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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

外伝!「黒龍ラザフォードとマッドサイエンティスト」その5

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「やりました師匠!やりましたよ!」ぴょんぴょんと跳ねて大喜びの黒髪の女性。

丸々一年の歳月を掛けてようやく人間の姿になる事が出来たラザフォード。
当初は順調に「人化の法」は進んでいたがやはり最後になって黒龍王の莫大な質量の変換にかなり手間取って時間が掛かってしまったのだ。

「良くやった!でかしたぞポポ!頑張ったな!
しかし髪は黒髪か・・・これは少し残念な結果じゃったな」

「えっ?髪の毛は黒いんですか?あっ!本当だ」
肩から流れる黒髪を一房取り眺めるラザフォード。
久しぶりに見る自分の髪の毛が嬉しいのか日の光に当てたりしている。

ラザフォードから前世は金髪碧眼だったと聞いていたのでクレアは同様の色になる様に術式に組み込んでいたのだが反映されなかったのだ。

本来ならある程度は術者の意思で姿を変えられるのだが現状のラザフォードの実力では人型になるので精一杯で今の人間になった姿は遺伝子情報がそのまま反映されている。

つまり「黒龍王が人間の女性だったならこう言う姿だね」と言う訳だ。

ラザフォードに当然の様に手鏡を手渡すクレア、手鏡を持ち歩いているところが生粋のお姫様らしいですね。

「わあああ??これはまた美人さんですね~」
手鏡で右左に顔を振り自分の姿を確認するラザフォード。

「おおー?これが私の姿?」と思うほど新しい姿は前世の姿とはかけ離れていた。

自慢のプラチナブロンドは艶やかな長い黒髪に変わり、やや垂れ目のスカイブルーだった瞳は黒目になり、どこか幼い妹キャラだった顔立ちも鼻筋がスッと通り切れ長な瞳が美しい東洋系の美人になっていた。

「すまぬな・・・お主が思う姿にしてやれず。
経験を積めばお主の思う姿になれるとは思うのだが・・・」

「いえいえ、新しい姿・・・結構気に入りましたよ。
新しい姿にインスピレーションがガンガンと高まって来ましたよ」

これなら大人っぽいラブソングとかもいけそうか?前世では挑戦出来なかったジャンルにも挑戦出来そうだと喜ぶラザフォード。

全て歌を中心に思考するあたりがプロフェッショナルだね。

目的の第一段階が達成されて次の段階へと進む、ここが一番大事なところで
「この姿で思い通りに歌えるか?」の確認だ。

スウウウと大きく息を吸い、緊張した面持ちで・・・
「ラララララーーーーー♪♪♪」と発声した瞬間!!

ズドオオオオオンンンン!!!!!!ゴオオオオオオ・・・・

「!!!!!!!!!!!!」
ラザフォードの口から、もの凄い高威力のドラゴンブレスが発射されて正面にあった小さな丘を粉砕して空へと消えていく衝撃波。

「ここここここ?これはぁ????」

ドラゴンブレスは別名「竜の歌」とも言われている。
人間の姿で腹式呼吸で歌う事は、ドラゴンがブレスを撃つのと同じ要領なのだ。
ちなみに属性は「獄炎」だった・・・ええ?!獄炎!やべぇ?!

Orz・・・・・・ガクウと膝から崩れ落ちるラザフォード。
歌を歌った時点で目の前の観客に殺意マシマシのドラゴンブレスをお見舞いしてしまうのだ!

ラザフォードの夢・・・ここで潰える!!

「いや・・・気持ちは分かるが妙に気合いを入れ過ぎじゃ。
思い切り口元に莫大な魔力を集めて歌うから悪いのじゃ。
もう少し声に込める魔力を抑えて見よ」

呆れた顔で単純に今の歌い方が悪過ぎると指摘するクレア。

それから1時間ほどクレアの指導通りに練習したら普通に歌える様になった。
おかげで周囲の山や丘は穴だらけ岩が溶けて溶岩の川が出来てしまっているが・・・地獄か?ここは?

そして自分の歌声を良く聞いて見たら声は昔より大分ハスキーな感じになっていた。
「ああああ・・・良かったぁ」半泣きになりながら喜ぶラザフォード。

「うむ・・・良かったのうポポよ」
うんうんと、頷くクレアに頭をポンポンされるラザフォード。

こうして傍迷惑極まりない黒龍王ラザフォードの人化の法の修行は終わり、ようやく付近にも平和が戻って来た。

今回の件で修行場周囲の魔物達は黒龍王ラザフォードとハイエルフのクレアを「地獄からの使者」と認識する様になった。

以降、完全にナマハゲ扱いである。
今後もこの地域にたまに二人が現れては何か始めるのでその度に魔物達は巣穴に籠り震えながら嵐が過ぎ去るのを待つのみになる。

本当に超絶傍迷惑な二人である。

「して今後はどうするのじゃ?」

「勿論!街頭でゲリラコンサートを行います」

「「げりらこんさぁと」とは?なんじゃ?」

「ああ、ごめんなさい。各地を回る吟遊詩人をやります。
手始めに中央大陸の人間達の街で力試しをします」
確かにゲリラコンサートは吟遊詩人とやる事が同じだね。

「力試しか!そうか・・・では少しの間はお別れじゃな・・・
必ず、ラーデンブルクへと来るのじゃぞ?待っておるぞ」

本当はこのままラザフォードをラーデンブルクへと連れて行きたかったクレアだが、
力試しと聞いてクレアの中の熱血が萌えた!

「これを持って行くが良い」
クレアはラザフォードに選別としてラーデンブルク公国の身分証明用のペンダントを渡す。
これが有ればある程度なら人間の国でも融通が期待出来るからだ。

「本当に何から何までありがとうございます師匠」

「うむ、黒龍王が平和的に無力化するのは人族全ての益でもあるからな、ロックを世界に広めるが良い」

こうして世界の言葉の思惑を完全フルシカトして黒龍王ラザフォードの世界巡業の旅が始まったのだ。

どこからか世界の言葉の啜り泣く声が聞こえるが聞か無かった事にしよう。

中央大陸を目指して飛び立ち黒龍王ラザフォード。
これから彼女が向かう先には何が起こるのであろうか・・・
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