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隻腕の龍戦士編
10話 「ヘスティア先生の過去と歌と天龍王とシーナとの謁見」
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追加で倉庫に眠っていた小ネタを集めまくったら上手く話数を切れずにタイトルと文字数がやたらと長くなりました。
構成が下手っぴですみません。
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時は少し遡り、変態ジャコブと仲間達が起こした凶宴事件が終息した頃のゴルド王国滅亡まで半年前の話し。
「輸送任務ですか?」
イノセントより突然の契約変更の旨を伝えられてキョトンとする幻夢の3人。
何故に輸送任務へ変更?と首を傾げる。
「それがな・・・」
イノセントの説明によるとブザンソン要塞は龍種による直接支配が決定して人間の国々に通達が来て、この地域の安全が確認が取れたとの事だ。
ガエル侯爵軍はゴルド王都へ向かう事になったのだがゴルド王国は既に死に体、現在王都近辺に展開中の戦力で充分との事でガエル侯爵軍は周辺の警戒と辺境から来るかも知れない援軍の対象、それに補給物資運搬と補給部隊護衛の後方任務を与えられたとの事。
後方での活動が主になったので強行偵察の必要性は低下したので代わりに軍からは輸送任務の依頼が冒険者に来たのだ。
つまり戦闘行動は極端に低下するので契約更新するかどうかを問われてる訳だ。
戦闘参加を希望すれば王都を包囲してる軍に参加は出来るがそこまで旨みはないだろうとの事だ。
それにイノセントはシーナ達を凄惨を極めるだろうゴルド王族の絶滅作戦にシーナ達を参加させる気は無い。
色々と社会勉強になる事が多い遠征であったが戦闘経験の点でもう少しな点は否めないが一度ピアツェンツア王国に帰還するのも手だろう。
「エレンさんと地龍君はどうしたいですか?」仲間の意向次第と言った感じのシーナ。
「この先は報奨金の問題だろうから俺たちには関係ない戦いだな。
来るかどうかすら分からない遭遇戦を期待しながら補給物資の運搬をするくらいなら龍都に帰還して修行した方が良いな」ガイエスブルクは帰還に1票らしい。
「うーん・・・ここまで来てゴルド王国の結末を見ないで帰還するのもって感じだけど・・・
余り良い物は見れない気がするわ、とても嫌な予感しかないわ」エレンも残留には消極的だ。
「エレンの予感が正解だな。
この先ゴルド王国で起こるモンなんざ、わざわざ見に行くモンじゃないぞ。
ゴルドの王侯貴族の大量の死体しか見られんからな」
イノセントには、この先に起こる惨劇展開の予想はついている様子だ。
「なるほど・・・見て楽しいモノではありませんね。
では私達、「幻夢パーティー」は契約終了してピアツェンツェアに帰還します」
シーナが契約の不更新を決断して幻夢のピアツェンツェア王国への帰国が決定した。
「よし分かった了解だ、今までご苦労だったな。
俺はゴルド王国の結末を見届けてからピアツェンツェアに帰国するつもりだ。
向こうでまた会おう」と手を差し出すイノセントとガッシリと握手する幻夢であった。
「そう言えば・・・同じ幻夢の仲間のマッテオさんはどうしてるか知ってます?」
マッテオの事を忘れていた訳で無く聞く機会が無かっただけで、この戦争中ずっと単独行動中の仲間のマッテオの事がずっと心配だったのだ。
彼とは初陣の日以降から連絡が途絶えてしまっていた。
「ん?公爵家の倅ならちょっと前に帰国したな、なんか家の者に呼ばれたらしいぞ」
「帰国していたんですね?そうですか・・・良かったです」
マッテオが無事に帰国していた事にホッとしたシーナ。
これでいよいよ西の大陸に未練は無くなった訳だ。
「そう言えば・・・イノセントさんはピアツェンツェアの何処に住んでるのですか?」
帰ってからもイノセントの所へ押し掛ける気がマンマンのシーナ。
まだまだイノセントに聞きたい事が沢山あるのだ、良い先生を簡単に逃してなる物か!とシーナ目が光る!
「ん?俺か?俺は王都の冒険者ギルド本部の職員だぞ?だから王都のギルド本部の側に住んでいる。
王都に住んでいるから王都で編成された冒険者部隊の指揮官に選ばれたんだからな」
イノセントはピアツェンツェア王国の冒険者ギルドのハイマスター。
つまりは冒険者の総長で1番偉い人なのだ。
そして今回の冒険者への依頼人は、ヤニック・フォン・ピアツェンツェア国王だ。
「あっ!そう言えばそうですねぇ」テヘヘへと頭を掻くシーナ。
「俺の所に遊びに来るのは構わんがシーナが王都に来たらヤニックに捕まるんじゃないのか?
帰った途端にそのまま王城に連れて行かれてお姫様だろ?お前の場合は」
間違いなくそうなるとイノセントは思っている。
あまり表立って口に出さないがヤニックの家族愛は本物なのだ。
ましてや貴族の都合で苦難の人生を歩ませてしまった娘のシーナの事を気にかけてない訳が無い、何としてでも自分の庇護下に置きたいだろう。
飛んで火にいる夏の龍である。
「ああー・・・そうですねぇ、それより先にお母様に捕まりそうです」
シーナは頭を抱えてブンブンと首を左右に振る。
今更、「今日から貴女様はお姫様です!ヨロシコ!」とか言われても困るのだ。
「まぁ・・・王都に来たのを国王と王妃にバレない様に小細工してやるよ。
ただ先触れは出せよ?準備があるからな」
と笑うイノセント、この時の発言が後に意外な展開を招くのだがそれはまだ先の話しだ。
「ここからは真面目な話しだが・・・本国に帰還するなら変な寄り道は無しだ。
単独で中途半端に関わって良い事じゃないからな、真っ直ぐに帰れよ?
今からゴルドで起る事はお前達とは無関係だ」と真剣な顔で言われた幻夢。
「そうですね・・・これからがこの国の人達にとっての本当の地獄でしょう」
田畑の70%が焼失した西の大陸で戦後確実に起こるだろう大飢饉にエレンも暗い表情だ。
まぁ、その辺りは国際支援で乗り切る計画が裏で進行しているので結論から言うと中央大陸からの食糧支援で西の大陸で飢饉はほとんど発生しないのだが。
その為の輸送経路を確保する為に沿岸部の占領をしまくったヤニック国王。
その見返りに復興後の航路権益を貰う算段なのだ。
《これからたくさんの人が死ぬんだろうな》とシーナは心の中で呟いた。
「王侯貴族共がくたばるのは自業自得だけど、他の人間はこの国に生まれたってだけの話しなのにな」
ガイエスブルクも人間の業の深さに珍しく悲痛な思いが顔に出ていた。
「その事が解ってりゃ良いんだよ。
自分達が恵まれた環境なのが分かっていればその恵まれた環境を子供達に残して行くのが今を生きてる俺達の役割だからな」イノセントの言葉に黙って頷く幻夢だった。
その日を生きる代表のイノセントが育児について言うと微妙な感じがするが、実はかなりの子煩悩だったイノセント、これから産まれるめっちゃ癖が強い6人の息子達を立派に育て上げる。
またすぐ王都で会えるのでイノセントとはアッサリと別れて、その後解約の手続きを窓口で済ませて帰還の為の船を手配していたシーナはフッと一つの事を思い出した。
それは海龍王アメリアの事だ。
あのド変態息子のせいで心労から寝込んでいると聞かせられたので心配になって来たシーナ。
御見舞い行こうかどうしようか悩んで・・・やっぱり心配だったので天舞龍リールに思念を送って見る事にした。
シーナとリールの間には直通念話回線が繋がっているので最近暇な時は色々な長話をしている。
この辺りは話し好きな女神ハルモニアの名残りである。
この2人の雑談ネットワークは何か知らん内に世界中の話し好きな龍種やどっかのエルフやどっかの魔王にも広がっていく。
ジャコブ事件の時にも心配して直ぐに連絡を取ろうとしたのだが、大混乱リールの方の問題で繋がらなかったが、リールもそろそろ落ち着いた頃だろうし天空城にも近いここならと集中する・・・
するとリールとの念話がカチリと繋がった。
《おお!シーナじゃん、どしたの?》すると、やや元気の無いリールの声が聞こえて来た。
「リール様お久しぶり・・・では無いですね、あの・・・大丈夫でしたか?」
《あははは・・・私とした事が大丈夫じゃ無かったりするんだよね・・・
毎晩あの変態の裸踊りの悪夢を見ちゃって、ずっと寝不足なんだ》
「あの変人さん・・・は・・・裸踊りなんてしたんですか?」ドン引きするシーナ。
《あの・・・ブラブラ・・・ああーーーー!!》思い切りトラウマになっているリール。
《そうかぁ、アメリア様の前にリール様のお見舞いにも行かないとダメですねぇ》とシーナは思って。
「天空城までお見舞いに行きたいのですが・・・天空城ってどうやって行けばいいのですか?」と言ったらリールは急に元気になって「え?シーナが天空城に来るの?エレンとガイエスブルクも?うん!良いよ良いよおいでよ!私が迎えに行くよ!今どこ?」と食い付いて来た、余程精神的に参っていたのだろう。
「まだブザンソン地域のヴィグル軍の冒険者の陣屋にいます・・・
けどお見舞いに行くのにお迎えさせるのはちょっと・・・」
それではお見舞いにならないのでは?と思うシーナ。
「大丈夫だよ!私なら30分で行けるから良い気分転換になるし散歩がてらに行くよー、
今からでも大丈夫なの?」
帰還の手続きは終わったし荷物も持ってるし「大丈夫です」と答えるシーナ。
すると「了解!」と言って思念は途切れた。
これからリールが迎えに来ると知るとエレンとガイエスブルクの2人は、「随分いきなりだね」とエレンは笑ってるが初めての天空城にワクワクしてる様子だ。
「え?!リールお姉さんにまた乗るの?!」
前に極音速リール号での強制宇宙旅行を思い出してガイエスブルクは顔が引き攣る。
余談だが、前にリールに連れられて大気圏外まで飛んだシーナだったが、怖がるどころかめちゃくちゃ楽しかったのだ。女の方が絶叫マシンに強いと言うのは本当だった。
さすがに冒険者の陣屋に直接にリールが来ると不味いので軍の宿営地より5kmほど移動して人目の無い場所での合流に決まった。
待ち合わせの大岩に着くと5分くらいで直ぐにリールが飛んで来た。
初めて龍化したリールを日の光の下で間近でじっくりと見たシーナは、「綺麗!!リール様は凄い綺麗ですね!」と大はしゃぎだ。
前の大気圏突破時は、ほとんど背中しか見れなかったのだ。
出会い頭にいきなり綺麗とか褒められたリールは・・・めっちゃデレた!
「「そっそう?そうかなぁ?えへへへ、ありがとシーナ」」
「はい!青い鱗は宝石の様で、並び方も素晴らしいです!
全体的なスタイルは抜群に美しいですし、可愛いお顔とのバランスも良く・・・」
「「はいはい!分かったよ!恥ずかしいから!その辺で!」」
シーナのベタ褒めに照れたリールが必死にシーナを止める。
ちなみにシーナは本気でリールを誉めている。
リールの天龍としての造形美が余りにも素晴らしく美しいのだ。
造形にこだわる地龍らしいシーナであった、ほっといたら1時間はリールの美しさを語り尽くすだろう。
エレンは既に2時間に渡って白銀龍の素晴らしさを語り尽くされて恥ずかしくて撃沈している。
幼少期から天龍王アメデの像が大好きで、最近では海龍王アメリアの容姿を一瞬で「人の姿でも凄い美人さん」と見抜いていた。シーナは龍種マニアなのだ。
地龍王クライルスハイムも龍種マニアで天龍王アメデの容姿をシーナと語り合うと何時間でも話し込み「王よその辺で」と側近に怒られる迄話し込むのだ。
しかしシーナが地龍王クライルスハイムの素晴らしさを語り出すと恥ずかしくてシーナを止めてシーナが不貞腐れる迄が最近の流れなのだ。
少し変わった趣味の父娘なのだ。
と言うかシーナの龍種マニアはクライルスハイムの加護の影響?
ちなみに、シーナから見て龍化したガイエスブルクは「可愛いの極地」だそうで、可愛いと言われるのが少し悔しいガイエスブルクは余りシーナの前で龍化はしない。
「地龍君!龍化して下さい!久しぶりに可愛いお姿が見たいです!」
「いいっての・・・」
「龍化して下さい!龍化して下さい!龍化して下さい!」
「やめてくれっての!」
カッコイイと言われれば直ぐに龍化してやるのだが可愛いと言われるので頑なに龍化しないガイエスブルク、そりゃ男だからね!
そしてシーナ的NO.1に美しいのはエレンなのだ。
「うふふふふふ・・・素敵・・・」
エレンを意味も無く龍化させて頬を紅潮させて何かハアハアしているシーナ。
「「最近のシーナ怖いわよ??」」
ユグドラシルと融合して存在が安定したシーナは性格も欲望も人間っぽく安定したのか好きな物に対する遠慮が無くなっている。
『ハアハアするのは、はしたないから止めなさい!』
欲望丸出しのシーナに流石に注意する女神ハルモニア。
「嫌です」
本体女神ハルモニアに怒られても言う事を聞かないシーナに本体女神も困っているのだ。
ちなみに女神ハルモニアに龍種マニアの気は特に無い常識神な女神なのだ。
『どうしてこんな子になったのかしら?』
自分と全く違う性格になって行く元分身体に困惑を隠せない女神ハルモニア。
最早似ているのは話し方だけなのだ。
「こんな子とか失礼です!」
それは色々な者達が寄ってたかってシーナやユグドラシルに加護やら何やらを与えたせいだと思われる。
とは言え1番シーナの性格に影響を与えているのは母親のファニーの血なのだ。
と言うか、ファニーとシーナの性格や考え方はクリソツなのだ。
結論、王妃ファニーが全部悪い。
こんな感じに最近は龍化するとシーナの理性が飛ぶのでエレンもシーナの前では余り龍化しなくなった。
しかし子供特有の理由も無く寂しがったり落ち込んでたりしてる時は龍化してシーナを胸に抱っこして一緒に寝たりしている。
優しいお姉さんなのだ。
話しを戻して、「「それじゃあ行こうか」」とリールが3人を抱っこすると・・・
「おっお姉さん俺!背中に乗りますから、」とガイエスブルクが慌ててリールの背中に移動する、どうやら顔を胸に押し付けられて恥ずかしかった様子だ。
龍の姿だから鱗とか有って胸とか分からないんじゃね?とも思うが龍同士なら分かるらしい。
「「そう?ならしっかりと掴まっていてね」」
ガイエスブルクの行動はリール的に不思議なのだ。
思春期間近の男の子には色々と有るのだよ。
それが思春期になると直ぐに「イヒャッホーーーイ」と喜ぶ様になるのだから度し難いのだ。
ガイエスブルクが背中にしがみ付いたのを確認するとフワリとリールは浮かび上がってゆっくりと前進を始めた。
「今日はこの前とはスピードが違いますね?」とシーナが言うと「「今日は3人抱えているからね、スピードを上げると本当に落っことしちゃうよ」」と笑うリール。
「わー♪わー♪」エレンはリール号での初飛行に大喜びだ。
自分でもある程度なら飛べるがあんまり上手く飛べないので天龍のスムーズな飛翔に興奮している。
ガイエスブルクは極音速大気圏外突破旅行を思い出したのか無我の境地でリールの背中にしがみついてる。
こうしてシーナの一行はリール号に乗り一路天空城目指して飛んで行くのだった。
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それから30分後。
シーナ達は天舞龍リールとゆっくりとした優雅な空の旅を楽しんでいた。
今日は極超音速飛行は無いと解ったガイエスブルクの精神は復活してのんびりリールの背中で景色を楽しんでいた。
そしていつの間にかリールの周囲には飛竜と雷竜が沢山飛んでいる。
この竜達が未来の天龍になるのだ。
ドライアドの森で岩竜と樹竜にシーナ達が懐かれたのと同じ理由で、アイドルのリールと一緒に空を飛んでいる。
いつもリールは物凄いスピードで飛び去るので今回は滅多にないリールと一緒の遊覧飛行の機会に遭遇した飛竜と雷竜達はラッキーだ。
「ピィーヒョロロロ」」「ピピッピィー」「クールルル」「ピーピーヒョロロロ」とリールと一緒に飛べ、みんなご機嫌で可愛い声で歌を歌っている。
「わっ♪わっ♪可愛いです!歌を歌ってますよぉ!」シーナ大興奮!
