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第2章
BREAKTHRU(ブレイクスルー)
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永らく日本国内の大学など多くの研究所はいわゆる「左翼」の巣窟となっていた。
何故そうなったのかというと、その原因は第二次世界大戦の終戦にまで遡る。
終戦とともに日本を占領統治していたGHQには当時、多数のソ連や中国のスパイが紛れ込んでいた。
そのため、GHQは大学など教育現場に当時残っていた、常識的で保守的考えをもつ教師などを徹底的に排除、そのかわりとして共産主義や社会主義的な考えを持ち、公職から追放されていたり投獄されていた「曰く付きの者」などを積極的に現場に復帰させたり、学長などに就任させることを行なった。
また日教組など教職員組合を作り、共産主義的な考え方を子供達に広めていく教育を行う活動などにも積極的に関与していくことになった。
その結果、子供たちの多くは戦争を起こしたのは日本が悪い、侵略を行なった日本が悪だという「自虐史観」が徹底的に刷り込まれてしまっているのだが、実際、日米とも政府内部には多数のソ連や中国のスパイが入り込んでいて、政策を歪めていたというのは歴史的事実でもあるのだ。
(詳しくはコミンテルンの暗躍などで検索してみると良い)
マスコミや政界、教育界に多数の「左翼活動家」が入り込んでしまった結果、特に日本では「軍事に関わることの研究開発は大学では一切行わない」などという信じられないことを言う最高学府の学長が出てくる始末。
それならお前はアメリカの軍事研究の一環で誕生したインターネットも使わないのか?と頭を疑いたくもなるのだが、まぁ活動家なのか、高学歴バカだから仕方ないのだろう。
この事で困ったのは自衛隊、つまり国家防衛の最前線を担う部門だった。
またアメリカも民主党政権下で度重なる軍事費削減が行われた結果、新兵器の開発だけでなく、所有している兵器の維持管理まで支障を来たすような事態に陥っていた。
日米の軍関係者はこの事態を非常に重く受けとめ、それぞれの政府や国家に頼らない兵器の開発を模索するようになった。
その頃、ミドリムシを品種改良した新エネルギーの開発に成功し、木材や可燃ゴミなどから難燃性発砲材を作りメガフロートの量産を始め、日本の南海に新都市群を猛烈なスピードで構築しつつあった川北グループをはじめとした企業群が台頭していた。
自衛隊側のトップは非公式に川北重工の会長の川北耕三と面会し、軍需品の研究開発に関しての協力を要請した。
川北耕三自身、それまでの日本での左翼たちの暗躍と衰退ぶりに非常に憂慮していたこともあり、積極的に研究開発に双方で協力していくことになった。
自衛隊側からも装備品などの開発で苦労している会社などにそれぞれの会社の研究開発部門や生産ラインの一部を新都市群に移転させるよう積極的に働きかけた。
また、アメリカの軍部もこの動きに積極的に乗ることになった。
ローズが動き、日米共同の開発部門である「ライジングサンダー」を立ち上げたのはこのような流れに沿ったものだった。
それぞれの国内に多数のスパイが暗躍している日米の本土で、機密性の高い研究は事実上不可能だったのだが、外界から物理的に隔離された「浮島」で、情報的にも通信制限が行われている南海の新都市群は機密保持に対して非常に有利だったからだ。
後になってこの事実を嗅ぎつけた龍国がなんとか内部に入り込ませようと画策したが、香港や台湾など中国語圏出身のチャイナセクションはまだしも、日本人のみで構成されるジャパンセクションや日米合同の多国籍チームのライジングサンダー部門には全くと言っていいほど手が出せないのだった。
2025年、川北重工の開発部門の一つである第四開発室は、「魔理沙」というAIをベースとした自動設計システムをほぼ完成させたのだが、ここでひとつの技術的なブレイクスルーをする。
先に作った「魔理沙」には坂本主任を始めとしたアイデアの発想が得意なタイプの人間(いわゆるぶっ飛んだタイプ)の思考パターンを教え込んだシステムを構築し、もうひとつ同時進行で作った「霊夢」には堅実で合理的思考を持つタイプの人間の思考パターンを徹底的に組み込ませたシステムの2つを開発させた。
