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波羅(はら)の国編
第1話 白崎波羅の国
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「帰って来たかなぁ?」
波羅は、図書館の椅子に座り足をブラブラさせていた。
「僕のサプライズ、気付いてくれたかなぁ?」
フフッと波羅は笑い、机の上の本を開いて読み始めた。
「白雪王子の物語は、まだ始まったばっかり。」
波羅は、音読を始めた。
「むかーし、昔あるところに…」
波羅はユズハが良く知る白雪姫の話を始めた。
ただ、いつも通り違う所は沢山あった。
双子の弟がいる事、リンゴを食べなくても急に眠りに襲われる事。
毒リンゴを波羅は食べずに、未だお姫様を見つけていない事等。
数を上げるならば、両手の指で数えられない程であった。
「ねぇ、お母様。僕の弟は、どんな子ですか?」
「貴方に弟は居ないわ」
「え?でも、双子で産まれたとお祖母様が言っておられました」
「それは、お祖母様の夢の話よ。貴方は一人っ子なの」
「そうですか、残念です。」
知ってるよ、お母様。僕の弟は、違う国に連れて行ったんでしょ?
知ってるよ、お母様。僕の方がこの国の跡取りとして役に立つからでしょ?
「お母様の嘘つき」
吐いた言葉は、お母様には聞こえずにただ波羅の頭を撫でる。
波羅が微笑むと、お母様も微笑む。
そんなほのぼのとした日常が続いた。
波羅が現代では、高校生と呼ばれる歳になった時。波羅は動いた。
「こんな平和な世界はいらないよ。」
波羅が触れる人々は、人形に変わった。
拒む人は、動かない人形に。
拒まない人は、動く人形に。
王子達も邪魔だから、人形にするんだ。
ユズハの王子は、僕だけで良い。
歪んだ考えが。歪んだ育て方が、僕を強くしてくれた。
波羅は、図書館の扉を見つめる。
いつユズハは来てくれるだろう?
いつ、ユズハは歪んだ表情で僕を見つめてくれる?
ユズハの笑顔も、グチャグチャに歪んでしまえば良いのに。
僕の大好きな表情に染まれば良いのに。
「早く僕の元へ…」
ユズハの到着を、本を読みながら待った。
波羅は、図書館の椅子に座り足をブラブラさせていた。
「僕のサプライズ、気付いてくれたかなぁ?」
フフッと波羅は笑い、机の上の本を開いて読み始めた。
「白雪王子の物語は、まだ始まったばっかり。」
波羅は、音読を始めた。
「むかーし、昔あるところに…」
波羅はユズハが良く知る白雪姫の話を始めた。
ただ、いつも通り違う所は沢山あった。
双子の弟がいる事、リンゴを食べなくても急に眠りに襲われる事。
毒リンゴを波羅は食べずに、未だお姫様を見つけていない事等。
数を上げるならば、両手の指で数えられない程であった。
「ねぇ、お母様。僕の弟は、どんな子ですか?」
「貴方に弟は居ないわ」
「え?でも、双子で産まれたとお祖母様が言っておられました」
「それは、お祖母様の夢の話よ。貴方は一人っ子なの」
「そうですか、残念です。」
知ってるよ、お母様。僕の弟は、違う国に連れて行ったんでしょ?
知ってるよ、お母様。僕の方がこの国の跡取りとして役に立つからでしょ?
「お母様の嘘つき」
吐いた言葉は、お母様には聞こえずにただ波羅の頭を撫でる。
波羅が微笑むと、お母様も微笑む。
そんなほのぼのとした日常が続いた。
波羅が現代では、高校生と呼ばれる歳になった時。波羅は動いた。
「こんな平和な世界はいらないよ。」
波羅が触れる人々は、人形に変わった。
拒む人は、動かない人形に。
拒まない人は、動く人形に。
王子達も邪魔だから、人形にするんだ。
ユズハの王子は、僕だけで良い。
歪んだ考えが。歪んだ育て方が、僕を強くしてくれた。
波羅は、図書館の扉を見つめる。
いつユズハは来てくれるだろう?
いつ、ユズハは歪んだ表情で僕を見つめてくれる?
ユズハの笑顔も、グチャグチャに歪んでしまえば良いのに。
僕の大好きな表情に染まれば良いのに。
「早く僕の元へ…」
ユズハの到着を、本を読みながら待った。
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