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~第1章~ 出逢いからの初仕事
第1話 高校生活開始からの即ぼっち。
しおりを挟む今まで信じてきた世界が変わった。意外と忽然とあっさりと。
彼女が来てから。
ありきたりな日常が全て変化し、急激な非日常へとオレの人生の方向性はもっていかれた。
人の人生なんて意外と変化の連続が所々いっぱいあって、その度に人生の転換期があり、そのときそのときに取捨選択して歩む。その積み重ねが後々振り返ると、これまで生きてきた道、つまり人生になってるってものなのかもしれないけど。
…だけど。
ま、とりあえず、さっさとぶっちゃけると、オレ、フェニックスだったらしい。
鳳凰、朱雀、ガルーダ、火の鳥、不死の鳥。
と。他にも色々呼び名はありそうだけど、フェニックスということにしといてよ。
彼女には『やきとり』呼ばわりされてるけど。
そう呼ばれるとグッと残念な感じになるよね、実際。
「彼女」と言ってもステディー的な彼女という意味ではなく、この場合の「彼女」とは、三人称的な意味合いでの彼女を指してるだけな訳で。
ま、そんな言い訳どうでもいいよね!
とりあえず、彼女のお陰でオレの平穏で普通で平和な日常は劇的な変化を遂げて、かなりの非日常が日常的にやってきた。
×××××××××××
今年の春は違う。
4月初旬。この桜舞い散る季節。
って言っても実際はまだ桜咲いてないけど。つか、4月が春とは言えども、初旬程度じゃ実際はまだ寒い。
とりあえず3年間という青臭い中学生活が終わり、今年からオレは新たに高校生活が始める。
そう始まるのさ!
憧れのハイスクールライフが!屈託なくなんでも言い合える仲間!憧れのマドンナ的先輩女子や、クラスメイトの可愛い女子たち!
ちょっと大人になった気分の楽しい楽しい学園生活がこれから待ってる!
……のはずだったが。
冬の北風の寒いながらの澄み切った青空よりは、ぼんやりとしたまだ春めいたと言える程のぽかぽかした陽気でもない、中途半端なこのなんとも言い表せない?形容しがたい?這い寄る混沌的な?ぶっちゃけどーでもいい晴間に、「私立 中津高等学校」の校門を生徒として初めて通った。
学校からあらかじめ送付されてあった、入学案内のA4プリントを何度も見ながら、案内図通りの入り口に入り、何列もある下駄箱の列から、あらかじめ決められたクラスと出席番号の下駄箱を探す。
見つかった自分の下駄箱に真新しいローファーの革靴を入れ、カバンに無理やり押し込んでいた、これまた真新しい上履きに履き替え教室に向かう。
オレの高校生活初の教室は1‐Cとのことだが…。お、あったあった、あそこか。
案内図通り進み、迷うことなく無事つけそうなことにオレは少し安堵する。
教室に入るともう何人かクラスメイトになるであろう新入生がいた。どいつも男女問わず、制服もカバンも上履きもピカピカだ。
ピッピカピカピカァー!
と、トラの模様の電撃放つ人気小動物の鳴き声が頭をよぎるほどのピカピカで、もう電撃が放たれそう。
黒板には、出席番号順の席順の張り紙が張られており、張り紙を確認したオレは、その指定通りの席に着く。
席に着いて、暫くもしないうちに段々と教室に新入生が集まってくる。残念ながら、同中の奴や知り合いはこの教室にはいなそうだ。
若干の緊張からかそわそわしながら、まずは様子見とばかりに、周りの奴らを人間観察することにした。早速小説を取り出し、読んでいるので話かけないで下さいオーラを出す。ATフィールド展開!
実際は、小説など読んでおらず、小説越しにちょいちょい周りを盗み見てどんな感じの奴らがこの教室に集まって来ているのか観察している。
そんなことをしているうちに高校初の開始時間になって、この教室の担任の先生が入ってきた。
挨拶やこれからの学校生活の説明が一通り終わり、その後すぐに入った校舎から少し離れている講堂にクラス全員2列になり、移動させられた。入学式を行う為だ。
その全一年生を集められた入学式も滞りもなく終わる。
入学式が終わるとまた教室に戻され、ロングホームルームが始まった。明日以降の学校生活にあたってや、生徒手帳や教材など、これから使うであろう備品が配られる。今日はどうやら授業的なものはないらしい。前の席の奴から回された備品は流れにそって、一部だけ自分の分をとり、後ろの席の奴に残りを渡す。先生の色々の説明は、聞いてるフリして聞き流していた。
こうして高校生活初日は、フツーに滞りなく終わった。あっさりと。オレがどっか冷めてるのかねー。ま、初日はこんなもんでしょ!そのうち色々なイベントフラグが立つに違いない!
