文字の読めない人用に用意してあるらしい。有り難や。
「冒険者ギルドについての説明は致しますか?」
「一応お願いします」
大体分かる気もするけど、聞いておいて損はない。
「では、冒険者にはランクがございまして、最高でSランク。その下AからGまでございます。
Dランクで一人前と言われまして、Bランクから様々な特典などを受ける事が出来るようになります。
初めての方はGランクからとなり、このGランクは所謂お試し期間です。
半年以内に依頼を20件以上成功させなければ、ギルドの資格停止となりますのでお気を付け下さい。
つまりは、そんな簡単な依頼もこなせないようじゃこの先無理だという、振り落としも兼ねておりますので。
中々そういった方もいらっしゃいませんが、時折たまにいらっしゃることもありまして。頑張って下さいね」
私の顔を見てにっこり笑うお姉さん。
ふるい落とされるとでも?意地でも頑張ってみようではないか!
後は素材の買い取りや、ギルド員ならば扱う事の出来る銀行のようなシステムの説明。
ついでに武器防具のおすすめのお店に、お姉さんお勧めの宿屋などを教えてもらう。
少し値は張るが、女性が泊まるにはうってつけの宿とか。有り難や。
礼を言って、ギルドを出る。
「なんで受付のお姉さんて、ボインが多いんだろう…」
「何を見とるんだお主は」
「つい、ね」
男だろうが女だろうが、つい目が行っちゃうんだよ!ボインには!
少しの仕草でも揺れるし!何なんですかあの破壊力は!
私は普通の大きさです。っていらんわそんな情報!
「アホな事言ってないで、とりあえず服を買いに行こう」
やはりこの格好はかなり目立つ。
ギルド内でもかなり奇異な視線を集めていた。
また迷い人だと言われて捕まるのも嫌だしね。
服屋へ行って、古着を買う。無難な格好になりました。
元々来ていた服は、リュックの中へ。なんか、手放すのもアレだし。
「お金が貯まったら拠点が欲しいね~」
「我が輩日向ぼっこできる縁側が欲しい」
「この世界に縁側なんてあるんだろうか?」
周りに気付かれないくらいの小声で話しながら、お姉さんお勧めの宿に到着。
扉を押して入ると、私と同い年くらいの女の子が受け付けに立っていた。
「いらっしゃい。お一人様?」
「あ、はい。部屋空いてますか?」
「ええ、大丈夫ですよ。銀貨3枚で、朝夕の食事付きです」
ポケットから銀貨を取り出す。
お金の出が激しいなぁ。
「その猫ちゃんはあなたの?」
「はい。私の可愛いクロちゃんです」
「ええと、従魔ではなくて?」
「従魔…ではなくて、ペットなんですが、持ち込み、もしかしてダメですか?」
従魔、もしかして、そんな職業があるのか?!魔獣使いとか?!
「いえ、大丈夫ですけど、トイレなんかは外でしてもらえれば」
「ああ、はい…」
チラリとクロを見ると、私を見ながら小さく頷く。大丈夫のようだ。
「うちは従魔用の厩舎の扱いもある宿屋なので、猫のトイレはできれば裏手の厩舎のほうでさせて下さい。
猫ちゃんのお食事も出します?」
「ああ、じゃあ、お願いします」
「にゃうん」
可愛い声出しやがってコノヤロウ。受付の女性もクロを見てほっこりしているではないか。
鍵をもらって2階へ上がる。
お風呂はないとのことなので、ここは悲しいが、後でタライとお湯とタオルを借りる事に。
銅貨3枚。これは必要経費です!
「う~ん、明日からなんとかお金を稼がないと~」
ベッドにごろんと横になり、ギルドから借りた単語帳をパラパラと捲る。
なかなか分かり易い書き方をしてあるので、これなら簡単な単語はすぐに覚えられそう。
「でも発音が分からないぞ?」
明らかに日本語と違うのだが、そこで気付いた。
「あれ? 普通に会話してるよね」
「遅いわ」
クロからツッコミが入りました。
ベッドの上でリードを外して、毛繕いをしていたクロが解説しだす。
「我が輩の力で翻訳してやっているのだ。
相手の言葉を一度我が輩の中に取り入れ、八重子に分かるように変換し、八重子にその情報を渡しているのだ。
よくよく見れば、話している内容と口の動きが合っていない事などすぐに分かりそうなものなのにの」
「クロ様~~~~!!」
「腹に突っ込んでくるな!」
猫のお腹は聖域です!
