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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

外伝!「黒龍ラザフォードとマッドサイエンティスト」その18

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「もおおお!!いい加減にしなさぁーい!!」
いつまでもクンクンを止めないリリーとクローディアにアメリアが怒ってようやくクンクン攻撃を止めた2人・・・

「ふぅ・・・アメリア様の匂いを思う存分に嗅ぐなんて通常ではあり得ない貴重な体験をしたっす♪♪」

「凄く良い匂いでしたね♪♪」

「だから匂いとかって言わないでって!」

このクンクン攻撃は地龍が強い匂いフェチの側面を持つからだ。
ずっと地上で生活している地龍は匂いから様々な情報を得ているので日常的に色々な匂いを嗅いで行ってる内にフェチになる者が多い。

そしてアメリアは体臭が様々な花の香りがすると言う特異な存在だと思いもよらない所から判明してしまう。
これはアメリアが妖精クロリスの直系眷属だからなのだがアメリアは自分がクロリスの眷属なのを知らない。

後にこの話しを聞いた地龍王クライルスハイムからも散々自分の匂いを嗅がれて半泣きになる海龍王アメリアでした。

そしてハーフ龍種のクローディアも半分地龍の血が流れているので御多分に漏れず匂いフェチなのだ。

海龍は生活基盤が水の中なので匂いには余り縁が無い(水の中でも結構匂いは感じるらしいが色々な匂いが混ざりかなり曖昧)ので自分の匂いを気にするとかの習慣が無い。

龍種のもう一枠である天龍は匂いに関しては結構微妙だ。
風に乗って遠くで感じる匂いには敏感なのだがフェチと言う程では無い。

なのでクンクン攻撃は、アメリア的にはものすっごく恥ずかしい行為をされていると感じるのだ。

黒龍のラザフォードはどちらかと言うと天龍系の龍種なので匂いとかには、ほぼ固執しないのだが潜在意識で大好きなアメリアの匂いには過剰に反応して2人に隠れてさりげなく匂いを嗅いでいた。

「うう・・・・・やはり少しは香水を・・・」

「ダメっすーーーーーー!!!」

「いけません!アメリア様ーーーーーーー!!!」

「ダメですよーーーーー!!!
アメリア様の匂いは至高です!宝物です!香水なんてとんでもない!
嗅げば嗅いだけ味が出る逸品です!
それを香水で隠すなんて世界に対する冒涜です!!・・・・・・・あっ!」

自分から隠れてアメリアの匂いを嗅いでいたのを暴露する変態ラザフォード。
突然始まったアメリア臭が如何に素晴らしいかの力説に3人が「わぁ」とドン引きしたのは言うまでもない・・・

「いやぁーーーん!!
アメリア臭が良過ぎるのが不味いんですーーーー!!」

「だから!アメリア臭ってのも止めてくださいーーーー!!」

いやだから!いつまでこの匂い話しを引っ張るんだよ!
もしや匂い話しで2話も引っ張るつもりなのか?!そうなのか?!

変態に任せていると全然話しが進まないのでナレーション強権発動で強制的に話しを元に戻します。

「・・・・・・・えーと?それであの・・・あの子は、どうしているの?」
あー・・・息子のジャコブが心配で黒龍の代替わり確認にかこつけて様子を見に来た訳だね。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・聞きたいっすか?」

「いえ・・・その長い沈黙に全てを察したわ、言わなくて結構よ」

「とりあえず縛って・・・」

「いえ!だから言わなくて結構です!」

今回の作戦でも変態が改善されないと理解した変態息子の事は爆速で忘れる事にしたアメリア・・・そうでないとあの息子とは付き合えないのだ。

余談だがあの息子がなぜ弩級の変態になったか親としても全然心当たりが無い。
割と普通に育てたつもりだし愛情も注いだそして自分も夫も常識人だと思っている。
アメリアの夫でジャコブの父親は現在アメリアの最側近の1人で清廉潔白な高潔な男性だ。

なのだが・・・優しく愛情深い性格で息子のジャコブの奇行にも少し甘いのだ。

ここは厳しくやらないといかん!とジャコブの奇行原因を徹底調査するべく遺伝子レベルまで診察した名医の天舞龍リールに「産まれる前から変態」と言われてもう更生させる事を絶望しているのだ。

ちなみに天舞龍リールと海星龍ジャコブは大体同じ時期に王の子供として産まれたので、
海龍王アメリアと地龍王クライルスハイムと天龍王アメデの三龍王同様に幼馴染でも不思議では無いのだが・・・
ジャコブの危険度をいち早く察知した天舞龍リールが海星龍ジャコブから完全シカトで逃げ回ったので2人の面識はほとんど無い。

師匠でもあるアメリアに頼まれてジャコブを嫌々診察した際のリールの心底嫌な顔と来たら・・・
弟子の心底嫌そうな顔に親であるアメリアの心に甚大な被害が出たのは言うまでもない・・・・

唯一の救いは異性に対する性的な変態行為が極端に少ない事だろう。
どちらか言うと自身の変態行為による相手の反応を楽しむと言った感じなので性欲からの変態行為ではない。
いや!それが救いな時点で全く救い様が無いな!うん!

「はあ・・・それじゃあ・・・わたくしは叔父様に挨拶して来るわね」
肩を落として哀愁を漂わせながらレヴィアタンの居る運営事務所へ向けてトボトボ歩き出したアメリア。

「あっ!私も同行します!」

海龍王を1人だけで運営事務所まで歩かせる訳にいかないのでクローディアが同行したのでラザフォードとリリーの2人だけとなった。

なので他の参加者への見学を再開する事にした。

尚、この一連の龍種達のやり取りはアメリアの強烈な認識阻害魔法が効いているので周囲の市民達はアメリアとラザフォード達を見ても会話を聞いても→陽が照らしている、風が吹いてる、とかの自然現象だと認識してしまうのだ。

「・・・・・・・・ところで「あの子」って誰の話しだったの?」

「ラザフォードは知らない方が良いっすよ。知った所で損しかしないっす」

「そ・・・そうなんだ?」

「そうっす。忘れるっす。アタシも忘れたいですから」

この後も海星龍ジャコブの事はラザフォードには秘匿され続けるのだった。
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