果て無き異世界漂流記

秋の宿

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眩しすぎるくらいに日の光がまぶたを照らし、俺は目を覚ました。

「んん……ここはどこだ?」

起き上がって周辺を見てみるが、見渡す限り木、草、木、草と完全に山の中の様だ。そもそも何故俺はこんな山の中にいて、先ほどまでこんな草っ原に寝転んでいたのかすら分からない。完全に記憶が途切れている。

うん……。これは一度状況整理をしないとまったく何も分からないな。まず簡単な事から思いだしていこう。

俺の名前は 柊 達也。高校一年生。誕生日が来ていないためまだ15歳。容姿は黒髪茶眼という感じ。兄弟も居ない一人っ子。クラスにも馴染めていたし、学業が疎かになっているわけでもない、いたって普通の高校生。両親は共働き。それでも深い愛情を注いでくれていたと思うし、幸せな家庭だったはずだ。ああ……二人の作ってくれていた料理が食べたい……。特に二人の作るハンバーグは最高だった。

……おっといけない。空腹のせいか完全に料理の事ばかりに考えが行ってしまった。俺の記憶が途切れた直前の記憶は、とてつもなく眩しかった光に対し驚きその光から逃げる同級生と、普段仲良くしてた奴らが「異世界召喚じゃね!?」と叫びながら喜んでいた姿だけ。基本的な事を思い出せるのは良いが、本当にここまでしか思い出せない。それに、仮にこれが異世界転生や召喚の類いだったとして、テンプレなら神様からの説明や王女からの挨拶とかがあるものだろ?つまり俺は普通の状態じゃないってことか?

そもそも、ここがまず異世界かどうかすらはっきりしていない。まったく見知らぬ山中に俺一人とか、なんたる人生ハードモードだよとツッコミたくすらなる。
さて、近くに人も居ないしどうしたものか……。

俺が思考の海に浸っているとき、右前方の草むらから、ガサリと音がするのが聞こえた。その音は継続的に鳴っており、どんどん大きくなっている。
俺の目は反射的にそちらに向き、先ほどまでの思考を止めざるをえなくなる。

「おいおい。草むらガサリとか、熊か蛇でもいるのか?だとしたら対処のしようがないぞ……。熊だったら背を向けて走らなければ良いんだったけな?とにかくどうするか……。」

「ガサガサ……ガサガサ!」

俺の緊張は極限まで引き延ばされる。当然である。命の危険が近付いているかもしれないのだから。

音の主が近づき、ついには俺の目の前に姿を現すかという瞬間、ズサリ、という音と共に謎の物体が地面に転がってきた。

「うわっ!」

それを見て反射的に叫んでしまう。
その物体は、今まで見たことのなかった何かの頭部と思われる物だった。そう考えられるのは、赤い目、大きく割けた口、醜悪な鼻、紫色の血、何より特徴的なのは、ヌラリと光る生々しい緑色の肌である。
脳裏に浮かぶのは、異世界物で出てくる『ゴブリン』という魔物。ドッキリか何かかとも考えられるが、今まで見てきたどの生物よりも生理的嫌悪を催すのだ。創作物ではないと断言できてしまう。仮にこれを創作で作れる者がいれば、イカれてるとさえ思えてしまうだろう。
つまり、この頭部は本物ということである。

「おいテメェ!!そこで何してやがる!!」

驚く俺をよそに怒号が鳴り響く。声の方を見れば、赤色の髪でとげとげとした髪型を作り、こちらを睨めつけながら額に青筋を浮かべ、左手に頭の無くなったゴブリンの死体を担ぐ青年がいた。彼は剣の先を俺へと向けている。

これが俺の運命を変える、オルト・グロスロードとの出会いだった


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