恋愛模様

華月雪兎-Yuto Hanatsuki-

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線香花火

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 線香花火が好き。

 あの日、君はそう言った。

 普段から自分の事をあまり話さない君だから、あの時の事は今でも良く憶えてる。

「線香花火って、人生みたいじゃない?」

 君はいつでも唐突で、そうやって難しい事を真面目な顔をして言ってくる。

 その横顔が儚くて、綺麗で、僕にはとても大人びて見えた。

 線香花火は僅かな時間で散ってしまうけど、その数瞬の間に激しく燃えて、皆の心に思い出として生きた証を残すんだ———なんて言っていたっけ。

 やっぱり僕には難しくて、あの時の僕は困った顔をしていたのかも知れない。

「ちょっとした喩え話」

 そう言って笑った顔は何だか少し寂しそうで、その意味に今更ながら気付いたんだ。



「来年も・・・一緒に花火やるんだろ?」

 僕は窓越しに君を見詰めている。
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