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二章~闘技場にて~
脱出
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場内アナウンスが聴こえた瞬間。
どよめき、怒号、叫び声。
阿鼻叫喚の坩堝となった闘技場内で2人の男が立ち上がり、走り出した。
『おい、どうすんだよ!引き分けなんて初めてだぞ!』
『払い戻しじゃねぇの!?誰も賭けてねぇだろ?』
《え~…只今、調べた所…引き分けに賭けた方は居ないため、払い戻しに…えっ、二人!?どうやって!?》
『不正じゃねぇのか!?』
『誰が当てれるんだ!こんなもん!』
『ジュン!お前知ってたんか!?』
『声、でけぇよ。バカ。』闘技場を見ながら一人のイケメンが親指を立てる。
『落ち着きましょう。ね?』
『何でそんなに余裕やねん、兄ちゃん。まさか、もう一人は…うおぉ!不正や不正!この椅子ひっぺがして、モニターに投げつけるぞ、お前ら!』
『うおおおぉ!』
観客席の一人に親指を立てながら思わず笑う龍。
「何やってんだ、あのバカ。」
「良いツレがおるみたいじゃな。」並走しながら声をかける黒炎。
「ただの悪友だよ、一人はとてつもないバカだし。」
「良いもんじゃよ、言いたいこと言える間柄と言うのはな。」
「違いねぇ。」
控え室に戻ると、ネズミ、豊、そして白氷が待ち構えていた。
「ねぇ、龍さん。これどういう事?」
「説明してる暇はねぇ、黒炎。案内頼めるか?」
「勿論じゃ!走るぞ!」
控え室からフロントのある回廊に抜けカーブが続く廊下をひたすら走る。
すると正面に。
「どこにいくのかね?君達は勝てなかったのに。」指揮官の男と10人程の部下と通路を塞いでいた。
「あぁ、『強者』にはなれなかった…だが、負ければ【死】、そして強き者しか必要とされない。この2つの言葉の意味を考えれば答えは自ずと導かれるな。」
指揮官がニヤリと笑う。
「ほう。聞こうではないか。」
「つまり、【負けたら死ぬが、勝ってもここでチャンピオンとして挑戦者を撃退しなければ】いけないんだろう?」
「ご明察。投票券に細工して、こちらが慌ててる間に脱出しようとした手際は鮮やかだが、こちらもバカではないのでね。まぁ、とりあえずどいつも華がある。出来れば全員生け捕り!無理でも三人程は捕まえて次回の…」
指揮官が言い終わる前に5人は凄い勢いで正面突破を試みた。
「この人数じゃ止まらないよ、ねぇ龍さん?」
「大丈夫かい、豊?走れるか?」
「首が曲がった人間が心配するな。」
「頼もしい限りだぜ。」
「おっ、追え!逃がすな。」
倒れた部下に叱咤する指揮官が廊下にこだました。
円形の闘技場、牢屋があった部屋の反対側辺りに大きなシャッターが閉まったまま沈黙を保っていた。
白氷がしゃがんで鍵を開ける。
「いつの間に。」豊が驚く。
「さっきの偉そうな奴から奪ってきた。」
シャッターの先は物流倉庫の様になっていた。
トラックが連なり、控え室以上の武器が無造作に木箱に詰められていた。
そのトラックが並べられた端に4WDがポツンと佇んでいた。
「よしっ!乗りこめ、行くぞ。」
乗り込んだ三人を見送る二人。
「黒炎、白氷?」
「さっさと行けよ。」手をひらひらと振る白氷。
「とりあえず外に出て、森の中を突っ切ったら後はひたすら右側に走れ。あいつらの息のかかってない町に出るはずだ。」微笑みながら頷く黒炎。
「お前達は…最初から…」
「さぁ、豊!飛ばせぇ!」
龍の声を無視した白氷の掛け声でエンジンをかけ、凄いスピードで建物から走り出した車を見送る二人。
*
「良いのか?別に足止めは一人で十分だったんだけどな。」いつもの喋り方を止めた黒炎。
「お互い、そう言うと思ったからこれで良いんだよ。」シャッターを閉め、鍵をかけ、更に2、3度蹴りを入れ直ぐに開けられない様にした白氷。
「それにな…」
「ん?」
「最後に一発殴らせたんだよ、豊に。」
「それで?」
「いやぁ、ちゃんと覚えたみたいで良かった。肋骨、逝っちゃった。」
2人で顔を見合せ大きく笑う。
「っていうか、すげぇよな。その顔。」
「おぉ、俺も鏡見てびっくりしたよ、特殊メイクってこんな感じなんだな。」
「あっ、でも肌感は触ったら分かるわ。」
「ベタベタ触んなよ。」
すると、そこに。
『久しぶりだね黒炎、【白金】。今は白氷だっけ?』
『こんな形で逢いたくはなかったけどな。』
赤く長い髪、赤いワンピースと赤一色の女性。
短髪の緑髪に緑色の頭部なしクルセイダーの男性が二人に近寄る。
「紅木と緑水。久しぶり。」
「今は【朱龍】と【緑龍】だろ?確か。」
朱龍と呼ばれた女性は薙刀を振り、緑龍は大太刀を構えた。
「悪いけど、今日はお別れの挨拶をしにきたのよ。」
「お前らが、反逆を起こすとはな…もう、助けられん。悪いが諦めてくれ。」
「お前らに殺されるなら本望だよ。だが、あいつらは逃がさせて貰うぜ。」
「最後くらいゆっくり話したかったけどな…まぁ、なんだ…一つだけ言わせてもらうぞ。」
『お前らは生きのびろよ、今回の【ゲーム】もな。』
*
