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一章~久方ぶりの土地~
ワイルドターキーと子
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重たいドアが音もなく開いて、男が1人、店内に入ってきた。
ただ繋ぎ合わせただけの様な古ぼけた木の板で出来た床が、男が歩く度に、ギィギィ…と音を立てて軋む。
髪の色は黒で天に向かって立つほどの短髪。
身長はそれほど大きくなく、170cmは恐らく無さそうだ。
しかし、黒い半袖のシャツから出た腕の筋肉と堂々と歩く姿のせいか見た目より大きく見える。
店の奥、様々なボトルが背面の棚に飾られて、その前にはオールバックでグラスを拭いてるバーテンダー。
カウンターと重たいドアの間には木で出来たテーブルが3卓、内1つのテーブルにいる3人組が無遠慮そうに男を見ている。
視線も床の音すらも、我関せずに男が一直線にカウンターまで行き、中央のバーテンダーの前に座る。
カウンターの右端には先客がおり、サングラスをかけたアロハシャツの男が猫背で黒ビールを飲んでいた。
「注文は?」
「いつもの。」
七面鳥がラベリングされたボトルを掴み、ロックグラスに丸い氷を入れて、琥珀色の液体を注ぐ。
「生きてたのか。」グラスを男の前に置きながらバーテンダーが呟いた。
「『死んだ』と言ったつもりはねぇよ。」
グラスに口をつけ、一気に半分程呷る。
それを見届けてから、テーブルの3人組が無言で店内から出ていく。
一瞬、男が揺らすグラスの中の氷の音だけが店内に響く。
「無銭飲食じゃねぇの?」
「あのなぁ…前も言ったけどウチは先払いなんだよ。お前位だ、ツケだなんだと先延ばしにしてるのは。」言葉とは裏腹に、気のおけない相手に言うようにバーテンダーが腕組みをして話す。
「で、何処に行ってたんだ?」
そう聞いたバーテンダーにグラスを持った手を持ち上げて人差し指だけを空に向けた。
「なるほど…だから、3年も何処に行ったか分からなかった訳か。」
「そういう事。」
「なら、まずは逢ってこい。」タバコに火を着けたバーテンダーが口を開く。
「場所が分かってる奴がいるのか?」
「あぁ、『ネズミ』だけはこの街にいるぞ。」
「そうか、あいつが…」
「ご馳走さん。」空になったグラスをテーブルにおいて男が立ち上がる。
「おい、金払っていけよ。」
「次、ちゃんと帰ってきたら払うよ。」
そういうと、振り向かずに男は店の外に出ていった。
*
「おい、そこのクソガキ!」
店を出ると店内に居た3人組が目の前にいた。
「??」辺りを見渡す男。
「お前だよ、お前!」横並びの内、真ん中の木刀を持った男が叫ぶ。
「あぁ、俺の事かよ。」
「舐めた口聞くんじゃねぇ!とりあえず、有り金置いてさっさとこの街から出ていきな。」店内から出てきた男から見て右側、金属バットを肩に構えた男が苛立ったように口を開く。
「まぁ、嫌がっても力ずくで追い出すけどな。」3人の内、一人だけ素手の男が笑いながら喋る。
「とりあえず、この街に『ネズミ』がいるはずなんだけど誰か知らねぇ?」
「聞いてんのかよ!人の話を!」
金属バットを持った男が両手で振りかぶりながら走り出した。
そして、振り下ろそうとした瞬間。
一瞬の内にバットの男の内側にダッキングしながら入り、左腕を上げ、下ろされた両手の手首辺りを受け止め、相手の左こめかみに右フックで一撃。
そのまま左腕を外側に払い、力の抜けた腕からバットを奪う。
「てめぇ!」素手の男が一足飛びに向かい、空中で蹴りを繰り出す。
「蹴りは動作が遅いから、相手を怯ませてからやるんだよ。」素手の男の左側に周り繰り出した右足首を左手で掴む。
「特に空中は、」そのまま右足を持ち上げ、膝裏まで手を滑らせてから地面に叩き落とした。
「方向転換できないから、最後な。」
頭から落ちた男はピクリとも動かない。
「なんだ、てめぇ…ただ者じゃねぇな。」両手に木刀を構えた男が独り言のように小さく呟いた。
「別に。普通の人間だよ。で、もう一回聞くぜ?『ネズミ』は何処だ?」金属バットを肩に担ぎながら男が質問した。
「誰が言うかよ、落とし前付けさせてもらうぜ。」
そう言うと上段の構えで待ち構えた。
それを見て、男は走りながら上半身は野球のスイングをする前の様な動きのまま、木刀の男に向かう。
そして、射程距離に入るとアッパー気味に金属バットを振る。
木刀の男は上段の構えを崩さず足裏で金属バットを受け止めようと足を上げる。
と、バットと足裏が接触した瞬間。
男がバットの手を離し、その勢いのまま木刀男の鳩尾へアッパー気味の右手がめり込んだ。
「がはっ!」
前のめりに倒れ込む男の首を掴み、持ち上げる。
『「誰が言うか」って言葉を使うって事は知ってる。って事だよな?もう一回だけ聞いてやる。ネズミは何処にいる?』
「離してやれ、俺に勝ったら教えてやる。」
