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第1章
"魔王"の愛機
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龍国政府から新型のマルチロール機の開発を委託された三社のうち、瀋陽飛機製造集団は龍国の中では比較的古い歴史がある。
その歴史は第二次世界大戦前まで遡り、以前は満州飛行機会社と言っていた。
戦後、共産党政権に接収され、今に至るのだが、ここでも龍国政府による要望に対して開発部の面々は頭を抱え込んでしまっていた。
そもそもここはまともな戦闘機を開発させてもらった実績がなく、作っているのは主に民間用のターボプロップ機、それも乗員数10名ほどの小型機が中心だった。
ただ、安く作ることには定評がある会社で、龍国国内での国内や周辺の属国などへの地方便などの多くはこの会社製の航空機が使われていたので、それなりのノウハウは持っている会社ではあった。
今回の政府の提案で彼らがまず決めたのは、動力に自社製の小型機用のターボプロップエンジンを搭載することだった。
現時点で2500馬力を出す事が出来、しかも小型軽量なので今回のプロジェクトには最適だと思われた。
ただ、戦闘機や攻撃機など軍用機として活用することは考慮されていないので更なる改良は必要と思われる。
この様な事情もあるので数あるメーカーから選ばれたのであろう。
今回のコンペ(後々 コンペではなくなったが)で用意する機体は自社ですでに作っている機体では用途が違い過ぎるので、ここは新規に設計図を引くことに決まったが、ここでも数々の案が出された。
子会社が製造しているジェット練習機を改造出来ないか?という案も出たが、改造点が余りにも多くなり、また価格が予算の数倍になる試算が出たのでこれは却下。
そもそも最高時速は500km/h程度しか出す必要がないのであればターボジェットエンジンやターボファンエンジンなど高額なエンジンは必要ない。
燃費や構造の単純さ、耐久性の高さ、価格の安さを考えてターボプロップエンジンが最適と判断された。
全体のコンセプトを決める会議は連日紛糾したが、ある日、開発部の一人がある提案を出した。
「ユンカース社のJu87 スツーカを模倣してはどうか?」と。
Junkers Ju 87 Stuka はドイツにおいて第二次世界大戦で使用された急降下爆撃機だ。
愛称である「スツーカ(シュトゥーカ)」とは、本来は本機の固有の愛称ではなく、"急降下爆撃機"を意味するドイツ語の「Sturz KampfFlugzeug」の略だったが、本機があまりにも有名になってしまったため、この名が用いられるようになった。
日本でも先程出てきたようにルーデル閣下、ルーデル大佐、魔王ルーデルの愛機として非常に有名だ。
興味があるなら「ハンス ウルリッヒ ルーデル」で検索してみるといい。
ちなみにそこに書いてあるのは「全て真実」だ(笑
当然のごとく、スツーカは過去の軍機を使った戦闘シミュレーションゲームでも人気の機体である。
結局のところ辿り着くのは上海飛行機製造と同じような案なのは必然なのかもしれないが、一から設計図を引く手間が省けるかとしれないと思った開発陣からその案は拍手喝さいを浴びた。
私の感覚では「そんな機会があれば自分の手で一から設計してみたい!」と思うハズなのだが、まあそういうところが彼らの国民性というか社風なんだろう。
そんなこんなで、すでにある物をこれまた流用して作ることになったのだ。
上海飛機製造の方ではスツーカの固定脚は空気抵抗が高過ぎてあり得ないとか言われてましたが、コチラでは全く問題とされず、逆に「頑丈な割に引き込みや可動部などを省くことが出来、軽量化やコストカット出来るだろう」ということで積極的に固定脚の採用決定。
そもそもコレは「囮(オトリ)」用なんで頑丈で乗員の生存性を高くさせ、そこそこの防御力も備え、コストが安ければいいもんなんでしょ?という割り切りが開発部の中で徹底されていた。
今回の戦闘は有視界戦闘が主に考えられているとのことなので複座にして後部席に乗るパイロットは後方を中心にした周囲警戒と12.7mm機銃による対空防御。
前席のパイロットは操縦が任された。
後部乗員は後方のリモートコントロールされた銃座をモニターと専用コントローラーを使いリモート操作。
防御機銃はドイツ製の7.7mmではなく龍国国産の12.7mm機銃が選ばれた。
これは85式12.7mm重機関銃で、通常のものは毎分600発程度の発射速度なのだが、これは毎分800発近くにまで高め、より強力な弾幕を張れるようにチューンされた。
その為、その強烈なリコイルを吸収し、なおかつ迅速で精密な遠隔射撃を可能とするために銃座は新開発のものが用意された。
装弾数は通常は50発程度なのだが、これも1000発にまで増やした。
また、後方の索敵も機体後部に取り付けてある監視カメラによって行う。
小型の監視カメラは龍国にとって十八番(おはこ)なので、国内メーカーの物でミリタリー用に作られているものの中で最も小型な物が選ばれた。
