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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

外伝!「黒龍王対決」その3

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「私の攻撃を防御して見て下さい」
1日ひと殴り刑も10日も過ぎた頃、ラザフォードが妙な事を言い出した。

イリスは3日目まで刑の執行に付き合ったが龍騎士隊の仕事が忙しくて4日目以降立ち合わなくなっている。

これはラザフォードの怒りが大分落ち着いたのが理由だ。
「2人きりで話し合い仲直りしてくれぃ!なんならムフフな関係になっても良いぞ!」
とイリス的な思惑があるからだ。

そしてイリスとエリカが現在死ぬほど忙しいのも事実だ。
と言うのもラーデンブルク公国が龍騎士隊イリスを正式に正規軍部隊として運用する事を決めて隊長のイリスは新兵を150名程与えられて部隊編成と新兵の訓練をしなければならなくなっているからだ。

子供が隊長ってどうなの?と疑問に思ったが120歳のハイエルフにしては要職に就くのが、かなり遅かったらしい。
ハイエルフに直接仕えるのは大変名誉な事なので配属された新兵達は鼻高々なのだ。

クレアは昔、満80歳で師団の司令官に就任したそうな。
他のハイエルフ達も100歳前に要職に就くのが通例になっている。

しかし部隊編成なんて芸当は、平和な森に住んでいたイリスに出来る訳もないので専任参謀のエリカに教わりながら組織作りをしている。

うえ?!あのエリカが?!と思われるだろう。
しかし!あまりに普段がアホ過ぎて忘れがちだが軍事においてエリカの智略はガチで本物なのだ。

龍騎士隊イリスの専属参謀に就任してからのエリカは参謀として軍内で頭角を現している

任務から離れプライベートだと感情が豊かでアホなお喋りが大好きのエリカだが任務中は、必要最低限の事しか話さないし基本は無表情だ。

なので新兵の連中から「人付き合いが苦手な少佐殿」と一歩引かれている。

ちなみにイリスはラーデンブルク軍内での現在の階級は大尉だったりする。
地球の感覚で言うと中隊長クラスだね。

あれ?何でエリカの方が階級が上なの?と聞かれるとラーデンブルク公国軍では参謀は佐官からと決まっているからだ。

一応イリスもエリカに誘われて佐官昇格の試験を受けたが・・・見事に落ちた・・・

この佐官昇格試験とは戦術図上演習や世界情勢問題を含む1500問にも及ぶ超難解な問題を正解率95%でクリアしなければならないのだがエリカは正解率99%で突破した。

試験を一緒に受けた秀才イリスも「こんなん絶対に合格は無理だよ・・・」と頭から煙が出て途中リタイアする程の難しい試験だったのだが・・・

エリカ・・・・・・・・・なんて恐ろしい子。

そんな理由から階級逆転現象が発生している。

それから隊内で持っている権限は隊長のイリスの方がエリカより圧倒的に上だが、
逆に隊から離れると参謀のエリカの権限が上になるのでエリカが軍令部や参謀本部でイリスの許可無く色々な事案を直接交渉が出来る様になって隊的にも臨機応変度が増して何かと便利だからと言う理由もある。

そして裏の理由では、隊内においての隊長の独裁を防ぐ為に隊長より階級が上の参謀を配属させ監視させると割と地球の軍隊でも良く使われる配置方法だね。
この裏の理由をエリカが逆手に取って効率良く利用している。

しかし新兵とコミュニケーションを取らないエリカに「何でみんなと話さないの?怖い上官の役作り?」とイリスが尋ねると、
「任務中は常に思考加速のスキルを発動させているから余計な思念を入れると脳の回線が焼き切れる恐れがあるのよ。
それから参謀がお喋りだと隊の規律が乱れる原因にもなって良くないからね。
その代わり隊長のイリスはみんなと何でも話しまくってコミュニケーションを取らないとダメよ?」と実に参謀らしい超真面目な回答が来た。

任務中の参謀エリカは、いつものパープーエリカちゃんと全然違う別の人物と思ってくれて良いくらい真面目なのだ。

そんな理由からエリカも最近は刑執行の見学に来ていないのでラザフォードとブリックリンの2人だけで刑の執行を行っている。

そんな中でラザフォードが、
「「ちょっと私の攻撃を防御して見て下さい」」と言い出したのだ。

「「はい?・・・えーと?どう言う事でしょう?」」

「「いえ、冷静になって考えて見ると無抵抗の人を殴るのに抵抗が出て来たのです」」

「「・・・もしかして戦うのが楽しくなって来てます?」」

「「なってません」」

これはラザフォードの怒りを収める為の刑なのでブリックリンはラザフォードの言う通りに攻撃を防御する事にする。

「「行きます!!!」」

ブリックリンの身中目掛けて龍力を込めて鋭く拳を撃ち出すラザフォード!
しかし何度も受けているラザフォードの攻撃を完全に見切っているブリックリンは一歩身体を引くだけでかわす。

「「・・・・・・・うう~・・・やっぱり私を馬鹿にしていましたね~」」

「「えええええ?!馬鹿にしてなんか無いですよ?!」」

「「そんな簡単にかわせるのにわざと攻撃を受けてましたね~」」

「「えええええ?!そう言う刑なのでは?!」」

「「全然違いますよ!!真面目に戦って下さい!!」」

どうやらラザフォードの「殴りたい」は「戦って撃ち負かせたい」の意味であって無抵抗で殴られるブリックリンに余計に怒りを募らせていたのだ。

「「そそそそそうは言っても!」」これには動揺しまくるブリックリン。
ヒュン!ヒュン!と連続で来るラザフォードの攻撃を捌きながらどうすれば良いか考える。

さすがに殴れないのでラザフォードの腕を取り脇固めで動きを抑えて見る。

「「うう~!!!」」こう言う場合は空中で一回転すれば簡単に固めを外せるモノなのだが格闘技の知識など無いラザフォードは完全にブリックリンの固め技にハマってしまう。

ここで少しでも力を込めるとラザフォードに激痛が走るので、パッ!と手を離すブリックリン。

「「うう~!!また!やっぱり馬鹿にしている~」」

「「どどどどどうすれと??!!」」

マジでどうすれば良いか分からなくて混乱して来たブリックリン、ここまで動揺するのは産まれて初めての経験だ。

「「もういいです!!今日はここまでです!!さよなら!!」」

そう言い残してプンプンしながら街の方へ飛んで行くラザフォード。

「「どうすれば良いの?・・・・・・・」」
その後ろ姿を唖然呆然と見送るブリックリンでしたとさ。
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