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第三章 女王イリスの誕生

10話 「ドワーフ王国跡地」

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「デート楽しみですね!エリカ参謀!」
エリカの腕を組みベッタリと引っ付いて離れない百合っぺ代表。

彼女の名前はイースターリリーと言う茶色の髪と黒い瞳が愛らしいハーフエルフの女の子だ。

《イースターリリー???・・・何かの冗談・・・でしょ?》
鹿児島県出身のエリカはイースターリリーの名前の由来を知っている。
と言うか旧実家の庭でも沢山咲いていた。
イースターリリーの和名は「シンテッポウユリ」鹿児島県原産のユリの名前なのだ。

「私はイースターリリーが大好きなんです!だから自分の名前が好きなんです!」

いや・・・エリカが困惑しているのは花そのものでは無く、君の行動のよる一般的な俗称が「ユリ」と君の名前と見事に一致しているからだと思うよ?

「そうねぇ・・・イースターリリーは私も大好きよ・・・えへへへ」
エリカは挙動不審者になって苦しそうに笑う。

「本当ですか?嬉しい!」
嬉しそうにエリカの腕を思い切り抱きしめるイースターリリー。

腕に顔をスリスリさせて来るイースターリリーに、
「り・・・リリーは男の子の事は嫌いなの?」と聞くと・・・

「いいえ?男の子も普通に好きですよ?でも女の子の方がもっと好きなのです!」
どうやら彼女は女の子好き寄りのバイセクシャルの様子だ。

「・・・そうなんだ」
バイセクシャルなら・・・これは何とかどうにかギリギリ彼女を更生させる事が出来るか?と思案を巡らすエリカ。

ここにエリカを百合世界に引き摺り込みたいイースターリリーとイースターリリーを百合世界から更生させたいエリカの攻防戦が開始された。

「そうなると・・・」
1番手っ取り早いのは同行している2人の青年龍騎士とイースターリリーをくっ付ける事が出来れば・・・とイリスの方を見ると・・・

「隊長!重いでしょう?!私がお持ちします!」

「ダメ!これは誰も触っちゃダメ!」
ゴブリンロードのドンゴの遺品である大戦斧を抱きしめて死守しているイリス。

「隊長!お腹空いていませんか!俺、弁当を持って来ているんです!」

「さっき食堂でご飯食べたばかりでしょう?!」

龍騎士青年2人は目的のイリスの心を奪う為に熾烈な攻勢を掛けていた。

魔王バルドルの奥さんのフレイから元気付けられてオドオド感が若干無くなったが、やっぱりイリスは恥ずかしそうだ。

こんな4人だが、どこで何をしているかと言うと龍騎士隊イリスの野営地より馬車で30分の所に有る、「旧ドワーフ王国跡地」の入り口で先行調査をしているトレジャーハンター達を出待ちしているのだ。

馬車で30分?何でそんな近場で?と言うと幸いな事に世界最大規模を誇る未知なる巨大なダンジョンが近場に有ったからだ。

最初はローランともう一人の2人で来国する予定だったのだが、表向き鎖国状態のラーデンブルク公国に堂々と入国出来ると聞き他のトレジャーハンターの参加希望者が増えて現在は17人のパーティーとなっている。

そしてあの岩盤職人さんの中から3名ばかりが補佐として参加しているのだ。

そして「旧ドワーフ王国跡地」

正確には、まだ管理と監視の為に1000人程度のドワーフが居住しているが300年ほど前までドワーフ達の王国が存在していた場所だ。

現在はラーデンブルク公国と合併して王国は自然消滅してドワーフ達は別の場所に居住している。

王国が放棄された理由は地下鉱物資源が枯渇した事が最大の理由では有るのだが、もう一つの理由は「何も考えないで坑道を掘りまくってたら、いつの間にか王都が迷宮になっちゃった」からである。

王国跡地を管理しているドワーフの職員曰く、
「いやー、俺達ドワーフって計画性が余り無いでしょう?
ご先祖様達が記録も残さないで本能のままに掘りまくっていたら最近産まれた現代人にはただの迷宮でねぇ・・・」

要するに住んでるだけで毎日が子供達の迷子の危機の危険エリアなので、危な過ぎて住んでられん!と放棄したとの事だ。

それから最近まで入り口を完全に封鎖して放置していたら自然発生した魔物達の楽園になってしまい、これまた危険だと言う話しになり国を上げての王国の再調査が開始されたと言う経緯だ。