この2つのシステムはそれぞれ別の思考パターンがあり、「お互いに会話しながら意見をぶつけ合せてブラッシュアップを進ませていく」という常識外な設計システムを構築させたのだった。
それぞれのシステムは教え込んだ人間たちの言葉遣いがモロに出るので、双方のやり取りを見ていたらまるで漫才でもしているのかというような様子であった。
魔理沙「AESAレーダーを小型化しろってザックリしたオーダーだけど早速良い案があるよ」
霊夢「ほう、なんぜ。期待してないから言ってみな」
魔理沙「携帯電話程度の小型化を実現させるのよ。今 計算したら従来、F2戦闘機で使っているAESAの10分の1の大きさに出来るわよ」
霊夢「・・・今 ざっと計算したけどバカみたいなコストがかかるわよ。1つ作るのに2~3億円って。それだけで軽飛行機一機飛ばせるわよ」
魔理沙「なんでそんなにコストかかるのよ?」
霊夢「使用するCPU、コンデンサー、抵抗などそれぞれを新たに新設計させる必要があるからじゃない、バカなの?死ぬの?」
魔理沙「独自CPUはまだしもコンデンサーや抵抗などは市場に出回っている汎用品ではダメなの?」
霊夢「最小で1005くらいしかないわ。本気で小型化するのならサイズをこの半分にしないとダメね。」
魔理沙「1005って具体的な大きさは何だ?」
霊夢「そんなの自分で調べなさいよ!長い方のサイズが1mm、短い辺が0.5mmよ」
魔理沙「それ以上小さくすると・・・そもそも製造することが困難になるかもね。製造法を考えようか?」
霊夢「それだけで数年かかりそうね、もっと現実的な案はないわけ?」
魔理沙「・・・(思考中)電子回路を3Dプリンターみたいに印刷出来ない?部品ごと」
霊夢「汎用品で出来そうね、だけど耐久性は大丈夫?」
魔理沙「耐久性ってプリンターの?それとも基盤の?」
霊夢「基盤に決まってるじゃない。なんせ使うのは高Gで衝撃が嫌という程かかる戦闘機よ?」
魔理沙「規格を少しずつ変えて試作品を100個ほど作ってみたらいいんじゃない?で、開発チームの連中に耐久テストをやらせたらいいでしょ?」
霊夢「あんたたまには良いこと言うわね、それじゃ、それでいくわよ」
魔理沙「それよか流通しているタブレットやスマートフォンの部品を持ってきて組み合わせ、複数を並列接続して処理速度を稼いだり、同じ機能を複数用意することでダメージコントロールするのはどう?」
霊夢「ほんとあなたはいろいろ話が飛ぶわよね、その案も含めて試作案を複数用意するわよ」
こんな感じで24時間、休みなく大量のスーパーコンピューターを駆使しつつ、設計開発を人間が行う何十倍、何百倍もの速度で行なっていくのだった。
もちろん放置しておいたらとんでもない脱線をすることもあったり、堂々巡りに陥ったりもするのでその都度、AIの見直しもしていかねばならないのだが、この一見するとお間抜けにも見えるシステムが技術的なブレイクスルーを起こしていく。
現在、採用されている戦闘機なども使われている装置などを見てみると意外なほど大きく、ゴツい造りであることが多い。
航空機のメインコンピューターなどは未だに2000年代の頃の家庭用パソコンであったりファ◯コン程度の処理能力しか持っていないものが多いというのは有名な話だが、これは高性能よりも確実性や信頼性を重視した結果でもある。
それら航空機の制御コンピューターなどは当然ながらある程度の小型化や素材を工夫して軽量な割に堅牢にしている物も多いのだが、一般的に市販されている商品ほどは量産されているわけでもないし、競合が多いわけでもないので小型・軽量・堅牢化についてはそれ程まで進んではいなかったというのが現状なのだ。
だが、新開発のAIは実際に開発の手伝いをさせてみると驚くほど使える物であるということが分かった。
それぞれ、性質が違うタイプのAIが、双方で意見を戦わせながら知識を蓄え、思考パターンを磨き上げていくということは当初、想定していたより遥かに大きな威力を持っていた。
