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外伝・「戦乙女の英雄」
16話 「お尻ペンペンと迷子」
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「わたくしは殿下から何一つ信頼されていないのです・・・
これ以上王都に居ても仕方ないので一度実家に帰りますわ」
そう言って頭を下げてクロスフォード公爵邸から出て行こうとするファニーに、
「ああ、ファニー様お待ち下さいまし、このまま1人でお帰り頂く訳には参りませんわ。
わたくしにお友達の力になる機会を与えて下さいね。
そうですわね・・・一度御実家にて静養される方が良ろしいですわね・・・
我が家の馬車と護衛を御用意致しますわ」
「え?でも・・・そんな」
「お・友・達・ですから遠慮なさらずに」
エスティマブル公爵令嬢もファニーの精神状態が非常によろしくないと感じて一度ヴィアール辺境伯領へファニーを帰すべきとの判断をした。
今回のファニーは今まで違い本気で落ち込んでいる。
「重ね重ね申し訳ございません、お言葉に甘えさせて頂きます」
エスティマブル公爵令嬢にお礼を言うとファニーは夜の内にクロスフォード公爵家が用意してくれた馬車に乗りヴィアール辺境伯領へと出発する。
翌朝。
「え?帰った?」
「はい、昨晩の内に。
ファニー様はクロスフォード公爵家が責任を持ってヴィアール辺境伯領へとお送り致しますのでご安心下さいませ」
「・・・」ファニーが自分に何も告げずに帰ってしまった事にショックを受けるヤニック。
「殿下はファニー様とお会いしてどうするおつもりだったんですか?」
「え?」
「いえ・・・殿下は何をお話しするのかな?と思いまして・・・
殿下はただファニー様に側に居て欲しいと思ってますよね?
それをそのままファニー様にお伝えするつもりだったのですか?
それって置き物と一緒ではありませんか?」
「・・・」
エスティマブルの指摘通りヤニックはファニーと2人で何をしたいとか考えた事は無かった。
「もし置き物の王妃としてファニー様を据えるのでしたら、わたくしは殿下の事を一生涯軽蔑致します」
そう言うとエスティマブルはヤニックに深く頭を下げて公爵邸の中へと消えて行ったのだった。
このエスティマブルの指摘には流石に堪えたヤニック。
5分ほど公爵邸の玄関先から足が動けなくなったのだった。
そして5分後・・・
「よし!ヴィアール辺境伯領へ向かうか・・・」
自分がファニーと何をしたいか再度理解したヤニックは一度王城へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふむ・・・まぁ・・・これは儂がこのままの状態で預かっておこう」
渋い表情の大公エヴァリストがヤニック王太子から受け取ったのは、
「王太子の返上と王位継承権の破棄と王立学園の退学」が記された正式な書類だった。
要するにファニーを王都に連れ戻せなかった場合は自分がヴィアール辺境伯領へ住み着くつもりのヤニック。
「お前は生粋の馬鹿なのか?!」と言ってやりたいエヴァリストだったが、今回はマジでファニーとの仲がヤバいんだろうなぁと思い黙っておいた。
「叔父上申し訳ありません、失礼致します」
エヴァリストは考える次の国王の事を・・・
ヤニックがリタイアした場合、次の国王は亡きカイル先王とエヴァリストの甥で第三王位継承権を持つ公爵位を継いだばかりのカターニア公爵になる。
《あやつは良い男なんだが・・・いかんせん良い人過ぎるのが・・・》
国王になる者には「自分の欲望」もかなり必要な要素なのだ。
実際にもしもカターニア公爵が本気で自分が次の国王になろうとすれば本当に国王になれるのだが全く一切そんな動きは無いのだ。
国王なんかに興味は無く、今日も今日とて妻と共に慈善事業に精を出している。
夫婦2人揃ってとても良い人過ぎて国王と王妃には全然向いていない。
良い人柄を利用されて奸臣のやりたい放題、他国から搾取されたい放題になりかねない。
清濁合わせ持つのではなく清しか持っていない。
そう言う人物も国には必要なのだが国王としては・・・
「あー・・・早く引退してぇ・・・」
ヤニックが去った後の執務室でまだまだ念願の引退隠居生活には程遠いエヴァリストは1人呟いたのだった・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クロスフォード公爵家の手配で何事も無く無事にヴィアール辺境伯領へと辿り着いたファニー。
先触が来て大騒ぎになっているヴィアール辺境伯家は家令まで総動員してクロスフォード公爵家の一団を向かい入れた。
娘の我儘で格上の公爵家が100名体制で動いたのだ、そりゃもう恐縮しきりなのだ。
「本当にすみませんでした・・・ありがとうございます」
頭が膝に付くほどに深くクロスフォード公爵家の一団に頭を下げるファニー。
「いえいえ、お嬢様のご友人の為ですから」
ファニー護送隊隊長の騎士が爽やかな笑顔で応じる。
ぎりりりりりりり!
