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外伝・「戦乙女の英雄」
12話 「第二次黙示録戦争勃発!」
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ファニーがグレてから半年の月日が流れた。
半年間魔物討伐に明け暮れたファニーは見事に学園を留年・・・する事は無く普通に進級して最高学年になった。
如何にグレていようがやるべき事はちゃんとやるファニーであった。
ヤニックとは違うのだよヤニックとは。
ヤニックも進級して後2年で卒業である、コイツ実に「1浪2留」かましやがりましたよ!
そんな王太子は居ないよ、なっかなか居ないよ。
「まさかヤニック殿下のお姿を学園で見るとは夢にも思っていませんでした・・・」
「ミリアリア?ヤニック殿下はわたくしより1歳年下です、そうですね?」
「はっ・・・はい!」
アホの王太子に王家としても、いい加減に面倒臭くなったのか今期頭にヤニックを3歳若く発表してしまったのだ?!
そして学園卒業後に元に適当に年齢を戻すのだとか・・・
そんな王家もないよ?なっかなかないよ。
「リアナは殿下の事が心底心配です・・・」
「お手数おかけして申し訳ありませんでしたー!」
リアナ先生の心配は恋慕の情などでは無い、単純に臣下として「人」としての心配だ。
「え?!内務省勤務の進路希望ですか?!」
最高学年になると「進路相談」が有る、そこでファニーが内務省への進路希望を出したのだ。
困惑する進路指導の先生。
当然だろう、ヤニック王太子の婚約者なのでファニーの進路は「王妃」一択のはずだからだ。
「いえ・・・仮にそうなったとしても2年も遊んでいる訳には参りませんわ」
「ご苦労、お察し致します」
一応王家の決まりでも王太子の結婚は「王立学園卒業後」とされている。
結婚するにも最短でも後2年は掛かるのだ。
そしてファニーは「王妃教育」は既に修了しているので卒業後は暇になるので「なら内務省でお仕事を致しましょう」と考えた訳だね。
「ファニー・・・本当にごめん・・・」
「いえ・・・わたくしの事より「卒業」の事のみお考え下さいまし」
・・・・・・そりゃそうだ。
「私、ファニー様は卒業後は本格的に冒険者になられると思っておりました」
結構、ファニーの選んだ進路が意外だったミリアリア。
「そうですねぇ、少しファニー様らしくありませんねぇ」
何だかんだ仲が良いミリアリアとフローラ、ファニーのお世話以外の事では気が合うのだ。
「ミリアリア、フローラ?誰が冒険者をやらないと言いましたか?」
「え?!」「まさか!」
「内務省でも働き冒険者もやるに決まってますわ」
「さすが!それでこそファニー様です!」
「そうですねぇ、まるで実家に居る様な安心感ですねぇ」
本当はフローラもファニーの冒険者稼業を手伝いたいのだが、軍人の彼女は軍法において冒険者の仕事を手伝う事は不可なのだ。
ミリアリアは戦闘力が皆無である、そもそも戦おうとする発想が無い。
こんな感じで平和な時間が流れる。
このまま何事も無く卒業を迎えるかと思っていたが、ここで天災クラスの異常事態が発生する。
「第二次黙示録戦争」の勃発だ。
ヤニックが参加した「第一黙示録戦争」ほどの規模ではないが、魔族側も本国より上位魔族(スペクター)を200名を召集してヴィグル帝国に仕掛けたのだ。
それに対するヴィグル帝国の勇者達も当然応戦、ヴィグル帝国以外の勇者側も世界各地よりイリスを総大将に50人ほどがヴィグル帝国に集結して反撃を開始したのだ。
これによりスペクター200名対勇者80名の戦いになった。
数に劣る勇者側は初戦から劣勢状態に陥った。
イリスからの支援要請を受けてピアツェンツア王国からもイノセントとクルーゼが国内に居たSランク冒険者(勇者)を集めて20人ほどで援軍に向かったが数の劣勢は覆らない。
尚、黙示録戦争は勇者とスペクターに限定された戦いなので国軍の参戦は絶対に許されない。
イリスが参戦したのでラーデンブルグ公国はイリスの公爵位を即座に剥奪した。
これは戦火の拡大を防ぐ為に結ばれた双方同意の上での戦時協定だ。