「「そうだねー、この子達は歌でコミニケーションを取るからねー、ラーラララー♪ララララー♪ランラー♪」」
とリールもサービスで歌を歌う、天を抜けて行く様な美しい声だ。
周りの竜もシーナ達もリールの歌をうっとりと聞き入る。
しかしここでリールの強力な一撃が入る!
「「そう言えばシーナ達って歌を歌わないの?」」「「「ぐふう!!」」」
シーナ達は精神的な大ダメージを受けた!
「「えっ?地龍って結構歌うの好きでしょ?」」え?どした?と言った感じのリール。
リールが幼龍の頃は父の天龍王アメデや地龍王クライルスハイムに歌を教えて貰っていた。
これは大変だ!妙な誤解を招く前に地龍の歌について解説しておこう!
地龍は歌を頻繁に歌います、そしてめっちゃ上手いです。
天龍は讃美歌での合唱的な歌声なら地龍はオペラ的な歌声と言った違いと思ってくれて良いです。
ただ・・・現実世界でも歌が上手い人とあまり上手くない人がいますよね?
そしてシーナ達3人は・・・うん・・・別に歌えなくても死にゃあせんからね!
つまり歌が凄く下手な人達なのだ。
最近もアリーセの学校で3人一緒にヘスティア先生の歌の授業を受けて大恥かいたことも有った・・・
シーナ達の歌を聴いたアリーセの感想が「なんか!雄叫び見たいです!」だったのだ。
転生してもその毒舌っぷりは健在なのだ。
「「気合い充分と言った感じで先生はとても良かったと思います!」」
ヘスティア先生の必死のフォローが虚しかった・・・いや気合い充分って。
『うーん?おかしいですねぇ・・・シーナは私の分身体なのだから・・・』
天界一の歌姫と言われている調和の女神ハルモニア、歌は呼吸をするのと同じ様なモノなのだ。
ハルモニアがシーナの歌が下手な理由をかなり真剣に考えていたら・・・
「うるさいですよ?!人には得手不得手が有るんです!」シーナがキレた。
確かに「調和」の女神ハルモニアの分身体だったシーナは歌が上手いはずなのだが・・・
実際に幻神時代には歌を歌って消滅しそうなユグドラシルを励ましていたのだ。
《ごめんなさいシーナ・・・多分私のせいですね》
ぶっちゃけると歌がド下手なユグドラシルと融合したので「歌下手」のデバフを思い切り受けて歌が下手になってしまったシーナなのだ。
幼少期に天龍王アメデ像を磨きながら歌っていたユグドラシルだったがメチャクチャ下手っぴで、それを逆に微笑ましく聴いていた天龍王アメデ。
「「毎回違うフレーズも聴き慣れれば味が出るぞ?」」天龍王アメデ談である。
エレンとガイエスブルクは単純に今まで歌をほとんど歌う機会が無かっただけで、その後ヘスティア先生と一緒に練習したら普通に上手くなってシーナがショックを受ける事になる。
ちなみにヘスティア先生の歌はメチャクチャ可愛い、「歌のお姉さん」の様な歌声だった。
ヘスティア先生と関係ない話しだが女神ヘスティアは炉(祭壇)の火を司る女神だがメッチャ「ホゲェ~」とした穏和な天然女神様なのだ。
天然な所もヘスティア先生と被るが多分別の存在だろう。
『やっぱりヘスティア先生はヘスティアちゃんですよね?!』
絶対にヘスティア先生は女神ヘスティアの分身体だと思っている女神ハルモニア。
「「うふふふふ、秘密ですよハルモニアちゃん」」
女神ハルモニアからのツッコミに対してクスクスと笑うヘスティア先生。
『思い切り「ハルモニアちゃん」って言ってるじゃないですかぁ?!』
ヘスティア先生は女神ヘスティアの分身体・・・ならどんなに良かったか?
実はヘスティア先生には下手をすれば宇宙間戦争が勃発しても全然不思議でなかったヤベェえ事情が有ったのだ。
ヘスティア先生の正体を女神ハルモニアが知ると多分・・・ショックで気を失う。
知らぬが仏なのだ、神様なのに仏様とは?
もうぶっちゃけてしまうと岩琰龍ヘスティア先生は「女神ヘスティアの炉(祭壇)から偶然に召喚された別の宇宙からやって来た完全無欠な超高位存在の地龍」である。
なんかフワッとして良く分からないので詳しく説明しましょう。
当時まだまだ見習い女神だったヘスティアが自分の炉(祭壇)で危なかっしく何かの儀式の練習をしていた時の事。
『あ・・・やってしまいましたわ、失敗です』
ガシィイイイイインンン!!!バリバリバリバリバリバリ!ドドドドオオオンン!!!
時空が裂けて星々を揺るがすが如くの轟音が天界に鳴り響く!!!
『わぁ?わたくしったら立派な龍さんを召喚してしまいましたわ?』
お約束通りに見事儀式に失敗して別の宇宙からとんでもない超高位存在を召喚してしまった女神ヘスティア。
もし女神アテネがこの場に居たら・・・『やってしまいました・・・ではありませんわ!!ヘスティアちゃんのばかぁ!!』と泣きながら卒倒する事間違い無し!の凄え大事になってしまった「超絶大大大失敗」なのだが、幸いな事に周囲には誰も居なかった。
そんな大失敗をやらかした女神ヘスティアだが生来の天然を発揮して『わぁ?大きいですわ~』とか言いながらホゲェ~と龍を見ていたら・・・
「「あらあら?あらまぁ・・・ここは何処なのでしょうか?いきなり呼ばれて先生もビックリです!」」
普通ならノーアポ代償無しで別の宇宙から超高位存在の召喚するなど無礼千万!!!
宇宙間戦争不可避の激怒案件なのだが、こちらの龍も生来の天然を全開してモノ珍しそうに周囲をキョロキョロしている。
まあ、分かり易く現状を説明すると、「アメリカの大統領をノーアポで俺の魔法で拉致して自宅に召喚しちゃいましたぁ!!」ドヤァ!
と思ってくれて良い・・・・・・・・そりゃ向こうから激怒されるわ?!
『はじめまして龍さん、わたくしはヘスティアと申します。
よろしければ龍さんのお名前を教えて頂けましたら幸いです。
後、わたくしの失敗で勝手にお呼び出ししてしまい申し訳ありませんでした』
一応は自分がヤベェ事をやらかした自覚は有る女神ヘスティア。
真なる天然は直ぐに過ちを認めて謝る事が出来るのだ。
「「先生はビックリしましたが失敗したなら仕方ありませんね!
お名前ですか?そうですねぇ・・・特にこれと言った名前は・・・
でも私は先生なので皆からは「先生」と呼ばれております」」
どうやら元の宇宙では先生をしていた様子の龍。
『わぁ!先生様でしたのね?・・・でも、お名前が無いのは寂しいですわ。
そうだ!勝手に呼び出した事へのお詫びではありませんが「わたくしの名前」で良ければお使い下さいませ』
うおおい?!女神が自分の名前を他の超高位存在に預けるのは相手に「真名」を掴まれて支配される危険が?!
「「まぁ?!「ヘスティアのお名前」を私に下さるのですか?
大変有り難いお話で先生もビックリです!」」
・・・どうやら真なる天然にその危険は無い様子である。
そして龍に名前が無いのは、実は本当の名前は有ったのだが、他の者が畏れ多くて安易に名前を呼べなかったからで、気が遠くなる時間の流れの中で龍も自分の真名を忘れたのだ。
この時のヘスティア先生は「目の前の可愛らしい子がなんか名前をくれたから先生は貰いました」だけだったらしい・・・先生として子供からの贈り物を断る事は出来ないのだ。
宇宙を超えた「真なる天然同士」の邂逅は更なる科学反応を引き起こす。
「「それではこれより私は「ヘスティア先生」と名乗らせて頂きます!」」
『お気に召しました様子で何よりですわ・・・あっ!そうですわ!
とある世界でわたくしのお友達のハルモニアちゃんが大変苦労している様子なのです。
ヘスティア先生にその世界で先生としてお友達を助けて頂きたいのですわ』
なんの脈絡も無い普通ならとても馴れ馴れしい無礼な頼み事なのだが相手も真なる天然・・・
真なる天然は「お話すれば誰でも直ぐにお友達」になれるのだ
「「新しい勤務先ですね?そして「ハルモニアちゃんを助ける」んですね。
分かりました!先生にお任せ下さい」」と快諾してしまった・・・
『お願い致しますわヘスティア先生。
あ・・・でも儀式に失敗した事を知られると恥ずかしいのでハルモニアちゃんには内緒で・・・」
つーか、こんなヤベェ案件を全宇宙に公表出来る訳が無いのである。
儀式に失敗した事が問題ではなく・・・・・・・・・・もういいか。
この事を知るのは宇宙においても女神ヘスティアとヘスティア先生だけなのだ。
そして天然同士の堅い約束を守り続けてその内、女神ヘスティアに無理矢理召喚された事実をアッサリ忘れるヘスティア先生。
真なる天然の本質は「都合の悪い事は直ぐに忘れる」事に有るのだ。
そしてこの時のヘスティア先生は「ヘスティアちゃんに行けと言われたので先生は来ました!」だけだったらしい・・・
真なる天然の本質は「お願いされると断れない」事に有るのだ。
そして本当に魔法世界にやって来たヘスティア先生。
そして・・・
「「そ・・・そうなんですね?我はクライルスハイムです。
よ・・・よろしくお願いします??ヘスティア先生」」
まだ地龍王に即位したばかりの、まだ幼く初々しい子供だったクライルスハイムはヘスティア先生の登場に大いに困惑した。
それもそのはずで、父ベルリンと同格かそれ以上の明らかに自分より経験豊富そうで力の強い地龍が「「この世界に先生として赴任して来ました!」」と言ってやって来たのだから・・・
自分よりヘスティア先生が地龍王になった方が良いのでは?とクライルスハイムがヘスティア先生に提案した所・・・
「「先生は先生なのでお断り致します」」と、にべも無く断られた。
何故、高位神に匹敵する力を持つヘスティア先生が先生をやっているか?についても凄く昔の話しでヘスティア先生も覚えていないらしい。
ただ昔から「先生って、本当に天然ですねぇ」と言われた事は覚えているとの事。
真なる天然は「天然と呼ばれるのは褒め言葉」と勘違いしているのだ。
「「で・・・ではヘスティア先生には若い龍種の教育をお願いしたいです」」
良く分からないが先生として働いて貰う事にしたクライルスハイム
「「うふふふ、では先にクライルスハイム君から授業を始めなきゃダメですね」」
「「あ・・・そうですね、よろしくお願いしますヘスティア先生。
それから友人のアメデとアメリアも一緒に授業を受けてもよろしいですか?」」
「「全員連れて来て大丈夫です!先生に任せて下さい!」」
何とビックリ、ヘスティア先生は現在の三龍王や地琰龍ノイミュンスター、天蒼龍シーナを含めた古代龍種達の先生だったのだ。
天蒼龍シーナとは天舞龍リールのお母ちゃんでシーナの名付けの由来にもなっている天龍だ、現在は療養中で天空城にて眠っている。
つまり魔法世界においての本当の最高位存在はヘスティア先生だと言っても良いのだが、ヘスティア先生には全く自覚は無い。
真なる天然には権力など必要無いのだ。
ちなみに「岩琰龍」の名前は、「「我が先生にあだ名を付けてやるよ!」」と、当時暴れん坊やんちゃ坊主だった地琰龍ノイミュンスターが考えたらしい。
自分のあだ名から一文字取っただけの子供特有の適当に付けたあだ名で特に意味は無い・・・・・・・え?!無いの?!
いや、高位存在の渾名(この場合は蔑称では無く愛称)とは魔法儀式的には結構意味が有るのだが、ヘスティア先生クラスの龍種になると、ほぼあらゆる魔法儀式を省略する事が出来るので意味が無いのだ。
「「岩琰龍ですね?分かりました!これから先生は岩琰龍ヘスティア先生と名乗りますね!
素敵なお名前ありがとうございますノイミュンスター君」」
「「えへへへへ、気に入ってくれて良かったぜ!」」
そしてやっぱり岩琰龍を受け入れるヘスティア先生。
ちなみに「地琰龍」のあだ名は海龍王アメリアが付けたあだ名だったりする。
何だかんだと仲が良い古代龍達なのだ。
「「なあ~?早く授業始めようぜ~?」
そして当時はノイミュンスターに負けず劣らず態度も口が悪かったクソガキの天龍王アメデ。
「「先生!別の宇宙のお話をもっと聞きたいです!」」
ピッと手を挙げる海龍王アメリア。
「「え~?魔法陣のお話の方が良いなぁー」」アメリアと意見が合わない天蒼龍シーナ。
「「お前達静かにしろっての!」」クラス委員長の地龍王クライルスハイム。
「「はいはい!先生は了解しましたよ。
先ず別宇宙の産業のお話から転移魔法陣のお話をしましょうね!」」
ワイワイガヤガヤと騒いで纏まらない生徒達に苦労するヘスティア先生。
幼い頃の偉い古代龍達は総じてクソガキ共だったのだ。
それからヘスティア先生によって魔法世界の幼いクソガキ龍種共は、
安定した「皆んなで立派な龍になりましょう」教育を受ける事が出来て、結果的に世界は「ある程度」は安定して女神ヘスティアの望み通り女神ハルモニアの大きな力となったのだった。
ヘスティア先生は先生として超優秀な先生なのだ。
そして・・・
『もう・・・本当の事を教えて下さいよ?ヘスティア先生~』
「「うふふふ、内緒ですよ」」食い下がる女神ハルモニアの頭を撫で撫でするヘスティア先生。
『うー?』完全に子供扱いの女神ハルモニア。
実際に推定1000万年以上の時を生きるヘスティア先生にとって魔法世界の主神である女神ハルモニアでもまだまた幼く可愛い子供なのだ。
ちなみにヘスティア先生の真名は「オグドアドさん」と言う・・・オグドアド・・・オグドアド創世8神の母神?!?!
・・・・・・・・・想像以上に凄い神様だったぁーーー?!?!
そして案の定その事を完璧に忘れているヘスティア先生だった。
ヘスティア先生の正体を知ってスッキリした所で話しを本編の歌のお話に戻しましょう。
そんな訳で(どんな訳?)魔法世界の解説者の主要登場人物?で歌が上手い順番は・・・
調和の女神ハルモニア→黒龍王ラザフォード(そりゃ当然だね)→ハイエルフのイリス&天舞龍リール→風竜シルフィーナ→天龍王アメデ→地龍王クライルスハイム→魔王バルドル→覚醒魔王マクシム→樹龍アリーセ→天朱龍ニーム、この辺りがめっちゃ歌が上手い組になって。
その他、歌が普通の人達が団子状態で続き・・・それから下手っぴ組になって。
海龍王アメリア(隠れ音痴)→ラーナ姫(エリカ)、→海湊龍クローディア(何となく分かる)「超えられない壁」があって、シーナ(ユグドラシル)になるのかな?