ファニーの隣で同じく頭を下げている母親のスージーの右手はファニーのお尻を思い切りつねっているのだ。
この後は超弩級の「お尻ペンペン」がなされるであろう。
クロスフォード公爵家の一団を豪華な晩餐会でもてなして次の日の昼にクロスフォード公爵家一団は王都へと帰って行った。
クロスフォード公爵家一団の姿が見えなくなった途端に終始笑顔だった母スージーの顔が般若へと変わる!
「ひいいいいいいいいいいい???」
ファニーは猛烈ダッシュで逃亡を測ろうとするも首根っこをガシィイ!!と掴まれる!
「ファニーいいいいいいい!!!!
少しは物事を考えなさぁあああああいいいい!!!」
母スージーはブチ切れである、父のヴィアール辺境伯は母スージーの本気のブチ切れに凄い顔をして立ちすくんでいる。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
クルンとファニーを回転させて「お尻ペンペン」のベストポジションを取る母スージー。
「公私混合は厳禁だと教えたでしょおおおおお!!!」
バシーーーン!ベチーーーーン!ドバチーーーーーン!
「ごめんなさい!ごめんなさい!もう致しませーーーーんん!!!」
泣き叫ぶ娘に母の愛の鉄槌が下される!元勇者渾身の「お尻ペンペン」だ!
ファニーのお尻は4つに割れたのだった・・・
その夜・・・
「もう無理ですわ・・・一歩も動けませんわ」
ベッドの上でうつ伏せになりお尻に氷嚢を乗っけているファニー。
「マジで何してんだよファニー?」食わせ者の兄アンソニーもこれにはドン引きだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃、ヴィアール辺境伯へと向かっているはずのヤニックだが・・・
そのヤニックは何か知らんが「スパルナ(ガルーダ)」と戦っていた。
ヤニックが特に何かした訳でもなく、森の中を走っていたらいきなりスパルナに絡まれたのだ。
《兄上の仇ーーーー!!!》
「だから待てって!俺はガルーダと戦った事なんざ無いっての!!」
《黙れ!金髪碧眼に加えて只者では無い動き!そんな奴がそうそう居てたまるかぁ!》
「変な金髪碧眼の風評被害は止めろぉ?!」
スパルナには申し訳ないがこの世界では金髪碧眼は各種族でもスタンダードで世界各地に生息している。
強いて上げればピアツェンツア王国の王族の金髪は他よりやや明るい金髪である。
圧倒的に珍しいのは銀髪だ。理由は知らん。
《そやぁあああ!!》
シャイニングウィザードの様な動きでヤニックの首を刈りに行くスパルナ!
「早っ?!」
ガシィ!!
鋭い攻撃だったがギリギリ肘を立ててスパルナの攻撃をブロックするヤニック!
「分かんない奴だな君は!大体からして君のお兄さんが討たれたのはいつの話でどこの話しなんだ?!」
《とぼけるなあ!35年前のボスクでの事だ!忘れたとは言わせんぞ!》
「俺が産まれる前の話しじゃないかぁ?!それにここは中央大陸だぞ?!」
ボスクとは「西の大陸」のゴルド王国にある地方名である。
《な?!なんだとぉ?!》ヤニックの叫びにピタリと動きを止めるスパルナ。
「俺の名前はヤニック!24歳です!そしてここは「中央大陸」のヴィアール地方です!」
人違い云々以前のアンタアホー?的な論外の間違いだね。
《ばかな・・・俺はまた「迷子」になっている・・・のか?
ここはヴィグル帝国ではない・・・のか?》
自分が迷子状態だと知り一気に動揺し始めたスパルナはキョロキョロと周囲を見回す。
「「ヴィ」しか合ってませんよ?そもそもどれだけこの森を彷徨っていたんですか?