全てが終わった後で、一粒の涙がレンガ造りの床に染みていった。
『本当に馬鹿だよ…何したって、この世界は終わらないのに。』
どよめき、怒号、叫び声。
阿鼻叫喚の坩堝となった闘技場内で2人の男が立ち上がり、走り出した。
『おい、どうすんだよ!引き分けなんて初めてだぞ!』
『払い戻しじゃねぇの!?誰も賭けてねぇだろ?』
《え~…只今、調べた所…引き分けに賭けた方は居ないため、払い戻しに…えっ、二人!?どうやって!?》
『不正じゃねぇのか!?』
『誰が当てれるんだ!こんなもん!』
『ジュン!お前知ってたんか!?』
『声、でけぇよ。バカ。』闘技場を見ながら一人のイケメンが親指を立てる。
『落ち着きましょう。ね?』
『何でそんなに余裕やねん、兄ちゃん。まさか、もう一人は…うおぉ!不正や不正!この椅子ひっぺがして、モニターに投げつけるぞ、お前ら!』
『うおおおぉ!』
観客席の一人に親指を立てながら思わず笑う龍。
「何やってんだ、あのバカ。」
「良いツレがおるみたいじゃな。」並走しながら声をかける黒炎。
「ただの悪友だよ、一人はとてつもないバカだし。」
「良いもんじゃよ、言いたいこと言える間柄と言うのはな。」
「違いねぇ。」
控え室に戻ると、ネズミ、豊、そして白氷が待ち構えていた。
「ねぇ、龍さん。これどういう事?」
「説明してる暇はねぇ、黒炎。案内頼めるか?」
「勿論じゃ!走るぞ!」
控え室からフロントのある回廊に抜けカーブが続く廊下をひたすら走る。
すると正面に。
「どこにいくのかね?君達は勝てなかったのに。」指揮官の男と10人程の部下と通路を塞いでいた。
「あぁ、『強者』にはなれなかった…だが、負ければ【死】、そして強き者しか必要とされない。この2つの言葉の意味を考えれば答えは自ずと導かれるな。」
指揮官がニヤリと笑う。
「ほう。聞こうではないか。」
「つまり、【負けたら死ぬが、勝ってもここでチャンピオンとして挑戦者を撃退しなければ】いけないんだろう?」
「ご明察。投票券に細工して、こちらが慌ててる間に脱出しようとした手際は鮮やかだが、こちらもバカではないのでね。まぁ、とりあえずどいつも華がある。出来れば全員生け捕り!無理でも三人程は捕まえて次回の…」
指揮官が言い終わる前に5人は凄い勢いで正面突破を試みた。
「この人数じゃ止まらないよ、ねぇ龍さん?」
「大丈夫かい、豊?走れるか?」
「首が曲がった人間が心配するな。」
「頼もしい限りだぜ。」
「おっ、追え!逃がすな。」
倒れた部下に叱咤する指揮官が廊下にこだました。
円形の闘技場、牢屋があった部屋の反対側辺りに大きなシャッターが閉まったまま沈黙を保っていた。
白氷がしゃがんで鍵を開ける。
「いつの間に。」豊が驚く。
「さっきの偉そうな奴から奪ってきた。」
シャッターの先は物流倉庫の様になっていた。
トラックが連なり、控え室以上の武器が無造作に木箱に詰められていた。
そのトラックが並べられた端に4WDがポツンと佇んでいた。
「よしっ!乗りこめ、行くぞ。」
乗り込んだ三人を見送る二人。
「黒炎、白氷?」
「さっさと行けよ。」手をひらひらと振る白氷。
「とりあえず外に出て、森の中を突っ切ったら後はひたすら右側に走れ。あいつらの息のかかってない町に出るはずだ。」微笑みながら頷く黒炎。
「お前達は…最初から…」
「さぁ、豊!飛ばせぇ!」
龍の声を無視した白氷の掛け声でエンジンをかけ、凄いスピードで建物から走り出した車を見送る二人。
*
「良いのか?別に足止めは一人で十分だったんだけどな。」いつもの喋り方を止めた黒炎。
「お互い、そう言うと思ったからこれで良いんだよ。」シャッターを閉め、鍵をかけ、更に2、3度蹴りを入れ直ぐに開けられない様にした白氷。
「それにな…」
「ん?」
「最後に一発殴らせたんだよ、豊に。」
「それで?」
「いやぁ、ちゃんと覚えたみたいで良かった。肋骨、逝っちゃった。」
2人で顔を見合せ大きく笑う。
「っていうか、すげぇよな。その顔。」
「おぉ、俺も鏡見てびっくりしたよ、特殊メイクってこんな感じなんだな。」
「あっ、でも肌感は触ったら分かるわ。」
「ベタベタ触んなよ。」
すると、そこに。
『久しぶりだね黒炎、【白金】。今は白氷だっけ?』
『こんな形で逢いたくはなかったけどな。』
赤く長い髪、赤いワンピースと赤一色の女性。
短髪の緑髪に緑色の頭部なしクルセイダーの男性が二人に近寄る。
「紅木と緑水。久しぶり。」
「今は【朱龍】と【緑龍】だろ?確か。」
朱龍と呼ばれた女性は薙刀を振り、緑龍は大太刀を構えた。
「悪いけど、今日はお別れの挨拶をしにきたのよ。」
「お前らが、反逆を起こすとはな…もう、助けられん。悪いが諦めてくれ。」
「お前らに殺されるなら本望だよ。だが、あいつらは逃がさせて貰うぜ。」
「最後くらいゆっくり話したかったけどな…まぁ、なんだ…一つだけ言わせてもらうぞ。」
『お前らは生きのびろよ、今回の【ゲーム】もな。』
*
全てが終わった後で、一粒の涙がレンガ造りの床に染みていった。
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