いつの間にか、先ほどカウンターにいたサングラスにアロハシャツの男が後ろから男の右手首を掴み、力を入れ、息絶え絶えの男の首からその手を剥がした。
ただ繋ぎ合わせただけの様な古ぼけた木の板で出来た床が、男が歩く度に、ギィギィ…と音を立てて軋む。
髪の色は黒で天に向かって立つほどの短髪。
身長はそれほど大きくなく、170cmは恐らく無さそうだ。
しかし、黒い半袖のシャツから出た腕の筋肉と堂々と歩く姿のせいか見た目より大きく見える。
店の奥、様々なボトルが背面の棚に飾られて、その前にはオールバックでグラスを拭いてるバーテンダー。
カウンターと重たいドアの間には木で出来たテーブルが3卓、内1つのテーブルにいる3人組が無遠慮そうに男を見ている。
視線も床の音すらも、我関せずに男が一直線にカウンターまで行き、中央のバーテンダーの前に座る。
カウンターの右端には先客がおり、サングラスをかけたアロハシャツの男が猫背で黒ビールを飲んでいた。
「注文は?」
「いつもの。」
七面鳥がラベリングされたボトルを掴み、ロックグラスに丸い氷を入れて、琥珀色の液体を注ぐ。
「生きてたのか。」グラスを男の前に置きながらバーテンダーが呟いた。
「『死んだ』と言ったつもりはねぇよ。」
グラスに口をつけ、一気に半分程呷る。
それを見届けてから、テーブルの3人組が無言で店内から出ていく。
一瞬、男が揺らすグラスの中の氷の音だけが店内に響く。
「無銭飲食じゃねぇの?」
「あのなぁ…前も言ったけどウチは先払いなんだよ。お前位だ、ツケだなんだと先延ばしにしてるのは。」言葉とは裏腹に、気のおけない相手に言うようにバーテンダーが腕組みをして話す。
「で、何処に行ってたんだ?」
そう聞いたバーテンダーにグラスを持った手を持ち上げて人差し指だけを空に向けた。
「なるほど…だから、3年も何処に行ったか分からなかった訳か。」
「そういう事。」
「なら、まずは逢ってこい。」タバコに火を着けたバーテンダーが口を開く。
「場所が分かってる奴がいるのか?」
「あぁ、『ネズミ』だけはこの街にいるぞ。」
「そうか、あいつが…」
「ご馳走さん。」空になったグラスをテーブルにおいて男が立ち上がる。
「おい、金払っていけよ。」
「次、ちゃんと帰ってきたら払うよ。」
そういうと、振り向かずに男は店の外に出ていった。
*
「おい、そこのクソガキ!」
店を出ると店内に居た3人組が目の前にいた。
「??」辺りを見渡す男。
「お前だよ、お前!」横並びの内、真ん中の木刀を持った男が叫ぶ。
「あぁ、俺の事かよ。」
「舐めた口聞くんじゃねぇ!とりあえず、有り金置いてさっさとこの街から出ていきな。」店内から出てきた男から見て右側、金属バットを肩に構えた男が苛立ったように口を開く。
「まぁ、嫌がっても力ずくで追い出すけどな。」3人の内、一人だけ素手の男が笑いながら喋る。
「とりあえず、この街に『ネズミ』がいるはずなんだけど誰か知らねぇ?」
「聞いてんのかよ!人の話を!」
金属バットを持った男が両手で振りかぶりながら走り出した。
そして、振り下ろそうとした瞬間。
一瞬の内にバットの男の内側にダッキングしながら入り、左腕を上げ、下ろされた両手の手首辺りを受け止め、相手の左こめかみに右フックで一撃。
そのまま左腕を外側に払い、力の抜けた腕からバットを奪う。
「てめぇ!」素手の男が一足飛びに向かい、空中で蹴りを繰り出す。
「蹴りは動作が遅いから、相手を怯ませてからやるんだよ。」素手の男の左側に周り繰り出した右足首を左手で掴む。
「特に空中は、」そのまま右足を持ち上げ、膝裏まで手を滑らせてから地面に叩き落とした。
「方向転換できないから、最後な。」
頭から落ちた男はピクリとも動かない。
「なんだ、てめぇ…ただ者じゃねぇな。」両手に木刀を構えた男が独り言のように小さく呟いた。
「別に。普通の人間だよ。で、もう一回聞くぜ?『ネズミ』は何処だ?」金属バットを肩に担ぎながら男が質問した。
「誰が言うかよ、落とし前付けさせてもらうぜ。」
そう言うと上段の構えで待ち構えた。
それを見て、男は走りながら上半身は野球のスイングをする前の様な動きのまま、木刀の男に向かう。
そして、射程距離に入るとアッパー気味に金属バットを振る。
木刀の男は上段の構えを崩さず足裏で金属バットを受け止めようと足を上げる。
と、バットと足裏が接触した瞬間。
男がバットの手を離し、その勢いのまま木刀男の鳩尾へアッパー気味の右手がめり込んだ。
「がはっ!」
前のめりに倒れ込む男の首を掴み、持ち上げる。
『「誰が言うか」って言葉を使うって事は知ってる。って事だよな?もう一回だけ聞いてやる。ネズミは何処にいる?』
「離してやれ、俺に勝ったら教えてやる。」
いつの間にか、先ほどカウンターにいたサングラスにアロハシャツの男が後ろから男の右手首を掴み、力を入れ、息絶え絶えの男の首からその手を剥がした。
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