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第2章
川北の再興
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川北重工による「ゼロ戦」の復活とそれに対抗した龍国の新(旧?)型戦闘機の開発の辺りまで話は進んだわけだが、ここで40年ほど遡る。
今の世界とはやや異なった歴史を歩んでいる平行世界の西暦2000年、日本で戦前から存在していた某企業が「ミドリムシの亜種」を使ったバイオマス燃料の大量生産と低価格化に成功した処からこの物語は始まる。
その会社は海上に浮かべたメガフロート上の巨大プールで、海水と太陽光で育成し、育成したミドリムシを加熱圧縮処理し、これによりオイルの含有量を格段に上げ、非常に安価にバイオマス燃料を抽出する技術を確立させた。
当初、この技術の開発成功は極秘とされていた。
この技術を開発させたのは、戦前は名だたる戦闘機や戦艦などを開発していた川北重工の関連会社の川北エナジー。
川北重工は終戦後のGHQによる財閥解体を受けて、一時弱体化していたが戦後も大型船舶や潜水艦、ジェット機などの開発や生産を続けていた会社であった。
川北重工の会長(龍国に対して宣戦布告をした例の人)はその時70歳になっていたが、川北自体の創業者の孫に当たる。
明治初頭に川北を立ち上げた人物の孫?明治からいうと100年以上経ってるのに?と思われるかもしれないが、彼と爺さんの創業者とではなんと90歳も歳の差がある。
簡単に言うと、偉大な爺さんには8人もの腹違いの男の子がいて、現会長の親父さんはその中で最も若い、「偉大な創業者の最後の妾さんの息子」だったわけだ。
ちなみに、偉大な爺さんの長男と現会長の親父(末っ子)とは40歳もの歳の差がある。
こんな話をすると「そんなのありえないだろう?」と今の人は思うかもしれないが、実際、こんな話は昔よくあった。
川北の創業者は彼の息子たちに彼のグループ会社の社長をそれぞれ継がせていて、川北重工はたまたま創業者の末っ子が相続した会社だったというわけだ。
新たなバイオマスエネルギーの開発に成功した川北エナジーに話を戻すと、当初の研究開発は日本本土の研究所で行なっていたのだが、日本本土では情報の漏洩を防ぐ方法がないということで、川北重工が当時、開発を進めていた新素材を用いた大型メガフロートを活用する案を思いつく。
日本の南方海域に川北重工のメガフロートを浮かべ、そこに川北エナジーの研究所と新型ミドリムシの培養プール、さらに燃料精製施設を実験的に作り上げた。
これらは極秘に進められていたが、対外的には「コストが合わないが日本の未来のために研究開発だけは継続して行なっている」とアナウンスしていた。
実際は極秘に大量生産の準備が進められ、それらの情報は川北グループと政府の極々一部だけで秘匿された。
この頃、龍国は共産党政権を打倒し、新政権を樹立したのだが、それまでにも増してスパイ工作に力を入れる様になった。
龍国が民主化され、自由な市場になると期待した西側の資本家達や、それまで共産党政権から迫害を受け、海外に逃げていた資本家などが龍国の新政権に対して、膨大な資金援助や投資をしたことで龍国政府はそれまでの共産党政権が持っていた資産も含め、世界のGDPを全て合わせた額を遥かに超えるほどの大金を手にすることになった。
龍国はこの資金を民衆のために使うことはなく、それまでの共産党政権が霞んで見えるほどの強権政治を行うようになる。
その中の施策の一つが「海外への侵略」だったわけだが、その波は当然日本にも及び、スパイ防止法もない日本には特に多くの工作員が社会の隅々にまで益々 はびこるようになっていた。
この事に大きな危機感を持つ様になった川北グループや他の日本企業の中には、龍国からのスパイが絶対に紛れ込まない新たな「場所」と「方策」が必要になったわけだ。
海で外界から物理的に途絶されるメガフロートはその解決策の一つで、川北グループも含め、龍国の異常な動きに危機感を持つ日本の企業の一部はここに新たな開発拠点を移すことになった。
特に龍国によって日本のシーレーンが封鎖される危機が具体的な形として現れた頃からは、川北エナジーによるバイオマス燃料の需要は著しく伸び、日本経済を支えるまでに急成長することになった。