これまで開発っていうものは、恐ろしく時間や金、人力がかかるものだったが、この新開発されたAIを使えば、アイデアや目標とする性能の要求さえ入力すれば(それも会話方式で)、AIが勝手にあらゆる可能性を模索してくれ、勝手にネットや蓄積された研究データにアクセスしてくれ、テスト品の生産手順などを考えてくれ、目標とする性能の実現がどのくらいの割合で実現可能かまで調べてくれる。
このことにより、川北の開発部はあらゆる開発が大幅に加速し、開発速度も大幅にアップした。
また、アイデアを出す人間が必ずしもその道のプロである必要がなくなったので、社内で広くアイデアを集め、優秀なアイデアを出した社員には賞金を出す報奨金制度を積極的に導入した。
いくら優秀なAIと言えども発明の元となるようなアイデアを出すという点はコンピューター(AI)は人間に敵わない。
魔理沙には坂本のようなアイデアに羽根が生えて空を飛んでいるようなタイプの人間の思考パターンを教え込ませているのだが、AIである限りは教え込まれたパターンから突然離れた思考はしない。
だが、「人間」にはアイデアを生み出すというとてつもない能力がある。
今回、川北が始めたのは「人間」、それも極めて大量の人間のアイデアをかき集めさせ、そのアイデアをAIによってブラッシュアップさせ続けるという物なのだ。
極端な話、設計であったり試行錯誤などは人間がわざわざするようなものではなくなっているのだ。
それらはマシンにさせておけば良いのだが、このシステムのすごいところは「素人が出したアイデアでも吸い上げる能力がある」ということなのだ。
外部の人間に対してのアイデア募集についてはスマホのアプリが新規で開発され、そのアプリのキャラとの対話形式でアイデアを入力し、応募するという物が用意された。
それらのアイデアはAIによって優先順序が決められ、比較的有用だと判断されたものから簡単なシミュレーションが自動で行われ、実現可能性が高いアイデアについては開発室に送られ、それぞれの専門家の目を通してさらに審査を加え、実際の製品の設計や製造方法の割り出しをAIによってさせるというシステムだ。
「素人の出したアイデア」ってものは時にはとてつもない宝が眠っていることがある。
本当に使えるアイデアというものは大海の中から針を一本、探し出すようなものなのだが、そのような膨大な単純作業はマシンにさせてやればいいのだ。
川北は当初、自社とグループ会社内だけでそのようなアイデアの吸い上げを行なっていたのだが、龍国の圧迫で難民のように流れてきていた人々に対しても同様のシステムを公開、それらの人からも膨大なアイデアを吸い上げる仕組みを作り上げていった。
そのシステムはスマホのアプリを介して行われるので、アイデアを出す人間は別にどこかの企業に就職して開発室に入らなければならない、ということではない。
専業主婦でも出来るし、一線を引退した高齢者でも出来る。
子供も出来るし、何か別の仕事をしている人の副業としても出来る。
その結果、アイデアを出して報奨金で飯を食おうというような人も多数出てきたり、アイデア豊富なスタッフが揃っている坂本を筆頭とした第四開発室の面々ですら驚くようなぶっ飛んだアイデアが次々と寄せられた。
このような感じで「人」と「AI」はそれぞれの得意分野で住み分けをするようになっていく。
「人」は「アイデアを出す」、「AIが効率よく動けるよう最適化していく」
「AI」は「与えられた条件下で最もよい結果を出す」、「自己学習能力で新たな情報や知識を次々と蓄積していく」
このシステムは当初、兵器開発用として開発されたものだったが、システムを複製することで民間用にも使えるし、素材研究や薬の実験などにも使えることが分かった。
川北はこの事を受けて、それまでの処理能力を大幅に上げる為に南海新都市に新たなメガフロートを建設し、海水の巡回を利用して冷却させる新たなデータセンターを10機建造した。
それぞれのデータセンターは分散配置され、テロや敵の攻撃に対するリスク分散が行われた。
それらの施設は最上級の軍事機密とされ、それらのメガフロートは外部に対しては「林業用のテスト植林地」や「農業用のテスト地」だとされていた。
実際、多くのメガフロートは日中の日差しを避けるため、建造物や居住区は一階層下のスペースが使われていることが多く、上部は人口の森があったり、公園があったり、道路や空港の滑走路があったりと、空や衛星などで見ても実際、そのメガフロートには何があるのか極めて分かりにくくなっていたのだ。
