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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

25話 「帰って来ました!ラーデンブルク!」その4

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「なななななな???」いきなり気絶した船員さんを見て唖然愕然とするイリス。

「だっ・・・大丈夫ですかー?」恐る恐る船員さんをツンツンするイリス。
そりゃ、いきなり泣きながら塩だの酒だのをブッ掛けて来るのだ!イリスも普通に怖い。

とりあえず寝てるだけ見たいなのでイリスは船員さんを台車の上に寝かせてあげる。

「うえーん・・・お酒臭ーい!もおおお!!」
ワイン塗れの自分を見てテンションはガタ落ちだ、何だちゅーねん!

白いワンピースを台無しにされて、しょんぼりしながら部屋に戻り着替える事にしたイリス。

トボトボと陰鬱な雰囲気が合わさり血塗れの姿でフラフラ浮かぶイリスは立派な怨霊だ。

するとそこに!

「居たぞー!!こっちだーーー!!」大きな誰何の声がきこえて、
わらわらと船員が通路から飛び出して来た?!
イリスを取り囲むが全員青い顔で及び腰で気の毒になるくらいに怯えている!

「だから!何なんですか?!」
取り囲まれた事より怯えられてる事に大ショックのイリス。

今回イリスはクレアの顔を潰さない様にめっちゃ大人しくお姫様をしていたのだ。
可愛い笑顔を絶やさず努力していたのに何故に怯えられる?!

「ひいいいい!声を聞いちまったー!」船員が悲鳴を上げる!

「慌てるな!大丈夫だ!聖女様の御符がある!」
船長さんはイリスにドヤア!!と、イリスも見覚えのある聖女から貰った御符を見せ付ける!

「・・・・・・・・」
余りにも訳が分からん時、人は無言になる物なのだ。

うん・・・確かに聖女の御符だね、しかもそれクレア直属の聖女さんの御符だよね?
うん・・・私も良く知っているよ?だって私も同じ物を書いてるからね?

「ふふふふ!さすがに怖気付いている様だな!さて!聖女様から貰った。
もう一つの御符!「シャイング・エアー!!」だ!喰らえー!」

船長さんは御符の魔法を発動させた!

ヒュウウウウウウ!!!

光の奔流がイリスを包む!
イリスは思った!《なぜ?!なぜシャイングエアーなの?!》と!

当然ながらイリスはノーダメージだ!当たり前だ。
むしろドンドン魔力と体力が回復して行くのだ!それはなぜか?
それはイリスの属性が「光」と「風」だからだ!

多分、船長さんは「シャイングエアー」って光の魔法だから怨霊に効くんじゃね?
と思って発動させたのだろうが、シャイングエアーは「風の属性魔法」なのだ。

そしてシャイングエアーは「回復系統の魔法」なのだ!破魔の効果は無い!

・・・この御符をくれた聖女さんは、多分オマケでくれたんじゃね?知らんけど。

そしてバリバリの同属性のイリスには基本効果×1.5倍が加算される!
それから同系統の聖女さんからの加護、+5000HPも加算された!
ピッカリーン☆イリスは船酔いで失ったHPを全回復した!

マジで困惑するイリス。
何か知らんが敵対行動?を取っている相手が「高位回復魔法」で自分を回復させて来たのだ!

「あの・・・戦いたいのですか?もてなしたいのですか?どちらですか?」
段々と疲れて来たイリスの対応もおざなりになって来た?!

「何ーーー?!シャイングエアーが効かないのかーーー?!」

「めっちゃバリバリ効きましたよ!貴重な魔法をありがとうございます!」
ちなみに「シャイングエアー」の御符のお値段25000円(相当)なり。

「もおおお?!事情をちゃんと教えて下さいよ!」
ムキー!と遂に怒り出したイリス。

「ひいいいいい?!怒ったーーーー?!」船長さんも怯え出した!
その時!ドンゴが走ってこちらに向かって来て、

「おお!!いたいた!イリス様!大変ですぞ!
「シー・サーペント」が船に同航しております!彼奴め!攻撃を仕掛けて来るかも知れませぬ!
・・・ってその御姿どうされたのですかー?!ワイン塗れではありませぬか?!」

ワイン塗れのイリスに愕然とするドンゴ。
この騒動に護衛のドンゴが居なかったのは甲板上でシー・サーペントを見つけてずっと牽制していた為だったからだ。

「ワインよりも「シー・サーペント」だよ!タイプは?!」

「はっ!おそらくは「海蛇」タイプかと思われます!」

「あっちゃー!!最悪!話し合いが通じ無いじゃんか・・・
船長さん!遊んでいる場合じゃ無いですよ!迎撃の準備ですよ!」

シー・サーペントは海に出るUMAの総称でタイプが色々と居る。
最悪なのが「タコ」「蛇」のタイプで知能が低くて一切交渉が出来ない。
出会って向こうの捕食対象になると戦闘不可避なのだ。

逆に「シャチ」タイプは知能が滅茶苦茶高く人間より頭が良い。
交渉どころか逆に無知な人間を質問攻めにして馬鹿して遊ぶ性悪な個体も居るのだ。
いずれにしても「人」に有効的では無い。

「ほら!急いで!船長さん!」イリスからの喝に、
「はっ?!はいいい?!」やっと怨霊をイリスだと認識した船長さんと船員さん達。

《マジヤッベーーー!!》内心そう叫んでいたがイリスの言う様にシー・サーペントへの対象が先だ!

怨霊とかより慣れている相手なので対応は取りやすい!

「戦闘要員は配置に付け!非戦闘員は甲板上の退避小屋に移動だ!
新兵器の試し打ちをやるぞ!準備しろ!」

「はい!!」
戦闘要員は配置に付きつつ、船内いる者達は甲板上への移動誘導を始める船員達。

何で非戦闘を危険な甲板上へ?と思われるかも知れないが戦闘により船体に穴が空く、もしくは、シー・サーペントが船内へ捕食の為に侵入した際に逃げ場が無い船内より甲板上の方が安全だからだ。

「魔導榴弾砲の回頭を急げ!!」
ここに海戦の常識を覆す、大砲撃戦が始まるのだった!






「結局、シー・サーペント戦はやるんかい?!」

へい!気が向きました!


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