「せっかくなんだからイリス達もダンジョンの調査に協力して来てね?
調査期間は5日間、これは正式に任務扱いにするわ」

余りにも広いダンジョンで人手が足りん!と調査チームから人員増強要請が国に入っていた所で今回の「ダンジョンデート」騒動である。

せっかくなので「ダンジョンデート」を最大限に利用してやろうと思ったホワイト侯爵からデートに参加するイリス達に探索任務の命令が来たのだ。

そしてデートのお相手のダンジョン専門職のトレジャーハンター達も欲しかったので渡りに舟、ローラン達の入国審査もアッサリとパスしたのだ。

1週間前に先乗りしたローランを含むトレジャーハンター達は国から正式に依頼された先行調査の為にダンジョンに潜っているので出待ちをしているのだ。

「・・・エリカ?寂しくない?彼氏さんが近くに居るのに・・・」
仕方ないとは言え確かに1週間前に自分の直ぐ側まで来た彼氏に無視された形になってしまっているエリカ。

今までは空を飛べるエリカがローランの所に会いに行っていたのだ。

「ふふふ~、彼も仕事だからねぇ・・・・・・・すっごく寂しいよぉ~」

「よしよし、もう少しでローランさんに会えるからね~泣くなよ~」

寂しくて瞳をウルウルさせているエリカの頭を撫で撫でするイリス。

そんなイリスとエリカを見て・・・

「凄え・・・流れる様に息ピッタリの動きだ・・・」

「でしょ?でしょ?やっぱり隊長と参謀ってそうなんじゃない?」

「あのガチ百合関係説か?・・・・・・・否定出来ないかもな・・・」

息ピッタリのイリスとエリカに対してこちらも息ピッタリに妄想を膨らませる龍騎士の3人、何だかんだ言って戦友の彼らの連携力はとても強固なのだ。



それから1時間後・・・


「出て来ないね?」エリカが心配そうに入り口を見つめる。

「そうだね」

約束の時間が過ぎてもトレジャーハンター達がダンジョンから出て来ない・・・

「ダンジョンですから時間ピッタリとは行かないでしょう。
無理に入って入れ違いになると危険です、まだ待ちましょう」

「そうだね」

連日に渡りふざけまくっているが彼らも正規の軍人。
しっかりしている所はしっかりしている、安易に飛び込む危険性を熟知している。


更に1時間後・・・


「うーん?イースターリリーは管理している職員にダンジョン内から何か連絡はないか聞いて来て。
確か非常用の通信設備が有るはずだから。

エリカはマッピングされている範囲内で捜索開始、トリスタンはエリカの援護、2人共絶対にマッピング範囲外から出ないように、私とサグファーは待機。

エリカ?1時間後に必ずここに合流、命令よ」

「了解!」エリカとトリスタンがダンジョンの入り口に入って行く。
言い遅れたが2人の青年龍騎士の名前はトリスタンとサグファーだ。

「了解しました」イリスの命令を受けてイースターリリーが管理事務所へと走る。
探索にエリカを送るのは此処に居ても不安でエリカにストレスが溜まるからだ。

2時間遅れと言うのは軍事作戦において結構ギリギリのラインだ。
相手が軍人では無いので問題も無いのだが何か有った時に備えておく。
人員配置は各自の能力適正を考慮した結果でそれ以上の意味は無い。

「隊長、探索魔法は?」

「さっきから使っているけど地下だからノイズが走るわ。
場合によってはイースターリリーと合流したら私達も中に入ります」

それから30分後、イースターリリーが走りながら戻って来た。

「地下4層目で負傷者1名有り!魔物との遭遇戦で大腿部の裂傷!生命に別状無し!
但し自力歩行は困難な模様!救助要請が出ています!」

「了解!目的地までのマッピングは?」

「大雑把ですがこれです!」
少しイースターリリーが戻るのに時間が掛かったのは、トレジャーハンターからの情報から未踏エリアのマッピングを行なっていたからだ。

「了解!私達も中に入りエリカ達と合流!彼らを救助します!」

「ダンジョンデート」から一転、負傷者救助に目的が変わる。

「かなりの手練揃いの中での重度の負傷者よ気を引き締めるわよ!」

「「「了解!!」」」

こうして先行しているエリカとトリスタンと合流するべくダンジョン内へ足を踏み入れるイリスだったのだ。
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