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辺境爵家の訪問

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 それから数ヶ月後‥‥‥。
 辺境爵ご一家がテオドール村を訪れることになった。もちろん事前に準備をして村を上げて歓迎せねばならぬ。

 当日の朝。
「エドガー様! ゲオルグ様達がポイントを通過しました。間もなくいらっしゃいます」

 門は全開、村人で手の空いている者は道を空けて並ぶように伝えてあった。

 馬車と護衛騎士隊が近づいて来て、村中央の我が家の前で停止した。
 迎える側の俺たちは臣下の礼を取って待つ。

「やぁ、エドガー! 久しぶりだな」
「エドガーくん、こんにちは」
「お久しぶりですわ、エドガー様!」

「ゲオルグ様、イザベラ様、エリーゼ様、ご無沙汰しております。本日はテオドールまでお越しいただきありがとうございます。精一杯おもてなしさせていただきます」

 ふう、なんとか噛まずに言えたぞ。

「固いなぁ‥‥‥、ほら立って立って! さぁ、何処を案内してくれるんだ?」
「わたくしずーーっと楽しみにしてましたのよ!」

 イザベラ様が微笑む。
「まぁ、この子ったら‥‥‥、エドガーくんに会いたくて仕方なかったのよね?」
「もう! お母様、それは内緒って言いましたわよね!?」

 ははは‥‥‥、仲のいい母娘だ。羨ましい‥‥‥訳じゃないぞ。泣いてもいないぞ。

「ご予定では要塞城壁のご案内、醸造所と蒸留所の見学、テオドール温泉体験、その後は夕飯といった感じですが。他に何かご覧になりたいところがありましたらおっしゃってください」

「うむ、それで問題なかろう」
「わたくし達は早く温泉体験をしてみたいですわ! お酒の所は早めに切り上げて欲しいですわ!!」
 ゲオルグ様の返事にケチをつけるエリーゼ様。

「エリーゼ、お酒は良いものよ‥‥‥」
 イザベラ様がエリーゼ様を優しく諭す。

「ははは! 妻はオレよりも酒が好きでな。蒸留所の見学は長めに頼む」
「かしこまりました‥‥‥」

「むーーー!」
 エリーゼ様の頬が膨れる。小動物みたいでかわいい。

「まぁまぁ、エリーゼ様。大人たちがお酒飲んでる間に我々はお話でもしましょう?」
「はっ!? そ、そうですわね!! お父様、お母様、ごゆっくり!」

 とりあえず平和的に予定は決まった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「ブルーさん、こちら辺境爵ご一家です」
「ははっ! ブルーと申します」

 ブルーさんは酒造り作業をしていたが、手を止めてこちらに来て臣下の礼を取った。
 儀礼的だけど一応やらないといけないからな。辺境爵様は気さくだからやらなくても大丈夫そうだけど。

「楽にせよ。ここの説明を願いたい」
「ブルーさん、お願いします」
「はっ! 僭越ながらご説明させていただきます。まずは‥‥‥」

 ブルーさんが酒造りについての説明をしていく。ここの特徴、特にここでしか作ってないオリザ酒の説明を丁寧にしていく。

 一番関心を持って聞いていたのはイザベラ様だった。本当に酒好きなんだな。

「では、オリザ酒の試飲をしてみましょうか。他にもワインにビールとありますが‥‥‥夜のお楽しみの為にとっておきましょうね」

「「そんなぁ‥‥‥!!」」
 辺境爵夫妻の声が揃う。
 いや、あんたら相性バッチリか‥‥‥。

 あまりに二人が嘆くのでワインとビールも一杯ずつ試飲させた。



 
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