柔らかいお腹を少しだけモフモフさせていただき(お腹はさすがに嫌がるので)、クロに頭を下げる。
「もうクロ様に頭が上がらない」
「うむ。崇め讃えよ」
クロも結構悪のり。
「ふむ。まあ、最初は受付嬢に簡単な依頼などを聞いて、それをこなすことだの。
身分証代わりとか、銀行を使いたいからとかで登録しておるのもいるらしいしの」
「それじゃあ、幽霊ギルド員も結構いるってことかな?」
「3ヶ月に1度依頼をこなせば、とりあえず資格剥奪にはならんらしいの。
そんなFランク登録者もかなりいるらしいの」
「クロさん、どこからそんな情報貰ってくるの?」
「我が輩にかかれば、頭の中の情報など見放題だの」
「いやー! エッチ!」
「何を考えておるのだ!」
そんなコントを行いつつ、その日はまったりと過ごした。
腕の中に我が家の可愛いアイドル、黒猫のクロを抱きしめたまま、私はその場にフリーズしていた。
三種混合ワクチンを打つために、動物病院へ行った帰り道。
つい数分前まで私は普通の住宅街を歩いていたはずだった。
なんだかフラリと目眩を覚え、立ち止まる事数秒。
目眩が収まり顔を上げてみれば、つい今し方まで左右に立ち並んでいた住宅の影も形もなく、右手には広がる草原、左には鬱蒼とした深い森。
森と草原の狭間に敷かれた、心許ない道?
草が生えていないだけでとりあえずそこそこの頻度で人などが通っているのだろうなと思わせる道の真ん中に、私は立っていた。
「ふむ、どうやら空間の亀裂にでも巻き込まれたようだの」
誰もいないはずなのに、腕の中から聞こえる声。
「え?」
「ふむ、やはり驚いておるか。それも仕方ないかの。
八重子、驚くのはいいが、我が輩を落としてはくれるなよ」
腕の中で、我が家の可愛いアイドル黒猫のクロの口がパクパクと動き、言葉を発している。
落としそうになった。
「ふむ、落とさなかったのは褒めてやろう。
いくら猫が高い所から落ちても平気とは言っても、落ちるのが好きという訳ではないからの」
「え? え? え? クロさん…?」
「八重子、落ち着けと言っても無理なのは分かるがとりあえず落ち着け。
まずは状況を把握する事から始めんといかんぞ。いつまでも呆けていても状況は改善せんでの」
「…もう頭がいっぱいです」
「であろうの」
突然訳の分からない場所に来て、腕の中の可愛い黒猫が喋り初めて、混乱しない人間はいないと思う。
「まあ、まず我が輩の事から知るが良い。
時に、八重子、お主我が輩が人の数え年で何歳になったかは知っているな?」
「10歳…」
「そう、10歳であるの。
昔から人が言うように、猫は産まれて10年経つと、妖へと変ずる事がある。
この話くらいは知っておるの?」
「猫好きですから」
「まあつまり、我が輩も10年経って、妖へと変じたと言う訳だ。理解したかの?」
「…尻尾は?」
「は?」
「尻尾が二つになっていません」
「出そうと思えば出るが、一つで困りはしないからの」
「出して下さい」
「は?」
「出して下さい」
「いや、八重子…」
「出して下さい」
「・・・・・・」
ちょっと嫌そうな顔になると、クロのお尻からもう一本の尻尾がにゅるりと生えた。
「これでいいかの?」
「はああああ~ん! 可愛い尻尾があああぁぁぁ~!」
「まて! 八重子! 落ち着けぇぇ!」
可愛い尻尾が二つになって、モフモフしない謂われはありません!
