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第2章

日海軍の銃器

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  「銃器はどうする??」という論争は日海軍内で実は2020年頃から長らくされていた。

 日海軍の上層部の多くは「どうせなら自主開発したらどうか?」という意見であった。

 だが、肝心の開発部トップの坂本少佐は「いや、他の事に忙しくて開発する余力ない」とのことで極めて消極的な考えを会議で発言していた。

 現に開発部は、台湾を中心とした中華圏からの脱出組はアプリだとか通信技術だとか、どちらかというとソフト関連の開発にてんてこ舞い、

  坂本がトップで切り盛りしている日本の川北の開発部が中心となった開発部は新型ゼロ戦、イ400KAIなど主力兵器の開発でてんてこ舞い。

 日米の大学系の現に合同研究部門のライジングサンダーは核融合研究、バイオマス燃料の品種改良や精製技術の改善、不燃性発泡材の改良などでてんてこ舞いな状況だった。

 他にもまだ日本本土に残ってはいるが、技術の海外への流出などに最大限の注意を払いながら南海企業連合の資金援助などで急ピッチで開発を続けていた企業もあった。

 自衛隊に歩兵用の自動小銃を納品している会社などはその代表格であったが、自衛隊が現行で採用されている小銃は問題点があり過ぎるので、それをどうにかしないことには日海軍での採用は考えられないと川北大将や根本中将あたりは彼らに伝えることになった。

 改良にはまた時間と金がかかるのでそこは日海軍側も極力協力するとして、日海軍で今後使用する銃器はどうするか?で元海自や陸自の将官であった人や、海外の武器に精通している開発部のメンバー(オタクともいう)を参加させ、検討会議を行った。

  「採用する銃器はどうする?」というのは簡単な話ではなく、どう闘うか、何と戦うか?という情報と戦略があって初めて成り立つことだ。

 今現在、決まっている戦略は、新型ゼロ戦で制空権を獲り、イ400KAIで海上・海中の制海権を獲り、赤城を拠点として戦略の要衝に居座り、敵の侵攻を抑える。

 場合によってはゼロ戦のステルス性能と航続距離無制限の能力を最大限活かして敵地の奥深くまで侵攻し、敵の中枢をピンポイントで攻撃する、

 というものだが、例えばゼロ戦にはどのような銃器を載せて、イ400KAIのはどの様な武装を施すか、赤城の乗員は誰がどの程度、どんな武装をするかなどは未だ決まっていなかった。


 まず、議題になったのが「7.62mm NATO弾は必要か?」というもの。

 自衛隊では64式小銃がびっくりすることに相変わらず退役されずに残っているので未だに7.62mmを持っていた。

 また、メガフロートで想定される戦闘を考えてみたら、200mほど距離の離れた偽装漁船に乗った武装民兵との戦闘などとの銃撃戦などが考えられるので、7.62mmNATO弾の強力な装甲貫通力が必要なのでは?という意見が少なくなかった。

 だが、「そのような敵には50キャリパー(12.7mm)のM2ブローニングで攻撃してやればよくね?」という意見があり、あえなく7.62mm派は撃破されるのであった。

 戦略空母赤城は比較的、前線に近い処にまで出張っていく使用法を考えているので、一番の脅威は「中距離ミサイル」で、二位は「航空機(無人機や小型ドローンも含む)による爆撃や雷撃」であった。

 武装漁船による人海戦術もおチャイナ様の得意技ではあるのだが、実際の戦闘で大量の漁船が赤城にまで無事たどり着くことは考えにくいし、対空兵器を下方に向けたら武装漁船へも対応出来るわけだ。

 また、それなら近年米軍などでも採用され始めている6.8mm弾 辺りを採用してはどうか?という案もあったが、市場に出回る数がまだ少ないこともありコストが割高なことや、米国人と比べて小柄な体型の日本人(しかも女性や子供や老人なども手に取る可能性もある)には5.56mmという小口径弾の方が運用し易いだろうということで、歩兵用のメインアームは5.56mmNATO弾のアサルトライフルを支給することに決まった。

 米軍で安く売り出しているアサルトライフルや弾丸を手に入れれば安く揃えれるだろうという考えもあった。


 次に航空機や潜水艦のメインアームについてだが、まず、イ400KAIの武装は、短魚雷は別として浮上後、艦内から防水扉を開けて出してきて使用するCIWS(対空近接防御火器システム)だが、これは20mmガトリング砲が使用される。

 イ400KAIでは対空用のみではなく、比較的火力の弱い武装漁船や地上施設などへの攻撃にもこれを使用する予定なので、12.7mmより火力の高い20mmが選択された。