…その後、数日が立ったが現実は何も待ってなかった。何も待っててくれてはいなかった。
入学式初日から、いきなりの女子との事故的な出会いがあり、そっから一悶着あった末、お互い徐々に好意を寄せていきながらも途中で気持ちのすれ違いからやきもきする展開を繰り広げるという、女子とのラブコメストーリー的展開もなく。
かといって、入学式初日から言われもない因縁をつけられ、不良達に絡まれボコボコにされるもそっから怒濤なストーリー展開によって、最初からんできた不良達とも何時の間にかうち解け、そいつらさえ自分の配下に治め、あわや学園のボス的存在に成り上がるサクセスストーリーになるべくきっかけも勿論なかった。
全くもって平凡に普通にダラダラと過ごしてしまい、あっという間に数日どころか4月終了してしまった。
どーでもいいけど、この学校指定の男子制服さー。ボタン部分が、全部ホックというのが未だに慣れないんだけど。ホックを一段づつ掛け違いすることなんてしょっちゅうだ。
なんとかならんのこの制服?上下紺色であんま見栄えもしないし。襟のところのカラーも邪魔だし。どっからか聞いた話によると、創立時の校長が海軍好きで半ば趣味で海軍の制服を真似てこの制服を作成したらしい。
着させられるこっちは迷惑だよ!
そんな制服もまとも着れない間に気づけば周りのクラスメイト達は様々なグループが出来ていた。
部活が同じで仲良くなったグループ。席が近くて仲良くなったグループ。出身校が同じで仲良くなったグループ。音楽の趣味が同じで仲良くなったグループ。なんだか気があって仲良くなったグループ。周りからの疎外感を感じとって寄り集まったグループ。自分が宇宙人、未来人、超能力者だと信じ込んでやまないグループやらと…。
オレはそれらのどのグループにも属さず、何時の間にか孤高と化していた。クラスメイトから一番やっかいとされる奴に。特に全員からイジメを受けてるわけでも気持ち悪がられてるわけでもないのだが。
……多分。
いや、是非そうであって欲しい!
そう願いつつも、周りの奴らとオレの空気がなじまないというのか、なんというか。
うん、きっとオレがちょっと周りの奴らより、ワンランク上のレベルの為、周りの奴らのような下々の者達とは反りが合わないのさ。きっと、そうに違いない!
つか、そうやって無理矢理にでも、そう自分に言い聞かせないとやってけないでしょ実際。
だって、もう5月も始まっちゃったのに何もオレは始まってないよ!意外と高校生活、世知辛っ!
あー。なんか、高校生活無駄にしてんなー。早い奴は同じ高1なのにもう同級生の彼女ゲットしてるし。青いアイツにドラ焼き死ぬほど食わせてやるから俺に彼女をよこせー!アンドロイド的な彼女でもこの際構わないよ?
そんな22世紀猫型?アンドロイド的な便利な存在はおりません。はぁ、せめて心許せる友達ぐらい欲しいよなー。
ま、一人なら一人で気楽なんだけど。時々、世間やらマイブームやらの話題を共有できる奴らが近くにいないって寂しいよね。
あれ?
オレかなり寂しい奴なのか?そこ気づいちゃった?オレ。
早くこの脳内で一人会議してるというだけで一向に進展しないこの状況を脱しないと、3年間限定の高校生活という、おそらく人生で一番輝かしいであろう、この瞬間が後々の人生の最中で最も思い出したくもない、むしろ無意識に記憶から葬ろうとしてしまいそうなぐらいの黒歴史になってしまう!
嫌すぎるー!それだけはぜひ避けたい!
