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スリズィエ
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美しく輝くシャンデリア、赤くも上品なカーペットの敷かれた豪華な部屋、自分の体の何倍もの大きさの窓の外からは美しい夜景が広がっていた。スリズィエとデイスは、付き合って二年経ったことを祝う為にお互いの貯めたお金で少し高めのレストランに来ていた。スリズィエはいつもと違う食事を愛するデイスと共に食べれることに幸せを感じながら、楽しんでいた。
「はー!美味しかった!」
食事を終えたスリズィエは、満足そうに微笑んだ。しかし、デイスはどこか緊張したような顔をしていた。
「デイス?」
スリズィエは、不思議そうにデイスを見つめた。デイスは意を決したような顔をすると、ガタンッと机を鳴らし、立ち上がる。
「ど、どうしたの!?デイス!」
戸惑うスリズィエの前まで行くと、スッと跪き、ポケットの小さな箱を取り出した。
「スリズィエ、僕と結婚を前提に付き合ってほしい」
デイスはそう言うとゆっくりと箱を開け、指輪を見せた。その目はまっすぐで、しっかりとスリズィエを見つめていた。まるで、スリズィエ以外見えていないかのように。
「嬉しい!ありがとう!デイス!愛してる!」
スリズィエ嬉しさのあまり今にも泣きそうな顔をしながら、デイスに抱き付いた。その時の彼女はまさに幸せの絶頂に立っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
( ………嗚呼、吐き気がする)
幸せだったあの日を思い出したスリズィエは、心の中でそう呟いた。左手の薬指にはあの日から外しきれない婚約指輪がはめてある。もう、それがなんの価値もないものと知っていながらも、彼女が外すことはなかった。スリズィエは、ジッと婚約指輪を眺める。
(私はまだ…過去の幸せを望んでいるのかな……)
そう思うと、悲しげに笑った。自分の足元では指輪をあげた張本人が手がかりを集めるために騒いでいた。
(彼はきっと…私を恋人として見てはいない…)
ー「罪人は罪人だ」ー
そう告げた彼の言葉を思い出す度に胸がズキンッと痛んだ。
「…ほんと、呆れたわ…」
スリズィエは、自嘲の笑みを浮かべながら下に居るデイスを見下ろした。見れば見るほどに胸は苦しく、痛みは増していた。痛みで涙がこぼれそうになるほどに。
(今日はもう帰ろう……)
そう思ったスリズィエは、背を向けて歩いた。
ー「君を信じることはできない」ー
そう言った彼の言葉が頭の中に響く。
「うるさい、分かってるわよ……!!」
そう呟くスリズィエは、悔しさと悲しさ、憎悪とも怒りとも読める表情を浮かべた。噛んだ下唇から、赤く見慣れた血を流しながら。
「はー!美味しかった!」
食事を終えたスリズィエは、満足そうに微笑んだ。しかし、デイスはどこか緊張したような顔をしていた。
「デイス?」
スリズィエは、不思議そうにデイスを見つめた。デイスは意を決したような顔をすると、ガタンッと机を鳴らし、立ち上がる。
「ど、どうしたの!?デイス!」
戸惑うスリズィエの前まで行くと、スッと跪き、ポケットの小さな箱を取り出した。
「スリズィエ、僕と結婚を前提に付き合ってほしい」
デイスはそう言うとゆっくりと箱を開け、指輪を見せた。その目はまっすぐで、しっかりとスリズィエを見つめていた。まるで、スリズィエ以外見えていないかのように。
「嬉しい!ありがとう!デイス!愛してる!」
スリズィエ嬉しさのあまり今にも泣きそうな顔をしながら、デイスに抱き付いた。その時の彼女はまさに幸せの絶頂に立っていた。
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( ………嗚呼、吐き気がする)
幸せだったあの日を思い出したスリズィエは、心の中でそう呟いた。左手の薬指にはあの日から外しきれない婚約指輪がはめてある。もう、それがなんの価値もないものと知っていながらも、彼女が外すことはなかった。スリズィエは、ジッと婚約指輪を眺める。
(私はまだ…過去の幸せを望んでいるのかな……)
そう思うと、悲しげに笑った。自分の足元では指輪をあげた張本人が手がかりを集めるために騒いでいた。
(彼はきっと…私を恋人として見てはいない…)
ー「罪人は罪人だ」ー
そう告げた彼の言葉を思い出す度に胸がズキンッと痛んだ。
「…ほんと、呆れたわ…」
スリズィエは、自嘲の笑みを浮かべながら下に居るデイスを見下ろした。見れば見るほどに胸は苦しく、痛みは増していた。痛みで涙がこぼれそうになるほどに。
(今日はもう帰ろう……)
そう思ったスリズィエは、背を向けて歩いた。
ー「君を信じることはできない」ー
そう言った彼の言葉が頭の中に響く。
「うるさい、分かってるわよ……!!」
そう呟くスリズィエは、悔しさと悲しさ、憎悪とも怒りとも読める表情を浮かべた。噛んだ下唇から、赤く見慣れた血を流しながら。
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