尚、歌を全く歌った事がないブリックリンと地琰龍ノイミュンスターは除外されてます。
そして意外な事に歌うのが凄え上手いのは覚醒魔王のマクシム君だったりします。
「凄え!」マクシム君の歌に対してメッチャ拍手をしている四天王の筆頭。
「ウッソでしょう?!アンタ何でそんなに上手いの?!」
マクシム君の歌を聴き本当に唖然としている四天王の3番手。
ラザフォードのファンのマクシム君がラザフォードが作曲したロックの楽曲を「毎年恒例、隠し芸大会」でノリノリで歌ったらめっちゃ上手くてビックリした真魔族の四天王達。
「凄すぎて笑うわー、お前って歌う時って声が高いのな?」
普段、地を揺るがす如くの低音で喋るマクシム君が歌を歌うと3オクターブは高音になって大笑いの四天王の2番手。
「いや・・・逆にお前ら、魔法詠唱って「歌を歌う」事だろ?
歌が下手って事はな?魔法詠唱が下手って事だぞ?
魔道士として歌の練習を毎日ちゃんとしてんのか?
特に魔導士のヴァシリーサは、ダンスとかも少しはバルドルに教えて貰えよ?」
歌に加えて「踊り」も魔導士にとって必須の技能になる。
例えば「真名の契約」とかの高度な魔法的儀式には契約者同士の歌と踊りが必ず必要となるからだね。
そう言えば、とある魔導士エルフも歌はアホ見たいに上手いしダンスに関しても「股関節破壊の舞踏姫」とか呼ばれるマジ鬼畜だったなぁ・・・
「「「すみませんでしたーーー!!!」」」
めっちゃ魔法理論的な理由に思わず謝る歌やダンスの上手さが普通組みの真魔族の四天王だった。
一見すると馬鹿っぽく見えるマクシム君だが、勉強熱心で常に日々の鍛錬を欠かさない努力家なのだ。
世界唯一の覚醒魔王とは伊達ではないのだ。
「うむヴァシリーサよ・・・これから儂と歌とダンスの特訓じゃな」
「いやん!バルドルってスパルタなんだもん!」
鍛錬不足の四天王のヴァシリーサを〆る、如何にも歌が上手そうな魔道士の魔王バルドルは、やっぱり歌がメッチャ上手い。
そしてダンスもメッチャ上手いのだ。
昔、ほんの余興でイリスとラサフォードとバルドルとの3人でラザフォードの歌を合唱しながらダンスをしたら魔法的なケミストリー(超科学現象)を引き起こして「千雷」の超常現象が世界中で発生してしまい周辺国家をドン引きさせた。
以来、この3人での合唱とダンスは「超魔法兵器」として国際的に禁止になっている。
この様に歌が下手っぴとは魔道士としてシーナはヤバいハンデを背負っているのだ。
「こんなモノをわざわざ書かなくていいですよ!!大きなお世話です!
ユグドラシルと歌の練習しているから大丈夫ですよ!ほっといて下さい!」
まぁ、元々は歌が上手かったシーナなので、その内何とかなるのだろう。
今はデバフが掛かっているだけだからね。
「「あっ・・・あははは、そっ・・・そうなんだ」」苦笑いのリール。
魔道士と歌とダンスの密接な関係の話しをしていたら遠くに天空城が見えて来た。
いきなりだが、天龍の「天空城」は○ピュタの様に空中にある訳では無い。
天龍王からの名前を拝借してアメデ山脈と呼ばれている西の大陸中央に連なる大連峰の中でも世界最高峰の山岳グリース、その標高9200mの頂上付近にある天龍最大規模の軍事拠点である巨大城塞と複合防御施設群を総称して天空城と言われている。
天龍は世界各地に軍事拠点を持ち世界の空を監視している、天空城はその総司令本部なのだ。
なので当然、天空城は完全な戦城で武骨そのものだ。
芸術的な要素皆無の実用性重視で鋼鉄製の城の見た目のファンタジー感はゼロ
ラ○ュタ的な物を想像した人はすみません。
この城は地龍の龍都と違い生活するのには適してないので事務職の天龍達や非番の龍戦士達はグリース山の麓の都市で生活している。
ここに勤務する天龍達はそこから毎朝出勤しているのだ。
その都市もピアツェンツェア王都の5倍はある大都市である。
こんなに高い所に拠点を作った理由は3つある。
防御に優れて通信がしやすく監視も楽だからと言う夢も浪漫も無い軍事的理由からだ。
後は魔導砲の打ち下ろしにも有効的だ。
なのでリールは最初はこんな何も無くてつまらない天空城より山の麓の都市に有る自分ん家に連れて行こうとしてたのだが父親の天龍王アメデがシーナに会いたいと言い出したので仕方なしに天空城へ向かっているのだ。
本当は外部の地龍や海龍は書類申請して許可が出ないと入れないのだが、天龍王アメデが既に入城の許可を出しているのでアッサリと中に入れた。
やはりここでも書類は大事だ。
中に入るとこれぞ軍事施設!的な印象で余計な物は何一つとして無い。
「ふわ~?何もありませんねぇ?」とシーナが呟くと案内してくれていた天龍の龍戦士が「「余計な調度品など置くとそこに侵入者が隠れ潜んでしまいますからねぇ」」と至極真っ当な返事が帰って来た。
ノイミュンスターの影響で重工学が好きなシーナとガイエスブルクとエレンは等間隔に配置されてる大型魔導砲に興味津々だ、目が輝いてる。
今は城内に格納されているが戦闘時は城外にせり出す仕組みになっている。
「これって500mm口径?」
「多分、550mm口径じゃないかな?」
「ここから発射すれば射程70kmは行けちゃいますねぇ」
3人でワイワイと騒いでいたら・・・
「「王の許可が出れば後で近くで見学します?」」と、天龍の龍戦士が気を使ってくれた。
すると「「はい、お願いします!」」と、3人は超食いついた!!
そしてシーナは天龍の龍戦士が装備すると思われるロケットブースター付きの装甲甲冑をジィーと見ている、君そう言うの好きそうだもんね!
「「あ~・・・・それ、ネタ装備だよ?イリスがここで開発してたんだけど危なくて使い物にならなくてね・・・オブジェになっているだけよ」」
「ネタ装備・・・ところでイリスさんって誰ですか?」
どうやら地龍になる過程でシーナはイリスの事を忘れたらしい。
《イリス・・・イリス・・・》
ユグドラシルも地龍への存在再構築の際に昔の記憶をかなり失っている。
とても大切な名前の気がして一生懸命にイリスの事を思い出そうとしている。
「「その内、直ぐ会えるから今は気にしなくて良いよ」」
シーナとユグドラシルがイリスに関する記憶を喪失している事が分かったリールは3人には新しい関係を構築して貰おうと誤魔化す。
「イリスってハイエルフのイリスですか?」
南の大陸産まれのエレンは一応、母リリーと一緒にイリスと会った事が有る。
「「そうだよ~、そのイリスだよ」」
「エレンお姉さん、エルフ女王の事を知っているの?」
「そうね?凄くお淑やかな女性だったわ」
お淑やか??そうか・・・アヤツめ、エレンの前だと思い切り猫を被っておったのか・・・
怪我を治してシーナ達の前に爆裂エルフのイリスが突撃して来るまで後5年・・・
その時になってエレンの中に有った、「お淑やかなイリス」の印象は木っ端微塵に消し飛ぶ事になるのだ。
「「お父様が待ってるからそろそろいいかな?」」
そう笑いながらリールはヒュンと人化した、この龍化と人化の切り替えの早さも個人の能力に影響される。
ガイエスブルクやエレンは龍→人間、人間→龍に変身をするのに必要な時間は5秒程度と、かなり変身能力が高い。
シーナは半人なので特殊な魔法陣を使用して長い儀式を行わないと龍化をする事は出来ない。
そして魔力消費が莫大な為に龍化出来る時間も2時間程度で、しかもシーナの特殊スキルも制限を受けメリットが何も無いのでシーナが龍化する事は無い。
赤龍シーナが龍化するとノイミュンスターの縮小版の様な見た目になる。
それに変身時に空間魔法を同時に発動しないと人化したら素っ裸になってしまうのだ。
シーナは空間魔法が苦手で即時換装が出来ないので素っ裸不可避で恥ずかしいのだ。
なので通常の衣服の交換や武器の換装は手動で行わっている。
今日のリールの格好は、いつものメイド姿では無く、シーナから思念波を受けた時に家で読書しながら紅茶を飲んでたらしいのでシンプルな青いワンピース姿だ。
「ここは何も無いけどお父様の居住地の王宮は普通だから安心してね、
あっ・・・でも少しビックリするかも」
「ビックリですか?」シーナも不思議そうだ。
「「どうぞ」」と案内の天龍さんと王の居住区に入って本当にビックリした3人、
本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本
でいっぱいだ!
「ふあー???凄いですねぇー」その本の量に圧倒されるシーナ。
高さ30m幅15m長さ500mほどの通路の両脇に本が所狭しとズラーと並んでいる。
「すっげーー!これマジで何冊の本があるの?」興味深く周囲を見回すガイエスブルク。
「しかもどれも凄い貴重な本ばかりだわ」多少、本の知識があるエレンの目が輝いている。
「それがここにある本は一部分なんだよね、今お父様がいる書斎にはこれの5倍はあるよ」
と本棚の本を撫でるリール、父娘で本が大好きなのだ。
「5倍・・・」
おおよそ世界にある過去1500年の貴重な本は大体ここにあると言う。
総数は不明だが2000万冊は楽に越えてるとの事。
天龍王とリールもまだ読んでない本もかなり多いらしく現在新しく出版されている本もここに随時収納されて行っているらしい。
この世界の本の歴史資料館と言っても良い。
「お父様はここに居る時は本を読む為に人化しているから緊張しなくて良いよ」
天龍王アメデも全ての本が読破していないと言うから本の力とは凄まじいモノである。
本とはその世界の文化と言っても差し支え無い。
本を眺めながら一行は奥へ進んで行く。
本の通路を抜けると書斎の名をした巨大図書館に出た。
「これは・・・凄いですね!」
左に向かって螺旋状になってる通路が下へ降りて行き、その右側は本棚になっていた、
歩きながら本を探せる構造だ「ほへー」と本を眺めながら通路を進むと長さ2mの人間用の机と椅子がそれぞれ100セットほど置かれてるスペースがあり10名ほどの人化している天龍達が思い思いの本を読んでいた。
「ここは皆んなにも開放してるからね。本の持ち出しはお父様の許可が要るけど」
リールに気づいた天龍達が軽く会釈する、図書館で大袈裟な礼などは他の人達の迷惑になるのでやめましょう。
ちなみに龍サイズの本が世界に存在しないのは「単純に紙の量が多くなる」からだ。
人化すれば紙の量が100分の1にまで減るので無理に龍サイズの本を作るメリットが無い。
同じ理由で書類関係も全て人間サイズに統一されている。
身体が大きいのも色々なデメリットが有るのだ。
螺旋状の本の通路も終わり、今度はまた直接の通路になって直ぐに飾りっ気のない普通の扉があり両脇に警備の龍戦士が2人立っていた。
「着いたよ」と言いながらリールが警備の龍戦士に手を上げると1人が扉を開けてくれた。
龍戦士に頭を下げて中に入ると、少し大きめの書斎になっており正面のこれまた普通の書斎机に1人の金髪碧眼の青年が座っていた。
リールに似た金髪で中性的な美しい顔立ちの男性、この男性こそ天龍王アメデである。
纏う気配は穏やかそのもの・・・だが奥の深さは地龍王クライルスハイムと同様に計り知れない・・・3人はリールの横に並んで背筋を伸ばした。
「お父様、地龍王クライルスハイム様のご息女のシーナ様と臣下のエレン殿、ガイエスブルク殿をお連れしました」そう言ってリールがシーナに手を差し伸べたので。
「天龍王アメデ様、御初に御目にかかります、地龍王クライルスハイムの娘、シーナと申します」
胸に手をやり目を瞑り斜め45度に頭を下げると両脇のエレンとガイエスブルクは無言でシーナと同様の礼を取る。
そう言えば表向きにはエレンとガイエスブルクはシーナの配下だったね。
するとアメデはゆっくりと立ち上がり、
「我は天龍王アメデと言う、地龍王クライルスハイムのご息女のシーナにエレンとガイエスブルクよ、良く天空城に来てくれた」
天龍王アメデもシーナ同様の礼をする。
龍種同士の礼は見苦しくなければ良いのでこれで充分なのだ。
口上とかも必要無いと言うかそんな器用なモノは龍種には無い。
「まあ座って楽にしなさい」アメデが指し示すソファに座る一同。
臣下が後ろに立つのは護衛の時のみだ。
ここでエレンやガイエスブルクが遠慮して後ろに立つと、「お前の事を信用していない」と取られるとんでもない非礼になるので普通に同席する。
全員が席に座るとアメデがシーナに「やっと直接会う事が出来たなシーナよ、私の事は覚えておるか?」と聞いて来たので。
「あっはい!子供の頃に毎日教会でお話ししてましたね」と笑顔になるシーナ。
子供の頃に「天龍教」教会でシーナは天龍王アメデの像を磨きながらずっとアメデに話しかけていたのだ。
その時だけはユグドラシルではなくシーナ本人が話しかけていたのだ。
つまりその時点で天龍王アメデはシーナ=ユグドラシルだと知っていたのだが地龍王クライルスハイムにバレると天龍王が怒られそうなのでエレンとガイエスブルクはスルーする事にした。
実際には天龍王アメデは地龍王と海龍王と天界にはユグドラシルの事をちゃんと報告していたのだが、龍王達にも色々とあるのだろう。
シーナからの問いかけにアメデが応えて毎日たわいの無い会話をしていたのだ。
これは今までシーナと3龍王の他は誰も知らなかった事でリールも驚いているが、天界においては「ああ~ー!!ユグドラシルが見つかったぁ!!」の報は上へ下へのお祭り騒ぎになっていたのだ。
『もおおおお!!!何でもっと早く連絡してくれなかったんですかぁ?!』
自分の失敗を棚上げする女神ハルモニア。
「知らないですよ!今の今まで消滅しかけていたんですから!
そもそも何で念話が遮断されたんですか?!
私の事だからどうせ「主神に昇格した時に女神情報のバックアップを取り損ねていた」んですよね?!」
自分の事なので見なくてもパシリ女神がやらかしたヘマの予想が付くシーナ。
『ごめんなさい!その通りです!さすが私ですね!とおーっても鋭いです!』
とおーっても痛い所を突かれたパシリ女神。
「しっかり仕事をして下さーーーーい!!」
『ごめんなさーーーーい?!?!』
《あの?あの?自分同士で喧嘩しないで下さい?》
いきなり始まった喧嘩にオロオロするばかりのユグドラシル。
通信が再開した瞬間に完全自立型幻神シーナと本体女神ハルモニアが不毛な自分同士の言い争いをしたのは言うまでも無い・・・
1000年ぶりの感動の再会がこんな調子だったので、そりゃあシーナがパシリのパシリの幻神に嫌気がさして、女神ハルモニアの事を母親と思うのが無理なのも仕方ないだろう。
100%、バックアップを取らなかったパシリ女神が悪い。
そんなお祭り騒ぎがあった事など華麗にスルーして、
「今日は難しい話しは無しだ、ゆっくりとして行きなさい」
とアメデはシーナに微笑んだ。
文官の天龍の女性が紅茶を出してくれたので一口飲んでリールが話し始めた。
「本当にシーナは苦労したのね~、もう少し早く私も気が付いてあげれれば良かったね」
「いえいえいえ!悪いのは全て私(パシリ女神)でリール様は悪くないですよ。
そもそもの話しで私(パシリ女神)が「世界全域へのお告げ」をしてくれれば私の方から逆探知して私に連絡する事が出来たんです」
「世界全域へのお告げ」とは文字通りに世界の主神が世界全ての者に神の言葉を伝えるモノである。
莫大な神力を使うが、やろうと思えばパシリ女神に出来ない事ではない。
『きゃあああ?!その手がありましたーーーー?!』
1000年間その方法に気が付かなかったパシリ女神・・・この女神様は主神に昇格してポンコツ化したのか?
