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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

外伝!「魔王バルドルと世界の言葉」その2

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とりあえず私、ハルモニアは、新しい地龍王になったクライルスハイム君に会いに行きました。

「お初にお目に掛かりますハルモニア様。
新しく地龍王を拝命致しましたクライルスハイムと申します。
ハルモニア様の御降臨の件は父より承っておりますのでご安心下さい」

あらあ?何て礼儀正しい美しい少年なのでしょう!
お姉様は危ない橋を渡ってしまいそうです!マジヤバです!私、変態です!

「ハルモニアです、よろしくお願い致しますクライルスハイム。
とりあえずは、この世界の実態を教えて下さい」

すぐに、お仕事モードになる事が出来た私を褒めて下さいな。
それからクライルスハイム君から、お話を聞いたのですが・・・

ハルモニアは思わず頭を抱えてしまいました・・・

アトランティス、レムリア、メソポタミア・・・地球の古代文明の子孫の者達がこの世界で激しく争っているとの事です・・・何でそうなったの?

クライルスハイム君の話しだと争いに関しては圧倒的に悪いのはアトランティス。
しかしレムリアにも結構問題あり、完全にユグドラシル派のメソポタミアは我関せず・・・だそうです。

何で元地球人同士が仲良く出来ないのぉ?!
大体からして君達住んでた地域は遠くて元々因縁とかも無かったでしょう?!

話しを聞いた私は早速、各勢力の長にコンタクトを取り和解を促して見る事にしました。

現在進行形で戦っているアトランティスとレムリアは置いておきます。
まだ詳しく情報が入って来てませんからね。

とりあえず完全中立・・・いいえ、悪い意味で両勢力の争いに無関心のメソポタミアとコンタクトを取りましょう。
君達、停戦や和平交渉とかの仲介が出来るんじゃないんですか?

メソポタミアの子孫達は大半が吸血鬼化しており、現在は「真魔族」と名乗っているそうです。

何で吸血鬼化したのか気になりますが、何でもかんでも手を掛けるのは得策とは言えないので、この件も置いておきます。

アテネ様!最初から暗雲覆うどころか、いきなり雷雨暴風警報発令じゃないですか!

メソポタミアの長の名前はマクシム君だそうです。
これでも女神の端くれなので一瞬で念話が繋がってしまいますよ。

位置を特定して・・・っと、あー、テステス、こほん・・・

『魔王マクシムよ、私は世界の言葉・・・答えなさい』
神聖で厳かな雰囲気出して行きますよ、あっ!私本物の女神でしたね、すみません。

《ん?誰だ?あー魔王?・・・悪いんだけどな、俺もう魔王を辞めたんだよ。
バルドルって奴が魔王をやってるからそっちに連絡してくんね?》

なんですと?魔王を辞めた?それは大変失礼を致しました、間違い念話でしたね。

『そうなんですね?すみません、ありがとうございました』

《おー、良いって事よ》

えーと?バルドル君、バルドル君っと・・・
なによ!マクシム君と同じお城に居るじゃないの!
もう!取り継いでくれても良いじゃない!

さて気を取り直してっと。

『魔王バルドルよ、私は世界の言葉・・・答えなさい』
2回目だと神聖さがガタ落ちですね・・・

《はい?誰じゃ?》

『世界の言葉です』

《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間違い念話だと思います』

プチ・・・ツーツーツー・・・・・・・・・・・・・・・・切られたわ・・・残念・・・
ってそうじゃ無い!何よ!いきなり切る事ないじゃないの!

『魔王バルドルよ!答えなさい!』

《だからお主は誰なのじゃ?儂は「世界の言葉」さん、なんて者は知らないし、初対面ならば先ずは自分の名前を名乗るのが礼儀ではないのか?》

『なっ・・・名前?』

《そうじゃ、お主は「世界の言葉」など抽象的な名前ではあるまい?
お互いに先ず本当の名前を名乗り挨拶をするのがコミニュケーションと言うモノじゃ》

な・・・なななな・・・この子、凄く頭が良いわ。
どうしましょう?魔王=脳筋と思ってましたわ・・・

『その件について上司に聞いて見ますので後で掛け直しします』

《うむ、2時間後には会議が始まるから早めにな》

どうしましょう・・・この子・・・凄くやり辛いです!
名前・・・名前かー、こう見えて私の名前は地球上でも凄く有名なんですよ(えへん!)

《アテネ様、アテネ様、よろしいですか?》

《何?ハルモニアちゃん?》

《この世界の住人に私は名前を名乗って良いのでしょうか?》

《え?名前?・・・うーん・・・非常に良くないですね。
ハルモニアちゃんは地球の女神で一般的にもHarmonyで世界的に名前が通っています。
違う世界で名乗り女神と認定されてしまうと因果率が狂いハルモニアちゃん本体の力に悪影響が出る可能性が大ですわ》

《ええ?!そんなに大事なんですか??》

《そうですね、「真名」を甘く見てはいけませんわ》

《ぐっ・・・具体的にはどの様な?》

《先ず本体の力が地球とそちらの世界に分散されてハルモニアちゃんの「調和」の力が弱まります。
ハルモニアちゃんは自分を「使いパシリ」とか変な勘違いをしている様ですが貴女は地球の要、核になる女神です。
もしハルモニアちゃんの力が弱まれば調和を失った地球は世界的な大戦乱に陥ります》

《ま・・・前に病で寝込んだ時の様にですか?》

《そうですわ、第一次世界大戦、第二次世界大戦の再来です》

《えええええらいこっちゃーーーー!!
私ってそんなに重要なポジションだったんですかぁ?!》

《当たり前です!むしろ今まで自分を何だと思っていたんですか?!》

《使いパシリ?》

《違います、「調和の女神」です。
とにかくそちらで危険を犯してはなりません、良いですね?ハルモニアちゃん?》

《は・・・はい》

アテネ様との念話、終わりです。

知らなかった・・・自分がそんなに重要人物・・・重要女神だったなんて・・・
だって!誰も教えてくれなかったんだモン!

でも名前を名乗れないなら・・・どうしましょうか?
うーん?・・・よし!偽名を使ってしまいましょう!

『もしもしバルドル君?』

《ん?お主か・・・してお主の名前は?》

『はい!私はハーミットと言います!これからよろしくお願い致します!』

《ウソつけ》プツン・・・・ツーツーツー・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでぇ??!!

パシリ女神、怒りのリダイアル中・・・・・・・・

《はい》

『ちょっと何で嘘だと思うの?!』

《儂を侮るでないわ。
儂は「真偽の耳」のスキル持ちじゃ、嘘か真か声を聞けば分かるのじゃ。
して?お主の名前は?》

『あうあうあう・・・・・・・・・・・・失礼しました!また今度!!』

《何なのじゃ?最近はイタズラ念話が多いのう・・・》

こうして魔王バルドルに惨敗したパシリ女神ハルモニアでした・・・
バルドルのバカーーーーー!!もう君付けで呼んであげない!
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