この飛行機のコンセプトは、大量のチャフやフレア、ドローンなどで敵の攻撃を撹乱し、極めて高い防御力とそこそこの機動性で敵の攻撃を防ぎ、後部機銃による強力な弾幕で後方からの攻撃を防ぎ、前方に向けた20mm機関砲2門、後付け可能な37mm砲などの強力な火力で敵を攻撃する、というものだ。
奇しくもシュツルモビクも似たようなコンセプトの機体となっているが、装甲と生存性を重視したシュツルモビクと、火力を重視したスツーカという違いはある。
この二機とも、重量物の燃料や爆弾、ミサイル等を外してしまえば、低い翼面荷重と相まってかなりの旋回性能がある。
元々の機体は1700馬力程度の(今で言うと)低出力のエンジンしか搭載していなかったのと、エネルギー保持のあまり良くない機体形状であったので、最初こそキビキビと旋回するが、速度がどんどん遅くなり、旋回性もそれに応じて悪化する欠点があった。
だが、今回は高出力のターボプロップエンジンを搭載するということで重量は1t以上も重くなっているにも関わらず、その鈍重な見た目にも関わらずかなりキビキビとした旋回性を持ち、また持続させることが可能だ。
本家との外見的な違いでいうとエンジンがレシプロではなくターボプロップなので機体側面に特徴的な排気管が飛び出している点。
スツーカの特徴の一つである機首下部の「アゴ」はそのまま、ターボプロップの空気取り入れ口として残された。
キャノピーは当初、近代的な一体形状の視野の広いタイプのものが考えられたが、コストが割高という点や防弾ガラスの交換が容易な事なども考慮され、元の機体のような格子型がほぼ採用された。
防弾面での取り組みは凄まじく、オプションでコックピット内にも防弾ガラスがパイロットを覆う形で設置出来るようにしたり、コクピットの外側にも追加で装甲板を貼ることが可能になった。
また、最近になって小型軽量化が進んだゼロ・ゼロの射出座席も設置。
エンジン周りや燃料タンクの外側にも装甲板が追加されたが、軽量化のためカーボンファイバーやケブラー、チタンなど組み合わせた特殊防弾板なども他の会社で開発したものを採用した。
これらは任務によって任意で脱着可能。
また燃料タンクは増槽を機体外部に二個吊り下げれるようにして航続距離を稼ぐよう工夫された。
本格的な軍用機の開発はこれが実質最初だったが、子会社などには軍用機を作っているメーカーも抱えているし様々な部品を作るメーカーがいたので比較的早くコンセプトが完成したのだった。
コンセプトを作っている段階でまだ彼らは知らなかったのだが、この時点で既にソ連とドイツが第二次世界大戦で戦った当時、敵同士だった攻撃機(急降下爆撃機・襲撃機)が揃ったのだった。
…こうなると最後の一社がどんな攻撃機を模倣するのか楽しみでもあるのだが、彼らはまた少し違う結論に辿り着くのだった。
その歴史は第二次世界大戦前まで遡り、以前は満州飛行機会社と言っていた。
戦後、共産党政権に接収され、今に至るのだが、ここでも龍国政府による要望に対して開発部の面々は頭を抱え込んでしまっていた。
そもそもここはまともな戦闘機を開発させてもらった実績がなく、作っているのは主に民間用のターボプロップ機、それも乗員数10名ほどの小型機が中心だった。
ただ、安く作ることには定評がある会社で、龍国国内での国内や周辺の属国などへの地方便などの多くはこの会社製の航空機が使われていたので、それなりのノウハウは持っている会社ではあった。
今回の政府の提案で彼らがまず決めたのは、動力に自社製の小型機用のターボプロップエンジンを搭載することだった。
現時点で2500馬力を出す事が出来、しかも小型軽量なので今回のプロジェクトには最適だと思われた。
ただ、戦闘機や攻撃機など軍用機として活用することは考慮されていないので更なる改良は必要と思われる。
この様な事情もあるので数あるメーカーから選ばれたのであろう。
今回のコンペ(後々 コンペではなくなったが)で用意する機体は自社ですでに作っている機体では用途が違い過ぎるので、ここは新規に設計図を引くことに決まったが、ここでも数々の案が出された。
子会社が製造しているジェット練習機を改造出来ないか?という案も出たが、改造点が余りにも多くなり、また価格が予算の数倍になる試算が出たのでこれは却下。
そもそも最高時速は500km/h程度しか出す必要がないのであればターボジェットエンジンやターボファンエンジンなど高額なエンジンは必要ない。
燃費や構造の単純さ、耐久性の高さ、価格の安さを考えてターボプロップエンジンが最適と判断された。
全体のコンセプトを決める会議は連日紛糾したが、ある日、開発部の一人がある提案を出した。
「ユンカース社のJu87 スツーカを模倣してはどうか?」と。
Junkers Ju 87 Stuka はドイツにおいて第二次世界大戦で使用された急降下爆撃機だ。
愛称である「スツーカ(シュトゥーカ)」とは、本来は本機の固有の愛称ではなく、"急降下爆撃機"を意味するドイツ語の「Sturz KampfFlugzeug」の略だったが、本機があまりにも有名になってしまったため、この名が用いられるようになった。
