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しおりを挟むなんとか身体を捩り抵抗しようと試みるが、胸元に回された腕はびくともしない。
しかも暴れるオレを予測してか、扉にはご丁寧に凛の足が挟まっている。
「陸。シッ、静かに」
口元の手にぐっと力がこめられた。耳元で、子犬を叱るかのような声が囁く。
あっちを見ろと言わんばかりの凛の視線に促され、オレは扉の先に目をやった。
扉の隙間から見えるのは、少し大きめのソファの背もたれ。無造作に掛けられたブランケットが揺れている。その上には、見覚えのある髪色。窓から差し込む光が透けて、大好きな太陽色になっている。その下にある肩は、剥き出しだ。
「んっっ?!」
あに…き…?
揺れる髪に透ける青いピアスは初めて見る。
髪で隠れて表情は見えないが、上ずるような、喘ぐような声と共に上下する身体。揺れ動く髪。しっとり汗ばんだ、仰け反る背中が見える。
オレは一体…何を見ているんだ…?
混乱するオレを余所に、だんだんと早まる嬌声。意味を成さない単語。飛び散る汗。肩に力が入り、一際高い声と共に何度か小さく身体が跳ねた。
そしてそのまま力が抜けるように、前屈みで背もたれの影へ消えていく。
そのとき、聞こえてしまったのだ。
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