「もしかして・・・ハルモニア様ってポンコツ?あっ、いらっしゃいませハルモニア様」
『リール?!酷いですぅ!あっ、お邪魔してます』
「何で当然の様に現世に降臨するんです?」
最近は「世界の言葉」の設定を忘れたのか普通に正面玄関から現れるポンコツ女神に呆れるシーナ。
実際にはボンヤリと光る火の玉しか見えないのだが・・・
『いえ、何か呼ばれた気がしまして』
「そうですか・・・それで何で「お告げ」をしなかったんですか?」
『イジメないで下さいシーナ!』自分自身には情け容赦無くツッコミを入れるシーナ。
「それにしても器用な技ですね?」
『そうでしょう?かなり練習しましたからね!』ドヤ顔の火の玉女神。
言うまでも無くシーナは皮肉で言っているのだが・・・
莫大な神力を持つ本体をただの火の玉に変えるとは中々凄い事をしているポンコツ女神。
「それが出来て何で「お告げ」はしなかったんですか?」
『だから蒸し返さないで下さい!』
珍しくしつこいシーナ。1000年間も無駄な苦労させられた怒りは早々には収まらないのだ。
「女神様の有り難みが・・・」
かつての自分と子供の様な喧嘩をする火の玉女神を見て両手で顔を覆うエレン。
天界でも屈指の力を持つ女神様なんだけどね・・・
「女神様も大変だったんだからあんまり文句言うなよシーナ?」
『!!ありがとうございます地龍君!大好きです!』
「あっつーーーーいい?!?!」
感動した火の玉女神に抱きつかれて火傷を負ったガイエスブルクだった。
堅固な地龍の防護壁でも火の玉女神の神力の前では紙同然なのだ。
「地龍君に何してんですかぁ?!」これにはマジキレのシーナ。
『ごめんなさーい?!?!』
「地龍君は私のモノですよーーー!!」
嫉妬の余りに思い切りガイエスブルクに抱き付くシーナ。
「うおお?!シーナ?!やめ?!」ボギィイイイ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ボギィイイイ?!?!
「あ・・・背骨が折れたね・・・」リールが唖然しながら呟く・・・
《きゃあああああ?!?!地龍君ーーーーー?!?!》
天龍王の書斎にユグドラシルの悲鳴が響いた・・・
幸いにもお医者さんの巣窟の天空城だったのでリール先生による治癒魔法10分で背骨の骨折とついでに火傷も直ったガイエスブルク・・・直ぐそばにリール先生が居て良かったね!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「少しは手加減ってもんを覚えろよシーナ?!」
単純なパワーや防御力で言えば赤龍のシーナより土龍のガイエスブルクの方が上だが火の玉女神の障壁破壊に赤龍シーナの鯖折りのコンボを食らえば強靭なガイエスブルクとて骨折するのだ。
「ごめんなさーーーーーい?!?!」
骨折は完治したが体力と魔力に甚大なダメージを食らったガイエスブルクは怠そうにソファーに座っている。
「王の書斎でいきなり背骨を折るヤツなど珍しいのう?」
いきなりの背骨骨折事件にドン引きしている天龍王アメデ。
「「「『すみませんでしたーーーーー!!!』」」」声を揃えて天龍王に謝る幻夢と元凶女神。
「まぁ・・・ロケットブースターに乗って黒龍王と共に壁をぶち抜いて現れるエルフよりマシじゃがな・・・」
「ぶふう?!?!」お姫様にあるまじき声で吹き出すリール。
アメデの不意打ちでイリス&ブリックリンの天空城突撃を思い出したのだ。
「リールよ・・・」
「あはははは・・・ご・・・ごめ・・・ごめんなさい・・・あははは」
ツボにハマったリールは中々立ち直れず笑っている。
「構わぬ、思い切り笑うが良い。今のお主には必要じゃからな」
「そ・・・それって?あは・・・あはははは」
とりあえずリールが笑い終わるのを待って、天龍王アメデがシーナ達を呼んだ本当の理由を話し始める。
「それにしても今回はシーナが来てくれて本当に助かった。
リールがジャコブの件から家から出て来なくなってしまってな。
シーナ達と会ってやっと落ち着いた様子だ、顔色も少し良くなった」
そう言って笑うアメデは天龍王では無く娘を心配する父親の笑顔になっている。
「あっ!そう言えばあの変人さんの事忘れてましたね」頭をポリポリするリール。
『ジャコブ君に関してはノーコメントで』火の玉女神も関わり合いたくないらしい。
「誰も教えてくれないのですが本当に要塞内で何があったのですか?」
同僚の龍戦士の誰に聞いても、「「いや、エレンは知らんで良い」」と言われ続けて内心で不貞腐れいるエレン。
恋人のブリックリンが「そんな事より遊びに行こう」とか、わざわざ人化して誘って来たが、そんな誤魔化しに騙されるエレンでは無い。
ムッとしてブリックリンの頬を両手で思い切り引っ張ってやったのだ。
「ストップエレン!アレは忘れたいの!聞かないで!」
ピシッと手のひらをエレンに向けるリール。
「そう言えばあのド変態・・・ジャコブさんは何がしたかったのか私には全然分かりません」
シーナもあのド変態を思い出してしまったのか身震いして両腕を摩っている。
「奴の事は誰にも理解出来ぬであろうな。奴は海龍そのものだ。
大海原を何処へでも自由に進む、変に抑えつけると世界が滅ぶやも知れん。
放って置くのが1番だ」
突然アメデが恐ろしい事を言い出した?!
いや・・・これはもっともらしい事を言って関わるのを回避している?
「世界が変態だらけになってしまうのですか?!お父様?!」
リールが恐ろしい地獄絵図を想像してしまった様だ。
マジ怖え!世界総変態化して、向こう3軒両隣り全てが変態だらけに?!
爆発か?!爆発してから菌が飛んで感染か?!変態は空気伝染するのか?!
「ふむ・・・まぁ・・・それでも世界が滅ぶやも知れんが・・・」
アメデも変態しか居ない世界を想像してしまったのか珍しく嫌そうな顔をしている。
アメデは、こほんと咳払いをして、「奴の場合はストレスのせいで怒ると大津波を起こすやも知れんと言う事だな。
地琰龍ノイミュンスターが怒りで噴火を起こすのと同様だ」と、怖い事を言った。
「おっ大津波?!なっ・・・なっ、なんて傍迷惑な変態でしょうか?」
エレンが嫌悪感満載の表情になる、いや本当に傍迷惑な変態だよな!
「確かに放置するのが1番ですね」ガイエスブルクは呆れの極地の表情だ。
「えっ?ノイミュンスターは怒ると噴火を起こすのですか?」
シーナはあんな変態よりノイミュンスターの方が気になる様子だ。
一気に目が輝き出した、ホントに変態なんぞどうでもいい!って感じだ。
「うむ、地琰龍ノイミュンスターは火の地脈を司っておるからな。
奴の場合は怒りが頂点に達してしまうとかなり広範囲の火山が火を噴いてしまうな。
だがまぁ・・・ここ3000年はそんな事が起こっておらんから知る者も少ない。
奴が若い頃は良く火山を噴火させておった。
それでアメリアがつけた渾名が「地琰龍」ノイミュンスターだ」
自分がノイミュンスターと喧嘩した時に世界規模の大型ハリケーンを起こして天蒼龍シーナに思い切り頭を叩かれたのをシレッと棚に上げるアメデ。
「ほへー???ノイミュンスターは若い頃は怒りぽかったんですねぇ」
育ての親の若い時の話しは楽しいのか満面の笑顔のシーナであった。
「うむ・・・喧嘩仲間と毎日喧嘩しておったな」
その喧嘩仲間ってのが天龍王アメデで、毎回喧嘩の度にアメデとノイミュンスターの頭を叩いていたのが天蒼龍シーナだった。
天龍王と地龍王との仲が悪いとの神話が有るのはアメデとノイミュンスターの喧嘩のせいだったりする。
地龍王クライルスハイムは、その喧嘩のとばっちりを毎回受けていただけなのだ。
自由な海龍王アメリアは、気が向いた時にだけアメデとノイミュンスターに飛び蹴りをかまして今度は3人で喧嘩を始め天蒼龍シーナに叩かれるのが恒例行事だった。
それに加えてアメデと黒龍王の喧嘩も始まるモノだからクライルスハイムからすればマジでたまったモノでなかったのだ。
本当にクソガキ共だね!
『あの頃が1番大変でした・・・』遠い目の火の玉女神。
そしてシーナは・・・余りにも昔の事過ぎて当時の事など綺麗サッパリと忘れているので目をキラキラさせて話しを聞いている。
これは本体と分身体の記憶力性能の差である。
《そんな事があったんですねぇ》
基本的に龍種は火の玉女神の管轄だったので三龍王が喧嘩しまくっていた事は知らないユグドラシル。
「だから、お父様はお母様に頭を叩かれていたんですねぇ」
ヘスティア先生の苦労の甲斐も有り、大人になって落ち着いた後でも当時の名残りでたまに天蒼龍シーナに頭を叩かれていた天龍王アメデ。
天蒼龍シーナが、かなり思い切りアメデの頭を叩くのでリールもビックリしてたのだ。
「まぁ・・・アレが当時のコミュニケーションじゃったからな」
気分が乗って、リールにも話して無かった幼い頃の話しをし過ぎてバツが悪そうなアメデ。
『そうですねぇ・・・毎日毎日、世界各地で火山の噴火や竜巻に大津波・・・本当に天災続きでしたねぇ』
そんな環境で当時の魔法世界の住人達は良く生き残っていたモノだ。
「・・・60%くらいはノイミュンスターが悪かったのですぞ?」
『そうですねぇ~、そして35%はアメデ君で5%がアメリアちゃんが悪かったですよね~』
「う・・・うむ」心当たりが有り過ぎるアメデ。
そしてやっぱり悪くない地龍王クライルスハイムは良く怒らなかったよね?
『あっ!でも我慢の限界を超えて遂に怒ったクライルスハイム君が暴れてから皆んな喧嘩しなくなったんですよね?』
「怒らすと1番怖いのはクライルスハイムですからね。
クライルスハイムに怒られて、さすがに我もノイミュンスターもやり過ぎたと反省したのです」
その時に結構クライルスハイムに言葉でボコボコにされたアメデとノイミュンスターだったのだ。
要領の良いアメリアはクライルスハイムが怒り出したの見て直ぐに逃げて海中深くに籠って浮上して来なかった。
その後、結局はクライルスハイムに捕まって、逃げた事も含めて50日間に渡り説教を食らい泣かされたのだった。
「ほえ~?お父様って怒ると怖いんですねぇ?」
「シーナよ、誰しも本気で怒ると怖いモノだぞ?」
『シーナが怒ると怖いのはクライルスハイム君に似たからでしょうか?』
本体女神ハルモニアでもシーナが怒った時は怖いのだ。
「いや、アレは「神虎」の血ですな、怒り方がヤツと一緒です」
クライルスハイムが本気で怒ると先ずは、コンコンと説教から始まるのでシーナの怒り方とは違う。
「私って怒ると怖いですか?」自覚が無い大魔神シーナ。
「怖い」
「怖いわね」
《怖いですぅ》
『怖いです』
「ハルモニアちゃんやユグドラシルまで?!」
本体女神やユグドラシルにまで怖いと言われてこれはショックなシーナだった。
と言うかシーナは本体女神ハルモニアの事を「ちゃん」付けで呼んでたんだ?
その後もなかなか興味深い事をアメデから聞けたが、側近の天龍がアメデを迎えに来た。
天龍王アメデとしての執務の時間が来てしまった様だ。
実は今回もアメデはかなり無理をして時間を作っていたのだ。
王が暇だとその国は滅ぶからね。
「さてリールよ。お前はまだ精神的なエネルギーが不安定だ。
今より長期休暇をやるからシーナ達と遊んでまいれ」
突然アメデがリールに休暇を言い渡す。
どうやらこれがシーナ達を呼んだ本当の理由だった。
「ええっ??!長期休暇?私がですか?!!」
長期休暇など、ここ3000年以上、母親の天蒼龍シーナの看病の時から取った事がないリールは困惑している。
「うむ、これからシーナ達と時間が許す限り遊ぶが良い。休暇の期間は無制限じゃ。
やはりユグドラシル様の件での無理が出ておるな。
医者の不摂生とも言うであろう?
ゴルドの監視はニームに任すが良い、よいな?これは命令じゃぞ?
シーナもこの娘が無理せぬ様に見張ってやってくれ」
そう言ってウインクして去るアメデ、案外とお茶目さんな龍なのだ。
アメデはシーナにリールの事を頼みたくて呼んだのだった。
扉が閉まるのを呆然と見送るリール。
「そっかぁ・・・私って精神エネルギーが枯渇してたから感情が不安定だったんだ」
自分の両手を見て呟くリール、お医者さんは自分の体の不調は分からない物だ。
絶好調の時のリールならジャコブの「ブラブラ」を見ても「ブラブラ」を蹴り飛ばして終わりだったのだ。
それがまさかのガチ泣きだ。
リールが「ブラブラ」を蹴ってくれなくて残念だったねジャコブ君・・・
《あの・・・ごめんなさいリール・・・私のせいで》
リール不調の原因が自分にあったと分かり落ち込むユグドラシル。
さすがの天舞龍リール様と言えどユグドラシルほどの上位存在を復活させるのを無償とは行かなかった。
現在のリールの精神エネルギーは最高値の20%程度しか残っていなかった。
そもそも基本が物凄いエネルギーなので本人でも分かり辛かったのだ。
リール不調にいち早く気づいたのは父親のアメデだけだった。
娘の自分の事をいつもお父様が見ていてくれていたと思ったリールの精神エネルギーが3%回復した。
「いいよ!気にしないでユグドラシル!私がやりたかったからやっただけよ!」
と笑顔で親指を立てるリール、そこは本当の本心なのだ。
「ありがとうリール」珍しく表層人格に出て来て微笑むユグドラシル。
そのユグドラシル笑顔でリールの精神エネルギーが2%回復した。
ちなみにシーナは、先程皆んなから「怖い」と言われて深層人格に籠ってイジけてしまっている。
なのでこれからの話しはユグドラシルの出番なのだ。
「うーん?でも長期の休暇かぁ・・・
実際に何すれば良いのやら・・・全然検討が付かないよ?」
これが天朱龍ニームなら即座に100の長期休暇の計画が思い浮かぶのだが、真面目なリールは、どうやって遊べば良いのか分からないのだ。
「とりあえず思い付く限り遊べば良いんじゃないかな?
俺は協力するよリールお姉さん」
「私もいくらでも協力しますよ」
そう言うエレンもかなりの真面目ちゃんなので、あんまり遊びとかには期待は出来ないかな?
「遊ぶのは苦手ですけど私も頑張ります」手を上げるユグドラシル。
「みんなありがとう!」
協力してくれる友達に感動したリールの精神エネルギーが2%回復した。
「でも何をして遊ぶ?」ガイエスブルクの問いに対して、
「遊び・・・そうですわね・・・霊樹時代に精神を落ち着かせる時に私の場合は森の先に有った湖を眺めてましたわ」とユグドラシル。
宣言通りに珍しく主導するつもりな様子だ。
ちなみにシーナは、とうとう不貞寝してしまった。
いじけ始めると長いからねコイツ。
「あっそれ良いね。湖ならゆっくり出来そう」リールも乗り気な様子だ。
「じゃあ、ゆっくりと空の景色を眺めながら移動しては?
先程のゆっくりと飛ぶリール様はとても楽しそうだったから」
エレンも頑張って少しずつ具体的な案を出してくる。
「なるほど・・・そう言えば私、最近はゆっくり空を飛んでなかったよ・・・
じゃあゆっくりと空を飛んで南の森の湖に行こうか!」そうリールが言うと。
「「「賛成!」」」その場の全員が賛成した。
そして火の玉女神は仕事に戻ったのかいつの間にか居なくなっていた。
・・・・・・ん?!いや待て!天空城から南の森の中の湖って確か、あのマジヤバな竜の棲家でなかったっけ?
