異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯

文字の大きさ
上 下
68 / 119

日本語の解読

しおりを挟む
 右門のプレートに書いてある文字は日本語だった。俺はもちろん読めるけど他に読める人はいないだろうな。

 左門にはこっちの世界の数字が刻まれている。

「な、なんて書いてあるんだ!?」
「読み上げるぞ。『菊に梅 牡丹に桜 藤に松 魔の流れにて 岩戸開きつ』だとさ」
 上手いこと五七五七七になってるな。

「なっ!? ど、どういう意味だい!? そんなの聞いた事もないぞ!?」

 似たような花はあった気もするが確かにこっちの世界ではそんな名前じゃなかった気がする。

 ふむ‥‥‥これはおそらく『花暦』だな。

 だとすれば‥‥‥。
「9、2、6、3、4、1の順に魔力を流すって事だろうな」

 その通りに俺が魔力を流してみると‥‥‥。

ゴゴゴゴ‥‥‥!!!!

 門が開いた。

「開いた‥‥‥! さすがはエドガーだ!!」
「そんなのもちろんです!」
 だからティナ、なんでお前が偉そうなんだ。

 遺跡ダンジョンの中にみんなで入る。

「‥‥‥ここからは気を抜くなよ。何が起きてもおかしくないからな」
 セリスがみんなに注意を喚起する。

「エドガー様。風の精霊が‥‥‥調子悪いみたいです。申し訳ございません」
 フルルが泣きそうな顔で訴えてきた。

「あぁ、きっとダンジョンのせいだろう。大丈夫さ、みんないるし!!」
 精霊の種類によってはダンジョンで調子良くなるタイプもいる。
 空気の流れの悪いこういう閉塞的な感じのタイプのダンジョンでは風精霊は本領発揮出来ないのだろうな。

 逆に開けた草原ダンジョンなんかでは調子良くなるはずだ。
 この階を過ぎたら開けてるダンジョン階かもしれないからそこは仕方ない。

 セリスがフルルの肩に手をやる。
「こういうダンジョンはアタシ達に任せときな」
「‥‥‥すみません」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 キラーラット(歯の鋭い大きいネズミ)やスティールバット(冒険者の所持品を盗む蝙蝠)が現れたりしたが問題なくセリス達が討伐してくれた。

「‥‥‥ここはセーフティゾーンだな。ここで一時休憩しよう」
 セリスの提案に皆賛同する。歩き続けて少々疲れた。
 ダンジョンには各階にセーフティゾーンなるものがあるらしい。
 ライオンみたいな彫像の口からきれいな水が出ていて飲めるらしい。

「じゃあ水を汲んできます」
「私も行くわ、フルルちゃん」
 フルルとティナが水筒を持って汲みに行った。

 こちらではマール達が手慣れた手つきで火を起こす。

「この感じだとボスが近くにいると思う。ここでしっかりと休んでいこう」
 さすがは冒険者のリーダーだ、しっかりしてるな。

 火を囲んで座り、水筒の水を飲む。保存食をみんなで分けて少しずつ食べる。いかにも冒険者らしい光景だ。

「エドガー様、以前作った保存食があったのでは?」
「あ、そうだな。このリュックの奥に‥‥‥あった!」

 ゴソゴソと取り出したものは以前作った魔法の缶詰だ。二つ。
 中身は‥‥‥なんだったっけな?

「なんだ、それは?」
「中に食べる物が入っているんだ。待ってろ、今開けるから」

 蓋部分の魔法陣に魔力を魔力を流すと缶詰自体が温まり始める。
 
 充分に温まったところで缶詰の蓋が開いた。
 出汁っぽい香りが広がる。思い出した。これは『炊き込みご飯(モドキ)』の缶詰だ。

「!? すごい美味そうな匂いがするぞ!? なんだそれは!?」
 興奮気味のセリスが近づいてくる。
 ちょ、近いって。

「炊き込みご飯だよ、オリザと具材と出汁で炊いたんだ。試験的に作ったものだから試食して意見をくれると助かるよ」
 それぞれに分けると量は二口分ふたくちぶんくらいだな。試食としては丁度良いだろう。

「!? うっま!! なんだよ、これ!? もっとくれよ!」
「ふむふむ、好評だな。すまんがそれしかもうないぞ」

「はうぅぅ‥‥‥」
 がっかりしたセリス達は両手と膝を床につけてしまった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「さて、充分休息出来ただろう。そろそろ行くか」
 俺たちは立ち上がり、安全地帯を後にした。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

処理中です...