なので国軍を動かした時点で仲裁者の龍種からの制裁を受ける。
当然、黙示録戦争に関係の無い魔王バルドルの参戦は勿論、一切の助言も支援も厳禁なのだ。
覆らない苦戦にピアツェンツア王国に残っていた勇者はスージーを筆頭にしてヤニックの他8名がヴィアール辺境伯領に集結する。
様々な事情でいずれも第一線から退いた者達だ。
「私はヴィグルへと向かうがお前達は足手纏いになるからダメだ」
勇者としての黒備えのフル装備を装着したスージーがヴィアール辺境伯領に密かに集まった9名の勇者を嗜める。
「はっ!そう言われても言う事を聞く俺達とは思ってないですよね?姉貴」
こちらも黒備えの完全フル装備のヤニックが笑う。
今の彼は王太子でもファニーのアホな婚約者でもない勇者の1人だ。
そしてイリス一派の色はイリスの色である緑でも銀でも無い「黒」なのだ。
理由は隠蔽し易いからとの実用性を最優先した結果だ。
「・・・・・・・死んでも責任は取らんぞ?」
「上等!!」
こうしてヴィグル帝国へ最後の勇者達が援軍へ向かったのだ。
その為にピアツェンツア王国内でも王太子を始めとした主要人物が一気に消えたのだが国王を始め、宰相のエヴァリストまでがヤニック達の事を存在しない者と扱った。
ヤニック達は元より自分の母まで忽然と姿を消して大混乱のファニー。
父親のスティーブンを問い詰めてもファニーをひと睨みして「お前には関係ない、関わるな」の一点張り。
いつも底抜けに優しい父の眼力に圧倒されてしまう。
「一体・・・何が起こっているのですか?・・・・・・・・」
不安に苛まれるファニー。
当然ヤニックは学園をまた留年するのだが今回は今までとは様子が全然違う。
一切の発表が王家からも出ないし、学園長に聞いても「知らぬ」の一点張り。
誰も彼も言葉少なげに何が起こっているか語ろうとはしなかった。
「うう~・・・・お母様~」寂しくて心配で毎夜ベッドで泣くファニーだった・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『バルドル・・・状況はどうなのですか?』
「・・・・・・・・・・イリスへの負担がデカ過ぎるな。
ヤニック達、2級線の勇者達が回復支援に入って後方は少し安定したが前衛が足りておらぬ」
「影見」を使い黙示録戦争の戦況を監視している魔王バルドルも珍しく魔王の玉座に足を組んでドッカリと座り憮然とした表情で口数も少ない。
魔王バルドルは本気で機嫌が悪い時と、完全にふざけて遊んでいる時のみ魔王の玉座に座るのだ。
この時のバルドルは当然、過去最大級に機嫌が悪い。
友人達が傷ついているのを見て機嫌が悪くならない奴はいないだろう。
いつも騒々しい魔王城も主の機嫌に呼応してか今日は無人の城の如く静まり返っている。
『そうですか・・・』
この件に関しては女神ハルモニアですら天界からの厳命により手出し無用なのだ。
『皆さん頑張って下さい・・・』
せめてとばかりに勇者達に勝利の祝福を願う女神ハルモニア。
しかしこの祝福も天界からの干渉により彼らに届く事はない。
「もし勝っても勇者達の損害はデカいだろうのう・・・」
この後、黙示録戦争は丸一年続いたのだった・・・
第二次黙示録戦争の結果を先に言ってしまうと「双方敗退による引き分け」に終わった。
お互いに主戦力が撃退されてしまい行動不能になったからだ。
この戦いでの後遺症の話しが「魔王城に囚われたイリス」に繋がる訳だね。
参戦して生き残った者の全てが瀕死の重傷で双方の死傷率100%を叩き出す潰し合いになったのだった。
この黙示録戦争の話しは後日、別枠で詳しく書きましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ズルズル・・・ズルズル・・・ズルズル・・・
「ぬううう!!生きてますかぁ?!師匠、姉貴!」
装備はボロボロで血塗れのヤニックがこちらも血塗れのイリスとスージーの2人を担いで戦場よりヴィグル帝国首都を目指して撤退している。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
2人共返答は無いが手を少し振るイリス、スージーは完全に気絶している。