☆
も・・・元ネタが8000字スタートだったのに改稿が終わったら24000字・・・だと?
追加で倉庫に眠っていた小ネタを集めまくったら上手く話数を切れずにタイトルと文字数がやたらと長くなりました。
構成が下手っぴですみません。
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時は少し遡り、変態ジャコブと仲間達が起こした凶宴事件が終息した頃のゴルド王国滅亡まで半年前の話し。
「輸送任務ですか?」
イノセントより突然の契約変更の旨を伝えられてキョトンとする幻夢の3人。
何故に輸送任務へ変更?と首を傾げる。
「それがな・・・」
イノセントの説明によるとブザンソン要塞は龍種による直接支配が決定して人間の国々に通達が来て、この地域の安全が確認が取れたとの事だ。
ガエル侯爵軍はゴルド王都へ向かう事になったのだがゴルド王国は既に死に体、現在王都近辺に展開中の戦力で充分との事でガエル侯爵軍は周辺の警戒と辺境から来るかも知れない援軍の対象、それに補給物資運搬と補給部隊護衛の後方任務を与えられたとの事。
後方での活動が主になったので強行偵察の必要性は低下したので代わりに軍からは輸送任務の依頼が冒険者に来たのだ。
つまり戦闘行動は極端に低下するので契約更新するかどうかを問われてる訳だ。
戦闘参加を希望すれば王都を包囲してる軍に参加は出来るがそこまで旨みはないだろうとの事だ。
それにイノセントはシーナ達を凄惨を極めるだろうゴルド王族の絶滅作戦にシーナ達を参加させる気は無い。
色々と社会勉強になる事が多い遠征であったが戦闘経験の点でもう少しな点は否めないが一度ピアツェンツア王国に帰還するのも手だろう。
「エレンさんと地龍君はどうしたいですか?」仲間の意向次第と言った感じのシーナ。
「この先は報奨金の問題だろうから俺たちには関係ない戦いだな。
来るかどうかすら分からない遭遇戦を期待しながら補給物資の運搬をするくらいなら龍都に帰還して修行した方が良いな」ガイエスブルクは帰還に1票らしい。
「うーん・・・ここまで来てゴルド王国の結末を見ないで帰還するのもって感じだけど・・・
余り良い物は見れない気がするわ、とても嫌な予感しかないわ」エレンも残留には消極的だ。
「エレンの予感が正解だな。
この先ゴルド王国で起こるモンなんざ、わざわざ見に行くモンじゃないぞ。
ゴルドの王侯貴族の大量の死体しか見られんからな」
イノセントには、この先に起こる惨劇展開の予想はついている様子だ。
「なるほど・・・見て楽しいモノではありませんね。
では私達、「幻夢パーティー」は契約終了してピアツェンツェアに帰還します」
シーナが契約の不更新を決断して幻夢のピアツェンツェア王国への帰国が決定した。
「よし分かった了解だ、今までご苦労だったな。
俺はゴルド王国の結末を見届けてからピアツェンツェアに帰国するつもりだ。
向こうでまた会おう」と手を差し出すイノセントとガッシリと握手する幻夢であった。
「そう言えば・・・同じ幻夢の仲間のマッテオさんはどうしてるか知ってます?」
マッテオの事を忘れていた訳で無く聞く機会が無かっただけで、この戦争中ずっと単独行動中の仲間のマッテオの事がずっと心配だったのだ。
彼とは初陣の日以降から連絡が途絶えてしまっていた。
「ん?公爵家の倅ならちょっと前に帰国したな、なんか家の者に呼ばれたらしいぞ」
「帰国していたんですね?そうですか・・・良かったです」
マッテオが無事に帰国していた事にホッとしたシーナ。
これでいよいよ西の大陸に未練は無くなった訳だ。
「そう言えば・・・イノセントさんはピアツェンツェアの何処に住んでるのですか?」
帰ってからもイノセントの所へ押し掛ける気がマンマンのシーナ。
まだまだイノセントに聞きたい事が沢山あるのだ、良い先生を簡単に逃してなる物か!とシーナ目が光る!
「ん?俺か?俺は王都の冒険者ギルド本部の職員だぞ?だから王都のギルド本部の側に住んでいる。
王都に住んでいるから王都で編成された冒険者部隊の指揮官に選ばれたんだからな」
イノセントはピアツェンツェア王国の冒険者ギルドのハイマスター。
つまりは冒険者の総長で1番偉い人なのだ。
そして今回の冒険者への依頼人は、ヤニック・フォン・ピアツェンツェア国王だ。
「あっ!そう言えばそうですねぇ」テヘヘへと頭を掻くシーナ。
「俺の所に遊びに来るのは構わんがシーナが王都に来たらヤニックに捕まるんじゃないのか?
帰った途端にそのまま王城に連れて行かれてお姫様だろ?お前の場合は」
間違いなくそうなるとイノセントは思っている。
あまり表立って口に出さないがヤニックの家族愛は本物なのだ。
ましてや貴族の都合で苦難の人生を歩ませてしまった娘のシーナの事を気にかけてない訳が無い、何としてでも自分の庇護下に置きたいだろう。
飛んで火にいる夏の龍である。
「ああー・・・そうですねぇ、それより先にお母様に捕まりそうです」
シーナは頭を抱えてブンブンと首を左右に振る。
今更、「今日から貴女様はお姫様です!ヨロシコ!」とか言われても困るのだ。
「まぁ・・・王都に来たのを国王と王妃にバレない様に小細工してやるよ。
ただ先触れは出せよ?準備があるからな」
と笑うイノセント、この時の発言が後に意外な展開を招くのだがそれはまだ先の話しだ。
「ここからは真面目な話しだが・・・本国に帰還するなら変な寄り道は無しだ。
単独で中途半端に関わって良い事じゃないからな、真っ直ぐに帰れよ?
今からゴルドで起る事はお前達とは無関係だ」と真剣な顔で言われた幻夢。
「そうですね・・・これからがこの国の人達にとっての本当の地獄でしょう」
田畑の70%が焼失した西の大陸で戦後確実に起こるだろう大飢饉にエレンも暗い表情だ。
まぁ、その辺りは国際支援で乗り切る計画が裏で進行しているので結論から言うと中央大陸からの食糧支援で西の大陸で飢饉はほとんど発生しないのだが。
その為の輸送経路を確保する為に沿岸部の占領をしまくったヤニック国王。
その見返りに復興後の航路権益を貰う算段なのだ。
《これからたくさんの人が死ぬんだろうな》とシーナは心の中で呟いた。
「王侯貴族共がくたばるのは自業自得だけど、他の人間はこの国に生まれたってだけの話しなのにな」
ガイエスブルクも人間の業の深さに珍しく悲痛な思いが顔に出ていた。
「その事が解ってりゃ良いんだよ。
自分達が恵まれた環境なのが分かっていればその恵まれた環境を子供達に残して行くのが今を生きてる俺達の役割だからな」イノセントの言葉に黙って頷く幻夢だった。
その日を生きる代表のイノセントが育児について言うと微妙な感じがするが、実はかなりの子煩悩だったイノセント、これから産まれるめっちゃ癖が強い6人の息子達を立派に育て上げる。
またすぐ王都で会えるのでイノセントとはアッサリと別れて、その後解約の手続きを窓口で済ませて帰還の為の船を手配していたシーナはフッと一つの事を思い出した。
それは海龍王アメリアの事だ。
あのド変態息子のせいで心労から寝込んでいると聞かせられたので心配になって来たシーナ。
御見舞い行こうかどうしようか悩んで・・・やっぱり心配だったので天舞龍リールに思念を送って見る事にした。
シーナとリールの間には直通念話回線が繋がっているので最近暇な時は色々な長話をしている。
この辺りは話し好きな女神ハルモニアの名残りである。
この2人の雑談ネットワークは何か知らん内に世界中の話し好きな龍種やどっかのエルフやどっかの魔王にも広がっていく。
ジャコブ事件の時にも心配して直ぐに連絡を取ろうとしたのだが、大混乱リールの方の問題で繋がらなかったが、リールもそろそろ落ち着いた頃だろうし天空城にも近いここならと集中する・・・
するとリールとの念話がカチリと繋がった。
《おお!シーナじゃん、どしたの?》すると、やや元気の無いリールの声が聞こえて来た。
「リール様お久しぶり・・・では無いですね、あの・・・大丈夫でしたか?」
《あははは・・・私とした事が大丈夫じゃ無かったりするんだよね・・・
毎晩あの変態の裸踊りの悪夢を見ちゃって、ずっと寝不足なんだ》
「あの変人さん・・・は・・・裸踊りなんてしたんですか?」ドン引きするシーナ。
《あの・・・ブラブラ・・・ああーーーー!!》思い切りトラウマになっているリール。
《そうかぁ、アメリア様の前にリール様のお見舞いにも行かないとダメですねぇ》とシーナは思って。
「天空城までお見舞いに行きたいのですが・・・天空城ってどうやって行けばいいのですか?」と言ったらリールは急に元気になって「え?シーナが天空城に来るの?エレンとガイエスブルクも?うん!良いよ良いよおいでよ!私が迎えに行くよ!今どこ?」と食い付いて来た、余程精神的に参っていたのだろう。
「まだブザンソン地域のヴィグル軍の冒険者の陣屋にいます・・・
けどお見舞いに行くのにお迎えさせるのはちょっと・・・」
それではお見舞いにならないのでは?と思うシーナ。
「大丈夫だよ!私なら30分で行けるから良い気分転換になるし散歩がてらに行くよー、
今からでも大丈夫なの?」
帰還の手続きは終わったし荷物も持ってるし「大丈夫です」と答えるシーナ。
すると「了解!」と言って思念は途切れた。
これからリールが迎えに来ると知るとエレンとガイエスブルクの2人は、「随分いきなりだね」とエレンは笑ってるが初めての天空城にワクワクしてる様子だ。
「え?!リールお姉さんにまた乗るの?!」
前に極音速リール号での強制宇宙旅行を思い出してガイエスブルクは顔が引き攣る。
余談だが、前にリールに連れられて大気圏外まで飛んだシーナだったが、怖がるどころかめちゃくちゃ楽しかったのだ。女の方が絶叫マシンに強いと言うのは本当だった。
さすがに冒険者の陣屋に直接にリールが来ると不味いので軍の宿営地より5kmほど移動して人目の無い場所での合流に決まった。
待ち合わせの大岩に着くと5分くらいで直ぐにリールが飛んで来た。
初めて龍化したリールを日の光の下で間近でじっくりと見たシーナは、「綺麗!!リール様は凄い綺麗ですね!」と大はしゃぎだ。
前の大気圏突破時は、ほとんど背中しか見れなかったのだ。
出会い頭にいきなり綺麗とか褒められたリールは・・・めっちゃデレた!
「「そっそう?そうかなぁ?えへへへ、ありがとシーナ」」
「はい!青い鱗は宝石の様で、並び方も素晴らしいです!
全体的なスタイルは抜群に美しいですし、可愛いお顔とのバランスも良く・・・」
「「はいはい!分かったよ!恥ずかしいから!その辺で!」」
シーナのベタ褒めに照れたリールが必死にシーナを止める。
ちなみにシーナは本気でリールを誉めている。
リールの天龍としての造形美が余りにも素晴らしく美しいのだ。
造形にこだわる地龍らしいシーナであった、ほっといたら1時間はリールの美しさを語り尽くすだろう。
エレンは既に2時間に渡って白銀龍の素晴らしさを語り尽くされて恥ずかしくて撃沈している。
幼少期から天龍王アメデの像が大好きで、最近では海龍王アメリアの容姿を一瞬で「人の姿でも凄い美人さん」と見抜いていた。シーナは龍種マニアなのだ。
地龍王クライルスハイムも龍種マニアで天龍王アメデの容姿をシーナと語り合うと何時間でも話し込み「王よその辺で」と側近に怒られる迄話し込むのだ。
しかしシーナが地龍王クライルスハイムの素晴らしさを語り出すと恥ずかしくてシーナを止めてシーナが不貞腐れる迄が最近の流れなのだ。
少し変わった趣味の父娘なのだ。
と言うかシーナの龍種マニアはクライルスハイムの加護の影響?
ちなみに、シーナから見て龍化したガイエスブルクは「可愛いの極地」だそうで、可愛いと言われるのが少し悔しいガイエスブルクは余りシーナの前で龍化はしない。
「地龍君!龍化して下さい!久しぶりに可愛いお姿が見たいです!」
「いいっての・・・」
「龍化して下さい!龍化して下さい!龍化して下さい!」
「やめてくれっての!」
カッコイイと言われれば直ぐに龍化してやるのだが可愛いと言われるので頑なに龍化しないガイエスブルク、そりゃ男だからね!
そしてシーナ的NO.1に美しいのはエレンなのだ。
「うふふふふふ・・・素敵・・・」
エレンを意味も無く龍化させて頬を紅潮させて何かハアハアしているシーナ。
「「最近のシーナ怖いわよ??」」
ユグドラシルと融合して存在が安定したシーナは性格も欲望も人間っぽく安定したのか好きな物に対する遠慮が無くなっている。
『ハアハアするのは、はしたないから止めなさい!』
欲望丸出しのシーナに流石に注意する女神ハルモニア。
「嫌です」
本体女神ハルモニアに怒られても言う事を聞かないシーナに本体女神も困っているのだ。
ちなみに女神ハルモニアに龍種マニアの気は特に無い常識神な女神なのだ。
『どうしてこんな子になったのかしら?』
自分と全く違う性格になって行く元分身体に困惑を隠せない女神ハルモニア。
最早似ているのは話し方だけなのだ。
「こんな子とか失礼です!」
それは色々な者達が寄ってたかってシーナやユグドラシルに加護やら何やらを与えたせいだと思われる。
とは言え1番シーナの性格に影響を与えているのは母親のファニーの血なのだ。
と言うか、ファニーとシーナの性格や考え方はクリソツなのだ。
結論、王妃ファニーが全部悪い。
こんな感じに最近は龍化するとシーナの理性が飛ぶのでエレンもシーナの前では余り龍化しなくなった。
しかし子供特有の理由も無く寂しがったり落ち込んでたりしてる時は龍化してシーナを胸に抱っこして一緒に寝たりしている。
優しいお姉さんなのだ。
話しを戻して、「「それじゃあ行こうか」」とリールが3人を抱っこすると・・・
「おっお姉さん俺!背中に乗りますから、」とガイエスブルクが慌ててリールの背中に移動する、どうやら顔を胸に押し付けられて恥ずかしかった様子だ。
龍の姿だから鱗とか有って胸とか分からないんじゃね?とも思うが龍同士なら分かるらしい。
「「そう?ならしっかりと掴まっていてね」」
ガイエスブルクの行動はリール的に不思議なのだ。
思春期間近の男の子には色々と有るのだよ。
それが思春期になると直ぐに「イヒャッホーーーイ」と喜ぶ様になるのだから度し難いのだ。
ガイエスブルクが背中にしがみ付いたのを確認するとフワリとリールは浮かび上がってゆっくりと前進を始めた。
「今日はこの前とはスピードが違いますね?」とシーナが言うと「「今日は3人抱えているからね、スピードを上げると本当に落っことしちゃうよ」」と笑うリール。
「わー♪わー♪」エレンはリール号での初飛行に大喜びだ。
自分でもある程度なら飛べるがあんまり上手く飛べないので天龍のスムーズな飛翔に興奮している。
ガイエスブルクは極音速大気圏外突破旅行を思い出したのか無我の境地でリールの背中にしがみついてる。
こうしてシーナの一行はリール号に乗り一路天空城目指して飛んで行くのだった。
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それから30分後。
シーナ達は天舞龍リールとゆっくりとした優雅な空の旅を楽しんでいた。
今日は極超音速飛行は無いと解ったガイエスブルクの精神は復活してのんびりリールの背中で景色を楽しんでいた。
そしていつの間にかリールの周囲には飛竜と雷竜が沢山飛んでいる。
この竜達が未来の天龍になるのだ。
ドライアドの森で岩竜と樹竜にシーナ達が懐かれたのと同じ理由で、アイドルのリールと一緒に空を飛んでいる。
いつもリールは物凄いスピードで飛び去るので今回は滅多にないリールと一緒の遊覧飛行の機会に遭遇した飛竜と雷竜達はラッキーだ。
「ピィーヒョロロロ」」「ピピッピィー」「クールルル」「ピーピーヒョロロロ」とリールと一緒に飛べ、みんなご機嫌で可愛い声で歌を歌っている。
「わっ♪わっ♪可愛いです!歌を歌ってますよぉ!」シーナ大興奮!