見た感じ相当ボロボロに見えますが?」
《・・・3ヶ月・・・・》
「・・・少しは「変だな、ここヴィグル帝国とは違うかも?」って思いましょうね?
俺が通り掛からなかったらどうするつもりだったんですか?」
現在2人が居る地点は、ヤニックが人目に付かない様にと選択したルートで半径15km圏内に集落など何一つ無い深い森の中だ。
《すっ・・・すまん人違いだった様だ。
それであの・・・ヴィグル帝国へ行く道を教えて貰えると助かるのだが・・・》
「・・・ここからだと南南東へ13500km付近です」
空を飛ぶ種族の迷子とは、なんともまぁダイナミックである。
《13500km・・・どうして俺はこんな場所に?》愕然としているスパルナ。
どうしてこんな場所に居るか?そんなのお前しか知らん、聞かれても困るわ。
コイツ・・・ヴィグル帝国に到着する前に絶対に野垂れ死ぬと思ったお人好しのヤニックは詳しく事情を聞く事にした。
スパルナの名前はボード君と言う。
黙示録戦争に参加をするべく「3年前」に西の大陸の「フランチェスカ」と言う亜人達の国からヴィグル帝国へと旅立ったと言う事だ。
ちなみにフランチェスカ国とヴィグル帝国とは「隣国」である。
ボード君の家からヴィグル帝国首都までは空を飛べば、どんなに遅くても2時間も掛からない距離だった。
「同じ勇者として残酷な事実をボードさんに伝えないといけません・・・
黙示録戦争は「終結」しています、今回は「引き分け」に終わりました。
勇者の軍団は一度解散されて全員それぞれの自宅に帰りました」
ボード君が3年間迷子になっている間に黙示録戦争は終わっていた・・・
《そ・・・そうか》終戦を知り明らかに凹んだ様子のボード君。
「とりあえず俺と一緒にヴィアール辺境伯領へ行きましょう」
ボード君が同じ「勇者」と分かった以上、放っておく訳にもいかずボード君をヴィアール辺境伯領へと連れて行く事にしたヤニック。
《申し訳ありません・・・お世話になります》
こうして旅の道連れに「勇者ボード」をゲットしてしまったヤニック。
ヤニックがヴィアール辺境伯領へと到着出来るのはいつになる事やら・・・
これ以上王都に居ても仕方ないので一度実家に帰りますわ」
そう言って頭を下げてクロスフォード公爵邸から出て行こうとするファニーに、
「ああ、ファニー様お待ち下さいまし、このまま1人でお帰り頂く訳には参りませんわ。
わたくしにお友達の力になる機会を与えて下さいね。
そうですわね・・・一度御実家にて静養される方が良ろしいですわね・・・
我が家の馬車と護衛を御用意致しますわ」
「え?でも・・・そんな」
「お・友・達・ですから遠慮なさらずに」
エスティマブル公爵令嬢もファニーの精神状態が非常によろしくないと感じて一度ヴィアール辺境伯領へファニーを帰すべきとの判断をした。
今回のファニーは今まで違い本気で落ち込んでいる。
「重ね重ね申し訳ございません、お言葉に甘えさせて頂きます」
エスティマブル公爵令嬢にお礼を言うとファニーは夜の内にクロスフォード公爵家が用意してくれた馬車に乗りヴィアール辺境伯領へと出発する。
翌朝。
「え?帰った?」
「はい、昨晩の内に。
ファニー様はクロスフォード公爵家が責任を持ってヴィアール辺境伯領へとお送り致しますのでご安心下さいませ」
「・・・」ファニーが自分に何も告げずに帰ってしまった事にショックを受けるヤニック。
「殿下はファニー様とお会いしてどうするおつもりだったんですか?」
「え?」
「いえ・・・殿下は何をお話しするのかな?と思いまして・・・
殿下はただファニー様に側に居て欲しいと思ってますよね?
それをそのままファニー様にお伝えするつもりだったのですか?