クルーゼやイノセントにジャックとは撤退時に逸れてしまっている。
どうにか戦域より出ると同時に魔法陣がヤニック達の前に出現する。
「あ・・・ありがとうございます・・・俺も限界・・・です」
ドサッ!と2人を担いだまま前のめりに倒れて気絶するヤニック。
「うむ・・・まあ・・・ゆっくり休むが良い・・・」
魔法陣より機嫌が最悪そうな魔王バルドルがゆっくりと現れて3人に回復魔法を掛ける。
3人が戦域より出たので魔王バルドルの支援が解禁されたのだ。
「全く・・・毎度の事ながらつまらん戦いじゃわい・・・」
魔王バルドルは徹頭徹尾、黙示録戦争を心良くは思っていない。
「バルドルよ、槍の勇者達も魔王城に運んでおいたぞ」
「ありがとうマクシム君よ、ご苦労さん」
生き残った勇者達はまだ戦域から離脱していない者も含めて全員、バルドルとマクシム君により真魔族の魔王城に集められて治療を受けたのだった。
本来なら重大な協定違反で龍種からも何度も警告を受けたのだが魔王バルドルは、
龍種からの使者に対しても魔王の玉座に横柄に座り、
「これは人道支援じゃ、それもダメと言うなら真魔族は龍種との戦いも上等!」
として頑として譲らなかった。
本気で怒っている魔王バルドルは三龍王にも劣る事は無いのだ。
魔王バルドルの「一歩も引かんぞボケー!!」的な烈迫の気迫に結局は龍種の方が気押されて折れたのだった。
『バルドル・・・怖かったです』
「そうかのう・・・悪い事は悪いと言っただけじゃろう?」
友達と弟子の仲間を助けて何が悪いのじゃ?」
基本的に龍種の定めた事には従う魔王バルドルだが、それは「龍種の言っている事が正しい」と思って賛同しているだけだ。
別に真魔族は龍種の眷属でも何でも無いので龍種が間違ってると思ったら全力で反抗してくるのだ。
魔王バルドルと親しいとの理由で使者として赴いて来た海湊龍クローディアは不機嫌さを隠しもしないで闇の魔力を垂れ流しつつ魔王の玉座にドッカリと座るバルドルを見て、《あ・・・これダメだわ、変に刺激しないでおこ》と思ったとの事。
こうして魔王城で治療を受けてヤニック達がピアツェンツア王国へ帰還したのは黙示録戦争が始まってから2年後、ファニーが20歳になった時の事だった。
半年間魔物討伐に明け暮れたファニーは見事に学園を留年・・・する事は無く普通に進級して最高学年になった。
如何にグレていようがやるべき事はちゃんとやるファニーであった。
ヤニックとは違うのだよヤニックとは。
ヤニックも進級して後2年で卒業である、コイツ実に「1浪2留」かましやがりましたよ!
そんな王太子は居ないよ、なっかなか居ないよ。
「まさかヤニック殿下のお姿を学園で見るとは夢にも思っていませんでした・・・」
「ミリアリア?ヤニック殿下はわたくしより1歳年下です、そうですね?」
「はっ・・・はい!」
アホの王太子に王家としても、いい加減に面倒臭くなったのか今期頭にヤニックを3歳若く発表してしまったのだ?!
そして学園卒業後に元に適当に年齢を戻すのだとか・・・
そんな王家もないよ?なっかなかないよ。
「リアナは殿下の事が心底心配です・・・」
「お手数おかけして申し訳ありませんでしたー!」
リアナ先生の心配は恋慕の情などでは無い、単純に臣下として「人」としての心配だ。
「え?!内務省勤務の進路希望ですか?!」
最高学年になると「進路相談」が有る、そこでファニーが内務省への進路希望を出したのだ。
困惑する進路指導の先生。
当然だろう、ヤニック王太子の婚約者なのでファニーの進路は「王妃」一択のはずだからだ。
「いえ・・・仮にそうなったとしても2年も遊んでいる訳には参りませんわ」
「ご苦労、お察し致します」
一応王家の決まりでも王太子の結婚は「王立学園卒業後」とされている。
結婚するにも最短でも後2年は掛かるのだ。
そしてファニーは「王妃教育」は既に修了しているので卒業後は暇になるので「なら内務省でお仕事を致しましょう」と考えた訳だね。
「ファニー・・・本当にごめん・・・」
「いえ・・・わたくしの事より「卒業」の事のみお考え下さいまし」
・・・・・・そりゃそうだ。
「私、ファニー様は卒業後は本格的に冒険者になられると思っておりました」