 ちなみに龍国の海警(日本では海上保安庁に相当する)もこれら20mmガトリング砲を普通に積んでいるので、付近に浮上して攻撃するのは愚の骨頂。

 そういう場合は水中から短魚雷で攻撃を仕掛けるか、敵の死角に回り込み、一気に攻撃し手段を沈黙させるかのどちらかの運用法になる。

(後にイ400KAIの脅威に対抗するため、武装漁船や海警の船にも爆雷を載せることになるが、そのことが逆に彼らの足を引っ張ることになる)


 当初は、イ400KAIにも50mm速射砲などを載せる案もあったのだが、イ400KAIの艦内のスペースを削ることと、重量の増加による機動性の減少、操作するクルーを増やす必要が出ることなどから完全に無人で運用可能な20mmガトリング砲を搭載したCIWSが搭載されることとなった。

 こちらのCIWSはほぼ1分で格納から発射可能になるので、浮上後、即座に敵に打撃を加えた後、潜行して敵の目をくらませることが可能。


 次にゼロ戦は、機首に12.7mm機銃を2丁、主翼の中央部付近に同じく12.7mm機銃を2丁ずつ、計6丁搭載することになった。

 全部を共通にすることで弾丸の補給も楽になるし、またそれぞれの弾道の特性も全く同じなのでコントロールがし易いという判断があった。

  「12.7mmの50口径弾だと現行の戦闘機に対しては威力が低くないか?」という意見もあったのだが、元のゼロ戦のように20mm機関砲と7.7mm機関砲の併用だと弾道特性が違う上に弾丸の共用も出来ないなど問題も多く、

 また、メインの武器は高速誘導弾という「高速で撃ち出されるドローン」が有るので機銃はあくまでもサブとして使うことを想定していた。

 また、翼内に高速誘導弾を左右で10発ずつ収めるスペースと発射装置があるのだが、翼の下に取り付けるタイプのガンポッドとして高速誘導弾10発装填が可能なものや、米軍でも使用しているM230チェーンガン(30mm×113mm)
を取り付けることも可能。

 またそれらガンポッドは使用後に投棄して軽量化することも出来るよう設計されている。


 ゼロ戦やイ400KAIの乗員については機内や艦内が狭いということもあり、H&KのMP7が採用された。



 これは見た目、一般的なサブマシンガンというか小型マシンガンという感じの銃なのだが、一般的にPDW(パーソナルディフェンスウェポン:個人防御火器)と呼ばれるものだ。

 この銃は一般的なサブマシンガンのような拳銃弾は使用せず、貫通力を重視した専用の弾丸を使用する。

 近年の近接戦闘では「マンストッピングパワー」と言って敵を殺傷するのではなく、敵に衝撃を与え動きを止める能力を重視していた。

 一般市民などが多い市街戦などでは強力過ぎる銃は壁を貫通してしまい市民に被害が及ぶので危険とされていた。

 そこで反撃力を抑える目的で弾頭の大きさはやや軽く、発射初速の遅い弾が使われていた。(近代では9mmパラベラム弾が代表的)

 だが、ボディーアーマーの素材の進化や車両の装甲の強化などが相次いだことにより、従来の拳銃弾を使用したサブマシンガンでは貫通力が乏しいという状況が出てきた。

 そこで、弾の直径が4.7mmとほぼ半分にした代わりに銃口初速を400m~600m/sの拳銃弾に対してほぼ1.5倍の750m/sにアップさせ、弾頭を鉛という比較的柔らかい素材から鉄という硬い素材に変えることで貫通力を格段にアップさせた。

 また、弾自体が細くなったので装弾数も比較的多くなり、重量も軽減された。

 このPDWを戦闘機や潜水艇などの乗員には携行させることが決定し、また赤城の乗員や住人の自衛用火器としても正式採用されることが決まった。


 なお、こちらの銃を国内でライセンス生産したいという企業が出てきたのだが、そこは過去にいろいろやらかしているので、初回導入分の3500丁についてはH&Kからの輸入とし、その後に導入する分をその会社でライセンス生産させることとなった。

(もちろん、品質管理等はかなり厳密に行うことで同意してもらう)

 MP7の導入が日海軍で決まった後でわかったのだが、日本の自衛隊も特殊作戦群が既にMP7を採用していて、いろいろとカスタムして使用しているのだと陸自の元陸将から聞かされることになる。


