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第三章 女王イリスの誕生

1周年特別企画!「エリカちゃん&コンちゃん・・・死す。 その7」

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アリーセがリールの診察を受けている同時刻、ブリックリンはライブツアー真っ最中のラザフォードの所へと向かっていた。

下手に説明を遅らせると面倒い事になるからだ。
早め早めの対処って大事だよね~。

キィイイイイインンン・・・・・

「あれ?ブリックリンじゃん?久しぶりだね~」

転移魔法陣から出て来たブリックリンを見てパァと笑顔になるラーデンブルク公国の公爵イリス。
どうやら大人しく書類仕事をしていた様子だ。

そう、現在のラザフォードのライブツアーは偶然にもラーデンブルク公国で行われているのだ。

なのでイリスに顔見せがてらイリスの執務室にある転移魔法陣に転移したのだ。

久しぶりに見る相棒イリスの顔にブリックリンも自然に笑顔になる。
実の所、ブリックリンは案外と能面、無愛想なのであんまり自然には笑わない。
素で笑える相手は今の所はイリスと天龍王アメデくらいしかいない(意味深)

「久しぶりだねイリス。・・・怪我は良くなった見たいだね、元気そうでなによりだよ」

お互いに幼少期からの長い付き合いのイリスとブリックリン。
同じ女性の方が良いと言う理由からイリスの相棒の座をエリカに譲ったが本来のイリスの相棒はブリックリンなのだ。

幼女時代の他愛の無い一瞬の会話の中での話しでイリス本人が覚えていないので誰も覚えていないと思うが「ブリックリン」の名前を付けたのはイリスなのだ。

名付けの母息子関係でもある2人。

なのでどんなに表面上で取り繕おうが顔を見れば母親イリスの精神状態が分かるブリックリンなのだが、今のイリスの精神状態は「至って普通」だ。

その事に違和感を覚えるブリックリン。 

親友のエリカが死んだのに、こんなに早く立ち直る訳が無い・・・軽く数100年は落ち込むと思っていたのに立ち直りが早すぎるのだ。

「イリス?どこまで知っているの?勿論「勇者」としてね」

「うえっ?!」
いきなりのブリックリンから核心的な質問に驚くイリス、親子な2人の間に余計な会話は必要無いのだ。

「その様子だとエリカやコンちゃんの現状がどうなっているか・・・イリスはもう知ってるでしょ?」

「やっぱブリックリンには隠し事出来ないねぇ~。誰にも言っちゃダメだよ?」

魔王バルドルの「影見」を使ってコンちゃんの様子も見ていたイリス。
つーか、まーだ魔王バルドルに「影見」のスキルを返してないんかい。

「コンちゃん・・・アリーセが龍種に進化した理由はね~・・・」
イリスから聞いた話しは天龍王アメデから聞いた話しより詳細で、そして危険ワード盛り沢山の内容だった。

「そう・・・ユグドラシル様だけじゃ無くてシルフェリア様まで同時に転生したのか。

んー?これって対処を間違えたら大変な事になるよね?どうするのイリス?」

女神ハルモニアと魔王バルドルが涙目になるレベルで一気に混沌フラグ回収時期に突入している魔法世界。

イリスの見立てでは更に重要人物、危険人物の転生が続くだろう。

「そうだよね~、それでさ、今回のブリックリンはどこまで介入出来るの?」
事態が混沌とし過ぎて出来ればブリックリンにも助けて欲しいイリス。

先の黙示録戦争で身体がボロボロクチャクチャの怪我人エルフであるイリスは魔王城からはやっとこさ解放されたものの「継続して絶対安静」を魔王バルドルから言い渡されている。

よーく見るとイリスの腰にはハイエルフのルナ特製の魔法の鎖が繋がっている。

この鎖はイリスには解除不能の魔法の鎖で「絶対安静」の言う事を全然聞かないでチョロチョロ動こうする、「大人しく寝ていられないエルフ」のイリスにルナが怒って付けたブツだ。

こんな感じに大人達にガッチガチに見張られているので保護対象エルフのイリスは思う様に表立って動けないのだ。

「うーん?コンちゃんの事には介入出来るけどユグドラシル様とシルフェリア様の件には地龍として介入不可を言われそうだね。

ワンチャンでシルフェリア様の方は介入の許可が出るかもだけど、イノセントとクルーゼの管轄になりそう」

地龍の龍戦士ブリックリンの行動には色々と制限が多いのだ。

「OK、じゃあラザフォードちゃんの事はブリックリンに任せた!
相棒にテレサを付けるわ!テレサよろしく!」

「ん?私がブリックリンと?・・・・・・・ええ?!ブリックリンいつ来たの?!」
イリスの隣りで黙々と書類整理をしていた秘書のテレサが顔を上げる。

仕事に集中し過ぎてブリックリン来訪に気が付いて無かったのだ。

このテレサは、純粋な天龍でありながらエルフに擬態していると言う、とても珍しい経歴を持つエルフっぽい女性だ。

「テレサも久しぶりだね」

「は~い、久しぶりね」

「でもさ?アリーセの事はまだしも「セリスちゃん」の事はどうするの?
イリスなら絶対にほっとけないでしょ?」

「セリスに会おうと直接ピアツェンツアに行こうとしたらルナさんに見つかって怒られて鎖で繋がれた・・・
師匠からは「怪我人のお前がわざわざ行く必要は無い」と釘を刺されちゃった」

「なるほど、それで鎖か・・・」
鎖で繋がれる公爵様なんて、なっかなか居ないだろう。

イリスの話しだとラザフォードは「公爵邸の別邸」に滞在しているとの事。

公爵邸敷地内にある大規模野外ステージを解放しての「世界ロックフェスティバル」に参加中のラザフォード。

この「世界ロックフェスティバル」は300年も昔から開催されている4年に1度の一大イベントだ。
始まりはエリカが・・・以下省略。

このクソでけぇ野外ステージを家主のクレアの許可も取らずに勝手に作ったのは言うまでも無くエリカが・・・以下省略。

ステージが完成してから数百年、様々なイベントが行われているラーデンブルク公国屈指の観光名所にもなっている。

ラザフォードが滞在している別邸はブリックリンも何度も訪れているのでテレサと2人でテクテク歩いて向かう。

「何にしてもイリスが元気で良かったよ」

「ブリックリンは実際に見てないからそんな気楽な事を言えるのよ。

イリスの怪我が悪化して、魔王バルドルがそれに対してメッチャ怒って魔王城にイリスが監禁されたりして大変だったんだからね!

