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しおりを挟む好きって、なんなんだろう…
二人の話を聞くと、余計にわからなくなる。
「ねっ、ねっ!二人ともっ!」
「んー?」
「なんだよ春海」
いつものように三人のんびりタイムを過ごしていた。今日もオレの家だ。
「ね、遊びに行こっ!デートしよっ!!」
オレたち二人に見せるように、というか近すぎて観えないんだが…開いた雑誌を押し付けてくる。
「だったらなんでオレにも見せてくるんだよ!!」
デートというワードを聞き逃さなかったオレはすかさずツッコミを入れる。
「え?だって、遊びに行くならやっぱ三人で行きたいじゃん。ねっ、亮」
「だな」
「だったらデートとか言うな!」
オレは顔面から剥ぎ取った雜誌で、春海の頭を軽くペシンとした。
「ごめんつーちゃん許して~!」
小突いたつもりが白刃取りの要領で、両手で挟まれた雑誌がパン!と小気味よい音を出す。
デートと言えば…で、オレはふと思い出す。
「で?二人とも、好きになるとやらは?どうなったんだ?」
「んー、ぼちぼちかな~」
「だな」
「……」
この日はこれ以上特にこの話題が進むことなく、解散となった。
二人を見送り、部屋に戻ると。
窓に反射された自分の姿に、外が暗くなっていたことに気付いた。
「もうこんな時間か」
そろそろカーテンを閉めようと窓に近づいた時…
その時、オレは見てしまった。
二人の告白を聞く前なら疑問に思っただろう、でも、それを聞いた後なら何もおかしくはないだろう。
夜の足音が近づく静かな住宅街の二階の窓から見えたもの。
それは、手をつなぎながら歩く、春海と亮の姿。
いつも一緒にいる三人。これからも、この先も、ずっと変わらず続くものだと疑いもしなかった。
今更ながらに、『好き』の持つ繋がりを意識した。
オレは力任せにカーテンを閉じた。
「わーーーーーい海だあぁぁぁぁっ!」
「海に着いたら誰がどう見ても海なのに『海だー!』って言いたくなるのはなんなんだろうな」
「おい春海!亮!はしゃぎ過ぎて落ちんなよ!?」
オレたち三人は海に来ていた。大きな公園が隣接しているが、季節柄ほとんど人はいない。
「ってかなんでこの季節に海なんだよ!」
「ほらほら、ぼくの名前的に?」
「今から改名するか?」
寒い寒いと言いつつ、なんやかんやテンションが上がってくる。
「フリスビーとか持ってきたら良かったな」
「海の彼方に消えて終わりだろ!」
いつものようにはしゃぐオレたち。いつものように、楽しい。
どこからか拾ってきたヘンテコな形の漂流物を見せてくる春海。
それ一つ一つに命名する亮。
それをツッコミつつ写真に納めるオレ。
こうやってふざけ合う時間が好きだ。そしてなにより、この時間はこいつらがいないことには成り立たないんだ。
ふと、二人が並んで座ってるのが目に入る。
オレは、先日の、窓から見た光景を思い出した。
恋人として好きになろうと思う、と言った二人。
ということは、この二人の間には、オレがこいつらに向ける好きとは違う好きがあって…
春海と亮の好きには、オレが距離を取らなければいけない好きの繋がりがあって。
オレと春海、オレと亮の好きには遠慮がなくて。
今までは、幼馴染として三人の間に同じ『好き』があったけど。
それとは違う『好き』で少しずつ変わっていくオレたちの関係に、心がざわざわした。
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