「お、落ち着いたかの…」
「もう十分に!」
腕の中で少しぐったりとなったクロ。尻尾はすでに一本に戻っている。
常時出していてもいいのになとも思うが、周りの人間にばれたらまずいとの事。
それもそうだね。
「ま、まずは状況確認…。荷物の中身は分かっているか?」
「いつも持ってる物しか入ってないよ」
病院へ行くのにお金は必要。両手でクロを保持出来るように、いつもの黒いリュックに入れてある。
ちなみにクロにはリード付けてますよ。突然飛び出しても大丈夫なようにね。
あとはタオルと、折り畳み傘と、スマホと、女の子の必需品が少々と、手鏡、リップ、ティッシュ、500㎖のペットボトル(中には普通のお水が半分ほど)が入っている。
あ、あと、病院で貰ってきた試供品が3袋。
「我が輩まだ腎臓は悪くないのだが」
「味見用です」
猫は腎臓が悪くなりやすいのだが、その病院食が、猫によって好き嫌いがあるので、お試し用とばかりに大概の動物病院には置いてある。
「肥満気味でもないし、妊娠もしてないのだが」
「…味見用です」
肥満、はこれからあるかもしれないし、年取って食欲が落ちてきたら、子猫用とか妊娠中の子が食べる用とかあげてもいいと聞いた事があるし!(こじつけ)
腕の中でクロが小さく溜息吐いた気がしたけど、気にしないでおこう。
「さて、あとは今現在のこの場所についてだの」
「ワガシハダレ、ココアドコ」
「ふざけとる場合ではないぞ」
「いやだって、住宅街からいきなりこんな何もない所にって…、え、空間の亀裂とか言ってた?」
「今更かい。お主の好きな異世界と言う奴では無いかの?」
「え? 異世界転移って、だって、最初に神様が出て来てチート能力を頂いてって」
「異世界転移というか、神隠しに近いのでは無いかの?」
「ある日突然人が行方不明になるという…」
「それだの」
がっくり膝をついてしまった。
「八重子。まだ我が輩がおるでの。我が輩がお主を守ってやるでの」
「く、クロ…、クロさん…。お家には…、もう…」
クロは少し残念そうな顔をして、首を横に振った。
「余程の幸運がなければ、また空間の亀裂に巻き込まれたとしても、同じ場所に帰れるとは限らん。
下手をすれば空間の狭間で永久に漂う事になるの」
OH…、ワタシカエレマセーン。
「少し、落ちこんでいっすか?」
「落ち込むのは良いが、陽がある内に人のいる場所まで辿り着かんと、野宿になる可能性もあるが、良いのかの?」
良くありません!
「どんな猛獣がいるかも分からぬし、寝ている間虫の心配もしなければならないぞ」
どんな虫がいるかも分からないしね!
「歩く!」
「うむ。とりあえず進んだ方がいいだろうの」
クロを抱いたまま、私はとりあえず前に向かって歩き出した。
「・・・。こっちで良いのかな?」
「そこまでは分からぬの」
後ろだったらどうしよう…。
不安を抱きながらも、とにかく私は足を進めるのだった。
変わり映えしない景色に、心が挫けかけた時だった。
左手の森の中から何やらガサガサ音がして、
「何か来るの」
「何?! 何?!」
怯えて立ち止まった私の目の前に、茶色い丸い物が飛び出して来た。
「猪!」
テレビで見た事ある猪が、目の前でゴフーッゴフーッと鼻息を荒くしている。
ん? 後ろ足に矢のような物が刺さっているけれど。
「フゴ――――!」
「きゃああああ!!」
こちらに気付いた猪が突っ込んでくる。
もうダメだ!と思い目を瞑って体を固くしていたが、来るはずの衝撃がいつまで経っても来ない。
恐る恐る目を開けてみると、猪は頭に矢を生やし、倒れていた。
いや、矢を生やしている訳ではないね。
どこからか飛んで来た矢を受けたのだね。
と、またもや森の方からガサガサと、今度は先程より大きな音がして、
「大丈夫?」
茶色い髪の、緑の瞳の男の人が現われた。
「大丈夫かよ? 嬢ちゃん」
「ほお、一発でとは、腕を上げたんじゃないか、チャック」
その後ろから最初のチャックと呼ばれた男の人より、少しガタイのいい赤い髪に赤い目の無精髭のおじさんと、茶色い髪に茶色い瞳のちょっと目つきの悪いおじさんが現われた。
「なんか、動きが止まったように見えたんだよね。だから狙いやすかった」
「なんだ。まぐれか」
「その言い方はないんでない? グスコ―」
チャックと呼ばれた男の人が、目つきの悪いおじさんを睨む。
「怪我はないか? 嬢ちゃん」
赤い髪のガタイのいいおじさんがこちらに心配そうに近寄って来た。
「あ、はい。大丈夫です。危ない所をありがとうございます」
ペコリと頭を下げる。
「そんな格好でどこに行く気だったんだい? まさかトーフに向かってたんじゃないよな?」
豆腐?ではなさそうだな。地名っぽいんだけど、どこやねん。
ああ、本当に異世界に来ちゃったんだな、とちょっと落ち込みつつ、ここは無難な答え。
「ちょっと、道に迷ってしまいまして。あの、ここから近い街って、どこでしょうか?」
「このままこの道を行けば、ナットーだよ」
納豆?何故大豆製品?
