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1、付き合ってもうすぐ一か月なんだぞ!!

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「な、なぁ、忠俊…………」


 学食で昼ご飯を食べながら、オレは向かいの席に座る忠俊に話しかけた。


「んー?」



 異様に気合の入ってるオレに気づいてない様子の忠俊は、上の空できんぴらごぼうを口へ運んでいる。たぶん来週提出の課題で頭がいっぱいなんだろう。


「今日、オレん家、来な、い…か?」

「あー、ちょっと待ってね。そういえば、明後日提出の課題も出てたような…いいよ、ユウの家で一緒にやろっか」


 持っていた小鉢と箸を置き、えーっととスケジュール帳を確認しつつ、忠俊は答えた。
 

 

 その返事を聞いた瞬間…オレの心は花が咲いてスピンしてバウンドしてジャンプして天井を突き抜けるくらい舞い上がった。
 その後の講義は右耳から左耳へ直通、座っててもソワソワ落ち着かず…ひょっとしたら2ミリくらい浮いてたかも。





 そして夕方、本日全ての講義が終わった時刻。オレはそわそわソワソワしながら、忠俊と共に自宅へ帰った。


 机にノートやテキストを広げ、斜向かいで座る。
 本の内容は何も頭に入ってこない。課題は1ミリも進まない。オレも明後日提出なんだけど。それでも集中できないオレは、真っ白いノートの隅で消しカスで作ったちっちゃいミミズを遊ばせていた。



 もう何回目がわからないけれど、オレは真剣にテキストを読む忠俊の顔を、そっと見る。


 全てを包みこんでくれそうな優しい目、柔らかくかかる前髪、スッと通った鼻筋、少し上がった口角、頬の真ん中にあるほくろ、形の良い耳…相変わらず顔かっこいいなぁ。


 忠俊の顔を見つめることたぶん35回目くらい…忠俊が顔を上げ、疲れた表情で遠くを見つめている。どうやら課題が一段落したみたいだ。
 この時を待ってました!と言わんばかりに、オレは口を開いた。


「忠俊!!!!」

「ん?」


 お疲れ顔と目が合う。そんな顔もかっこいい…と思いながらも、オレは続ける。


「お、オレたちって、つつつ、つつ付き合ってるんだよな!?」

「は?いきなり何!?」


 驚いた様子の忠俊。無理もない。けれど、オレはしつこく聞く。


「な?な?な!?」

「そ、そう、だけ、ど?」


 オレの圧に負けたのか、忠俊は怯んだ目で返事をした。


「だったら!!」


 オレは勢い余って机に乗り上げた。その風圧でちょっと後退する忠俊。


「…だ、だったら?」


 オレはここぞとばかりにグイグイッと圧をかける。血走った目はギンギンになっているだろう。


「だったら……」


 オレは大きく息を吸い込んだ。


「セックスしようぜ!」












「…………………はぁ!?」


 机をはさんで斜向かいの忠俊は、コイツ何言ってんだという顔。でもかっこいい。


「だって!オレたち、もうすぐ付き合って一か月だぞ!!そろそろしたっていいだろ!!」


 オレは身を乗り出す。それをどうどう…と制する忠俊。眉が下がった困り顔の忠俊もかっこいい。


「あの……付き合ってる期間の問題じゃないよ?」

「だったらなんの問題なんだよ!!」


 オレは困り顔にグイッと自分の顔を近づけた。


「なぁ忠俊…」


 どんな顔してても相変わらずかっこいい。……でも今はそこじゃない!!


「あー…んー………気持ち?」


 オレの気合とは反対の、歯切れの悪い返事が返ってきた。ついでに視線が逃げる。


「なんだよそれ!そんなもんどうやったらわかるんだよ!画面左上に表示されてる訳じゃないんだし!」


 オレは問い詰めるように顔を近づける。机の幅限界までググッと。
 いっそこのまま肩を掴んで唇を…と手をのばしたそのとき。


「ユウッ!!!」


 忠俊がオレの手をつかんだ。逃げていた視線がオレの目を捉える。


「とにかく。僕たちには、まだ早い」

「た…」


 もうこの話は終わりだと言うようにジュースに口をつける忠俊。普段は温和な忠俊でも、こうなったらテコでも動かないことはよく知ってる。


 オレはホースが巻き取られるかのように、しゅるしゅると元の場所に戻る。

 納得いかないモヤモヤを抱えながらも…


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