ドラゴンスレイヤーズ Zero Fighter

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第2章

戦うネトウヨ

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 明石元史情報部大佐について少し詳しく掘り下げておこう。

 前回、彼の「集客術」について少し話したが、ほとんど意味がわからないと思うので少し補足説明しておく。

 独立した時、たまたま沖縄から出てきていた白石君という若い子と一緒に起業した。

 白石君と明石は、Pソニックで出会ったわけだが、明石は社員、白石は派遣社員という関係であった。

 白石が休憩室でスマホ片手にFXをしているところを見かけた明石が声をかけた処から付き合いが始まったわけだが、白石君といろいろ話しをしていくうちに彼が面白い副業をしていることが判明した。

 それは、スマホ向けの検索結果連動型広告に、ダイエット商品を宣伝した広告を載せて収益を得る、というものだった。

 グーグルでキーワード検索をしてみると、検索結果の上の方に「AD」という表示と共に出ている広告があるが、要はアレだ。

 彼は月に5万円程度の広告費をかけて自分が作った商品説明用のサイトに顧客を誘導し、商品が販売出来たら報酬を得ることが出来るアフィリエイトという手法を使って純利益で4万円平均で毎月稼いでいるのだと言っていた。

  「そんな小遣い稼ぎもあるんだな」とその時、初めてネットビジネスに触れた明石であったが、そこからの彼の動きは超絶早かった。

 というのも、最近、海外からの長期出張で帰国してきた明石であったが、日本に帰ってみると、なんと彼の居場所は無くなっていた。

 彼を海外赴任に推薦した当時の上司は早期退職で既にいなくなっており、代わりに上司になった男は、明石がまだ若かった頃、明石が無能扱いしてよく明石と喧嘩していた同期の男だったからだ。

 徹底して窓際扱いされた明石は、その会社に失望していて独立の方法を色々考えていたのだ。

 ネットビジネス、それも有料広告で顧客を集めてくるSEMと呼ばれる手法を徹底研究し始めた明石は、数多くのサイトや動画を見ながら、あらゆる種類の宣伝広告術を身につけていく。

 明石と白石が出会って2年後、彼らはある手法に行き着くことになる。

 まず、白石お得意のSEMで可能な限り安い単価で自分たちの広告を表示させ、明石がその広告から誘導してきた先のサイトや動画を作るという分担になった。

 彼らが少し独特だったのは、集客した人にダイレクトで物を買わせるのではなく、一旦、SNSに誘導したり、メルマガを登録してもらうことで、登録してくれた人に有益な情報を常に送り続けることを最優先したことだった。

 例えばだが、5万回広告文をクリックしてもらうとするなら、そのうちの千人がSNSやメルマガで登録をしてくれる。

 さらにその千人のうちの10人が紹介する商品を買ってくれるようになり、さらにその中の2~3人が自分の処から継続的に物を買い続けてくれる「上客」になってくれる。

 最初の頃は月に50万円とか60万円程度の広告費で純利益は10万円程度の小さなビジネスから始まったのだが、やがて毎月の広告費は一千万円超、年商3億円超のビジネスにまで発展していった。

 このビジネスの特徴は「顧客のリスト」だけでなく「顧客になるかもしれない人のリスト」も大量に抱えて、そこに対して次々と自らの商品を売っていく方法だ。

 つまり、明石は「顧客リスト」と「利益」を得るのではなく「自らの考えに少しだけでも共感してくれる可能性のある人のリスト」を得る目的でビジネスをしていた、ということだった。

 やがて独立した明石は自ら運営するSNSアカウントの登録者数が40万人、定期的にメルマガを送り続けている登録車数が10万人を超える、「ちょっとしたマスコミ」を得ることになったのだった。

 一旦、軌道にのったビジネス手法は次々と他人に任せ、彼は次から次へと新しい手法の研究と実証実験を続けた。

 ある程度、ネットでの集客術を極めた自信のついた彼は、今度は「リアル」つまり「ネット以外から」顧客や見込み客を集める手法を開拓し始めた。

 当時、ビジネスを通じて知り合った多くの社長業の友人がいたのだが、彼らのうち何人かから、「リアル店舗の売り上げを伸ばす方法はないものか?」という相談を受けたことがあった。