「「そうだねー、この子達は歌でコミニケーションを取るからねー、ラーラララー♪ララララー♪ランラー♪」」
とリールもサービスで歌を歌う、天を抜けて行く様な美しい声だ。
周りの竜もシーナ達もリールの歌をうっとりと聞き入る。
しかしここでリールの強力な一撃が入る!
「「そう言えばシーナ達って歌を歌わないの?」」「「「ぐふう!!」」」
シーナ達は精神的な大ダメージを受けた!
「「えっ?地龍って結構歌うの好きでしょ?」」え?どした?と言った感じのリール。
リールが幼龍の頃は父の天龍王アメデや地龍王クライルスハイムに歌を教えて貰っていた。
これは大変だ!妙な誤解を招く前に地龍の歌について解説しておこう!
地龍は歌を頻繁に歌います、そしてめっちゃ上手いです。
天龍は讃美歌での合唱的な歌声なら地龍はオペラ的な歌声と言った違いと思ってくれて良いです。
ただ・・・現実世界でも歌が上手い人とあまり上手くない人がいますよね?
そしてシーナ達3人は・・・うん・・・別に歌えなくても死にゃあせんからね!
つまり歌が凄く下手な人達なのだ。
最近もアリーセの学校で3人一緒にヘスティア先生の歌の授業を受けて大恥かいたことも有った・・・
シーナ達の歌を聴いたアリーセの感想が「なんか!雄叫び見たいです!」だったのだ。
転生してもその毒舌っぷりは健在なのだ。
「「気合い充分と言った感じで先生はとても良かったと思います!」」
ヘスティア先生の必死のフォローが虚しかった・・・いや気合い充分って。
『うーん?おかしいですねぇ・・・シーナは私の分身体なのだから・・・』
天界一の歌姫と言われている調和の女神ハルモニア、歌は呼吸をするのと同じ様なモノなのだ。
ハルモニアがシーナの歌が下手な理由をかなり真剣に考えていたら・・・
「うるさいですよ?!人には得手不得手が有るんです!」シーナがキレた。
確かに「調和」の女神ハルモニアの分身体だったシーナは歌が上手いはずなのだが・・・
実際に幻神時代には歌を歌って消滅しそうなユグドラシルを励ましていたのだ。
《ごめんなさいシーナ・・・多分私のせいですね》
ぶっちゃけると歌がド下手なユグドラシルと融合したので「歌下手」のデバフを思い切り受けて歌が下手になってしまったシーナなのだ。
幼少期に天龍王アメデ像を磨きながら歌っていたユグドラシルだったがメチャクチャ下手っぴで、それを逆に微笑ましく聴いていた天龍王アメデ。
「「毎回違うフレーズも聴き慣れれば味が出るぞ?」」天龍王アメデ談である。
エレンとガイエスブルクは単純に今まで歌をほとんど歌う機会が無かっただけで、その後ヘスティア先生と一緒に練習したら普通に上手くなってシーナがショックを受ける事になる。
ちなみにヘスティア先生の歌はメチャクチャ可愛い、「歌のお姉さん」の様な歌声だった。
ヘスティア先生と関係ない話しだが女神ヘスティアは炉(祭壇)の火を司る女神だがメッチャ「ホゲェ~」とした穏和な天然女神様なのだ。
天然な所もヘスティア先生と被るが多分別の存在だろう。
『やっぱりヘスティア先生はヘスティアちゃんですよね?!』
絶対にヘスティア先生は女神ヘスティアの分身体だと思っている女神ハルモニア。
「「うふふふふ、秘密ですよハルモニアちゃん」」
女神ハルモニアからのツッコミに対してクスクスと笑うヘスティア先生。
『思い切り「ハルモニアちゃん」って言ってるじゃないですかぁ?!』
ヘスティア先生は女神ヘスティアの分身体・・・ならどんなに良かったか?
実はヘスティア先生には下手をすれば宇宙間戦争が勃発しても全然不思議でなかったヤベェえ事情が有ったのだ。
ヘスティア先生の正体を女神ハルモニアが知ると多分・・・ショックで気を失う。
知らぬが仏なのだ、神様なのに仏様とは?
もうぶっちゃけてしまうと岩琰龍ヘスティア先生は「女神ヘスティアの炉(祭壇)から偶然に召喚された別の宇宙からやって来た完全無欠な超高位存在の地龍」である。
なんかフワッとして良く分からないので詳しく説明しましょう。
当時まだまだ見習い女神だったヘスティアが自分の炉(祭壇)で危なかっしく何かの儀式の練習をしていた時の事。
『あ・・・やってしまいましたわ、失敗です』
ガシィイイイイインンン!!!バリバリバリバリバリバリ!ドドドドオオオンン!!!
時空が裂けて星々を揺るがすが如くの轟音が天界に鳴り響く!!!
『わぁ?わたくしったら立派な龍さんを召喚してしまいましたわ?』
お約束通りに見事儀式に失敗して別の宇宙からとんでもない超高位存在を召喚してしまった女神ヘスティア。
もし女神アテネがこの場に居たら・・・『やってしまいました・・・ではありませんわ!!ヘスティアちゃんのばかぁ!!』と泣きながら卒倒する事間違い無し!の凄え大事になってしまった「超絶大大大失敗」なのだが、幸いな事に周囲には誰も居なかった。
そんな大失敗をやらかした女神ヘスティアだが生来の天然を発揮して『わぁ?大きいですわ~』とか言いながらホゲェ~と龍を見ていたら・・・
「「あらあら?あらまぁ・・・ここは何処なのでしょうか?いきなり呼ばれて先生もビックリです!」」
普通ならノーアポ代償無しで別の宇宙から超高位存在の召喚するなど無礼千万!!!
宇宙間戦争不可避の激怒案件なのだが、こちらの龍も生来の天然を全開してモノ珍しそうに周囲をキョロキョロしている。
まあ、分かり易く現状を説明すると、「アメリカの大統領をノーアポで俺の魔法で拉致して自宅に召喚しちゃいましたぁ!!」ドヤァ!
と思ってくれて良い・・・・・・・・そりゃ向こうから激怒されるわ?!
『はじめまして龍さん、わたくしはヘスティアと申します。
よろしければ龍さんのお名前を教えて頂けましたら幸いです。
後、わたくしの失敗で勝手にお呼び出ししてしまい申し訳ありませんでした』
一応は自分がヤベェ事をやらかした自覚は有る女神ヘスティア。
真なる天然は直ぐに過ちを認めて謝る事が出来るのだ。
「「先生はビックリしましたが失敗したなら仕方ありませんね!
お名前ですか?そうですねぇ・・・特にこれと言った名前は・・・
でも私は先生なので皆からは「先生」と呼ばれております」」
どうやら元の宇宙では先生をしていた様子の龍。
『わぁ!先生様でしたのね?・・・でも、お名前が無いのは寂しいですわ。
そうだ!勝手に呼び出した事へのお詫びではありませんが「わたくしの名前」で良ければお使い下さいませ』
うおおい?!女神が自分の名前を他の超高位存在に預けるのは相手に「真名」を掴まれて支配される危険が?!
「「まぁ?!「ヘスティアのお名前」を私に下さるのですか?
大変有り難いお話で先生もビックリです!」」
・・・どうやら真なる天然にその危険は無い様子である。
そして龍に名前が無いのは、実は本当の名前は有ったのだが、他の者が畏れ多くて安易に名前を呼べなかったからで、気が遠くなる時間の流れの中で龍も自分の真名を忘れたのだ。
この時のヘスティア先生は「目の前の可愛らしい子がなんか名前をくれたから先生は貰いました」だけだったらしい・・・先生として子供からの贈り物を断る事は出来ないのだ。
宇宙を超えた「真なる天然同士」の邂逅は更なる科学反応を引き起こす。
「「それではこれより私は「ヘスティア先生」と名乗らせて頂きます!」」
『お気に召しました様子で何よりですわ・・・あっ!そうですわ!
とある世界でわたくしのお友達のハルモニアちゃんが大変苦労している様子なのです。
ヘスティア先生にその世界で先生としてお友達を助けて頂きたいのですわ』
なんの脈絡も無い普通ならとても馴れ馴れしい無礼な頼み事なのだが相手も真なる天然・・・
真なる天然は「お話すれば誰でも直ぐにお友達」になれるのだ
「「新しい勤務先ですね?そして「ハルモニアちゃんを助ける」んですね。
分かりました!先生にお任せ下さい」」と快諾してしまった・・・
『お願い致しますわヘスティア先生。
あ・・・でも儀式に失敗した事を知られると恥ずかしいのでハルモニアちゃんには内緒で・・・」
つーか、こんなヤベェ案件を全宇宙に公表出来る訳が無いのである。
儀式に失敗した事が問題ではなく・・・・・・・・・・もういいか。
この事を知るのは宇宙においても女神ヘスティアとヘスティア先生だけなのだ。
そして天然同士の堅い約束を守り続けてその内、女神ヘスティアに無理矢理召喚された事実をアッサリ忘れるヘスティア先生。
真なる天然の本質は「都合の悪い事は直ぐに忘れる」事に有るのだ。
そしてこの時のヘスティア先生は「ヘスティアちゃんに行けと言われたので先生は来ました!」だけだったらしい・・・
真なる天然の本質は「お願いされると断れない」事に有るのだ。
そして本当に魔法世界にやって来たヘスティア先生。
そして・・・
「「そ・・・そうなんですね?我はクライルスハイムです。
よ・・・よろしくお願いします??ヘスティア先生」」
まだ地龍王に即位したばかりの、まだ幼く初々しい子供だったクライルスハイムはヘスティア先生の登場に大いに困惑した。
それもそのはずで、父ベルリンと同格かそれ以上の明らかに自分より経験豊富そうで力の強い地龍が「「この世界に先生として赴任して来ました!」」と言ってやって来たのだから・・・
自分よりヘスティア先生が地龍王になった方が良いのでは?とクライルスハイムがヘスティア先生に提案した所・・・
「「先生は先生なのでお断り致します」」と、にべも無く断られた。
何故、高位神に匹敵する力を持つヘスティア先生が先生をやっているか?についても凄く昔の話しでヘスティア先生も覚えていないらしい。
ただ昔から「先生って、本当に天然ですねぇ」と言われた事は覚えているとの事。
真なる天然は「天然と呼ばれるのは褒め言葉」と勘違いしているのだ。
「「で・・・ではヘスティア先生には若い龍種の教育をお願いしたいです」」
良く分からないが先生として働いて貰う事にしたクライルスハイム
「「うふふふ、では先にクライルスハイム君から授業を始めなきゃダメですね」」
「「あ・・・そうですね、よろしくお願いしますヘスティア先生。
それから友人のアメデとアメリアも一緒に授業を受けてもよろしいですか?」」
「「全員連れて来て大丈夫です!先生に任せて下さい!」」
何とビックリ、ヘスティア先生は現在の三龍王や地琰龍ノイミュンスター、天蒼龍シーナを含めた古代龍種達の先生だったのだ。
天蒼龍シーナとは天舞龍リールのお母ちゃんでシーナの名付けの由来にもなっている天龍だ、現在は療養中で天空城にて眠っている。
つまり魔法世界においての本当の最高位存在はヘスティア先生だと言っても良いのだが、ヘスティア先生には全く自覚は無い。
真なる天然には権力など必要無いのだ。
ちなみに「岩琰龍」の名前は、「「我が先生にあだ名を付けてやるよ!」」と、当時暴れん坊やんちゃ坊主だった地琰龍ノイミュンスターが考えたらしい。
自分のあだ名から一文字取っただけの子供特有の適当に付けたあだ名で特に意味は無い・・・・・・・え?!無いの?!
いや、高位存在の渾名(この場合は蔑称では無く愛称)とは魔法儀式的には結構意味が有るのだが、ヘスティア先生クラスの龍種になると、ほぼあらゆる魔法儀式を省略する事が出来るので意味が無いのだ。
「「岩琰龍ですね?分かりました!これから先生は岩琰龍ヘスティア先生と名乗りますね!
素敵なお名前ありがとうございますノイミュンスター君」」
「「えへへへへ、気に入ってくれて良かったぜ!」」
そしてやっぱり岩琰龍を受け入れるヘスティア先生。
ちなみに「地琰龍」のあだ名は海龍王アメリアが付けたあだ名だったりする。
何だかんだと仲が良い古代龍達なのだ。
「「なあ~?早く授業始めようぜ~?」
そして当時はノイミュンスターに負けず劣らず態度も口が悪かったクソガキの天龍王アメデ。
「「先生!別の宇宙のお話をもっと聞きたいです!」」
ピッと手を挙げる海龍王アメリア。
「「え~?魔法陣のお話の方が良いなぁー」」アメリアと意見が合わない天蒼龍シーナ。
「「お前達静かにしろっての!」」クラス委員長の地龍王クライルスハイム。
「「はいはい!先生は了解しましたよ。
先ず別宇宙の産業のお話から転移魔法陣のお話をしましょうね!」」
ワイワイガヤガヤと騒いで纏まらない生徒達に苦労するヘスティア先生。
幼い頃の偉い古代龍達は総じてクソガキ共だったのだ。
それからヘスティア先生によって魔法世界の幼いクソガキ龍種共は、
安定した「皆んなで立派な龍になりましょう」教育を受ける事が出来て、結果的に世界は「ある程度」は安定して女神ヘスティアの望み通り女神ハルモニアの大きな力となったのだった。
ヘスティア先生は先生として超優秀な先生なのだ。
そして・・・
『もう・・・本当の事を教えて下さいよ?ヘスティア先生~』
「「うふふふ、内緒ですよ」」食い下がる女神ハルモニアの頭を撫で撫でするヘスティア先生。
『うー?』完全に子供扱いの女神ハルモニア。
実際に推定1000万年以上の時を生きるヘスティア先生にとって魔法世界の主神である女神ハルモニアでもまだまた幼く可愛い子供なのだ。
ちなみにヘスティア先生の真名は「オグドアドさん」と言う・・・オグドアド・・・オグドアド創世8神の母神?!?!
・・・・・・・・・想像以上に凄い神様だったぁーーー?!?!
そして案の定その事を完璧に忘れているヘスティア先生だった。
ヘスティア先生の正体を知ってスッキリした所で話しを本編の歌のお話に戻しましょう。
そんな訳で(どんな訳?)魔法世界の解説者の主要登場人物?で歌が上手い順番は・・・
調和の女神ハルモニア→黒龍王ラザフォード(そりゃ当然だね)→ハイエルフのイリス&天舞龍リール→風竜シルフィーナ→天龍王アメデ→地龍王クライルスハイム→魔王バルドル→覚醒魔王マクシム→樹龍アリーセ→天朱龍ニーム、この辺りがめっちゃ歌が上手い組になって。
その他、歌が普通の人達が団子状態で続き・・・それから下手っぴ組になって。
海龍王アメリア(隠れ音痴)→ラーナ姫(エリカ)、→海湊龍クローディア(何となく分かる)「超えられない壁」があって、シーナ(ユグドラシル)になるのかな?