日本でも先程出てきたようにルーデル閣下、ルーデル大佐、魔王ルーデルの愛機として非常に有名だ。
興味があるなら「ハンス ウルリッヒ ルーデル」で検索してみるといい。
ちなみにそこに書いてあるのは「全て真実」だ(笑
当然のごとく、スツーカは過去の軍機を使った戦闘シミュレーションゲームでも人気の機体である。
結局のところ辿り着くのは上海飛行機製造と同じような案なのは必然なのかもしれないが、一から設計図を引く手間が省けるかとしれないと思った開発陣からその案は拍手喝さいを浴びた。
私の感覚では「そんな機会があれば自分の手で一から設計してみたい!」と思うハズなのだが、まあそういうところが彼らの国民性というか社風なんだろう。
そんなこんなで、すでにある物をこれまた流用して作ることになったのだ。
上海飛機製造の方ではスツーカの固定脚は空気抵抗が高過ぎてあり得ないとか言われてましたが、コチラでは全く問題とされず、逆に「頑丈な割に引き込みや可動部などを省くことが出来、軽量化やコストカット出来るだろう」ということで積極的に固定脚の採用決定。
そもそもコレは「囮(オトリ)」用なんで頑丈で乗員の生存性を高くさせ、そこそこの防御力も備え、コストが安ければいいもんなんでしょ?という割り切りが開発部の中で徹底されていた。
今回の戦闘は有視界戦闘が主に考えられているとのことなので複座にして後部席に乗るパイロットは後方を中心にした周囲警戒と12.7mm機銃による対空防御。
前席のパイロットは操縦が任された。
後部乗員は後方のリモートコントロールされた銃座をモニターと専用コントローラーを使いリモート操作。
防御機銃はドイツ製の7.7mmではなく龍国国産の12.7mm機銃が選ばれた。
これは85式12.7mm重機関銃で、通常のものは毎分600発程度の発射速度なのだが、これは毎分800発近くにまで高め、より強力な弾幕を張れるようにチューンされた。
その為、その強烈なリコイルを吸収し、なおかつ迅速で精密な遠隔射撃を可能とするために銃座は新開発のものが用意された。
装弾数は通常は50発程度なのだが、これも1000発にまで増やした。
また、後方の索敵も機体後部に取り付けてある監視カメラによって行う。
小型の監視カメラは龍国にとって十八番(おはこ)なので、国内メーカーの物でミリタリー用に作られているものの中で最も小型な物が選ばれた。
この飛行機のコンセプトは、大量のチャフやフレア、ドローンなどで敵の攻撃を撹乱し、極めて高い防御力とそこそこの機動性で敵の攻撃を防ぎ、後部機銃による強力な弾幕で後方からの攻撃を防ぎ、前方に向けた20mm機関砲2門、後付け可能な37mm砲などの強力な火力で敵を攻撃する、というものだ。
奇しくもシュツルモビクも似たようなコンセプトの機体となっているが、装甲と生存性を重視したシュツルモビクと、火力を重視したスツーカという違いはある。
この二機とも、重量物の燃料や爆弾、ミサイル等を外してしまえば、低い翼面荷重と相まってかなりの旋回性能がある。
元々の機体は1700馬力程度の(今で言うと)低出力のエンジンしか搭載していなかったのと、エネルギー保持のあまり良くない機体形状であったので、最初こそキビキビと旋回するが、速度がどんどん遅くなり、旋回性もそれに応じて悪化する欠点があった。
だが、今回は高出力のターボプロップエンジンを搭載するということで重量は1t以上も重くなっているにも関わらず、その鈍重な見た目にも関わらずかなりキビキビとした旋回性を持ち、また持続させることが可能だ。
本家との外見的な違いでいうとエンジンがレシプロではなくターボプロップなので機体側面に特徴的な排気管が飛び出している点。
スツーカの特徴の一つである機首下部の「アゴ」はそのまま、ターボプロップの空気取り入れ口として残された。
キャノピーは当初、近代的な一体形状の視野の広いタイプのものが考えられたが、コストが割高という点や防弾ガラスの交換が容易な事なども考慮され、元の機体のような格子型がほぼ採用された。
防弾面での取り組みは凄まじく、オプションでコックピット内にも防弾ガラスがパイロットを覆う形で設置出来るようにしたり、コクピットの外側にも追加で装甲板を貼ることが可能になった。
また、最近になって小型軽量化が進んだゼロ・ゼロの射出座席も設置。
エンジン周りや燃料タンクの外側にも装甲板が追加されたが、軽量化のためカーボンファイバーやケブラー、チタンなど組み合わせた特殊防弾板なども他の会社で開発したものを採用した。
これらは任務によって任意で脱着可能。
また燃料タンクは増槽を機体外部に二個吊り下げれるようにして航続距離を稼ぐよう工夫された。
本格的な軍用機の開発はこれが実質最初だったが、子会社などには軍用機を作っているメーカーも抱えているし様々な部品を作るメーカーがいたので比較的早くコンセプトが完成したのだった。
コンセプトを作っている段階でまだ彼らは知らなかったのだが、この時点で既にソ連とドイツが第二次世界大戦で戦った当時、敵同士だった攻撃機(急降下爆撃機・襲撃機)が揃ったのだった。
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