「俺達はナットーを拠点にしてる冒険者なんだ。丁度いいから、一緒に行くか?」
「は、はい。是非」
見知らぬ男の人というのも怖いけど、このまま一人で歩き続けるのも怖いので、ご一緒させて貰う。
私達が話している間も、残りの二人は猪を素早く解体していた。
うわ、すご、血、肉、皮! 内蔵グロ!
いらない部分は森に捨て、必要な部位だけ持って歩き出す。
「俺はガタイ。一応剣士でこのパーティのリーダーやってる。
目つきの悪いのがグスコ―。盗賊だ。弓使いがチャック。まだまだ下手くそだ」
ガタイのいいおじさん、ガタイさんなのね。
「下手くそは余計だろ」
「一発で猪を倒せるようになったら認めてやるよ」
「ちぇ」
仲が良さそうないいパーティだ。
「お嬢ちゃんは、あんな所まで、何しに行ってたんだ?」
うおおっと、来たね。私への質問。
どう答えたら怪しまれずに済むんだろう。
「ええと…、私の名前は八重子っていうんですけど…」
しどろもどろ。
「もしかしてだけど、その珍しい格好、迷い人なんじゃないの?」
チャックさんが何やら助け船のような単語を。迷い人ってなんじゃ?
「そうだよな。その珍しいリュック。材質は何なんだ?」
私のリュックを見て、グスコーさんも声を上げた。
多分化学繊維の何かです。
「迷い人ってなんですか?」
その言葉の意味を知れば、この窮地もどうにかなるかもしれない。
「迷い人ってのは、時折現われるイセカイからの来訪者って奴らしい。
時にはその珍しい知識で、街や国を発展させると言われてる。
現われたら丁重にもてなせって言われてるがな」
てことは、この世界には他にも私のような人がいるということか。
「そ、そうなんです! 私その迷い人ってやつで!」
「ほお、そうか。それはいい。初めて見るが、結構普通…なんだな」
ガタイさんが僅かに目を逸らす。
その小さな間はなんだ。ひ弱そうに見えるのか。
まあ、私の世界で18歳で、鍛えているような女の子も珍しいと思うが。
「角ウサギにもやられそうだよな」
「あいつら結構素早いし、難しいよ」
「チャックは技術の問題だろ」
「グスコー、背後に気をつけた方が良いよ」
仲が、良いんだよね?
それから道々、この世界について教えてもらった。
お金については、
白貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨とあるらしい。
順に、1円、10円、100円、1000円、1万円、10万円の単位っぽいので覚えやすい。
白貨ってなんの金属なんだろう?
魔法も存在しているらしく、私もどうにか使えないかと心の中で考える。
異世界転移の常識だよね!
チート魔力量とか!