尚、歌を全く歌った事がないブリックリンと地琰龍ノイミュンスターは除外されてます。
そして意外な事に歌うのが凄え上手いのは覚醒魔王のマクシム君だったりします。
「凄え!」マクシム君の歌に対してメッチャ拍手をしている四天王の筆頭。
「ウッソでしょう?!アンタ何でそんなに上手いの?!」
マクシム君の歌を聴き本当に唖然としている四天王の3番手。
ラザフォードのファンのマクシム君がラザフォードが作曲したロックの楽曲を「毎年恒例、隠し芸大会」でノリノリで歌ったらめっちゃ上手くてビックリした真魔族の四天王達。
「凄すぎて笑うわー、お前って歌う時って声が高いのな?」
普段、地を揺るがす如くの低音で喋るマクシム君が歌を歌うと3オクターブは高音になって大笑いの四天王の2番手。
「いや・・・逆にお前ら、魔法詠唱って「歌を歌う」事だろ?
歌が下手って事はな?魔法詠唱が下手って事だぞ?
魔道士として歌の練習を毎日ちゃんとしてんのか?
特に魔導士のヴァシリーサは、ダンスとかも少しはバルドルに教えて貰えよ?」
歌に加えて「踊り」も魔導士にとって必須の技能になる。
例えば「真名の契約」とかの高度な魔法的儀式には契約者同士の歌と踊りが必ず必要となるからだね。
そう言えば、とある魔導士エルフも歌はアホ見たいに上手いしダンスに関しても「股関節破壊の舞踏姫」とか呼ばれるマジ鬼畜だったなぁ・・・
「「「すみませんでしたーーー!!!」」」
めっちゃ魔法理論的な理由に思わず謝る歌やダンスの上手さが普通組みの真魔族の四天王だった。
一見すると馬鹿っぽく見えるマクシム君だが、勉強熱心で常に日々の鍛錬を欠かさない努力家なのだ。
世界唯一の覚醒魔王とは伊達ではないのだ。
「うむヴァシリーサよ・・・これから儂と歌とダンスの特訓じゃな」
「いやん!バルドルってスパルタなんだもん!」
鍛錬不足の四天王のヴァシリーサを〆る、如何にも歌が上手そうな魔道士の魔王バルドルは、やっぱり歌がメッチャ上手い。
そしてダンスもメッチャ上手いのだ。
昔、ほんの余興でイリスとラサフォードとバルドルとの3人でラザフォードの歌を合唱しながらダンスをしたら魔法的なケミストリー(超科学現象)を引き起こして「千雷」の超常現象が世界中で発生してしまい周辺国家をドン引きさせた。
以来、この3人での合唱とダンスは「超魔法兵器」として国際的に禁止になっている。
この様に歌が下手っぴとは魔道士としてシーナはヤバいハンデを背負っているのだ。
「こんなモノをわざわざ書かなくていいですよ!!大きなお世話です!
ユグドラシルと歌の練習しているから大丈夫ですよ!ほっといて下さい!」
まぁ、元々は歌が上手かったシーナなので、その内何とかなるのだろう。
今はデバフが掛かっているだけだからね。
「「あっ・・・あははは、そっ・・・そうなんだ」」苦笑いのリール。
魔道士と歌とダンスの密接な関係の話しをしていたら遠くに天空城が見えて来た。
いきなりだが、天龍の「天空城」は○ピュタの様に空中にある訳では無い。
天龍王からの名前を拝借してアメデ山脈と呼ばれている西の大陸中央に連なる大連峰の中でも世界最高峰の山岳グリース、その標高9200mの頂上付近にある天龍最大規模の軍事拠点である巨大城塞と複合防御施設群を総称して天空城と言われている。
天龍は世界各地に軍事拠点を持ち世界の空を監視している、天空城はその総司令本部なのだ。
なので当然、天空城は完全な戦城で武骨そのものだ。
芸術的な要素皆無の実用性重視で鋼鉄製の城の見た目のファンタジー感はゼロ
ラ○ュタ的な物を想像した人はすみません。
この城は地龍の龍都と違い生活するのには適してないので事務職の天龍達や非番の龍戦士達はグリース山の麓の都市で生活している。
ここに勤務する天龍達はそこから毎朝出勤しているのだ。
その都市もピアツェンツェア王都の5倍はある大都市である。
こんなに高い所に拠点を作った理由は3つある。
防御に優れて通信がしやすく監視も楽だからと言う夢も浪漫も無い軍事的理由からだ。
後は魔導砲の打ち下ろしにも有効的だ。
なのでリールは最初はこんな何も無くてつまらない天空城より山の麓の都市に有る自分ん家に連れて行こうとしてたのだが父親の天龍王アメデがシーナに会いたいと言い出したので仕方なしに天空城へ向かっているのだ。
本当は外部の地龍や海龍は書類申請して許可が出ないと入れないのだが、天龍王アメデが既に入城の許可を出しているのでアッサリと中に入れた。
やはりここでも書類は大事だ。
中に入るとこれぞ軍事施設!的な印象で余計な物は何一つとして無い。
「ふわ~?何もありませんねぇ?」とシーナが呟くと案内してくれていた天龍の龍戦士が「「余計な調度品など置くとそこに侵入者が隠れ潜んでしまいますからねぇ」」と至極真っ当な返事が帰って来た。
ノイミュンスターの影響で重工学が好きなシーナとガイエスブルクとエレンは等間隔に配置されてる大型魔導砲に興味津々だ、目が輝いてる。
今は城内に格納されているが戦闘時は城外にせり出す仕組みになっている。
「これって500mm口径?」
「多分、550mm口径じゃないかな?」
「ここから発射すれば射程70kmは行けちゃいますねぇ」
3人でワイワイと騒いでいたら・・・
「「王の許可が出れば後で近くで見学します?」」と、天龍の龍戦士が気を使ってくれた。
すると「「はい、お願いします!」」と、3人は超食いついた!!
そしてシーナは天龍の龍戦士が装備すると思われるロケットブースター付きの装甲甲冑をジィーと見ている、君そう言うの好きそうだもんね!
「「あ~・・・・それ、ネタ装備だよ?イリスがここで開発してたんだけど危なくて使い物にならなくてね・・・オブジェになっているだけよ」」
「ネタ装備・・・ところでイリスさんって誰ですか?」
どうやら地龍になる過程でシーナはイリスの事を忘れたらしい。
《イリス・・・イリス・・・》
ユグドラシルも地龍への存在再構築の際に昔の記憶をかなり失っている。
とても大切な名前の気がして一生懸命にイリスの事を思い出そうとしている。
「「その内、直ぐ会えるから今は気にしなくて良いよ」」
シーナとユグドラシルがイリスに関する記憶を喪失している事が分かったリールは3人には新しい関係を構築して貰おうと誤魔化す。
「イリスってハイエルフのイリスですか?」
南の大陸産まれのエレンは一応、母リリーと一緒にイリスと会った事が有る。
「「そうだよ~、そのイリスだよ」」
「エレンお姉さん、エルフ女王の事を知っているの?」
「そうね?凄くお淑やかな女性だったわ」
お淑やか??そうか・・・アヤツめ、エレンの前だと思い切り猫を被っておったのか・・・
怪我を治してシーナ達の前に爆裂エルフのイリスが突撃して来るまで後5年・・・
その時になってエレンの中に有った、「お淑やかなイリス」の印象は木っ端微塵に消し飛ぶ事になるのだ。
「「お父様が待ってるからそろそろいいかな?」」
そう笑いながらリールはヒュンと人化した、この龍化と人化の切り替えの早さも個人の能力に影響される。
ガイエスブルクやエレンは龍→人間、人間→龍に変身をするのに必要な時間は5秒程度と、かなり変身能力が高い。
シーナは半人なので特殊な魔法陣を使用して長い儀式を行わないと龍化をする事は出来ない。
そして魔力消費が莫大な為に龍化出来る時間も2時間程度で、しかもシーナの特殊スキルも制限を受けメリットが何も無いのでシーナが龍化する事は無い。
赤龍シーナが龍化するとノイミュンスターの縮小版の様な見た目になる。
それに変身時に空間魔法を同時に発動しないと人化したら素っ裸になってしまうのだ。
シーナは空間魔法が苦手で即時換装が出来ないので素っ裸不可避で恥ずかしいのだ。
なので通常の衣服の交換や武器の換装は手動で行わっている。
今日のリールの格好は、いつものメイド姿では無く、シーナから思念波を受けた時に家で読書しながら紅茶を飲んでたらしいのでシンプルな青いワンピース姿だ。
「ここは何も無いけどお父様の居住地の王宮は普通だから安心してね、
あっ・・・でも少しビックリするかも」
「ビックリですか?」シーナも不思議そうだ。
「「どうぞ」」と案内の天龍さんと王の居住区に入って本当にビックリした3人、
本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本
でいっぱいだ!
「ふあー???凄いですねぇー」その本の量に圧倒されるシーナ。
高さ30m幅15m長さ500mほどの通路の両脇に本が所狭しとズラーと並んでいる。
「すっげーー!これマジで何冊の本があるの?」興味深く周囲を見回すガイエスブルク。
「しかもどれも凄い貴重な本ばかりだわ」多少、本の知識があるエレンの目が輝いている。
「それがここにある本は一部分なんだよね、今お父様がいる書斎にはこれの5倍はあるよ」
と本棚の本を撫でるリール、父娘で本が大好きなのだ。
「5倍・・・」
おおよそ世界にある過去1500年の貴重な本は大体ここにあると言う。
総数は不明だが2000万冊は楽に越えてるとの事。
天龍王とリールもまだ読んでない本もかなり多いらしく現在新しく出版されている本もここに随時収納されて行っているらしい。
この世界の本の歴史資料館と言っても良い。
「お父様はここに居る時は本を読む為に人化しているから緊張しなくて良いよ」
天龍王アメデも全ての本が読破していないと言うから本の力とは凄まじいモノである。
本とはその世界の文化と言っても差し支え無い。
本を眺めながら一行は奥へ進んで行く。
本の通路を抜けると書斎の名をした巨大図書館に出た。
「これは・・・凄いですね!」
左に向かって螺旋状になってる通路が下へ降りて行き、その右側は本棚になっていた、
歩きながら本を探せる構造だ「ほへー」と本を眺めながら通路を進むと長さ2mの人間用の机と椅子がそれぞれ100セットほど置かれてるスペースがあり10名ほどの人化している天龍達が思い思いの本を読んでいた。
「ここは皆んなにも開放してるからね。本の持ち出しはお父様の許可が要るけど」
リールに気づいた天龍達が軽く会釈する、図書館で大袈裟な礼などは他の人達の迷惑になるのでやめましょう。
ちなみに龍サイズの本が世界に存在しないのは「単純に紙の量が多くなる」からだ。
人化すれば紙の量が100分の1にまで減るので無理に龍サイズの本を作るメリットが無い。
同じ理由で書類関係も全て人間サイズに統一されている。
身体が大きいのも色々なデメリットが有るのだ。
螺旋状の本の通路も終わり、今度はまた直接の通路になって直ぐに飾りっ気のない普通の扉があり両脇に警備の龍戦士が2人立っていた。
「着いたよ」と言いながらリールが警備の龍戦士に手を上げると1人が扉を開けてくれた。
龍戦士に頭を下げて中に入ると、少し大きめの書斎になっており正面のこれまた普通の書斎机に1人の金髪碧眼の青年が座っていた。
リールに似た金髪で中性的な美しい顔立ちの男性、この男性こそ天龍王アメデである。
纏う気配は穏やかそのもの・・・だが奥の深さは地龍王クライルスハイムと同様に計り知れない・・・3人はリールの横に並んで背筋を伸ばした。
「お父様、地龍王クライルスハイム様のご息女のシーナ様と臣下のエレン殿、ガイエスブルク殿をお連れしました」そう言ってリールがシーナに手を差し伸べたので。
「天龍王アメデ様、御初に御目にかかります、地龍王クライルスハイムの娘、シーナと申します」
胸に手をやり目を瞑り斜め45度に頭を下げると両脇のエレンとガイエスブルクは無言でシーナと同様の礼を取る。
そう言えば表向きにはエレンとガイエスブルクはシーナの配下だったね。
するとアメデはゆっくりと立ち上がり、
「我は天龍王アメデと言う、地龍王クライルスハイムのご息女のシーナにエレンとガイエスブルクよ、良く天空城に来てくれた」
天龍王アメデもシーナ同様の礼をする。
龍種同士の礼は見苦しくなければ良いのでこれで充分なのだ。
口上とかも必要無いと言うかそんな器用なモノは龍種には無い。
「まあ座って楽にしなさい」アメデが指し示すソファに座る一同。
臣下が後ろに立つのは護衛の時のみだ。
ここでエレンやガイエスブルクが遠慮して後ろに立つと、「お前の事を信用していない」と取られるとんでもない非礼になるので普通に同席する。
全員が席に座るとアメデがシーナに「やっと直接会う事が出来たなシーナよ、私の事は覚えておるか?」と聞いて来たので。
「あっはい!子供の頃に毎日教会でお話ししてましたね」と笑顔になるシーナ。
子供の頃に「天龍教」教会でシーナは天龍王アメデの像を磨きながらずっとアメデに話しかけていたのだ。
その時だけはユグドラシルではなくシーナ本人が話しかけていたのだ。
つまりその時点で天龍王アメデはシーナ=ユグドラシルだと知っていたのだが地龍王クライルスハイムにバレると天龍王が怒られそうなのでエレンとガイエスブルクはスルーする事にした。
実際には天龍王アメデは地龍王と海龍王と天界にはユグドラシルの事をちゃんと報告していたのだが、龍王達にも色々とあるのだろう。
シーナからの問いかけにアメデが応えて毎日たわいの無い会話をしていたのだ。
これは今までシーナと3龍王の他は誰も知らなかった事でリールも驚いているが、天界においては「ああ~ー!!ユグドラシルが見つかったぁ!!」の報は上へ下へのお祭り騒ぎになっていたのだ。
『もおおおお!!!何でもっと早く連絡してくれなかったんですかぁ?!』
自分の失敗を棚上げする女神ハルモニア。
「知らないですよ!今の今まで消滅しかけていたんですから!
そもそも何で念話が遮断されたんですか?!
私の事だからどうせ「主神に昇格した時に女神情報のバックアップを取り損ねていた」んですよね?!」
自分の事なので見なくてもパシリ女神がやらかしたヘマの予想が付くシーナ。
『ごめんなさい!その通りです!さすが私ですね!とおーっても鋭いです!』
とおーっても痛い所を突かれたパシリ女神。
「しっかり仕事をして下さーーーーい!!」
『ごめんなさーーーーい?!?!』
《あの?あの?自分同士で喧嘩しないで下さい?》
いきなり始まった喧嘩にオロオロするばかりのユグドラシル。
通信が再開した瞬間に完全自立型幻神シーナと本体女神ハルモニアが不毛な自分同士の言い争いをしたのは言うまでも無い・・・
1000年ぶりの感動の再会がこんな調子だったので、そりゃあシーナがパシリのパシリの幻神に嫌気がさして、女神ハルモニアの事を母親と思うのが無理なのも仕方ないだろう。
100%、バックアップを取らなかったパシリ女神が悪い。
そんなお祭り騒ぎがあった事など華麗にスルーして、
「今日は難しい話しは無しだ、ゆっくりとして行きなさい」
とアメデはシーナに微笑んだ。
文官の天龍の女性が紅茶を出してくれたので一口飲んでリールが話し始めた。
「本当にシーナは苦労したのね~、もう少し早く私も気が付いてあげれれば良かったね」
「いえいえいえ!悪いのは全て私(パシリ女神)でリール様は悪くないですよ。
そもそもの話しで私(パシリ女神)が「世界全域へのお告げ」をしてくれれば私の方から逆探知して私に連絡する事が出来たんです」
「世界全域へのお告げ」とは文字通りに世界の主神が世界全ての者に神の言葉を伝えるモノである。
莫大な神力を使うが、やろうと思えばパシリ女神に出来ない事ではない。
『きゃあああ?!その手がありましたーーーー?!』
1000年間その方法に気が付かなかったパシリ女神・・・この女神様は主神に昇格してポンコツ化したのか?