 赤城の防衛用には、12.7mmのM2ブローニング重機関銃が大量に採用されることになった。

(ちなみにそれらの銃器は何回新都市内でライセンス生産されている)

 これらは軽トラや四駆の荷台に載せて使う。

 そのため、全ての車両の荷台やBピラー付近にはそれらの銃器をマウントする台座が取り付けられていた。

 前にも書いたが、赤城では純粋な乗用車はほぼ存在せず、軽トラやディーゼルエンジンの四駆(主にランドクルーザー70系)の幌車や後部が完全な荷台のトラック型が個人用で使われていた。

 バイクも米軍で採用されている川崎のディーゼル車だが、それには理由があって、ディーゼルエンジンで使用される軽油が爆発引火し難いという理由からだった。

(車についてはまた別の章で詳しく説明します)


 20mmガトリングガンを積んだ4tトラックも当初は予定されていたが、火器管制レーダーなどを搭載したCIWSを直接載せる場合は4tトラックでは重量オーバーとなるので4軸低床の10tトラックがベースに選ばれた。

 敵の戦闘機や爆撃機などの襲来があった場合は、これらのトラックを赤城の甲板上にズラリと並べて大火力でミサイルや航空機を撃ち落とすのだ。


 奇しくもレーダーで探知不能なゼロ戦が戦場に投入された後の龍国でも、同様の戦術が採られて艦船上や重要拠点は対空火器がハリネズミのように並ぶようになる。


 龍国は本当の意味での「ステルス機」というものは開戦当時の2040年でも実現されていなかった。

 それまでは実際にステルス機同士の空中戦や本格的な戦闘を経験していなかったため、「ステルス機モドキのものを用意しておけば敵国は我々を警戒するだろう」というような安易な考えで戦闘機などの開発をしていたし、開発も疎かにされていたのだが、

 日海軍との開戦と同時に日海軍は完全ステルスを実現させた「ゼロ戦」を登場させ、機体形状に頼ることなく機体表面の加工のみで電波吸収をほぼ100%実現させてしまう技術が龍国側にも速攻でバレてしまうのは当然のことだと想定されていた。

 パクるのが得意な龍国が速攻でパクってくることは想定内だし、規模が遥かに小さい日海軍が龍国軍と互角かそれ以上に渡り合っていくには、戦術と戦略の両面で彼らに勝ち続けておかねばならない。

 そこで、龍国が完全なステルス技術を手に入れるということは確定事項として戦略を練らねばならず、日海軍が採用する銃器などの選択も、龍国がステルス機を全面に押し出してきた後も勝てる選択をしなければならないってわけだ。

 そこで日海軍の上層部も「龍国ならどういう戦略を採ってくるか?」を2030年くらいから徹底的に研究するようになっていた。


 完全ステルスを実現しているゼロ戦を相手にするには、それまでのレーダーによる索敵に頼った戦術は全く使えなくなる。

 つまり、「目視に頼った戦術」がメインとなってくる。

 視界に入った敵をなるべく高い精度で攻撃したいのだが、それまでのレーダーに頼った射撃管制システムは当然使えなくなるので、新しい射撃管制システムが登場してくるまでは、おそらく「数撃ちゃ当たる」的な戦術を採らざるを得ないだろうと予想された。

 海警の艦船は現在でも30mm機関砲や14.5mm連装機関砲、3000tを超えるような大型の艦船になると76mm連射砲などが載っているわけなのだが、これなども更に重武装が進むであろうと想定される。

 海軍はHQ-61(紅旗61)などが艦対空ミサイルの主力であったがレーダーが使えないため、当面の間はミサイル防御は捨てねばならないだろう。

 おそらくは無線誘導の対空ミサイルなどを開発しようとするか、他国で採用されているものを輸入して使おうとするだろうが、1~2年はまともなものを導入することは難しいだろう。

 そこで穴埋めのために、手っ取り早く彼らが出来るのは、「ハリネズミのように対空機銃を並べ弾幕で敵の攻撃を防ぐ」ことと、「厚い装甲を施すことで敵の攻撃を防ぐ」ことしか考えられないだろうと結論付けられた。

 あと、彼らが間違いなくやってくるのは「ドローンの活用」だと思われた。

  大量のドローンを群のように運用し(それも一人で)、小さい威力だが大量のドローンを同時に敵に突っ込ませることで敵を撃破しようとしたり、

 ドローンそのものに銃器を載せて遠隔地の敵を攻撃することなどを間違いなくしてくるだろうと想定された。


 日海軍の上層部はそうなることを想定して、新たな銃器の選定に臨んでいたわけだ。
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