そんな感じで内心は現状の生活に不満でいながら実際何にも変えられない日常を寂しく過ごす人見知りが激しいオレこと、青桐彦一は、高校生活最初のゴールデンウィーク前日になっても彼女はもちろん、クラスメイトで友達と呼べる奴すらも持てずにいた。
他のみんなは、これから来るゴールデンウィークを仲間と一緒に部活やらお出かけやらを楽しみしてるんだろうけど、友達やら部活仲間やらがいないオレには全く楽しみでもなんでもなかった。そのうち友達はサボテンだけと言ってしまいそう。
否!それだけは避けたい!
そういやぁ。中学時代には、オレを親友と呼んでくれて、やたら絡んで来た奴がいたっけ。そいつも親の都合とかでどっかに引越してしまった。
そーいや連絡してないな。と言っても、そいつは急な引っ越しで夜逃げ同然でいつの間にかいなくなってたから、連絡先すら知らないけど。ま、そんな過去のことは、この際いい!むしろこれからの学園生活をどうやったら楽しく過ごせるかを熟考し計画的に実践に移さねば!
ぽかぽか陽気という言葉がだんだんシックリくるような青空で快晴な、ゴールデンウィーク前日の放課後。もちろん帰宅部なオレは家路を歩きながら、これから来るに違いない(まだ諦めてないんだからね!)楽しい学園生活プロジェクトに思い巡らせ妄想し始めながら下校した。聞くまでもなく一人で。ホームルーム終了後、駄弁る友達もいないし、部活もしてないから帰りが早い早い。自分で言ってて悲しい。
べ、別に話しかけて欲しい訳じゃないんだからねっ!
こんな畑と田んぼが似合う、山々に囲まれ草いきれの香りがむんむんで、なんなら今時期なんて肥料の匂いもぷんぷんで春風に乗って香ばしい!だが、空気だけは美味しい、そんなド田舎じゃあ、楽しい放課後ライフすら楽しめるわけないじゃん!ファストフードもこ洒落た喫茶店もゲーセンも帰り道に遭遇しないしねー。そりゃ、妄想しながら、帰宅しちゃうよ!
せめて、二次元世界みたく、なんだかんだ一緒に帰ってくれる、おせっかいで実はカワイイ幼馴染みの女の子一人や二人いてくれてもよくね!
実際そんな子どこにもいないよ!ヒドイよ現実。オレのカワイイ幼馴染みの女の子を返せ!マジ返せ!
つか、近所っても、隣が50m先って有り得なくない!遠すぎでしょ。仮に幼馴染みがいても朝オレを起こしに来るのも一苦労だよ!
家まで上がりこんで、
「彦一起きて!もうっ。遅刻しちゃうぞ!」
って起こしてくれるフラグが立つ奴なんて実際リアルで何人いるんだよ。
いたら教えてくれ!ぜひ逐一リアルタイムで報告しろ!
報告されてもそんな羨ましいリア充報告聞いたらオレが涙で枕濡らすわ!ふざけるなー!
と、脳内で知らない誰かに腹を立てていた。
そんな時。
急に空から、純白の羽が生えたフワフワした軽装姿の雰囲気がぽわわっとした美少女が降ってきた!なんの前触れもなく。目の前にドーンッ!
「って、んなわけねーー!」
またもや一人ツッコミしてしまった。どうやらオレは相手がいなくてもツッコミをしてしまわずにはいられない性分らしい。
そんなことを思い巡らせながらの下校中、こんな田園風景全開なド田舎に似つかわしくもない、高級そうな黒塗り塗装の車が家の近所の畑の路肩に停まっていた。でもただそれ以外は特に何事もなく家に無事着く。家は、ド田舎に似つかわしい、築25年の木造平屋建てのマイホーム(屋根裏部屋あり)。
と、今日は何故かそこに同い年ぐらいの女の子が玄関先に立っていた。
つか、同い年ぐらいの女の子、美少女と言ってもいいだろう。そんな子がオレ家の玄関にいること自体珍しい。いや。というか今まで一度もないかと。はっ!まさかオレの知らない間にオレに異性の友達が!むしろ幼馴染が!
ないよねー。ないない。ないわー。
帰宅した彦一の目の前に、突如現われた同い年ぐらいの美少女。珍しい訪問客に一瞬躊躇し、混乱して立ち止まった彦一だった。
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