「もしかして・・・ハルモニア様ってポンコツ?あっ、いらっしゃいませハルモニア様」
『リール?!酷いですぅ!あっ、お邪魔してます』
「何で当然の様に現世に降臨するんです?」
最近は「世界の言葉」の設定を忘れたのか普通に正面玄関から現れるポンコツ女神に呆れるシーナ。
実際にはボンヤリと光る火の玉しか見えないのだが・・・
『いえ、何か呼ばれた気がしまして』
「そうですか・・・それで何で「お告げ」をしなかったんですか?」
『イジメないで下さいシーナ!』自分自身には情け容赦無くツッコミを入れるシーナ。
「それにしても器用な技ですね?」
『そうでしょう?かなり練習しましたからね!』ドヤ顔の火の玉女神。
言うまでも無くシーナは皮肉で言っているのだが・・・
莫大な神力を持つ本体をただの火の玉に変えるとは中々凄い事をしているポンコツ女神。
「それが出来て何で「お告げ」はしなかったんですか?」
『だから蒸し返さないで下さい!』
珍しくしつこいシーナ。1000年間も無駄な苦労させられた怒りは早々には収まらないのだ。
「女神様の有り難みが・・・」
かつての自分と子供の様な喧嘩をする火の玉女神を見て両手で顔を覆うエレン。
天界でも屈指の力を持つ女神様なんだけどね・・・
「女神様も大変だったんだからあんまり文句言うなよシーナ?」
『!!ありがとうございます地龍君!大好きです!』
「あっつーーーーいい?!?!」
感動した火の玉女神に抱きつかれて火傷を負ったガイエスブルクだった。
堅固な地龍の防護壁でも火の玉女神の神力の前では紙同然なのだ。
「地龍君に何してんですかぁ?!」これにはマジキレのシーナ。
『ごめんなさーい?!?!』
「地龍君は私のモノですよーーー!!」
嫉妬の余りに思い切りガイエスブルクに抱き付くシーナ。
「うおお?!シーナ?!やめ?!」ボギィイイイ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ボギィイイイ?!?!
「あ・・・背骨が折れたね・・・」リールが唖然しながら呟く・・・
《きゃあああああ?!?!地龍君ーーーーー?!?!》
天龍王の書斎にユグドラシルの悲鳴が響いた・・・
幸いにもお医者さんの巣窟の天空城だったのでリール先生による治癒魔法10分で背骨の骨折とついでに火傷も直ったガイエスブルク・・・直ぐそばにリール先生が居て良かったね!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「少しは手加減ってもんを覚えろよシーナ?!」
単純なパワーや防御力で言えば赤龍のシーナより土龍のガイエスブルクの方が上だが火の玉女神の障壁破壊に赤龍シーナの鯖折りのコンボを食らえば強靭なガイエスブルクとて骨折するのだ。
「ごめんなさーーーーーい?!?!」
骨折は完治したが体力と魔力に甚大なダメージを食らったガイエスブルクは怠そうにソファーに座っている。
「王の書斎でいきなり背骨を折るヤツなど珍しいのう?」
いきなりの背骨骨折事件にドン引きしている天龍王アメデ。
「「「『すみませんでしたーーーーー!!!』」」」声を揃えて天龍王に謝る幻夢と元凶女神。
「まぁ・・・ロケットブースターに乗って黒龍王と共に壁をぶち抜いて現れるエルフよりマシじゃがな・・・」
「ぶふう?!?!」お姫様にあるまじき声で吹き出すリール。
アメデの不意打ちでイリス&ブリックリンの天空城突撃を思い出したのだ。
「リールよ・・・」
「あはははは・・・ご・・・ごめ・・・ごめんなさい・・・あははは」
ツボにハマったリールは中々立ち直れず笑っている。
「構わぬ、思い切り笑うが良い。今のお主には必要じゃからな」
「そ・・・それって?あは・・・あはははは」
とりあえずリールが笑い終わるのを待って、天龍王アメデがシーナ達を呼んだ本当の理由を話し始める。
「それにしても今回はシーナが来てくれて本当に助かった。
リールがジャコブの件から家から出て来なくなってしまってな。
シーナ達と会ってやっと落ち着いた様子だ、顔色も少し良くなった」
そう言って笑うアメデは天龍王では無く娘を心配する父親の笑顔になっている。
「あっ!そう言えばあの変人さんの事忘れてましたね」頭をポリポリするリール。
『ジャコブ君に関してはノーコメントで』火の玉女神も関わり合いたくないらしい。
「誰も教えてくれないのですが本当に要塞内で何があったのですか?」
同僚の龍戦士の誰に聞いても、「「いや、エレンは知らんで良い」」と言われ続けて内心で不貞腐れいるエレン。
恋人のブリックリンが「そんな事より遊びに行こう」とか、わざわざ人化して誘って来たが、そんな誤魔化しに騙されるエレンでは無い。
ムッとしてブリックリンの頬を両手で思い切り引っ張ってやったのだ。
「ストップエレン!アレは忘れたいの!聞かないで!」
ピシッと手のひらをエレンに向けるリール。
「そう言えばあのド変態・・・ジャコブさんは何がしたかったのか私には全然分かりません」
シーナもあのド変態を思い出してしまったのか身震いして両腕を摩っている。
「奴の事は誰にも理解出来ぬであろうな。奴は海龍そのものだ。
大海原を何処へでも自由に進む、変に抑えつけると世界が滅ぶやも知れん。
放って置くのが1番だ」
突然アメデが恐ろしい事を言い出した?!
いや・・・これはもっともらしい事を言って関わるのを回避している?
「世界が変態だらけになってしまうのですか?!お父様?!」
リールが恐ろしい地獄絵図を想像してしまった様だ。
マジ怖え!世界総変態化して、向こう3軒両隣り全てが変態だらけに?!
爆発か?!爆発してから菌が飛んで感染か?!変態は空気伝染するのか?!
「ふむ・・・まぁ・・・それでも世界が滅ぶやも知れんが・・・」
アメデも変態しか居ない世界を想像してしまったのか珍しく嫌そうな顔をしている。
アメデは、こほんと咳払いをして、「奴の場合はストレスのせいで怒ると大津波を起こすやも知れんと言う事だな。
地琰龍ノイミュンスターが怒りで噴火を起こすのと同様だ」と、怖い事を言った。
「おっ大津波?!なっ・・・なっ、なんて傍迷惑な変態でしょうか?」
エレンが嫌悪感満載の表情になる、いや本当に傍迷惑な変態だよな!
「確かに放置するのが1番ですね」ガイエスブルクは呆れの極地の表情だ。
「えっ?ノイミュンスターは怒ると噴火を起こすのですか?」
シーナはあんな変態よりノイミュンスターの方が気になる様子だ。
一気に目が輝き出した、ホントに変態なんぞどうでもいい!って感じだ。
「うむ、地琰龍ノイミュンスターは火の地脈を司っておるからな。
奴の場合は怒りが頂点に達してしまうとかなり広範囲の火山が火を噴いてしまうな。
だがまぁ・・・ここ3000年はそんな事が起こっておらんから知る者も少ない。
奴が若い頃は良く火山を噴火させておった。
それでアメリアがつけた渾名が「地琰龍」ノイミュンスターだ」
自分がノイミュンスターと喧嘩した時に世界規模の大型ハリケーンを起こして天蒼龍シーナに思い切り頭を叩かれたのをシレッと棚に上げるアメデ。
「ほへー???ノイミュンスターは若い頃は怒りぽかったんですねぇ」
育ての親の若い時の話しは楽しいのか満面の笑顔のシーナであった。
「うむ・・・喧嘩仲間と毎日喧嘩しておったな」
その喧嘩仲間ってのが天龍王アメデで、毎回喧嘩の度にアメデとノイミュンスターの頭を叩いていたのが天蒼龍シーナだった。
天龍王と地龍王との仲が悪いとの神話が有るのはアメデとノイミュンスターの喧嘩のせいだったりする。
地龍王クライルスハイムは、その喧嘩のとばっちりを毎回受けていただけなのだ。
自由な海龍王アメリアは、気が向いた時にだけアメデとノイミュンスターに飛び蹴りをかまして今度は3人で喧嘩を始め天蒼龍シーナに叩かれるのが恒例行事だった。
それに加えてアメデと黒龍王の喧嘩も始まるモノだからクライルスハイムからすればマジでたまったモノでなかったのだ。
本当にクソガキ共だね!
『あの頃が1番大変でした・・・』遠い目の火の玉女神。
そしてシーナは・・・余りにも昔の事過ぎて当時の事など綺麗サッパリと忘れているので目をキラキラさせて話しを聞いている。
これは本体と分身体の記憶力性能の差である。
《そんな事があったんですねぇ》
基本的に龍種は火の玉女神の管轄だったので三龍王が喧嘩しまくっていた事は知らないユグドラシル。
「だから、お父様はお母様に頭を叩かれていたんですねぇ」
ヘスティア先生の苦労の甲斐も有り、大人になって落ち着いた後でも当時の名残りでたまに天蒼龍シーナに頭を叩かれていた天龍王アメデ。
天蒼龍シーナが、かなり思い切りアメデの頭を叩くのでリールもビックリしてたのだ。
「まぁ・・・アレが当時のコミュニケーションじゃったからな」
気分が乗って、リールにも話して無かった幼い頃の話しをし過ぎてバツが悪そうなアメデ。
『そうですねぇ・・・毎日毎日、世界各地で火山の噴火や竜巻に大津波・・・本当に天災続きでしたねぇ』
そんな環境で当時の魔法世界の住人達は良く生き残っていたモノだ。
「・・・60%くらいはノイミュンスターが悪かったのですぞ?」
『そうですねぇ~、そして35%はアメデ君で5%がアメリアちゃんが悪かったですよね~』
「う・・・うむ」心当たりが有り過ぎるアメデ。
そしてやっぱり悪くない地龍王クライルスハイムは良く怒らなかったよね?
『あっ!でも我慢の限界を超えて遂に怒ったクライルスハイム君が暴れてから皆んな喧嘩しなくなったんですよね?』
「怒らすと1番怖いのはクライルスハイムですからね。
クライルスハイムに怒られて、さすがに我もノイミュンスターもやり過ぎたと反省したのです」
その時に結構クライルスハイムに言葉でボコボコにされたアメデとノイミュンスターだったのだ。
要領の良いアメリアはクライルスハイムが怒り出したの見て直ぐに逃げて海中深くに籠って浮上して来なかった。
その後、結局はクライルスハイムに捕まって、逃げた事も含めて50日間に渡り説教を食らい泣かされたのだった。
「ほえ~?お父様って怒ると怖いんですねぇ?」
「シーナよ、誰しも本気で怒ると怖いモノだぞ?」
『シーナが怒ると怖いのはクライルスハイム君に似たからでしょうか?』
本体女神ハルモニアでもシーナが怒った時は怖いのだ。
「いや、アレは「神虎」の血ですな、怒り方がヤツと一緒です」
クライルスハイムが本気で怒ると先ずは、コンコンと説教から始まるのでシーナの怒り方とは違う。
「私って怒ると怖いですか?」自覚が無い大魔神シーナ。
「怖い」
「怖いわね」
《怖いですぅ》
『怖いです』
「ハルモニアちゃんやユグドラシルまで?!」
本体女神やユグドラシルにまで怖いと言われてこれはショックなシーナだった。
と言うかシーナは本体女神ハルモニアの事を「ちゃん」付けで呼んでたんだ?
その後もなかなか興味深い事をアメデから聞けたが、側近の天龍がアメデを迎えに来た。
天龍王アメデとしての執務の時間が来てしまった様だ。
実は今回もアメデはかなり無理をして時間を作っていたのだ。
王が暇だとその国は滅ぶからね。
「さてリールよ。お前はまだ精神的なエネルギーが不安定だ。
今より長期休暇をやるからシーナ達と遊んでまいれ」
突然アメデがリールに休暇を言い渡す。
どうやらこれがシーナ達を呼んだ本当の理由だった。
「ええっ??!長期休暇?私がですか?!!」
長期休暇など、ここ3000年以上、母親の天蒼龍シーナの看病の時から取った事がないリールは困惑している。
「うむ、これからシーナ達と時間が許す限り遊ぶが良い。休暇の期間は無制限じゃ。
やはりユグドラシル様の件での無理が出ておるな。
医者の不摂生とも言うであろう?
ゴルドの監視はニームに任すが良い、よいな?これは命令じゃぞ?
シーナもこの娘が無理せぬ様に見張ってやってくれ」
そう言ってウインクして去るアメデ、案外とお茶目さんな龍なのだ。
アメデはシーナにリールの事を頼みたくて呼んだのだった。
扉が閉まるのを呆然と見送るリール。
「そっかぁ・・・私って精神エネルギーが枯渇してたから感情が不安定だったんだ」
自分の両手を見て呟くリール、お医者さんは自分の体の不調は分からない物だ。
絶好調の時のリールならジャコブの「ブラブラ」を見ても「ブラブラ」を蹴り飛ばして終わりだったのだ。
それがまさかのガチ泣きだ。
リールが「ブラブラ」を蹴ってくれなくて残念だったねジャコブ君・・・
《あの・・・ごめんなさいリール・・・私のせいで》
リール不調の原因が自分にあったと分かり落ち込むユグドラシル。
さすがの天舞龍リール様と言えどユグドラシルほどの上位存在を復活させるのを無償とは行かなかった。
現在のリールの精神エネルギーは最高値の20%程度しか残っていなかった。
そもそも基本が物凄いエネルギーなので本人でも分かり辛かったのだ。
リール不調にいち早く気づいたのは父親のアメデだけだった。
娘の自分の事をいつもお父様が見ていてくれていたと思ったリールの精神エネルギーが3%回復した。
「いいよ!気にしないでユグドラシル!私がやりたかったからやっただけよ!」
と笑顔で親指を立てるリール、そこは本当の本心なのだ。
「ありがとうリール」珍しく表層人格に出て来て微笑むユグドラシル。
そのユグドラシル笑顔でリールの精神エネルギーが2%回復した。
ちなみにシーナは、先程皆んなから「怖い」と言われて深層人格に籠ってイジけてしまっている。
なのでこれからの話しはユグドラシルの出番なのだ。
「うーん?でも長期の休暇かぁ・・・
実際に何すれば良いのやら・・・全然検討が付かないよ?」
これが天朱龍ニームなら即座に100の長期休暇の計画が思い浮かぶのだが、真面目なリールは、どうやって遊べば良いのか分からないのだ。
「とりあえず思い付く限り遊べば良いんじゃないかな?
俺は協力するよリールお姉さん」
「私もいくらでも協力しますよ」
そう言うエレンもかなりの真面目ちゃんなので、あんまり遊びとかには期待は出来ないかな?
「遊ぶのは苦手ですけど私も頑張ります」手を上げるユグドラシル。
「みんなありがとう!」
協力してくれる友達に感動したリールの精神エネルギーが2%回復した。
「でも何をして遊ぶ?」ガイエスブルクの問いに対して、
「遊び・・・そうですわね・・・霊樹時代に精神を落ち着かせる時に私の場合は森の先に有った湖を眺めてましたわ」とユグドラシル。
宣言通りに珍しく主導するつもりな様子だ。
ちなみにシーナは、とうとう不貞寝してしまった。
いじけ始めると長いからねコイツ。
「あっそれ良いね。湖ならゆっくり出来そう」リールも乗り気な様子だ。
「じゃあ、ゆっくりと空の景色を眺めながら移動しては?
先程のゆっくりと飛ぶリール様はとても楽しそうだったから」
エレンも頑張って少しずつ具体的な案を出してくる。
「なるほど・・・そう言えば私、最近はゆっくり空を飛んでなかったよ・・・
じゃあゆっくりと空を飛んで南の森の湖に行こうか!」そうリールが言うと。
「「「賛成!」」」その場の全員が賛成した。
そして火の玉女神は仕事に戻ったのかいつの間にか居なくなっていた。
・・・・・・ん?!いや待て!天空城から南の森の中の湖って確か、あのマジヤバな竜の棲家でなかったっけ?
☆
も・・・元ネタが8000字スタートだったのに改稿が終わったら24000字・・・だと?
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ー---
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