何故そうなったのかというと、その原因は第二次世界大戦の終戦にまで遡る。
終戦とともに日本を占領統治していたGHQには当時、多数のソ連や中国のスパイが紛れ込んでいた。
そのため、GHQは大学など教育現場に当時残っていた、常識的で保守的考えをもつ教師などを徹底的に排除、そのかわりとして共産主義や社会主義的な考えを持ち、公職から追放されていたり投獄されていた「曰く付きの者」などを積極的に現場に復帰させたり、学長などに就任させることを行なった。
また日教組など教職員組合を作り、共産主義的な考え方を子供達に広めていく教育を行う活動などにも積極的に関与していくことになった。
その結果、子供たちの多くは戦争を起こしたのは日本が悪い、侵略を行なった日本が悪だという「自虐史観」が徹底的に刷り込まれてしまっているのだが、実際、日米とも政府内部には多数のソ連や中国のスパイが入り込んでいて、政策を歪めていたというのは歴史的事実でもあるのだ。
(詳しくはコミンテルンの暗躍などで検索してみると良い)
マスコミや政界、教育界に多数の「左翼活動家」が入り込んでしまった結果、特に日本では「軍事に関わることの研究開発は大学では一切行わない」などという信じられないことを言う最高学府の学長が出てくる始末。
それならお前はアメリカの軍事研究の一環で誕生したインターネットも使わないのか?と頭を疑いたくもなるのだが、まぁ活動家なのか、高学歴バカだから仕方ないのだろう。
この事で困ったのは自衛隊、つまり国家防衛の最前線を担う部門だった。
またアメリカも民主党政権下で度重なる軍事費削減が行われた結果、新兵器の開発だけでなく、所有している兵器の維持管理まで支障を来たすような事態に陥っていた。
日米の軍関係者はこの事態を非常に重く受けとめ、それぞれの政府や国家に頼らない兵器の開発を模索するようになった。
その頃、ミドリムシを品種改良した新エネルギーの開発に成功し、木材や可燃ゴミなどから難燃性発砲材を作りメガフロートの量産を始め、日本の南海に新都市群を猛烈なスピードで構築しつつあった川北グループをはじめとした企業群が台頭していた。
自衛隊側のトップは非公式に川北重工の会長の川北耕三と面会し、軍需品の研究開発に関しての協力を要請した。
川北耕三自身、それまでの日本での左翼たちの暗躍と衰退ぶりに非常に憂慮していたこともあり、積極的に研究開発に双方で協力していくことになった。
自衛隊側からも装備品などの開発で苦労している会社などにそれぞれの会社の研究開発部門や生産ラインの一部を新都市群に移転させるよう積極的に働きかけた。
また、アメリカの軍部もこの動きに積極的に乗ることになった。
ローズが動き、日米共同の開発部門である「ライジングサンダー」を立ち上げたのはこのような流れに沿ったものだった。
それぞれの国内に多数のスパイが暗躍している日米の本土で、機密性の高い研究は事実上不可能だったのだが、外界から物理的に隔離された「浮島」で、情報的にも通信制限が行われている南海の新都市群は機密保持に対して非常に有利だったからだ。
後になってこの事実を嗅ぎつけた龍国がなんとか内部に入り込ませようと画策したが、香港や台湾など中国語圏出身のチャイナセクションはまだしも、日本人のみで構成されるジャパンセクションや日米合同の多国籍チームのライジングサンダー部門には全くと言っていいほど手が出せないのだった。
2025年、川北重工の開発部門の一つである第四開発室は、「魔理沙」というAIをベースとした自動設計システムをほぼ完成させたのだが、ここでひとつの技術的なブレイクスルーをする。
先に作った「魔理沙」には坂本主任を始めとしたアイデアの発想が得意なタイプの人間(いわゆるぶっ飛んだタイプ)の思考パターンを教え込んだシステムを構築し、もうひとつ同時進行で作った「霊夢」には堅実で合理的思考を持つタイプの人間の思考パターンを徹底的に組み込ませたシステムの2つを開発させた。
この2つのシステムはそれぞれ別の思考パターンがあり、「お互いに会話しながら意見をぶつけ合せてブラッシュアップを進ませていく」という常識外な設計システムを構築させたのだった。