そんな話をしている間に、街が見え始めてくる。
高い外壁に囲まれた、そこそこ大きな街らしい。
美味しい物もいっぱいとか。おお、それは楽しみ。
だけど、どうしよう。お金ないよ。
冒険者登録とかして、稼ぐしかないよね。
などと悩んでいると、突然クロが喋りだした。
「この辺で良かろう」
「え?」
「は?」
「な?」
「お?」
「「「猫が喋ったぁ!!」」」
そうですよね。驚きますよね。
「なんだ?! 魔獣の類いか?!」
「猫のフリして騙してたんですね!」
「こいつ! ヤエコちゃんから離れろ!」
剣を抜き放ち、弓を構え、ナイフを構える3人。
「く、クロ?!」
「お主ら、八重子に良からぬことを考えておっただろう。我が輩が見逃すと思ったか」
と、なんだか分からない間に、3人の目がトロンとしてきて、
「うむ。これでよい」
「何が良いのさ。クロ」
「此奴ら、お主を迷い人として領主に差し出しに行くつもりだったのだ。
それでいかほどかの金銭を貰おうとしていたのだの」
「へ? そうなの?」
「迷い人を発見した者にはいかほどかの賞金が貰えるらしいの。
ついでに、迷い人は捕まってしまえば多分自由はないじゃろうの」
「あ~、知識だけ吐き出せと…」
「それなりに良い生活はさせて貰えるかもしれんが?」
「籠の鳥生活は嫌です」
「だろうと思ったの」
催眠術で3人の記憶を消し、適当な記憶を詰め込んだらしい。
少しトロンとした顔のままの3人の案内を受け、無事に街の中に入り、冒険者ギルドまで案内して貰った。
ついでに少々の金銭を頂いたのは、やり過ぎではないかとちょっと思ったが、先立つものがなければ身動きできないのでまあいいかと忘れる事にする。
そこで3人と別れ、人の良さそうなお姉さんのいる窓口に向かう。
「いらっしゃいませ。初めて見るお顔ですね。登録ですか?」
このお姉さん、ギルドに来る冒険者の顔全員覚えているのだろうか?
「はい。登録したいのですけど」
「では、こちらの用紙に記入をお願いします。登録料として銀貨3枚頂きますが、よろしいですか?」
おっと、お金貰っといて良かったよ。
「はい」
言われてポケットの中にあった銀貨を3枚取り出す。
お姉さんの手に銀貨を渡し、記入しようとしてはたと気付く。
この世界の文字…?
ちらりと壁に張り出してある依頼票を見ると、見た事のない文字が羅列している。
うおい、やべいよ。字が書けないよ。
そんな私の空気を察したのか、
「代筆も承っておりますが?」
「お願いします」
即答。
識字率高くないのかもしれない。助かった。
適当に答えて書いて貰って、魔道具らしき水晶に手を翳して、登録は終わった。
カードを貰って、これで登録は終了。
「簡単ですが、単語帳なども貸し出しいたしておりますが」
「借ります!」
文字の読めない人用に用意してあるらしい。有り難や。
「冒険者ギルドについての説明は致しますか?」
「一応お願いします」
大体分かる気もするけど、聞いておいて損はない。
「では、冒険者にはランクがございまして、最高でSランク。その下AからGまでございます。
Dランクで一人前と言われまして、Bランクから様々な特典などを受ける事が出来るようになります。
初めての方はGランクからとなり、このGランクは所謂お試し期間です。
半年以内に依頼を20件以上成功させなければ、ギルドの資格停止となりますのでお気を付け下さい。
つまりは、そんな簡単な依頼もこなせないようじゃこの先無理だという、振り落としも兼ねておりますので。
中々そういった方もいらっしゃいませんが、時折たまにいらっしゃることもありまして。頑張って下さいね」
私の顔を見てにっこり笑うお姉さん。
ふるい落とされるとでも?意地でも頑張ってみようではないか!
後は素材の買い取りや、ギルド員ならば扱う事の出来る銀行のようなシステムの説明。
ついでに武器防具のおすすめのお店に、お姉さんお勧めの宿屋などを教えてもらう。
少し値は張るが、女性が泊まるにはうってつけの宿とか。有り難や。
礼を言って、ギルドを出る。
「なんで受付のお姉さんて、ボインが多いんだろう…」
「何を見とるんだお主は」
「つい、ね」
男だろうが女だろうが、つい目が行っちゃうんだよ!ボインには!
