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18話
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俺は咄嗟に魔法で薄いバリアを作った。そのおかげでかすり傷程度ですんだ。
「扉が爆発するなんて聞いてない」
橙色の髪に薄紫の目、女の子のような可愛らしい容姿をした目の前の男に不満をぶつけた。こいつの名前はスピリト。外見に伴わない中身をしているので、騙されないように気を付けろと注意喚起したい。こいつに騙される者は結構いる。
「そんなこと聞かせたら防犯対策にならないじゃん! 侵入者だったら、怖いもん」
こんな空間が切り離された森の中にやって来る者はそんなにいないだろう。対策なんてする必要な皆無だと思う。
「でもさ、セツ。よくあの爆発の中、その軽症で済んだよね。僕、びっくりした! 前はさ、谷から落っこちたらしい人間が運よくここにやってこれたらしく、セツが開けた扉を人間も同じように開けたんだ。その後、人間がどうなったのかわかる?」
「いや、知らない」
「黒焦げになった。出来上がった死体は僕が処理することになったんだよ。本当に迷惑だよね~」
「人間がやって来た方法を知っているのはなぜだ?」
ニッコリと笑うスピリト。こいつの笑顔は危険なものだ。俺の表情筋はどうなっているのだろうか。
「そんなの見てたからに決まってるじゃん!」
ケラケラと笑うスピリト。こいつは悪魔だ。悪魔の中の悪魔だよ。
玄関の扉が爆発して家が無事だったのは、スピリトが家に魔法をかけていたからだ。復元魔法と呼ばれるそれは、習得が難しいものである。スピリトはそれを用いて一瞬で家を直した。あとからこいつのしつこいくらいに聞かされる自慢話で、復元魔法ではなく、空間の時間を戻す魔法であったことを知り、驚いたのであった。この魔法の習得は最高難度のものだ。
「で、セツはいつも僕が引っ越ししたらい~っぱい手紙を送らないと来てくれないのに、なんで今回は来てくれたの? もしかして! 僕とお話ししたくなった?」
「違う。手伝って欲しいことがある」
気まぐれ屋のこいつが手を貸してくれるのかはこいつ次第であるが、なんとしてでも助けてもらおう。
「ふ~ん、いいよ~。デレアスモスのことでしょう? 僕、あいつ嫌いだから、殺してやりたかったんだよね~。悪魔のルール破ったし口実できたじゃんか! だから、僕はセツのことを手伝うよ!!」
個人的感情が優先されている。しかも、その理不尽な理由は酷いな。お前が逃げたから、デレアスモスは悪魔の王になったのに、感謝の気持ちもないらしい。今からユアを取り戻しに行くのだから、仲良くない方が嬉しいので、何も言うことはない。俺もあの男のことは好きではないからな。
ここでスピリトがいった悪魔のルールのことは、まだ知らなくてもいいことだ。
「俺ではデレアスモスに敵わないから、助かる。それより、あの男がルールを破ったことを知っている理由は?」
「そんな細かいことは気にしないの。ユアちゃんを助けるんでしょう? セツは一言、お願いねって頼めばいいの!」
やる気になっている者に機嫌を損ねられても困るので、素直にスピリトにお願いした。
「扉が爆発するなんて聞いてない」
橙色の髪に薄紫の目、女の子のような可愛らしい容姿をした目の前の男に不満をぶつけた。こいつの名前はスピリト。外見に伴わない中身をしているので、騙されないように気を付けろと注意喚起したい。こいつに騙される者は結構いる。
「そんなこと聞かせたら防犯対策にならないじゃん! 侵入者だったら、怖いもん」
こんな空間が切り離された森の中にやって来る者はそんなにいないだろう。対策なんてする必要な皆無だと思う。
「でもさ、セツ。よくあの爆発の中、その軽症で済んだよね。僕、びっくりした! 前はさ、谷から落っこちたらしい人間が運よくここにやってこれたらしく、セツが開けた扉を人間も同じように開けたんだ。その後、人間がどうなったのかわかる?」
「いや、知らない」
「黒焦げになった。出来上がった死体は僕が処理することになったんだよ。本当に迷惑だよね~」
「人間がやって来た方法を知っているのはなぜだ?」
ニッコリと笑うスピリト。こいつの笑顔は危険なものだ。俺の表情筋はどうなっているのだろうか。
「そんなの見てたからに決まってるじゃん!」
ケラケラと笑うスピリト。こいつは悪魔だ。悪魔の中の悪魔だよ。
玄関の扉が爆発して家が無事だったのは、スピリトが家に魔法をかけていたからだ。復元魔法と呼ばれるそれは、習得が難しいものである。スピリトはそれを用いて一瞬で家を直した。あとからこいつのしつこいくらいに聞かされる自慢話で、復元魔法ではなく、空間の時間を戻す魔法であったことを知り、驚いたのであった。この魔法の習得は最高難度のものだ。
「で、セツはいつも僕が引っ越ししたらい~っぱい手紙を送らないと来てくれないのに、なんで今回は来てくれたの? もしかして! 僕とお話ししたくなった?」
「違う。手伝って欲しいことがある」
気まぐれ屋のこいつが手を貸してくれるのかはこいつ次第であるが、なんとしてでも助けてもらおう。
「ふ~ん、いいよ~。デレアスモスのことでしょう? 僕、あいつ嫌いだから、殺してやりたかったんだよね~。悪魔のルール破ったし口実できたじゃんか! だから、僕はセツのことを手伝うよ!!」
個人的感情が優先されている。しかも、その理不尽な理由は酷いな。お前が逃げたから、デレアスモスは悪魔の王になったのに、感謝の気持ちもないらしい。今からユアを取り戻しに行くのだから、仲良くない方が嬉しいので、何も言うことはない。俺もあの男のことは好きではないからな。
ここでスピリトがいった悪魔のルールのことは、まだ知らなくてもいいことだ。
「俺ではデレアスモスに敵わないから、助かる。それより、あの男がルールを破ったことを知っている理由は?」
「そんな細かいことは気にしないの。ユアちゃんを助けるんでしょう? セツは一言、お願いねって頼めばいいの!」
やる気になっている者に機嫌を損ねられても困るので、素直にスピリトにお願いした。
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