それぞれのシステムは教え込んだ人間たちの言葉遣いがモロに出るので、双方のやり取りを見ていたらまるで漫才でもしているのかというような様子であった。
魔理沙「AESAレーダーを小型化しろってザックリしたオーダーだけど早速良い案があるよ」
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魔理沙「携帯電話程度の小型化を実現させるのよ。今 計算したら従来、F2戦闘機で使っているAESAの10分の1の大きさに出来るわよ」
霊夢「・・・今 ざっと計算したけどバカみたいなコストがかかるわよ。1つ作るのに2~3億円って。それだけで軽飛行機一機飛ばせるわよ」
魔理沙「なんでそんなにコストかかるのよ?」
霊夢「使用するCPU、コンデンサー、抵抗などそれぞれを新たに新設計させる必要があるからじゃない、バカなの?死ぬの?」
魔理沙「独自CPUはまだしもコンデンサーや抵抗などは市場に出回っている汎用品ではダメなの?」
霊夢「最小で1005くらいしかないわ。本気で小型化するのならサイズをこの半分にしないとダメね。」
魔理沙「1005って具体的な大きさは何だ?」
霊夢「そんなの自分で調べなさいよ!長い方のサイズが1mm、短い辺が0.5mmよ」
魔理沙「それ以上小さくすると・・・そもそも製造することが困難になるかもね。製造法を考えようか?」
霊夢「それだけで数年かかりそうね、もっと現実的な案はないわけ?」
魔理沙「・・・(思考中)電子回路を3Dプリンターみたいに印刷出来ない?部品ごと」
霊夢「汎用品で出来そうね、だけど耐久性は大丈夫?」
魔理沙「耐久性ってプリンターの?それとも基盤の?」
霊夢「基盤に決まってるじゃない。なんせ使うのは高Gで衝撃が嫌という程かかる戦闘機よ?」
魔理沙「規格を少しずつ変えて試作品を100個ほど作ってみたらいいんじゃない?で、開発チームの連中に耐久テストをやらせたらいいでしょ?」
霊夢「あんたたまには良いこと言うわね、それじゃ、それでいくわよ」
魔理沙「それよか流通しているタブレットやスマートフォンの部品を持ってきて組み合わせ、複数を並列接続して処理速度を稼いだり、同じ機能を複数用意することでダメージコントロールするのはどう?」
霊夢「ほんとあなたはいろいろ話が飛ぶわよね、その案も含めて試作案を複数用意するわよ」
こんな感じで24時間、休みなく大量のスーパーコンピューターを駆使しつつ、設計開発を人間が行う何十倍、何百倍もの速度で行なっていくのだった。
もちろん放置しておいたらとんでもない脱線をすることもあったり、堂々巡りに陥ったりもするのでその都度、AIの見直しもしていかねばならないのだが、この一見するとお間抜けにも見えるシステムが技術的なブレイクスルーを起こしていく。
現在、採用されている戦闘機なども使われている装置などを見てみると意外なほど大きく、ゴツい造りであることが多い。
航空機のメインコンピューターなどは未だに2000年代の頃の家庭用パソコンであったりファ◯コン程度の処理能力しか持っていないものが多いというのは有名な話だが、これは高性能よりも確実性や信頼性を重視した結果でもある。
それら航空機の制御コンピューターなどは当然ながらある程度の小型化や素材を工夫して軽量な割に堅牢にしている物も多いのだが、一般的に市販されている商品ほどは量産されているわけでもないし、競合が多いわけでもないので小型・軽量・堅牢化についてはそれ程まで進んではいなかったというのが現状なのだ。
だが、新開発のAIは実際に開発の手伝いをさせてみると驚くほど使える物であるということが分かった。
それぞれ、性質が違うタイプのAIが、双方で意見を戦わせながら知識を蓄え、思考パターンを磨き上げていくということは当初、想定していたより遥かに大きな威力を持っていた。
これまで開発っていうものは、恐ろしく時間や金、人力がかかるものだったが、この新開発されたAIを使えば、アイデアや目標とする性能の要求さえ入力すれば(それも会話方式で)、AIが勝手にあらゆる可能性を模索してくれ、勝手にネットや蓄積された研究データにアクセスしてくれ、テスト品の生産手順などを考えてくれ、目標とする性能の実現がどのくらいの割合で実現可能かまで調べてくれる。