同時に主にメガフロートの主な構成材として川北マテリアルが開発した「難燃化発砲フォーム」が革新的な発明として世界から注目されることになる。
この難燃化発砲フォームは原材料が木材や可燃ゴミ、石油(バイオマス燃料も可能)などを使う。
つまり世界に多く存在している森林の有効活用にもなるし、何よりも都市部から日々大量に排出されるゴミが資源になると言う事で世界中のあらゆる国が飛びついた。
川北はアメリカ、ブラジル、ラトビア(バルト三国の一つ)、ポーランド、スロバキア、ベトナム等に新たな生産工場を建て、森林資源の多い国や地域からは木材を、人口が多い地域や先進国などからは可燃ゴミを積極的に輸入し、難燃化発砲材の生産に活用した。
「難燃化発砲フォーム」と「バイオマス燃料」を得た川北グループは、2008年、日本列島の南方に巨大なメガフロートを建造し、海上に浮かべたメガフロート上の巨大プールで海水と太陽光によって新開発したミドリムシを育成し、さらに育成したミドリムシを加熱圧縮処理することによって非常に安価にバイオマスアルコールを生産する施設を創り上げた。
川北はこの事業により莫大な利益をあげることになる。
この「エネルギー革命」は大々的に報道されるが、川北のメガフロートには全ての既存の報道機関はシャットアウトされ、川北の報道官による広報がインターネットの動画チャンネルで行われた。
この当時、中国では共産党内の内部抗争が各軍区間の武装闘争に発展した内戦状態になっていて、その余波が東南アジアにも及び、日本のシーレーンも海賊の横行により非常に不安定になっていた。
そのため、石油の原価高騰に悩んでいた国内の企業は川北が供給する新燃料に対して非常に高い関心を示した。
川北はそれら企業に対して無制限に販売するようなことはせず、特に協力的な企業を厳選し、自らが増築したメガフロートに新工場を建てて事業を一部移転するような企業に対して主に燃料を卸すことにした。
その結果、沖大東島東方に浮かぶ数多くのメガフロート上に新たなコンビナート、研究所、大学等教育施設、街、港湾施設、空港施設などが誕生した。
これは「南海新都市」と呼ばれ、短期間の間に東京都を上回る程のGDPを稼ぎ出すほどに急成長したのだった。
今の世界とはやや異なった歴史を歩んでいる平行世界の西暦2000年、日本で戦前から存在していた某企業が「ミドリムシの亜種」を使ったバイオマス燃料の大量生産と低価格化に成功した処からこの物語は始まる。
その会社は海上に浮かべたメガフロート上の巨大プールで、海水と太陽光で育成し、育成したミドリムシを加熱圧縮処理し、これによりオイルの含有量を格段に上げ、非常に安価にバイオマス燃料を抽出する技術を確立させた。
当初、この技術の開発成功は極秘とされていた。
この技術を開発させたのは、戦前は名だたる戦闘機や戦艦などを開発していた川北重工の関連会社の川北エナジー。
川北重工は終戦後のGHQによる財閥解体を受けて、一時弱体化していたが戦後も大型船舶や潜水艦、ジェット機などの開発や生産を続けていた会社であった。
川北重工の会長(龍国に対して宣戦布告をした例の人)はその時70歳になっていたが、川北自体の創業者の孫に当たる。
明治初頭に川北を立ち上げた人物の孫?明治からいうと100年以上経ってるのに?と思われるかもしれないが、彼と爺さんの創業者とではなんと90歳も歳の差がある。
簡単に言うと、偉大な爺さんには8人もの腹違いの男の子がいて、現会長の親父さんはその中で最も若い、「偉大な創業者の最後の妾さんの息子」だったわけだ。
ちなみに、偉大な爺さんの長男と現会長の親父(末っ子)とは40歳もの歳の差がある。
こんな話をすると「そんなのありえないだろう?」と今の人は思うかもしれないが、実際、こんな話は昔よくあった。
川北の創業者は彼の息子たちに彼のグループ会社の社長をそれぞれ継がせていて、川北重工はたまたま創業者の末っ子が相続した会社だったというわけだ。
新たなバイオマスエネルギーの開発に成功した川北エナジーに話を戻すと、当初の研究開発は日本本土の研究所で行なっていたのだが、日本本土では情報の漏洩を防ぐ方法がないということで、川北重工が当時、開発を進めていた新素材を用いた大型メガフロートを活用する案を思いつく。
