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side∶凛 5 ( 完 )

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 心に反し、僕の指をもっともっとと飲み込んでいく陸の身体。その刺激で喜び天を向く陸の正直な身体に、僕は舌を絡ませる。 


「凛っ!!なに、す…」


 陸の身体を反応させているのは僕じゃない…それならば、僕ってことにすればいい。


「ねぇ、陸。お兄ちゃんからひとつ提案なんだけど」


 陸の顔が少し曇った。僕がこう言うときは、良くない提案をする…そんな顔だ。
 もちろん大正解。そして不正解でもある。


「ここを舐めてるのは兄さんの口、ここに入ってるのが兄さんの…」


  僕はここを知らせるように、舌を絡ませ、指は陸の体内でピクピクさせる。


「は?」

「僕を、兄さんだと思って、さ」

「っ…!」


 陸の、何を言うんだコイツって顔が見下ろしてくる。身体は、兄さんだと思ってこんなにも気持ち良くなってるくせに。


「兄貴って呼んでも、構わないから…」


 言いながら僕は、陸に横顔が見えるように、少し顔を傾けた。


「い、いや、だっ!」


 しっかり身体は反応しながらも、心では必死で抵抗する陸。


「いいの?そんなこと言っても」


 その抵抗に、僕は少しだけ歯を立てる。


「んんっ!」


 一瞬揺らいだ陸の瞳は、まだ抵抗をするように、ぎゅっと閉じられた。


「たまには、お兄ちゃんの言うことも聞けよ」


 僕の言うことなんて、ちっとも聞かない弟。可愛くなくて、そんなとこがかわいい陸。


「り、ん…ん、や、ああんっ!」


 僕は、陸の最後の抵抗を崩すため、そして…僕自身を見てほしい、そんな気持ちに別れを告げるめ。一層強く舌を絡ませた。








 兄さんは特別で。僕が隣にいるのは当たり前で。叶うことはないのに兄さんへの想いを断ち切れなくて。ベソベソして。
 ずっとずっと、昔から変わらない陸。


「ばかで一途でかわいい陸。昔から変わらないね」

「へ!?なに?」


 そんな陸をずっと想い続けてきたし、これから先もその想いは変わらない。
 例え、僕が兄さんの代わりだったとしても。


「なんでもない」

「え?んぁぁあぁぁぁっ!」


 陸の言葉をさえぎるように、僕は深く強く咥えこんだ。











 もう、認めちゃえよ。
 陸がどんなに求めても、陸の好きな兄には既に恋人がいて。しかも、恋人の上に乗っかってあんあん喘ぐ、陸の理想の兄像じゃなかったってこと。
 それでも、理想の兄貴への想いが断ち切れないってこと。

 陸は自分の思い描く理想の兄貴に、こんなこと、してほしかったってこと。



 僕は少し眉間にシワを寄せ、不機嫌に塗り替えた横顔を見せつける。


「り、り…ん」

「違う」


 ここにいるのは。目の前にいるのは。
 陸の、理想の、兄貴だ。










 陸の瞳から光が消えた。


「り、…あ、あ、あ…あに…兄貴っ!」


 先程まで逃げ出そうとしていた陸の身体から抵抗が無くなった。代わりに、僕から快楽を奪うかのように指を締め付け、口の中で暴れまわる。


「ん…」


 僕の頭を押さえつけ、陸は腰を甘く震わせた。

 喉の奥に、熱くて甘くて、けれど確実に苦いものが流れ込んでくる。僕は喉を鳴らしそれを飲み込んだ。


 一緒に、堕ちよう。
 偽りの終着点しかない、この一方通行に。








「どう?初めての兄さんは」

「…」

「髪染めようかな。ピアス、似合うかな」

「…」

「また来週もおいでよ。兄さんになってあげるから、さ」

  






  これでよかったんだ。

  僕は、陸が呼ぶ声に耳を塞いでいれば心を満たせる。
 陸は、片目を閉じさえすればいい。


 それぞれが交わることない一方通行の矢印。
 それを、無理やり繋げて作ったちぐはぐの終着点。


  陸はそれで納得してる。


   一つ我慢するだけで、好きな人が手に入る。なんて簡単なんだろう。


  陸も納得してる。









  …これでいいんだ。


  そう自分に強く言い聞かせ、僕は不機嫌な顔に塗り替えながら教室で陸を待つ。

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