少しの仕草でも揺れるし!何なんですかあの破壊力は!
私は普通の大きさです。っていらんわそんな情報!
「アホな事言ってないで、とりあえず服を買いに行こう」
やはりこの格好はかなり目立つ。
ギルド内でもかなり奇異な視線を集めていた。
また迷い人だと言われて捕まるのも嫌だしね。
服屋へ行って、古着を買う。無難な格好になりました。
元々来ていた服は、リュックの中へ。なんか、手放すのもアレだし。
「お金が貯まったら拠点が欲しいね~」
「我が輩日向ぼっこできる縁側が欲しい」
「この世界に縁側なんてあるんだろうか?」
周りに気付かれないくらいの小声で話しながら、お姉さんお勧めの宿に到着。
扉を押して入ると、私と同い年くらいの女の子が受け付けに立っていた。
「いらっしゃい。お一人様?」
「あ、はい。部屋空いてますか?」
「ええ、大丈夫ですよ。銀貨3枚で、朝夕の食事付きです」
ポケットから銀貨を取り出す。
お金の出が激しいなぁ。
「その猫ちゃんはあなたの?」
「はい。私の可愛いクロちゃんです」
「ええと、従魔ではなくて?」
「従魔…ではなくて、ペットなんですが、持ち込み、もしかしてダメですか?」
従魔、もしかして、そんな職業があるのか?!魔獣使いとか?!
「いえ、大丈夫ですけど、トイレなんかは外でしてもらえれば」
「ああ、はい…」
チラリとクロを見ると、私を見ながら小さく頷く。大丈夫のようだ。
「うちは従魔用の厩舎の扱いもある宿屋なので、猫のトイレはできれば裏手の厩舎のほうでさせて下さい。
猫ちゃんのお食事も出します?」
「ああ、じゃあ、お願いします」
「にゃうん」
可愛い声出しやがってコノヤロウ。受付の女性もクロを見てほっこりしているではないか。
鍵をもらって2階へ上がる。
お風呂はないとのことなので、ここは悲しいが、後でタライとお湯とタオルを借りる事に。
銅貨3枚。これは必要経費です!
「う~ん、明日からなんとかお金を稼がないと~」
ベッドにごろんと横になり、ギルドから借りた単語帳をパラパラと捲る。
なかなか分かり易い書き方をしてあるので、これなら簡単な単語はすぐに覚えられそう。
「でも発音が分からないぞ?」
明らかに日本語と違うのだが、そこで気付いた。
「あれ? 普通に会話してるよね」
「遅いわ」
クロからツッコミが入りました。
ベッドの上でリードを外して、毛繕いをしていたクロが解説しだす。
「我が輩の力で翻訳してやっているのだ。
相手の言葉を一度我が輩の中に取り入れ、八重子に分かるように変換し、八重子にその情報を渡しているのだ。
よくよく見れば、話している内容と口の動きが合っていない事などすぐに分かりそうなものなのにの」
「クロ様~~~~!!」
「腹に突っ込んでくるな!」
猫のお腹は聖域です!
柔らかいお腹を少しだけモフモフさせていただき(お腹はさすがに嫌がるので)、クロに頭を下げる。
「もうクロ様に頭が上がらない」
「うむ。崇め讃えよ」
クロも結構悪のり。
「ふむ。まあ、最初は受付嬢に簡単な依頼などを聞いて、それをこなすことだの。
身分証代わりとか、銀行を使いたいからとかで登録しておるのもいるらしいしの」
「それじゃあ、幽霊ギルド員も結構いるってことかな?」
「3ヶ月に1度依頼をこなせば、とりあえず資格剥奪にはならんらしいの。
そんなFランク登録者もかなりいるらしいの」
「クロさん、どこからそんな情報貰ってくるの?」
「我が輩にかかれば、頭の中の情報など見放題だの」
「いやー! エッチ!」
「何を考えておるのだ!」
そんなコントを行いつつ、その日はまったりと過ごした。
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