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8 ❲完❳
しおりを挟むもう諦めちゃえば、と凛の瞳が訴えてくる。
「り、り…ん」
「違う」
その瞳は、もっと見ろと言わんばかりに兄貴と瓜二つな横顔を見せつける。
さっきまでのいたずらっぽい顔から、不機嫌な顔に塗り替えながら。
その横顔に、オレの張りつめていた何かがプツンと切れた気がした。
あぁそうか…
オレは、気持ちいいことだけに意識を集中させ、最後の抵抗を取り払った。
「り、…あ、あ、あ…あに…兄貴っ!」
「…」
オレは、凛の口へ全てを放った。
いいや違う。兄貴だ。大好きな大好きな兄貴だ。オレの思い描く、兄貴だ。
ズルリと後ろから指が引き抜かれた。
喉の奥で受け止められたものは、コクコクと喉を鳴らし美味しそうに飲み込まれていく。
「どう?初めての兄さんは」
「…」
「今度、髪染めようかな」
「…」
「また来週もおいでよ。兄さんになってあげるから、さ」
いたずらっぽく笑う口。それとは逆に、凛の瞳は、悲しさの中にどこか強い決意を秘めていた。
これでよかったんだ。
オレは片目を閉じていれば自分を満たせる。
凛は、オレが呼ぶ名前に耳を塞いでいさえすればいい。
向いてる矢印が一方通行のちぐはぐな関係。
凛はそれで納得してる。
一つ我慢するだけで、理想の相手が手に入る。なんて簡単なんだろう。
凛も納得してる。
…これでいいんだ。
そう自分に強く言い聞かせ、オレは兄のいる学校へ向かった。
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