 彼が勧めたのは、「YOUTUBE」を使った顧客の囲い込み戦術だった。

 明石は彼の友人にYOUTUBEでの動画の作り方やアップの方法を教え、「毎日最低でも一本は動画を上げ続けること」を約束させた。

 中には「顔出ししたくない」という人もいたので、そういう場合は霊夢や魔理沙というアバターに語らせる「ゆっくり解説」の作り方を教え、半ば無理やり続けさせた。

 その結果、彼の友人のうち何人かは、YOUTUBERとしてそこそこの成功を収め、自ら経営する店も売り上げを伸ばすことに繋がっていった。

 ただ、明石はまだこの手法に不満があり、「リアル客を効率よく囲い込む方法はないか?」と模索し続けていた。

 その頃、出会ったのが、「任意の電話番号をかけたら、返信でショートメールが送られてきて、そこから顧客を誘導することが出来る」というシステムだった。

 カンタンな例をいうと、「050-◯235-◯789」という電話番号をかけてもらうとする。

 すると、電話の向こうから「情報が知りたい方は“1”を押してください」というアナウンスが流れるのでキーパットの1を押す。

 するとショートメールが届き、その本文内に組み込んでいるURLをクリックしたら任意のサイトに飛んでいく、というものだった。

 これは実際、存在していてメディアSNSという名前だったりするのだが、このシステムの革新的なのは、「電話が使えたら誰でもその人を自分のサイトに飛ばしてくることが可能だ」ということだ。

  「それならQRコードがあるじゃないか?」と思う人もいるとは思うが、そもそもスマホに疎い爺さん婆さんがQRコードを使いこなせるわけがない。

 だが、「電話をかける」ってことは余程のことがなければまず誰でも出来る。

 これに早くから目を付けたのが後に総理大臣になる中村昭一の秘書で、中村はあることが原因で選挙で落選し、浪人中だったのだが、彼の選挙参謀兼秘書が「何かよい選挙戦術はないものか?」と探しているとき、たまたま北海道に出張に行っていた明石と知り合い、彼の手法に感激したのだ。


 中村の選挙戦術は非常に独特なものとなっていて、例えば彼の支持層である爺さん、婆さんを公民館などに集めておいて、「はーい、この電話番号に電話してみてくださーい」などと言い、全員に電話してもらう。

 そうして、ショートメールで送られてくるURLをクリックしてもらうのだが、彼らはもう一つ工夫していた。

  「そこから更にメールアドレスをゲットする」というものであったのだ。

 これも任意のメールアドレスをクリックしてもらえれば自動的に運営側にクリックした人のアドレスが登録するというものなのだが、このシステムはなかなか優秀で、登録と同時にあらかじめ作っておいたメールを自動的に送信し続けることが可能なのだ。

 登録直後は「ありがとう!」という程度のメールが届くのだが、そこから定期的に「中村からの」メールが爺ちゃん、婆ちゃんの携帯電話にメールが届き続けるのだった。

 サイトやSNSを覗きにいく、というのではなく、メールが届くというのは非常に強い働きかける力があるので、やがてこの「メール」を心待ちにする選挙民が多くなっていった。

 また、中村の秘書は、地元の運送会社へもツテがあったので、一台当たり月2万円の契約でその会社のトラックの側面と後部ゲートに中村のポスターと「電話番号」を掲載させてもらった。

 この謳い文句が「あなたは今、マスコミやテレビに騙されている。嘘だと思うならこの電話番号に今すぐ電話!」といった内容だった。

 この手法に怒ったマスコミは徹底して彼を批判したのだが、それが返って地元北海道だけではなく日本全国の保守層に中村の存在を報せることになり、彼にとって協力な支持層を得るキッカケとなったのだった。

 ちなみに、トラックに貼る広告は公職選挙法違反の可能性があるので早い段階で辞めてしまうのだが、似た方法は他の政治家、特に愛国保守系の政治家に広まっていくことになる。


 なぜ愛国保守系議員に広まったのかというと、明石と中村(その頃は仲良くなっていた)が合同で全国の保守系議員の秘書たちを対象にした講演でこの手法を拡散しまくっていたからだ。

 また、このシステムを持つ会社も誰にでもこのシステムを使わせるのではなく、売国系左翼議員(俗に言う”パヨク“)にはこのシステムを使わせなかったからだ。


 このような動きを察した既存のマスメディアたちや、龍国系の工作員たちはこぞって彼らを「ネトウヨ(ネット右翼の略、らしい)」のレッテルを貼り、攻撃を強めた。


 このように、ネットでの情報戦の最前線に立つようになった明石は議員として復活した中村の紹介もあり、川北の「日本海賊軍」へと参加していくのであった。
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