結構、ファニーの選んだ進路が意外だったミリアリア。
「そうですねぇ、少しファニー様らしくありませんねぇ」
何だかんだ仲が良いミリアリアとフローラ、ファニーのお世話以外の事では気が合うのだ。
「ミリアリア、フローラ?誰が冒険者をやらないと言いましたか?」
「え?!」「まさか!」
「内務省でも働き冒険者もやるに決まってますわ」
「さすが!それでこそファニー様です!」
「そうですねぇ、まるで実家に居る様な安心感ですねぇ」
本当はフローラもファニーの冒険者稼業を手伝いたいのだが、軍人の彼女は軍法において冒険者の仕事を手伝う事は不可なのだ。
ミリアリアは戦闘力が皆無である、そもそも戦おうとする発想が無い。
こんな感じで平和な時間が流れる。
このまま何事も無く卒業を迎えるかと思っていたが、ここで天災クラスの異常事態が発生する。
「第二次黙示録戦争」の勃発だ。
ヤニックが参加した「第一黙示録戦争」ほどの規模ではないが、魔族側も本国より上位魔族(スペクター)を200名を召集してヴィグル帝国に仕掛けたのだ。
それに対するヴィグル帝国の勇者達も当然応戦、ヴィグル帝国以外の勇者側も世界各地よりイリスを総大将に50人ほどがヴィグル帝国に集結して反撃を開始したのだ。
これによりスペクター200名対勇者80名の戦いになった。
数に劣る勇者側は初戦から劣勢状態に陥った。
イリスからの支援要請を受けてピアツェンツア王国からもイノセントとクルーゼが国内に居たSランク冒険者(勇者)を集めて20人ほどで援軍に向かったが数の劣勢は覆らない。
尚、黙示録戦争は勇者とスペクターに限定された戦いなので国軍の参戦は絶対に許されない。
イリスが参戦したのでラーデンブルグ公国はイリスの公爵位を即座に剥奪した。
これは戦火の拡大を防ぐ為に結ばれた双方同意の上での戦時協定だ。
なので国軍を動かした時点で仲裁者の龍種からの制裁を受ける。
当然、黙示録戦争に関係の無い魔王バルドルの参戦は勿論、一切の助言も支援も厳禁なのだ。
覆らない苦戦にピアツェンツア王国に残っていた勇者はスージーを筆頭にしてヤニックの他8名がヴィアール辺境伯領に集結する。
様々な事情でいずれも第一線から退いた者達だ。
「私はヴィグルへと向かうがお前達は足手纏いになるからダメだ」
勇者としての黒備えのフル装備を装着したスージーがヴィアール辺境伯領に密かに集まった9名の勇者を嗜める。
「はっ!そう言われても言う事を聞く俺達とは思ってないですよね?姉貴」
こちらも黒備えの完全フル装備のヤニックが笑う。
今の彼は王太子でもファニーのアホな婚約者でもない勇者の1人だ。
そしてイリス一派の色はイリスの色である緑でも銀でも無い「黒」なのだ。
理由は隠蔽し易いからとの実用性を最優先した結果だ。
「・・・・・・・死んでも責任は取らんぞ?」
「上等!!」
こうしてヴィグル帝国へ最後の勇者達が援軍へ向かったのだ。
その為にピアツェンツア王国内でも王太子を始めとした主要人物が一気に消えたのだが国王を始め、宰相のエヴァリストまでがヤニック達の事を存在しない者と扱った。
ヤニック達は元より自分の母まで忽然と姿を消して大混乱のファニー。
父親のスティーブンを問い詰めてもファニーをひと睨みして「お前には関係ない、関わるな」の一点張り。
いつも底抜けに優しい父の眼力に圧倒されてしまう。
「一体・・・何が起こっているのですか?・・・・・・・・」
不安に苛まれるファニー。
当然ヤニックは学園をまた留年するのだが今回は今までとは様子が全然違う。
一切の発表が王家からも出ないし、学園長に聞いても「知らぬ」の一点張り。
誰も彼も言葉少なげに何が起こっているか語ろうとはしなかった。
「うう~・・・・お母様~」寂しくて心配で毎夜ベッドで泣くファニーだった・・・
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『バルドル・・・状況はどうなのですか?』
「・・・・・・・・・・イリスへの負担がデカ過ぎるな。
ヤニック達、2級線の勇者達が回復支援に入って後方は少し安定したが前衛が足りておらぬ」
「影見」を使い黙示録戦争の戦況を監視している魔王バルドルも珍しく魔王の玉座に足を組んでドッカリと座り憮然とした表情で口数も少ない。