日本の南方海域に川北重工のメガフロートを浮かべ、そこに川北エナジーの研究所と新型ミドリムシの培養プール、さらに燃料精製施設を実験的に作り上げた。
これらは極秘に進められていたが、対外的には「コストが合わないが日本の未来のために研究開発だけは継続して行なっている」とアナウンスしていた。
実際は極秘に大量生産の準備が進められ、それらの情報は川北グループと政府の極々一部だけで秘匿された。
この頃、龍国は共産党政権を打倒し、新政権を樹立したのだが、それまでにも増してスパイ工作に力を入れる様になった。
龍国が民主化され、自由な市場になると期待した西側の資本家達や、それまで共産党政権から迫害を受け、海外に逃げていた資本家などが龍国の新政権に対して、膨大な資金援助や投資をしたことで龍国政府はそれまでの共産党政権が持っていた資産も含め、世界のGDPを全て合わせた額を遥かに超えるほどの大金を手にすることになった。
龍国はこの資金を民衆のために使うことはなく、それまでの共産党政権が霞んで見えるほどの強権政治を行うようになる。
その中の施策の一つが「海外への侵略」だったわけだが、その波は当然日本にも及び、スパイ防止法もない日本には特に多くの工作員が社会の隅々にまで益々 はびこるようになっていた。
この事に大きな危機感を持つ様になった川北グループや他の日本企業の中には、龍国からのスパイが絶対に紛れ込まない新たな「場所」と「方策」が必要になったわけだ。
海で外界から物理的に途絶されるメガフロートはその解決策の一つで、川北グループも含め、龍国の異常な動きに危機感を持つ日本の企業の一部はここに新たな開発拠点を移すことになった。
特に龍国によって日本のシーレーンが封鎖される危機が具体的な形として現れた頃からは、川北エナジーによるバイオマス燃料の需要は著しく伸び、日本経済を支えるまでに急成長することになった。
同時に主にメガフロートの主な構成材として川北マテリアルが開発した「難燃化発砲フォーム」が革新的な発明として世界から注目されることになる。
この難燃化発砲フォームは原材料が木材や可燃ゴミ、石油(バイオマス燃料も可能)などを使う。
つまり世界に多く存在している森林の有効活用にもなるし、何よりも都市部から日々大量に排出されるゴミが資源になると言う事で世界中のあらゆる国が飛びついた。
川北はアメリカ、ブラジル、ラトビア(バルト三国の一つ)、ポーランド、スロバキア、ベトナム等に新たな生産工場を建て、森林資源の多い国や地域からは木材を、人口が多い地域や先進国などからは可燃ゴミを積極的に輸入し、難燃化発砲材の生産に活用した。
「難燃化発砲フォーム」と「バイオマス燃料」を得た川北グループは、2008年、日本列島の南方に巨大なメガフロートを建造し、海上に浮かべたメガフロート上の巨大プールで海水と太陽光によって新開発したミドリムシを育成し、さらに育成したミドリムシを加熱圧縮処理することによって非常に安価にバイオマスアルコールを生産する施設を創り上げた。
川北はこの事業により莫大な利益をあげることになる。
この「エネルギー革命」は大々的に報道されるが、川北のメガフロートには全ての既存の報道機関はシャットアウトされ、川北の報道官による広報がインターネットの動画チャンネルで行われた。
この当時、中国では共産党内の内部抗争が各軍区間の武装闘争に発展した内戦状態になっていて、その余波が東南アジアにも及び、日本のシーレーンも海賊の横行により非常に不安定になっていた。
そのため、石油の原価高騰に悩んでいた国内の企業は川北が供給する新燃料に対して非常に高い関心を示した。
川北はそれら企業に対して無制限に販売するようなことはせず、特に協力的な企業を厳選し、自らが増築したメガフロートに新工場を建てて事業を一部移転するような企業に対して主に燃料を卸すことにした。
その結果、沖大東島東方に浮かぶ数多くのメガフロート上に新たなコンビナート、研究所、大学等教育施設、街、港湾施設、空港施設などが誕生した。
これは「南海新都市」と呼ばれ、短期間の間に東京都を上回る程のGDPを稼ぎ出すほどに急成長したのだった。
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