イリスの息子さんならマメに顔くらい出しなさいよ」

何か親戚のおばちゃんの様な説教をブリックリンに始めるテレサ。

「いや~それがさ、俺も顔出したいんだけど、何か最近妙に忙しくてさー。
テレサは天龍から何も言われてない?例えば仕事を手伝えとか?」

「めっちゃ天朱龍ニーム様から仕事を振られて、めっちゃこき使われてるわ・・・」

「ああ、やっぱり?一体何が世界で起こっているんだろうね?」

「変な事は何も起こらないと良いんだけどね・・・それは多分無理かな?」

そんな2人の不安な会話のフラグは即回収される。

別邸でラザフォードに面会したのだがラザフォードの変わり果てた様子に驚愕するブリックリンとテレサ。

「ラザフォードさん!どうしたの?!そんなに痩せて?!?!」

そこにはガリッガリに痩せ細ったラザフォードの姿が?!一体何があった?!

「いやああ?!ラザフォードちゃん!存在が消えかかっているよ?!?!」

「あー・・・いえ~・・・アリーセちゃんがね~・・・
情け容赦無く私の魔力を吸いまくるモノだから・・・痩せちゃったの・・・ 
ダイエット成功よ・・・あはははは」

あはははは・・・と力無く笑うラザフォードだが、これはヤバい!ダイエットにも限度と言うモノがある!

「え?!ラザフォードさん「アリーセ」の事を知っているの?!」

「そりゃ知ってるわよ~、「魂の回廊」で繋がっているんだから。
逐一、アリーセの感情が私の中に入ってきてますよ~」
ラザフォードがフラフラしながら答える。

「あ・・・そうかアリーセに加護を与えたんだったね」

ラザフォードの話しによると、シーナ(ユグドラシル)がコンちゃんに「アリーセ」と名付けをした瞬間にラザフォードとシーナ(ユグドラシル)との間にも魂の回廊が繋がったとの事。

そしてシーナ(ユグドラシル)の生命力はかなり枯渇しているかなり危険な状態で、幼いアリーセにもその危険が及びそうだったので急遽ラザフォードがシーナ(ユグドラシル)に生命力を注入したらしい。

それに加えてアリーセが龍種に進化するのにも莫大な魔力を必要として、その結果、世界を滅ぼせる程の莫大な魔力を持つはずの黒龍王ラザフォードの魔力が一気に0近くまで無くなったとの事。

「いや~、あはははは、名付けがどうこう言ってる場合じゃなかったですね~」

名付けの横取りを騒いでる場合じゃ無いほどに1人で奮闘していたラザフォードだったのだ。

「あの・・・申し訳ないのですが・・・そろそろ存在が消滅しそうでかなり辛いので魔力を下さい・・・」

「うわあああああーーー!今すぐにーーーーー!!!」

「きゃああああ?!ラザフォードちゃん!しっかりしてーーー!イリスーー!
イリスーーー!助けてぇーーーー?!」

大慌てで黒龍王の魔力をラザフォードに全力注入するブリックリン。
テレサもラザフォードに回復魔法を掛けまくる!

騒ぎを聞きつけたイリスが別邸に駆け付けた時には白目を剥いて龍種3人が揃って魔力欠乏症にてダウンしていた。

「きゃああああああ?!クレア師匠!ルナさーーん!助けてーーー!!」

公爵邸は阿鼻叫喚の大騒ぎになったのだった・・・
何の代償もなくアリーセが龍種へとポーンと進化出来る訳がなかったのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ふえええええんん!!!2人の黒龍王が滅びたよーーーー?!?!」

「滅びてないから!」

「相変わらず言い方が酷いなぁイリス」

ガリッガリのスッカスカの出涸らし状態でベッドで寝込む黒龍王2人を見て大泣きするイリスだったのだ。

「もうダメ・・・暫く動けないわ・・・」
2人よりかは比較的軽い魔力欠乏症だったテレサはダルそうにソファーの上でグッタリしている。

「ええい!どいつもこいつも無理ばかりしおってからに!
全員まとめて「絶対安静」じゃああああ!ルナ!ベッドに拘束してやるが良いぞ!」

「もう!皆んな「めっ!」よ」

「ひゃあああ?!私もーーー?!」またベッドに拘束されるイリス。

ハイエルフのクレアの怒りの声が医務室に響き、ハイエルフのルナの魔法の鎖が乱舞したのだった。




黒龍王ラザフォード、龍戦士ブリックリン(元黒龍王)・・・全治4年の重体。









「これってどうなのじゃ?世界の混沌の象徴の黒龍王が医務室に封じられたのは世界にとって良い事なのか?」

『因果律において良い訳がありません!早く何とかして下さい!バルドル!』

「そうかまた残業かぁ~」

女神ハルモニアに急かされ医療ゴーレムを従えて物凄く嫌そうな顔をした魔王バルドルが転移魔法で医務室に現れるまで後5分。

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