それって置き物と一緒ではありませんか?」
「・・・」
エスティマブルの指摘通りヤニックはファニーと2人で何をしたいとか考えた事は無かった。
「もし置き物の王妃としてファニー様を据えるのでしたら、わたくしは殿下の事を一生涯軽蔑致します」
そう言うとエスティマブルはヤニックに深く頭を下げて公爵邸の中へと消えて行ったのだった。
このエスティマブルの指摘には流石に堪えたヤニック。
5分ほど公爵邸の玄関先から足が動けなくなったのだった。
そして5分後・・・
「よし!ヴィアール辺境伯領へ向かうか・・・」
自分がファニーと何をしたいか再度理解したヤニックは一度王城へと向かった。
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「ふむ・・・まぁ・・・これは儂がこのままの状態で預かっておこう」
渋い表情の大公エヴァリストがヤニック王太子から受け取ったのは、
「王太子の返上と王位継承権の破棄と王立学園の退学」が記された正式な書類だった。
要するにファニーを王都に連れ戻せなかった場合は自分がヴィアール辺境伯領へ住み着くつもりのヤニック。
「お前は生粋の馬鹿なのか?!」と言ってやりたいエヴァリストだったが、今回はマジでファニーとの仲がヤバいんだろうなぁと思い黙っておいた。
「叔父上申し訳ありません、失礼致します」
エヴァリストは考える次の国王の事を・・・
ヤニックがリタイアした場合、次の国王は亡きカイル先王とエヴァリストの甥で第三王位継承権を持つ公爵位を継いだばかりのカターニア公爵になる。
《あやつは良い男なんだが・・・いかんせん良い人過ぎるのが・・・》
国王になる者には「自分の欲望」もかなり必要な要素なのだ。
実際にもしもカターニア公爵が本気で自分が次の国王になろうとすれば本当に国王になれるのだが全く一切そんな動きは無いのだ。
国王なんかに興味は無く、今日も今日とて妻と共に慈善事業に精を出している。
夫婦2人揃ってとても良い人過ぎて国王と王妃には全然向いていない。
良い人柄を利用されて奸臣のやりたい放題、他国から搾取されたい放題になりかねない。
清濁合わせ持つのではなく清しか持っていない。
そう言う人物も国には必要なのだが国王としては・・・
「あー・・・早く引退してぇ・・・」
ヤニックが去った後の執務室でまだまだ念願の引退隠居生活には程遠いエヴァリストは1人呟いたのだった・・・
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クロスフォード公爵家の手配で何事も無く無事にヴィアール辺境伯領へと辿り着いたファニー。
先触が来て大騒ぎになっているヴィアール辺境伯家は家令まで総動員してクロスフォード公爵家の一団を向かい入れた。
娘の我儘で格上の公爵家が100名体制で動いたのだ、そりゃもう恐縮しきりなのだ。
「本当にすみませんでした・・・ありがとうございます」
頭が膝に付くほどに深くクロスフォード公爵家の一団に頭を下げるファニー。
「いえいえ、お嬢様のご友人の為ですから」
ファニー護送隊隊長の騎士が爽やかな笑顔で応じる。
ぎりりりりりりり!
ファニーの隣で同じく頭を下げている母親のスージーの右手はファニーのお尻を思い切りつねっているのだ。
この後は超弩級の「お尻ペンペン」がなされるであろう。
クロスフォード公爵家の一団を豪華な晩餐会でもてなして次の日の昼にクロスフォード公爵家一団は王都へと帰って行った。
クロスフォード公爵家一団の姿が見えなくなった途端に終始笑顔だった母スージーの顔が般若へと変わる!
「ひいいいいいいいいいいい???」
ファニーは猛烈ダッシュで逃亡を測ろうとするも首根っこをガシィイ!!と掴まれる!
「ファニーいいいいいいい!!!!
少しは物事を考えなさぁあああああいいいい!!!」
母スージーはブチ切れである、父のヴィアール辺境伯は母スージーの本気のブチ切れに凄い顔をして立ちすくんでいる。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
クルンとファニーを回転させて「お尻ペンペン」のベストポジションを取る母スージー。
「公私混合は厳禁だと教えたでしょおおおおお!!!」
バシーーーン!ベチーーーーン!ドバチーーーーーン!
「ごめんなさい!ごめんなさい!もう致しませーーーーんん!!!」
泣き叫ぶ娘に母の愛の鉄槌が下される!元勇者渾身の「お尻ペンペン」だ!