魔王バルドルは本気で機嫌が悪い時と、完全にふざけて遊んでいる時のみ魔王の玉座に座るのだ。
この時のバルドルは当然、過去最大級に機嫌が悪い。
友人達が傷ついているのを見て機嫌が悪くならない奴はいないだろう。
いつも騒々しい魔王城も主の機嫌に呼応してか今日は無人の城の如く静まり返っている。
『そうですか・・・』
この件に関しては女神ハルモニアですら天界からの厳命により手出し無用なのだ。
『皆さん頑張って下さい・・・』
せめてとばかりに勇者達に勝利の祝福を願う女神ハルモニア。
しかしこの祝福も天界からの干渉により彼らに届く事はない。
「もし勝っても勇者達の損害はデカいだろうのう・・・」
この後、黙示録戦争は丸一年続いたのだった・・・
第二次黙示録戦争の結果を先に言ってしまうと「双方敗退による引き分け」に終わった。
お互いに主戦力が撃退されてしまい行動不能になったからだ。
この戦いでの後遺症の話しが「魔王城に囚われたイリス」に繋がる訳だね。
参戦して生き残った者の全てが瀕死の重傷で双方の死傷率100%を叩き出す潰し合いになったのだった。
この黙示録戦争の話しは後日、別枠で詳しく書きましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ズルズル・・・ズルズル・・・ズルズル・・・
「ぬううう!!生きてますかぁ?!師匠、姉貴!」
装備はボロボロで血塗れのヤニックがこちらも血塗れのイリスとスージーの2人を担いで戦場よりヴィグル帝国首都を目指して撤退している。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
2人共返答は無いが手を少し振るイリス、スージーは完全に気絶している。
クルーゼやイノセントにジャックとは撤退時に逸れてしまっている。
どうにか戦域より出ると同時に魔法陣がヤニック達の前に出現する。
「あ・・・ありがとうございます・・・俺も限界・・・です」
ドサッ!と2人を担いだまま前のめりに倒れて気絶するヤニック。
「うむ・・・まあ・・・ゆっくり休むが良い・・・」
魔法陣より機嫌が最悪そうな魔王バルドルがゆっくりと現れて3人に回復魔法を掛ける。
3人が戦域より出たので魔王バルドルの支援が解禁されたのだ。
「全く・・・毎度の事ながらつまらん戦いじゃわい・・・」
魔王バルドルは徹頭徹尾、黙示録戦争を心良くは思っていない。
「バルドルよ、槍の勇者達も魔王城に運んでおいたぞ」
「ありがとうマクシム君よ、ご苦労さん」
生き残った勇者達はまだ戦域から離脱していない者も含めて全員、バルドルとマクシム君により真魔族の魔王城に集められて治療を受けたのだった。
本来なら重大な協定違反で龍種からも何度も警告を受けたのだが魔王バルドルは、
龍種からの使者に対しても魔王の玉座に横柄に座り、
「これは人道支援じゃ、それもダメと言うなら真魔族は龍種との戦いも上等!」
として頑として譲らなかった。
本気で怒っている魔王バルドルは三龍王にも劣る事は無いのだ。
魔王バルドルの「一歩も引かんぞボケー!!」的な烈迫の気迫に結局は龍種の方が気押されて折れたのだった。
『バルドル・・・怖かったです』
「そうかのう・・・悪い事は悪いと言っただけじゃろう?」
友達と弟子の仲間を助けて何が悪いのじゃ?」
基本的に龍種の定めた事には従う魔王バルドルだが、それは「龍種の言っている事が正しい」と思って賛同しているだけだ。
別に真魔族は龍種の眷属でも何でも無いので龍種が間違ってると思ったら全力で反抗してくるのだ。
魔王バルドルと親しいとの理由で使者として赴いて来た海湊龍クローディアは不機嫌さを隠しもしないで闇の魔力を垂れ流しつつ魔王の玉座にドッカリと座るバルドルを見て、《あ・・・これダメだわ、変に刺激しないでおこ》と思ったとの事。
こうして魔王城で治療を受けてヤニック達がピアツェンツア王国へ帰還したのは黙示録戦争が始まってから2年後、ファニーが20歳になった時の事だった。
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