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15話
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ある部屋の一室。おしゃれなカーペットが敷かれており、部屋の隅にはベッドがあった。ベッドの側には窓があり、赤いカーテンが掛けられている。カーテンは閉められていた。部屋の中央には茶色の木の机が置かれている。また、その近くに暖炉もあった。
その部屋の中にいるのは、三者。使用人の格好をした女とその者に運ばれている真っ白な髪の女。そして、黒い髪の一人の男であった。男は翡翠色の瞳で女の腕の中にいる者を見つめている。
「デレアスモス様。姫君はどうしましょうか?」
抱えている者の方を見ずにただ目の前の男を見ている女。
「我が預かる」
デレアスモスは柔和な笑みを浮かべて、それに返答した。
「承知しました」
「それと、しばらく二人きりにさせて」
「かしこまりました」
彼の言うことに反論の意を示さずにすぐに従う女。腕の中に抱いている女をデレアスモスに渡す。彼女は彼の言葉に返事し、部屋から出て行った。
二人のみとなった部屋の中で、デレアスモスは女から受け取った者をベッドへ下ろした。
「ふふふふっ、姫君にあの下位の悪魔と過ごしていた記憶は不要なもの」
デレアスモスは彼女の頭に片手を添える。そこから現れたのは淡い光。小さな円が浮かんでおり、そこにはいくつもの記号のような文字のようなものがびっしりと描かれていた。
「姫君の記憶は消さなくてはならない」
彼の手はしばらくベッドに横たわっている女の頭に置かれていた。その光が消える頃、彼は一人ほくそ笑む。
「ただ姫君の契約の証が消えることはないのが悲しくてならない。姫君を殺してやり直すこともできない。大きな守護の力など邪魔なもの。あの忌々しい魔女は死んでもなお迷惑だな」
ベッドにいる女の頭を撫でる手は優しかった。しかし、デレアスモスの目は冷たく、人を射殺すことができそうであった。
うっすらと目を開ける。ぼんやりとしている視界に入ったのは、一人の黒髪の男。鮮やかな緑色をしている。
「?」
目の前にいる彼が誰なのか、わからない。頭もハッキリしておらず、霞みがかっている。何かが違うと感じるが、何が違うのかがわからなくて、とても気持ち悪い。その感覚も目の前にいる者の一言により、すっかり忘れてしまう。
「おはよう、シア」
シアとは誰のことだろうか。首を傾げて彼を見上げると、目が合った。男は目を細めると、私の耳に唇を近づけた。
「君はシア。我の唯一の姫君」
耳元で話しかけられる声は、とても甘く、くすぐったかった。男は私に覆い被さっているため、身動きが取れない。私を見下ろす男は、誰なのか。
「覚えていないのも無理はない。シアの目の前でシアの母上や父上が悪魔によって殺されてしまったのだから。銀の髪に金の瞳という特徴を持った悪魔にね。ごめんね? シアを守れなかった。でも、安心するといい。今度こそ私がシアを守るから」
彼が何を言っているのか理解できなかった。私はボーッとしている思考を閉じるように、目を瞑る。
何もわからない。この者は何を言っているのだろうか。今は考えなくていいや。だから、もう一度目覚めたら、彼の名前を聞くところから始めよう。もう少し眠りたいの。ごめんね、――。
黒い人影が浮かぶが、明瞭にならないまま、それは消えてしまった。
その部屋の中にいるのは、三者。使用人の格好をした女とその者に運ばれている真っ白な髪の女。そして、黒い髪の一人の男であった。男は翡翠色の瞳で女の腕の中にいる者を見つめている。
「デレアスモス様。姫君はどうしましょうか?」
抱えている者の方を見ずにただ目の前の男を見ている女。
「我が預かる」
デレアスモスは柔和な笑みを浮かべて、それに返答した。
「承知しました」
「それと、しばらく二人きりにさせて」
「かしこまりました」
彼の言うことに反論の意を示さずにすぐに従う女。腕の中に抱いている女をデレアスモスに渡す。彼女は彼の言葉に返事し、部屋から出て行った。
二人のみとなった部屋の中で、デレアスモスは女から受け取った者をベッドへ下ろした。
「ふふふふっ、姫君にあの下位の悪魔と過ごしていた記憶は不要なもの」
デレアスモスは彼女の頭に片手を添える。そこから現れたのは淡い光。小さな円が浮かんでおり、そこにはいくつもの記号のような文字のようなものがびっしりと描かれていた。
「姫君の記憶は消さなくてはならない」
彼の手はしばらくベッドに横たわっている女の頭に置かれていた。その光が消える頃、彼は一人ほくそ笑む。
「ただ姫君の契約の証が消えることはないのが悲しくてならない。姫君を殺してやり直すこともできない。大きな守護の力など邪魔なもの。あの忌々しい魔女は死んでもなお迷惑だな」
ベッドにいる女の頭を撫でる手は優しかった。しかし、デレアスモスの目は冷たく、人を射殺すことができそうであった。
うっすらと目を開ける。ぼんやりとしている視界に入ったのは、一人の黒髪の男。鮮やかな緑色をしている。
「?」
目の前にいる彼が誰なのか、わからない。頭もハッキリしておらず、霞みがかっている。何かが違うと感じるが、何が違うのかがわからなくて、とても気持ち悪い。その感覚も目の前にいる者の一言により、すっかり忘れてしまう。
「おはよう、シア」
シアとは誰のことだろうか。首を傾げて彼を見上げると、目が合った。男は目を細めると、私の耳に唇を近づけた。
「君はシア。我の唯一の姫君」
耳元で話しかけられる声は、とても甘く、くすぐったかった。男は私に覆い被さっているため、身動きが取れない。私を見下ろす男は、誰なのか。
「覚えていないのも無理はない。シアの目の前でシアの母上や父上が悪魔によって殺されてしまったのだから。銀の髪に金の瞳という特徴を持った悪魔にね。ごめんね? シアを守れなかった。でも、安心するといい。今度こそ私がシアを守るから」
彼が何を言っているのか理解できなかった。私はボーッとしている思考を閉じるように、目を瞑る。
何もわからない。この者は何を言っているのだろうか。今は考えなくていいや。だから、もう一度目覚めたら、彼の名前を聞くところから始めよう。もう少し眠りたいの。ごめんね、――。
黒い人影が浮かぶが、明瞭にならないまま、それは消えてしまった。
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