ファニーのお尻は4つに割れたのだった・・・
その夜・・・
「もう無理ですわ・・・一歩も動けませんわ」
ベッドの上でうつ伏せになりお尻に氷嚢を乗っけているファニー。
「マジで何してんだよファニー?」食わせ者の兄アンソニーもこれにはドン引きだ。
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その頃、ヴィアール辺境伯へと向かっているはずのヤニックだが・・・
そのヤニックは何か知らんが「スパルナ(ガルーダ)」と戦っていた。
ヤニックが特に何かした訳でもなく、森の中を走っていたらいきなりスパルナに絡まれたのだ。
《兄上の仇ーーーー!!!》
「だから待てって!俺はガルーダと戦った事なんざ無いっての!!」
《黙れ!金髪碧眼に加えて只者では無い動き!そんな奴がそうそう居てたまるかぁ!》
「変な金髪碧眼の風評被害は止めろぉ?!」
スパルナには申し訳ないがこの世界では金髪碧眼は各種族でもスタンダードで世界各地に生息している。
強いて上げればピアツェンツア王国の王族の金髪は他よりやや明るい金髪である。
圧倒的に珍しいのは銀髪だ。理由は知らん。
《そやぁあああ!!》
シャイニングウィザードの様な動きでヤニックの首を刈りに行くスパルナ!
「早っ?!」
ガシィ!!
鋭い攻撃だったがギリギリ肘を立ててスパルナの攻撃をブロックするヤニック!
「分かんない奴だな君は!大体からして君のお兄さんが討たれたのはいつの話でどこの話しなんだ?!」
《とぼけるなあ!35年前のボスクでの事だ!忘れたとは言わせんぞ!》
「俺が産まれる前の話しじゃないかぁ?!それにここは中央大陸だぞ?!」
ボスクとは「西の大陸」のゴルド王国にある地方名である。
《な?!なんだとぉ?!》ヤニックの叫びにピタリと動きを止めるスパルナ。
「俺の名前はヤニック!24歳です!そしてここは「中央大陸」のヴィアール地方です!」
人違い云々以前のアンタアホー?的な論外の間違いだね。
《ばかな・・・俺はまた「迷子」になっている・・・のか?
ここはヴィグル帝国ではない・・・のか?》
自分が迷子状態だと知り一気に動揺し始めたスパルナはキョロキョロと周囲を見回す。
「「ヴィ」しか合ってませんよ?そもそもどれだけこの森を彷徨っていたんですか?
見た感じ相当ボロボロに見えますが?」
《・・・3ヶ月・・・・》
「・・・少しは「変だな、ここヴィグル帝国とは違うかも?」って思いましょうね?
俺が通り掛からなかったらどうするつもりだったんですか?」
現在2人が居る地点は、ヤニックが人目に付かない様にと選択したルートで半径15km圏内に集落など何一つ無い深い森の中だ。
《すっ・・・すまん人違いだった様だ。
それであの・・・ヴィグル帝国へ行く道を教えて貰えると助かるのだが・・・》
「・・・ここからだと南南東へ13500km付近です」
空を飛ぶ種族の迷子とは、なんともまぁダイナミックである。
《13500km・・・どうして俺はこんな場所に?》愕然としているスパルナ。
どうしてこんな場所に居るか?そんなのお前しか知らん、聞かれても困るわ。
コイツ・・・ヴィグル帝国に到着する前に絶対に野垂れ死ぬと思ったお人好しのヤニックは詳しく事情を聞く事にした。
スパルナの名前はボード君と言う。
黙示録戦争に参加をするべく「3年前」に西の大陸の「フランチェスカ」と言う亜人達の国からヴィグル帝国へと旅立ったと言う事だ。
ちなみにフランチェスカ国とヴィグル帝国とは「隣国」である。
ボード君の家からヴィグル帝国首都までは空を飛べば、どんなに遅くても2時間も掛からない距離だった。
「同じ勇者として残酷な事実をボードさんに伝えないといけません・・・
黙示録戦争は「終結」しています、今回は「引き分け」に終わりました。
勇者の軍団は一度解散されて全員それぞれの自宅に帰りました」
ボード君が3年間迷子になっている間に黙示録戦争は終わっていた・・・
《そ・・・そうか》終戦を知り明らかに凹んだ様子のボード君。
「とりあえず俺と一緒にヴィアール辺境伯領へ行きましょう」
ボード君が同じ「勇者」と分かった以上、放っておく訳にもいかずボード君をヴィアール辺境伯領へと連れて行く事にしたヤニック。
《申し訳ありません・・・お世話になります》
こうして旅の道連れに「勇者ボード」をゲットしてしまったヤニック。
ヤニックがヴィアール辺境伯領へと到着出来るのはいつになる事やら・・・
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