このことにより、川北の開発部はあらゆる開発が大幅に加速し、開発速度も大幅にアップした。
また、アイデアを出す人間が必ずしもその道のプロである必要がなくなったので、社内で広くアイデアを集め、優秀なアイデアを出した社員には賞金を出す報奨金制度を積極的に導入した。
いくら優秀なAIと言えども発明の元となるようなアイデアを出すという点はコンピューター(AI)は人間に敵わない。
魔理沙には坂本のようなアイデアに羽根が生えて空を飛んでいるようなタイプの人間の思考パターンを教え込ませているのだが、AIである限りは教え込まれたパターンから突然離れた思考はしない。
だが、「人間」にはアイデアを生み出すというとてつもない能力がある。
今回、川北が始めたのは「人間」、それも極めて大量の人間のアイデアをかき集めさせ、そのアイデアをAIによってブラッシュアップさせ続けるという物なのだ。
極端な話、設計であったり試行錯誤などは人間がわざわざするようなものではなくなっているのだ。
それらはマシンにさせておけば良いのだが、このシステムのすごいところは「素人が出したアイデアでも吸い上げる能力がある」ということなのだ。
外部の人間に対してのアイデア募集についてはスマホのアプリが新規で開発され、そのアプリのキャラとの対話形式でアイデアを入力し、応募するという物が用意された。
それらのアイデアはAIによって優先順序が決められ、比較的有用だと判断されたものから簡単なシミュレーションが自動で行われ、実現可能性が高いアイデアについては開発室に送られ、それぞれの専門家の目を通してさらに審査を加え、実際の製品の設計や製造方法の割り出しをAIによってさせるというシステムだ。
「素人の出したアイデア」ってものは時にはとてつもない宝が眠っていることがある。
本当に使えるアイデアというものは大海の中から針を一本、探し出すようなものなのだが、そのような膨大な単純作業はマシンにさせてやればいいのだ。
川北は当初、自社とグループ会社内だけでそのようなアイデアの吸い上げを行なっていたのだが、龍国の圧迫で難民のように流れてきていた人々に対しても同様のシステムを公開、それらの人からも膨大なアイデアを吸い上げる仕組みを作り上げていった。
そのシステムはスマホのアプリを介して行われるので、アイデアを出す人間は別にどこかの企業に就職して開発室に入らなければならない、ということではない。
専業主婦でも出来るし、一線を引退した高齢者でも出来る。
子供も出来るし、何か別の仕事をしている人の副業としても出来る。
その結果、アイデアを出して報奨金で飯を食おうというような人も多数出てきたり、アイデア豊富なスタッフが揃っている坂本を筆頭とした第四開発室の面々ですら驚くようなぶっ飛んだアイデアが次々と寄せられた。
このような感じで「人」と「AI」はそれぞれの得意分野で住み分けをするようになっていく。
「人」は「アイデアを出す」、「AIが効率よく動けるよう最適化していく」
「AI」は「与えられた条件下で最もよい結果を出す」、「自己学習能力で新たな情報や知識を次々と蓄積していく」
このシステムは当初、兵器開発用として開発されたものだったが、システムを複製することで民間用にも使えるし、素材研究や薬の実験などにも使えることが分かった。
川北はこの事を受けて、それまでの処理能力を大幅に上げる為に南海新都市に新たなメガフロートを建設し、海水の巡回を利用して冷却させる新たなデータセンターを10機建造した。
それぞれのデータセンターは分散配置され、テロや敵の攻撃に対するリスク分散が行われた。
それらの施設は最上級の軍事機密とされ、それらのメガフロートは外部に対しては「林業用のテスト植林地」や「農業用のテスト地」だとされていた。
実際、多くのメガフロートは日中の日差しを避けるため、建造物や居住区は一階層下のスペースが使われていることが多く、上部は人口の森があったり、公園があったり、道路や空港の滑走路があったりと、空や衛星などで見ても実際、そのメガフロートには何があるのか極めて分かりにくくなっていたのだ。
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